王道オークリーでもなく、100%でもなく、ルディプロジェクトでもスミスでもどこでもない。大きな一眼レンズと、特徴的なデザインのテンプル。こんな最新トレンドを盛り込んだアイウェアを提げた、イタリアのALBA Optics(アルバオプティクス)が日本国内でじわじわと認知度を高めている。主要モデルの使用感を交えながら紹介していきたいと思う。



アルバオプティクスの3モデル。STRATOS(左)、DELTA(奥)、そしてANVMA(手前)アルバオプティクスの3モデル。STRATOS(左)、DELTA(奥)、そしてANVMA(手前) photo:So Isobe
ここ2,3年、特に香港や韓国、そしてタイなどアジア圏の各国で徐々に存在感を高めているアルバオプティクスは、イタリアで2017年4月に創設されたばかりの気鋭アイウェアブランド。ALBA、つまり"夜明け"を意味するブランドのデビュー作「DELTA」は、80〜90年代をオマージュしたデザインを武器に感度の高いサイクリストの中に、静かに、しかし小さくない存在感をもって浸透してきた。

「過去の象徴的デザインを、現代のテクノロジーで昇華させる」。それがブランド創業者であるピエルジョルジオとルカが話す、アルバオプティクスのモットーだ。湾曲したテンプルが特徴のDELTAは、実際に1980年代に販売されていたアイウェアの金型をリフレッシュした上で造られており、ここに最新のグリルアミドTR-90素材や、「VZUM™」と呼ばれるオリジナルレンズを組み合わせて現代トップクラスの機能性を突き詰めた。

ブランドファーストアイテムのDELTA。クラシック感を押し出したデザインは見るものに衝撃を与えたブランドファーストアイテムのDELTA。クラシック感を押し出したデザインは見るものに衝撃を与えた photo:So Isobe
1980年代に販売されていたアイウェアの金型をリファインして使っているという1980年代に販売されていたアイウェアの金型をリファインして使っているという photo:So Isobeテンプルのアールは深めだが、柔軟性に富むためフィット感が良いテンプルのアールは深めだが、柔軟性に富むためフィット感が良い photo:So Isobe


そんなDELTAをファーストアイテムとする、アルバオプティクスのラインナップは、2019年にマイナーアップデートを受けた DELTAと、フレームレスデザインが特徴的なSTRATOS、シティユース用のANVMAと、2眼レンズの最新モデルSOLOという4種類。ラインナップ全てが母国イタリアで一つ一つ手作りされていることも、イタリアの長く華麗な自転車文化とサングラス文化をリスペクトするアルバオプティクスの信念だ。

今回、アルバオプティクスの輸入販売を行う東京ライフからDELTAとSTRATOS、そしてANVMAを借り受け、スポーツ用2モデルを秋晴れのショートライドに連れ出してみた。商品解説と共に、ファーストインプレッションを紹介していきたい。

フレームレスタイプのSTRATOS。DELTAに次いでデビューしたアイテムだフレームレスタイプのSTRATOS。DELTAに次いでデビューしたアイテムだ photo:So Isobe
顔を覆う勢いの一眼レンズ。視界は限りなくクリア顔を覆う勢いの一眼レンズ。視界は限りなくクリア photo:So Isobeテンプル長は調整可能。こういったギミックも当時を彷彿とさせるテンプル長は調整可能。こういったギミックも当時を彷彿とさせる photo:So Isobe


昨今のアイウェアのデザイントレンドがレトロオマージュであることは、オークリーのSUTROや過去製品のリメイク、そして100%の台頭を見れば明らかだろう。しかしその中においてもアルバオプティクスの各アイテムは"昔寄り"であり、恥ずかしながらプレゼンを受けるまでは、そして製品を手に取ってもなお「デザインだけのブランドなのでは?」とやや煙たい目で見ていたのは事実。しかしそのネガティブな先入観は、製品を着用してすぐ、良いイメージをもって上書きされることになる。

とても掛け心地が良く、視界がクリアだ。DELTAもSTRATOSも見た目はかなり個性的だが、どちらも共通して掛けてすぐ、顔と視界に馴染んで溶け込む素性の良さがある。第1世代のDELTAを着用したことはないものの、まだ創設間もないブランドながら「あ、コレ良いぞ」と思えたことはシンプルにスゴい。

タウンユース用のANVMA。他モデルに対してレンズのデザインはやや小ぶりタウンユース用のANVMA。他モデルに対してレンズのデザインはやや小ぶり photo:So Isobe
極限まで薄いデザインがANVMAの真骨頂。非常に軽く、掛けているのを忘れてしまうほど極限まで薄いデザインがANVMAの真骨頂。非常に軽く、掛けているのを忘れてしまうほど photo:So Isobeミラノモードを詰め込んだANVMA。ドライブやアフターライドに最適ミラノモードを詰め込んだANVMA。ドライブやアフターライドに最適 photo:So Isobe


DELTAの実測重量は32gと決して軽くはないものの、左右のテンプルがしっかりホールドしてくれるから重さがさほど気にならない。重心は前寄りで、湾曲したテンプルはヘルメットに挿した時落ちにくいというメリットもある(落とさないという安心感は意外と大きい)が、それ以上に一直線デザインと比べてしなりが少なく剛性に富むという長所があった。テンプルのデザインはオークリーのRAZOR BLADESに似ているものの、復刻発売された製品と比べるとフィット感は圧倒的にDELTAに軍配が上がる。これも単なるレトロフューチャーではなく、最新技術を盛り込んだアルバならではのアドバンテージだ。

DELTAはしっかりとしたホールド力が特徴DELTAはしっかりとしたホールド力が特徴 photo:Makoto.AYANO
オプションで付属するストラップ。旧いデザインが新しいオプションで付属するストラップ。旧いデザインが新しい photo:Makoto.AYANO
個人的な好みもあるだろうが、STRATOSの掛け心地はDELTAを上回った。しっかりとホールドするDELTAに対してSTRATOSはより柔らかく、しかしフレームレスアイウェアにありがちな柔らかすぎることもない絶妙なフィット感。実測値はDELTAよりも4g軽い28gだが、実際はそれ以上軽く感じたことが不思議だ。顔を覆ってしまうのでは?と思えるワイドレンズゆえ視界はDELTAよりも広く、特に深い前傾姿勢を取った時のメリットは大きい。軽く、カバーしてくれる範囲が広いSTRATOSはグラベルライドにもピッタリだと思う。

全モデルのレンズは、アルバオプティクスがこだわり抜いた「VZUM™」と呼ばれるオリジナル。紫外線をカットしつつ輪郭を引き立てるハイコントラストレンズだが、東京ライフによれば、オークリーのPRIZMレンズよりもややコントラストが抑えられているため、目に対する刺激が少なく、長時間使っていても疲れが少ないという。大きくカーブを描くデザインにも関わらず視界に歪みも無く、視界の端で色が変わる現象もなく、レンズのベンチレーションゆえか湿気が高くとも曇りにくい。ブランドの謳う「パフォーマンスを追い求めるアスリートをリスペクトし、美しく、可能な限り性能を追求する」は本当だと思った。

とにかく視界が広いSTRATOS。深い前傾姿勢やオフロードで効果的だったとにかく視界が広いSTRATOS。深い前傾姿勢やオフロードで効果的だった photo:Makoto.AYANO
レンズはアルバオプティクス独自のVZUM™。輪郭を研ぎ澄ますハイコントラストだが、目に優しいよう調整されているレンズはアルバオプティクス独自のVZUM™。輪郭を研ぎ澄ますハイコントラストだが、目に優しいよう調整されている photo:So Isobe
唯一気になったのは、DELTAのノーズパッドの間隔が広く、目頭にかなり近い部分にあったこと。ノーズパッドは調整不可であるため、ちょっと目に入りそうで怖かったことは事実。このあたりは個人差も関係しそうなので、可能であればTOKYO WHEELSをはじめとする全国の取り扱いショップでの試着をオススメしたい。なお付属ノーズパッドは全てアジアンフィットで、ノーマルパッドの単体販売も行われているので安心だ。

国内での注目度も確実に伸びているというアルバオプティクスは、単なるファッショングラスと侮ってはいけない実力派モデル。見た目以上に中身の良い、「製品パフォーマンスと結果のみならず、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)をも論じるニュータイプアイウェア」(ブランドモットーより)が、イタリアの最新モードを発信する街、ミラノから静かで熱い波を巻き起こしている。



アルバオプティクス DELTA
素材:Tr90フレーム、VZUM™ Aレンズ
重量:30.7g
価格:23,100円 (税込)

アルバオプティクス STRATOS
素材:Tr90フレーム、VZUM™ Aレンズ
重量:30.0g
価格:26,400〜27,720円 (税込)

アルバオプティクス ANVMA
素材:Tr90フレーム、VZUM™ Aレンズ
重量:20.0g
価格:18,700〜20,350円 (税込)

各モデルのカラーやラインナップなどは、東京ライフの製品一覧を参照のこと。
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