第75回ブエルタ・ア・エスパーニャは後半戦も山岳が盛り沢山。超級山岳アングリル峠や最大勾配29%の個人タイムトライアルでマイヨロホ争いは加熱する。最終日前日の超級山岳ラ・コバティーリャ峠の山頂フィニッシュを越え、首都マドリードにフィニッシュする後半ステージを紹介します。



10月30日(金)第10ステージ → コースマップ
カストロ・ウルディアレス〜スアンセス 185km


10月30日(金)第10ステージ カストロ・ウルディアレス〜スアンセス 185km10月30日(金)第10ステージ カストロ・ウルディアレス〜スアンセス 185km photo:Unipublicカンタブリア州のカストロ・ウルディアレスからカンタブリア海(大西洋)に沿ってイベリア半島北岸を西へ。急坂ペーニャカバルガを横目に、大都市サンタンデルの近郊をかすめて、美しいビーチが目の前に広がるスアンセスを目指す。残り60km地点で3級山岳サンシプリアノ(全長4.3km・平均5%)を越えるものの、鼻息荒くメイン集団をコントロールするスプリンターチームの力を弱めるほどの難易度ではない。

ピュアスプリンターにとっての悩みの種は、スアンセスのフィニッシュ地点が登り勾配であること。残り2kmを切ってから勾配5%の登りが始まり、そこから高低差90mを駆け上がる。もちろんブエルタ出場を選んだスプリンターであればこなせると思われるが、軽快に登りをこなすパンチャーたちがチャンスを奪ってしまう可能性も。翌日からの山岳2連戦&個人タイムトライアルに備えてマイヨロホ候補たちは平穏に過ごしておきたいところだ。



10月31日(土)第11ステージ → コースマップ
ビリャビシオサ〜アルト・デ・ラ・ファラポナ、ラゴス・デ・ソミエド 170km


10月31日(土)第11ステージ ビリャビシオサ〜アルト・デ・ラ・ファラポナ、ラゴス・デ・ソミエド 170km10月31日(土)第11ステージ ビリャビシオサ〜アルト・デ・ラ・ファラポナ、ラゴス・デ・ソミエド 170km photo:Unipublic獲得標高差は今大会最大の4,700m。アストゥリアス州のビリャビシオサをスタートする170kmコースには、カンタブリア山脈が誇る4つの1級山岳が詰め込まれた。標高850m、標高1,185m、標高1,347mと、徐々に標高を上げていくのが特徴で、フィニッシュ地点は標高1,708m。大会1週目のピレネー山脈に続いてここでも気象条件との戦いになりそうだ。

山岳地帯を西に進み、1級山岳コリャドナ峠(全長7km・平均6.5%)、1級山岳コベルトリア峠(全長9.8km・平均9%)、1級山岳サンロレンソ峠(全長10km・平均8.6%)が立て続けに登場。そして最後は今回が3回目のブエルタ登場となる1級山岳ファラポナ峠(全長16.5km・平均6.2%)を駆け上がる。4つの1級山岳の中で最も小さな平均勾配をもつが、これは下り区間を含むため。標高1,708mの頂上まで残り4kmを切ってからは延々と勾配10%オーバーの急斜面が続く。

なお、コベルトリア峠→サンロレンソ峠→ファラポナ峠という流れは2014年ブエルタ第16ステージと共通。当時はクリストファー・フルーム(イギリス)を下したアルベルト・コンタドール(スペイン)がステージ優勝を飾ってマイヨロホのリード拡大に成功している。



11月1日(日)第12ステージ → コースマップ
ポラ・デ・ラビアナ〜アルト・デ・ラングリル 109.4km


11月1日(日)第12ステージ ポラ・デ・ラビアナ〜アルト・デ・ラングリル 109.4km11月1日(日)第12ステージ ポラ・デ・ラビアナ〜アルト・デ・ラングリル 109.4km photo:Unipublic泣く子も黙るアングリルの山頂フィニッシュが、大会2週目の最後に、そしてグランツール史上初となる11月の初日に登場する。第12ステージの距離は今大会最短(個人TTを除く)の109.4km。アストゥリアス州の山岳地帯に足を踏み入れると、標高1,560mの激坂までひたすら登りと下りをこなすことになる。

2つの3級山岳と1級山岳モスケタ峠(全長6.6km・平均8.4%)、1級山岳コルダル峠(全長5.4km・平均9.3%)を越えた時点ですでにメイン集団は大きく人数を減らしているだろう。そしてフィニッシュまで12.4kmを切ってから超級山岳アングリル峠(全長12.4km・平均9.9%・最大23.5%)の登りがスタート。「平均勾配が10%以下」と侮るなかれ、これは登り前半にある平坦区間を含むもので、残り7km地点から先の平均勾配は14%。残り2km地点で勾配がコンスタントに20%を超える激坂であり、残り400mで峠部分を越えてようやくフィニッシュを迎える。

あまりの勾配に蛇行する選手が続出するこの登りのてっぺんで、総合優勝本命選手がマイヨロホを受け取ることになるだろう。9月であっても観客がダウンジャケットを着るこの激坂は、果たして11月にどんな姿を見せるのか。立ち入り禁止措置が取られるため、観客からのサポート(押し)を得ることができないスプリンターたちは大いに苦しむことになりそうだ。



11月2日(月)休息日



11月3日(火)第13ステージ → コースマップ
ムロス〜ミラドール・デ・エサロ、ドゥンブリア 33.7km(個人TT)


11月3日(火)第13ステージ ムロス〜ミラドール・デ・エサロ、ドゥンブリア 33.7km(個人TT)11月3日(火)第13ステージ ムロス〜ミラドール・デ・エサロ、ドゥンブリア 33.7km(個人TT) photo:Unipublic今大会唯一の個人タイムトライアルが最後の休息日翌日、最終週の初日に設定された。ガリシア州まで移動した選手たちは、リアス式海岸の語源となった海岸線を走る33.7kmの「時間との戦い」に挑む。主催者が40分強と予想するレースの大半は平坦だが、フィニッシュまで残り1.8kmを切ったところでコースは内陸へ。これまで2012年と2016年に山頂フィニッシュとして登場している3級山岳ミラドール・デ・エサロ(全長1.8km・平均14.8%)を選手たちは駆け上がらなければならない。

大西洋を見下ろす展望台ミラドール・デ・エサロに向かう登りは最大勾配が29%に達するまさに壁。登坂距離は1.8kmと短いものの、あまりにも勾配がきついため登坂時間はトップ選手であっても7分ほどかかる。麓でTTバイクからロードバイクに乗り換える選手が続出するはず。何しろ、バイクの軽量性を追求する以前に、必要となるギアが変わってくる。路面もコンクリートの凸凹舗装であり、雨に濡れれば、歩いてバイクを押す選手も出てくるだろう。



11月4日(水)第14ステージ → コースマップ
ルーゴ〜オーレンセ 204.7km


11月4日(水)第14ステージ ルーゴ〜オーレンセ 204.7km11月4日(水)第14ステージ ルーゴ〜オーレンセ 204.7km photo:Unipublicコースプロフィールを見る限りスプリンターにもチャンスがありそうだが、逃げを捕まえる力を残したスプリンターチームがどれだけ残っているのかは分からない。ガリシア州を駆け抜ける200kmオーバーのコースに3級山岳を3つ組み込んだレイアウトはずばり逃げ向きだ。

残り34km地点で一旦オーレンセのフィニッシュ近くを通過してから、選手たちは3級山岳アベライラ峠(全長7.6km・平均3.8%)にアタック。仮にスプリンターチームが逃げを捕まえる展開になったとしても、スプリンターたちは残り2kmから始まる勾配6%の登りを攻略しなければならない。さらに残り1kmから複雑なコーナーを経てようやくフィニッシュ。逃げ切りの展開でも、小集団スプリントでも、刺激的なフィナーレになりそうだ。



11月5日(木)第15ステージ → コースマップ
モス〜プエブラ・デ・サナブリア 230.8km


11月5日(木)第15ステージ モス〜プエブラ・デ・サナブリア 230.8km11月5日(木)第15ステージ モス〜プエブラ・デ・サナブリア 230.8km photo:Unipublic当初の予定ではポルトガルに立ち寄る180kmの平坦ステージになる予定が、新型コロナウイルス感染拡大の影響でブエルタは隣国への訪問を諦めた。代わりに主催者は230.8kmという今大会最長コースを用意。ポルトガル国境に沿ってモスからプエブラ・デ・サナブリアに向かうコースはアップダウンの連続で、合計5つの3級山岳が設定されている。

最後の3級山岳パドルネロ峠(全長6.4km・平均3.5%)を越えるとフィニッシュまで残り19km。たっぷりとした登りを含み、しかも勾配5%の登りの先にフィニッシュラインが引かれていることから、集団スプリントに持ち込まれる展開は考えにくい。前日に引き続き逃げ切り向のレイアウトであると言える。



11月6日(金)第16ステージ → コースマップ
サラマンカ〜シウダード・ロドリゴ 162km


11月6日(金)第16ステージ サラマンカ〜シウダード・ロドリゴ 162km11月6日(金)第16ステージ サラマンカ〜シウダード・ロドリゴ 162km photo:Unipublic前日同様、ポルトガルの平坦ステージをキャンセルして主催者は山岳ステージを新たに設定した。サラマンカから一路南下し、標高1,600m級の山が連なるフランシア山地へと入っていく。登場するカテゴリー山岳は2級山岳ポルティーリョ峠(全長13.8km・平均4.4%)と1級山岳ロブレド峠(全長11.7km・平均3.8%)の2つ。

いずれも勾配が細かく変化する登りであり、実質的な勾配は6%ほど。残り35km地点で通過する1級山岳ロブレド峠は最大勾配12%で、しかもその先にはボーナスタイムが設定されたスプリントポイントが登場するため、残り数少ない逆転のチャンスを狙って総合下位の選手が動いてくるかもしれない。逃げきりが決まる可能性も高いが、主催者は30〜40名ほどの小集団スプリントを想定している。



11月7日(土)第17ステージ → コースマップ
セケロス〜アルト・デ・ラ・コバティーリャ 178.2km


11月7日(土)第17ステージ セケロス〜アルト・デ・ラ・コバティーリャ 178.2km11月7日(土)第17ステージ セケロス〜アルト・デ・ラ・コバティーリャ 178.2km photo:Unipublic第75回ブエルタのマイヨロホ最終決戦地はセントラル山系。カスティーリャ・イ・レオン州の小さな山間の街セケロスをスタートする178.2kmのコースには合計6つのカテゴリー山岳が詰め込まれた。1級山岳ポルティヨ・デ・ラス・バツエカス峠(全長10.1km・平均6.5%)を皮切りに、標高900mクラスの峠を立て続けにクリアしていく。

残り40kmを切ると2級山岳ガルガンタ峠(全長12km・平均4.8%)を越え、そこからさらに超級山岳ラ・コバティーリャ峠(全長11.4km・平均7.1%)を登る。この今大会最後の山岳は中腹にかけて10%オーバーの勾配が続き、頂上手前の勾配は7%前後。風の強い地域であるため、北風(追い風)が吹けば選手たちは早めに動いてくる。南風(向かい風)が吹けばアタックのタイミングを遅らせるのが定石だが、総合逆転のラストチャンスだけに積極的なアタックに期待したい。クイーンステージの座はピレネーやカンタブリア/アストゥリアスに譲るが、この日の獲得標高差は4,000mオーバー。最後の最後に総合逆転というシナリオは十分に考えられる。



11月8日(日)第18ステージ → コースマップ
サルスエラ競馬場〜マドリード 124.2km


11月8日(日)第18ステージ サルスエラ競馬場〜マドリード 124.2km11月8日(日)第18ステージ サルスエラ競馬場〜マドリード 124.2km photo:Unipublicいつもより2ヶ月近く遅れて、いつもより3日間短いブエルタが首都マドリードに凱旋する。市内の移動やイベントの開催が制限されているマドリードが、第75回ブエルタ・ア・エスパーニャの、そして2020年UCIワールドツアーの終着地だ。

グランツール最終日恒例のパレードランをこなし、83km地点でフィニッシュラインを通過するとステージ優勝に向けたアタック合戦がスタート。シベレス広場を中心にしたT字型の5.9km周回コースを7周して、最後は集団スプリントで締めくくられる。11月8日マドリードの日の入りは午後6時すぎ。そのためレースはいつもより数時間早い進行で、午後5時すぎにはレースが終わり、明るいうちに表彰式が執り行われる予定だ。



text:Kei Tsuji

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