インカレ代替大会となる「2020全日本自転車競技大会」のロードレースが、10月17日に群馬サイクルスポーツセンターで開催された。男子は留目夕陽(JCF強化選手)、女子は渡部春雅(駒沢大学高等学校)が優勝し、共にオープン参加の高校生が制した。



冷たい雨が降り続く中でのレースとなった全日本大学自転車競技大会ロードレース冷たい雨が降り続く中でのレースとなった全日本大学自転車競技大会ロードレース photo:Satoru Kato
本来であれば、東京オリンピック終了直後に開催されるはずだった今年の全日本大学対抗選手権自転車競技大会、通称インカレ。今年は新型コロナウィルス感染拡大の影響により、10月まで延期されることになった。加えて、部活の状況が活動停止や遠征禁止など大学によって異なることから、大学対抗戦としてのインカレではなく、チームエントリーでのワンデーロードレースとしての開催に変更され、大学生以外のオープン参加が認められた。

また、部活動が許可されている大学でも宿泊を伴う遠征が認められていない大学に配慮しての日程とされ、トラック競技は種目を絞って3日間開催のところを2日間とし、10月10日と11日に長野県の美鈴湖自転車競技場で開催。ロードレースはその1週間後に、群馬サイクルスポーツセンター(以下、群馬CSC)で行われることになった。

心臓破りの登りを行くメイン集団心臓破りの登りを行くメイン集団 photo:Satoru Kato
ロードレースの会場となった群馬CSCは、1週間前にJプロツアーの最終戦が行われたばかり。その時は暑さを感じるほどの天気だったが、この日の群馬県北部は11月下旬から12月上旬の陽気。朝の気温は10℃に届かず、日中も気温は上がらないまま。加えて降り続く雨が体温を奪い、低体温症になる選手が出るほどの寒さとなった。



女子 渡部春雅が優勝 

女子 スタート女子 スタート photo:Satoru Kato
女子 1周目 早くも10名ほどまで絞られる女子 1周目 早くも10名ほどまで絞られる photo:Satoru Kato女子 2周目 4名に絞られた先頭集団女子 2周目 4名に絞られた先頭集団 photo:Satoru Kato

女子は7周42kmのレースに23名が出走。1周目に早くも10名ほどまで絞られた集団から、2周目に川口うらら(日本体育大学)、太郎田水桜(法政大学)、成海綾香(鹿屋体育大学)、オープン参加の渡部春雅(駒沢大学高等学校)の4名が先行。レース中盤までに後続との差は3分以上まで開く。

女子 4周目 渡部春雅(駒沢大学高等学校)が独走を開始女子 4周目 渡部春雅(駒沢大学高等学校)が独走を開始 photo:Satoru Kato女子 2位グループの川口うらら(日本体育大学)と太郎田水桜(法政大学)女子 2位グループの川口うらら(日本体育大学)と太郎田水桜(法政大学) photo:Satoru Kato

4周目、渡部が単独先行し、川口と太郎田が続くも、差は1分以上まで開く。最終周回に入ると川口が単独で前を追うものの差は詰まらず、渡部がレース距離のおよそ半分を独走して優勝した。

9月に群馬CSCで開催された学連(日本学生自転車競技連盟)主催のロードレースでも優勝し、8月のJBCF(全日本実業団自転車競技連盟)の群馬CSCでのレースでも優勝している渡部。「このコースは波に乗ってスピードを落とさずに走れるコースなので走りやすくて好きです」と、群馬CSCとの相性の良さを自認する。

女子 渡部春雅(駒沢大学高等学校)が優勝女子 渡部春雅(駒沢大学高等学校)が優勝 photo:Satoru Kato
女子オープン優勝 渡部春雅(駒沢大学高等学校)女子オープン優勝 渡部春雅(駒沢大学高等学校) photo:Satoru Kato「今日はどこかでアタックしようと考えていましたが、雨で滑りやすくなっているので集団の前方にいるようにしていました。そうしていたら下りで後ろが離れたので、このまま行けるところまで行こうと思っていたら最後まで行ってしまったという感じでした。暑くても寒くてもあまり左右されないと思っているので、今日も特に問題はなかったです」と、レースを振り返る。

来年は大学生になる渡部。インターハイが中止になってしまったため、ロードレースの3連覇はならなかったが「そのかわり大学生のレースや実業団のレースなどレベルが上のレースに出場できる機会をもらえたので、インターハイが無いことで落ち込んだということは無かったです。それよりも、今年はロードの世界選手権を一番の目標にしていましたが、中止となってしまったので、来年こそ世界選手権に行けるようにしたいです」と、次の目標を語った。

女子 学連登記選手表彰 左から、2位太郎田水桜(法政大学)、1位川口うらら(日本体育大学)、3位成海綾香(鹿屋体育大学)女子 学連登記選手表彰 左から、2位太郎田水桜(法政大学)、1位川口うらら(日本体育大学)、3位成海綾香(鹿屋体育大学) photo:Satoru Kato女子の高木秀彰賞は川口うららの日本体育大学女子の高木秀彰賞は川口うららの日本体育大学 photo:Satoru Kato

女子個人ロードレース 結果(42km)
1位 渡部春雅(駒沢大学高等学校・オープン参加) 1時間12分50秒
2位 川口うらら(日本体育大学) +1分40秒
3位 太郎田水桜(法政大学) +2分4秒
4位 成海綾香(鹿屋体育大学) +4分17秒
5位 小口加奈絵(日本体育大学) +4分21秒
6位 中村愛花(日本体育大学) +7分56秒


男子 留目夕陽が尾形尚彦を下して優勝

ローリングスタートの後、ゲートをくぐってリアルスタートローリングスタートの後、ゲートをくぐってリアルスタート photo:Satoru Kato
1周目 小出樹(京都産業大学)を先頭に10名ほどが抜け出す1周目 小出樹(京都産業大学)を先頭に10名ほどが抜け出す photo:Satoru Kato6周目からはJCF強化選手のメンバーが集団をペースアップさせる6周目からはJCF強化選手のメンバーが集団をペースアップさせる photo:Satoru Kato

男子は17周102km。スタート直後の1周目から、昨年のインカレロード2位の小出樹(京都産業大学)を含む10名ほどの集団が先行。人数を減らしながらも逃げ続け、メイン集団との差は最大で1分まで開く。

6周目からは、オープン参加のJCF強化選手のメンバーがメイン集団をペースアップさせ、8周目に全ての逃げを吸収してレースを振り出しに戻す。そして11周目に入ると、山田拓海(早稲田大学)、天野壮悠(同志社大学)、留目夕陽(JCF強化選手)の3名が先行。メイン集団との差を広げていく。

12周目 メイン集団に30秒前後の差をつけて逃げる3名12周目 メイン集団に30秒前後の差をつけて逃げる3名 photo:Satoru Kato16周目 尾形尚彦(中央大学)が単独追走16周目 尾形尚彦(中央大学)が単独追走 photo:Satoru Kato

16周目 バックストレートで尾形尚彦(中央大学)が先行する2人を視界に捉える16周目 バックストレートで尾形尚彦(中央大学)が先行する2人を視界に捉える photo:Satoru Kato
残り4周となる14周目、先頭の3名から山田が遅れて2名に、一方メイン集団では、残り2周となる16周目に尾形尚彦(中央大学)が単独で飛び出して追走を開始し、先行する2名に合流して最終周回に入っていく。

「逃げ続けていた2人は消耗しているように見えたので、いい勝負が出来ると思っていました」という尾形の見立ての通り、最初の逃げにも乗っていた天野が遅れ、留目との勝負に。「真っ向スプリント勝負では負けると思っていたので、ある程度車間を切って自分の勢いのまま行ければと考えていました。そのもがくタイミングがうまくハマりました」と言う留目が、僅差で尾形を下して優勝した。

留目夕陽(JCF強化選手)と尾形尚彦(中央大学)のスプリント勝負留目夕陽(JCF強化選手)と尾形尚彦(中央大学)のスプリント勝負 photo:Satoru Kato
留目夕陽(JCF強化選手)が優勝留目夕陽(JCF強化選手)が優勝 photo:Satoru Kato
男子オープン優勝 留目夕陽(JCF強化選手)男子オープン優勝 留目夕陽(JCF強化選手) photo:Satoru Kato
留目は東京都立八王子桑志高校の3年生。今年はJBCFのレースにも出場し、1週間前にも群馬CSCでのユースクラスタのレースで優勝している。「JBCFではE1とユースで走りましたが、E1よりもこのレースの方がペースが速いけれど、うまくいって良かったです。来年は大学に進学するので、またインカレで勝ちたい。そのためにはもっと余裕がもてるようでないと厳しいと思うし、アタックの瞬発力とか、もっと力をつけないといけないと思っています」と、次の目標を語った。



男子 学連登記選手表彰男子 学連登記選手表彰 photo:Satoru Kato男子の高木秀彰賞は、尾形尚彦の中央大学男子の高木秀彰賞は、尾形尚彦の中央大学 photo:Satoru Kato

一方、敗れたものの学連1位となった尾形は「最後の場面は自分が行くしかないと思って迷わず飛び出しました。留目君は最後の登りで足がつっているように見えたので、先頭でペースを上げれば離せると思っていました。でも最後で差されてしまいました。悔しいですけれど、自分がベストと思ったことをしたので後悔はないです」とレースを振り返る。

中央大学は今年インカレ2連覇がかかっていたが、代替大会となってしまった。「それでも、昨年のディフェンディングチャンピオンとして意地を見せないといけないと思っていました。先週のトラックでは、監督がポイントを計算したところ中央大がトップだったので、勢いがありました。なのでロードでは最上級生の自分がしっかり締め括りたいと考えていました。来年はトラックもロードも中央大が強いことを後輩達が見せてくれると期待しています」と、語った。
男子個人ロードレース 結果(102km)
1位 留目夕陽(JCF強化選手・オープン参加) 2時間33分38秒
2位 尾形尚彦(中央大学) +1秒
3位 天野壮悠(同志社大学) +6秒
4位 兒島直樹(日本大学) +8秒
5位 寺田吉騎(JCF強化選手・オープン参加) +25秒
6位 齊藤伸吾(筑波大学) +1分14秒

text&photo:Satoru Kato