ツール・ド・フランスでステージ通算30勝を飾り、スプリンターとして一時代を築いたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)がドゥクーニンク・クイックステップへと移籍する。一時引退を示唆していた「マン島の超特急」がキャリア最盛期に在籍した古巣で現役続行を選んだ。



シーズン後半のベルギークラシックに連戦出場したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、バーレーン・マクラーレン)シーズン後半のベルギークラシックに連戦出場したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、バーレーン・マクラーレン) photo:CorVos
今シーズン後半のヘント〜ウェヴェルヘムで引退をほのめかす発言をし、その後も一切の移籍報道がなされていなかったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、現バーレーン・マクラーレン)の新チームは2013〜2015年に44勝(うちグランツールの区間優勝は8)を稼ぎ出した古巣ドゥクーニンク・クイックステップ。35歳となった当代屈指のスプリンターは1年間「ウルフパック」の一員として現役生活を続けることとなる。

「このチームに加入できた今の気持ちがどれだけ嬉しいかうまく説明できないよ。僕にとってはホームに戻ってきたような感覚だ。インクレディブルな選手たちのみならず、スタッフ陣も自分のキャリアの一時代を共に築き上げた人たちがほとんどだ。(チームに在籍した当時は)僕のキャリアで最も輝かしい時代だった」。1年間在籍したバーレーン・マクラーレンを離れ、古巣ベルギーチームに戻ることとなったカヴはチームリリースの中で喜びを語っている。

ヘント6日間レースでイーリョ・ケイセ(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)とタッグを組むマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)ヘント6日間レースでイーリョ・ケイセ(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)とタッグを組むマーク・カヴェンディッシュ(イギリス) photo:CorVos
バーレーン・マクラーレンは、カヴェンディッシュをロード世界選手権コペンハーゲン大会で優勝に導いたロッド・エリングワース代表を僅か任期1年で解任しており、カヴェンディッシュもそれに倣う形でチームを離れることに。「今年は本当に困難かつ混乱した年だったが、それは逆にドゥクーニンクの強さを示すことにもなった。僕がさらなるプラスをもたらしたいと思う。ウルフパックに戻るのが待ち遠しいよ」と、語るカヴ。慣れ親しんだ「新天地」でエーススプリンターのサム・ベネット(アイルランド)らとタッグを組むこととなる。

2007年にTモバイルでプロ入りするや否や勝利を重ね、ツールでステージ通算30勝、ジロ・デ・イタリアでステージ15勝、ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ3勝、さらにロード世界選手権やミラノ〜サンレモで優勝を飾っているカヴェンディッシュ。ディメンションデータに移籍した2016年のツールでステージ4勝を飾ってマイヨジョーヌを着たものの、そのシーズンを最後に低迷してしまう。相次ぐ落車に見舞われ、さらに2017年には伝染性単核球症を患っていることを発表。2019年、2020年はグランツール出場もなく、共にシーズン0勝。最後の勝利は2018年2月ドバイツアーのステージ優勝まで遡る。

マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、バーレーン・マクラーレン)マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、バーレーン・マクラーレン) (c)RCS Sport
「我々とマークは多くの美しい思い出を共有し、長い時を共に歩んできた。3年間共に過ごした中、彼は幾つもの勝利を挙げただけではなく驚くべき万能性と献身的なチームプレイヤーであることを示した」と語るのは、カヴェンディッシュの黄金期を支えてきたパトリック・ルフェーブルGM。「彼はリーダーであり、そして若手を導くために必要な経験を多く持っている選手。彼が我々ファミリーに戻ることを嬉しく思うと同時に、彼がまだチームに何かを残してくれることができると確信している」。

text:So Isobe