近代ツール史上類を見ない厳しさの激坂が登場。最高標高2,304mのロズ峠が総合争いをさらにシャッフル。最大24%の急勾配でログリッチの強さがより鮮明になった。総合争いで笑った者、泣いた者は?



エースのエガン・ベルナルを失ったイネオス・グレナディアーズエースのエガン・ベルナルを失ったイネオス・グレナディアーズ photo:Makoto.AYANO
クイーンステージを迎えるというのに、スタート前の朝8時、衝撃的なニュースが飛び込んできた。ツール前回覇者エガン・ベルナルのレース離脱。

「我々はエガンの最善を念頭に置き、この決定に至った。彼はレースを愛する真のチャンピオンだが、同時に若い選手であり、この先何度もツールを走ることになる。現時点で、バランスを取り、彼のレース参戦を止めるという選択が懸命だ」。
ブレイルスフォードGMの言葉で綴られたプレスリリースには、リタイアの要因になった怪我の詳細について触れられていなかったが、ベルナルは昨日のレース後にメディアインタビューに対し背中と膝の痛みを語っていた。

エースのエガン・ベルナルを失ったイネオス・グレナディアーズエースのエガン・ベルナルを失ったイネオス・グレナディアーズ photo:Makoto.AYANO
第13ステージのピュイマリー山頂でライバルたちに38秒の遅れを喫したとき、そして第15ステージのグランコロンビエール峠で7分20秒もの遅れを喫したときも、その原因については語らず「何故か分からないが力が入らない」と話していたベルナル。ところが休息日にチームが収録したインタビュー動画のなかで、最後の最後に「背中に痛みがある」と一言だけ小さく触れた。

インタビューのなかで「これからはチームのステージ優勝のため、チームメイトを助けたい」と話したとおり、休息日明け第16ステージのレース中はボトル運びも買って出たベルナル。しかし大きく遅れてフィニッシュにたどり着いた後に、背中の痛みと膝の痛みが酷いことを打ち明けた。力を抜いて走ったのではなく、痛みで走れなかったことを。

ツール前哨戦クリテリウム・デュ・ドーフィネ出場中に生じた背中の痛みに、大事をとって最終日を走らず棄権したが、その痛みの要因は完治していなかったのだ。チームもそれを読みきれず、フルーム、Gトーマスを除外し、ベルナルのシングルエースで臨んだツール。イネオスにはプランBは無し。つまりベルナルの代わりに総合表彰台を狙える選手は居ない。

リラックスしてスタートの準備をするプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)リラックスしてスタートの準備をするプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:Makoto.AYANO
スタートを待つグルノーブルのチームパドックのユンボ・ヴィスマはひときわ高い緊張感に包まれていたが、どこか飄々としているプリモシュ・ログリッチ。このツールではお兄さんがスタッフに入っており、補給要員としてチームカーに乗り込むようだった。目元がそっくり。ガールフレンド(奥さん)のローラさんも時々レースでボトル受け渡しを手伝うことがあり、ログリッチはそうしたことで精神の安定を図るタイプなのだろうか。

プリモシュ・ログリッチのお兄さん。目元が似ているプリモシュ・ログリッチのお兄さん。目元が似ている photo:Makoto.AYANO補給要因としてチームカーに乗り込むプリモシュ・ログリッチの兄補給要因としてチームカーに乗り込むプリモシュ・ログリッチの兄 photo:Makoto.AYANO


covid-19感染拡大防止策がとられたスタートエリアはバリケードが観客と選手を隔て、距離が遠い。しかしアルプスに入ればレッドゾーン指定を外れるため、無観客とされた第15ステージのグラン・コロンビエール峠と違い、この日のメリベル/ロズ峠山頂には先着3,500人の観客の流入が認められた。

ペテル・サガンをマークして走るサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)ペテル・サガンをマークして走るサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Makoto.AYANO
「無観客のツールにはしない」と宣言したプリュドム氏(1週間の自己隔離を経て昨日からレース復帰)の決意を感じる措置。そして今日はcovid-19下でのツール開催の支持者でもあるエマニュエル・マクロン大統領が、このツール最大の見せ場の一つであるクイーンステージを訪問した。過日のカステックス首相に続き、赤いディレクターカーに乗り込む(先例があっても!)。

超級山岳メリベル/ラ・ロズ峠で逃げ切ったミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)超級山岳メリベル/ラ・ロズ峠で逃げ切ったミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) photo:Makoto.AYANO
2,304mの山頂フィニッシュとなるツール初登場の超級山岳メリベル/ラ・ロズ峠。登坂距離21.5km/平均勾配7.8%のこの峠は、スキーリゾートのメリベルまでは通常の山道だが、標高が1,800mを超えてフィニッシュまで残り4kmを切ったところで激坂へと姿を変える。スキー場のゲレンデを貫く山道を舗装した自転車道で、最大勾配が24%に達する激坂であり、やっかいなのは100mごとに勾配が変化がすること。リズムに乗れるクライマーに有利だが、薄い酸素が身体の動きを阻害する。

さらにステージ中盤では2,000mの超級マドレーヌ峠を通る。じつはA.S.O.の当初の計画では標高2,067mのクロワ・ド・フェール峠も取り入れる「超級トリプル」の案があったというが、さすがにそれは厳しすぎるとして「ダブル」に抑えられたという。

超級の山がひとつ減ったのは良いこととして、しかしこの日の関係者を悩ませたのは「午後に荒天と雷の可能性あり」という天気予報。実際、集団がロズ峠に近づくのと同時に空には黒雲が垂れ込み、あちこちで雷が鳴り始めていた。しかし奇跡的にメリベル周辺一帯のみ天候悪化をまぬがれ、フィニッシュ時間の17時半頃には日が差すほどだった。頂上付近は吹きっさらしで、麓からリフト+コース脇を3km歩いてきた3,500人の観客たちの身を隠す樹も何もない。フォトグラファーたちも機材を担いで最短ルートの登山道を1時間半かけて登ってきた。

超級山岳メリベル/ラ・ロズ峠で逃げ切ったミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)超級山岳メリベル/ラ・ロズ峠で逃げ切ったミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) photo:Makoto.AYANO
しかしそれにしても近代ツールでこんな極端な激坂が登場したことは無い。少し動けば息切れするこの難関山岳をトップで駆け上がったのは「スーパーマン・ロペス」のあだ名を持つミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)。フィニッシュ前の勾配が増す区間でも息を乱さず、口さえ開かず、上半身を固めた安定したダンシングでフィニッシュまで上り詰めた。

ロペスは言う。「今日は家にいるみたいに感じていた。この登りはコロンビアのホームタウンでトレーニングする道と似ていた。長くて、厳しくて、標高が高い。だから自分にチャンスが有ると思っていたよ」「グラン・コロンビエール峠でも良いフィーリングだった。こんな高い山岳が僕の好み。それが第3週ならなおさら。第1・2週はとても速すぎて、ようやく皆が疲れてきたと感じる」。

ロペスはコロンビアの標高2,767mのペスカ市出身で、2,304mのロズ峠ならホームタウンよりも高度は低い。ロペスは同郷のリゴベルト・ウランを押しのけ総合成績を3位に上げた。

2018年はジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャで総合3位の表彰台に乗ったロペス。グランツールレーサーながら初出場のツールでクイーンステージ優勝と、さらに「3つめのグランツール総合3位」が見えてきた。山岳の詰まった第3週終盤はピュアクライマーにとってチャンスが多くある。

「明日も大事なステージ。たぶん僕はまたいい脚で臨めるよ。でも僕がタイムトライアルがログリッチみたいに得意じゃないのは皆が知っている。(3位を争うライバルたちには)1分以上タイム差が欲しい」。

タデイ・ポガチャルを引き離してロズ峠フィニッシュに向かうプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)タデイ・ポガチャルを引き離してロズ峠フィニッシュに向かうプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:Makoto.AYANO
ステージ2位争いはマイヨジョーヌ争い。グラン・コロンビエール峠ではスプリントをかけるのが早すぎたためにポガチャルにステージ勝利を持っていかれたログリッチ。しかし今日も早めの仕掛けで先行、きっかけは(勝たせようと思ったクスを負かした)ロペスの追走だった。ポガチャルが追い込むも、ログリッチは15秒差をもってフィニッシュへ。ボーナスタイムを入れて両者の総合タイム差は57秒に。

ログリッチは言う。「最後(頂上付近)はクレイジーなほどにハードだった。ラスト数キロはとくに過酷。頂上にたどり着いてもまったく不機嫌になるほどだけど、タイム差をつけられてハッピーだね。勝てなかったけど、総合ではタイム差を開けたから、僕にとってむしろいい一日だった」。

タデイ・ポガチャルを引き離してロズ峠フィニッシュに向かうプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)タデイ・ポガチャルを引き離してロズ峠フィニッシュに向かうプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:Makoto.AYANO
ポガチャルがタイムを縮めることを狙った難関山岳で、逆に広げた57秒差とは。「まったく十分とは言えない。もっとも5分差があっても10分欲しいし、10分差があってももっと欲しい。そんなもの。遅れてるんじゃなくてリードしているだけマシだけど」。

プリモシュ・ログリッチに離されたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)プリモシュ・ログリッチに離されたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:Makoto.AYANO
ログリッチとの差を詰められなかったばかりか、15秒離されたポガチャルは終盤の勾配の変化に苦しんだという。「急勾配かと思えば勾配が緩み、平坦になって、またキツくなる。それが僕にはハードだった。それと高度。今まででもっともハードなファイナルだったね」。

「そんなにタイムを失わなかったことは喜ぶべきこと。マイヨジョーヌにはまだ手が届くと思っている。明日はまた別の厳しいステージが待っている。明日何ができるかを楽しみに。ここまでうまくレースできていることを喜ばなくては。最後まで戦うよ」。

マイヨジョーヌは少し遠くなった。しかしマドレーヌ峠での山岳通過8ポイント獲得でマイヨアポアがポガチャルのものに。「狙っていたわけじゃないけど、取れるものは取るよ。(マイヨブランと併せて)2枚のジャージを手にして嬉しいよ。でも目標は総合。イエローが取れるものなら、取るよ。明日も別のハードなステージだ」。

リッチー・ポートを追い抜きに掛かるセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)リッチー・ポートを追い抜きに掛かるセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) photo:Makoto.AYANO
リッチー・ポートを追い抜きに掛かるセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)リッチー・ポートを追い抜きに掛かるセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) photo:Makoto.AYANO
高地で生まれ育ったコロンビアのロペスが勝利した一方、4位争いを制したのもアメリカはコロラド州デュランゴの出身(市街地の標高は1,988m)のセップ・クス(ユンボ・ヴィスマ)。前哨戦クリテリウム・デュ・ドーフィネで見せた山岳での強力な登坂力は少しピークから下げつつあるが、激坂でのプッシュでリッチー・ポートを制して先着。ボーナスタイムの取り分もポートから奪っておくのはログリッチの大事なアシストになる。

この日チーム全員でペースを上げる動きでミケル・ランダの総合を上げることを狙ったバーレーン・マクラーレンだが、ランダは頂上付近では身体のキレがなく、チームのサポートに報いることができなかった。最後の激坂で辛うじてアダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)に先着。しかし3位の表彰台はまだまだ遠い。

アダム・イェーツを追い上げるミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン)アダム・イェーツを追い上げるミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) photo:Makoto.AYANO
ステージ9位で総合を落としたリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFプロサイクリング)ステージ9位で総合を落としたリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFプロサイクリング) photo:Makoto.AYANO
ロズ峠でアタックしたリチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)は11位にロズ峠でアタックしたリチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)は11位に photo:Makoto.AYANOマイヨアポアを守れなかったブノワ・コヌフロワ(フランス、アージェードゥーゼール)マイヨアポアを守れなかったブノワ・コヌフロワ(フランス、アージェードゥーゼール) photo:Makoto.AYANO


マドレーヌ峠との超級山岳ダブルとロズ峠の急勾配はグルペットも崩壊させた。いつもより小さなグルペットはさらに激坂区間でバラけ、数を減らした選手が点々と頂上にたどり着いた。

超級山岳メリベル/ラ・ロズ峠を登る小さなグルペット集団超級山岳メリベル/ラ・ロズ峠を登る小さなグルペット集団 photo:Makoto.AYANO
敢闘賞のジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)敢闘賞のジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Makoto.AYANOグルペットでチームメイトに守られて登るサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)グルペットでチームメイトに守られて登るサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Makoto.AYANO


観客が皆下山しているなか、回収車を引き連れ、ひとり大きく遅れて頂上にたどり着いた最終走者はイェンス・デブシェール(ベルギー、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)。マドレーヌ峠で遅れたチームメイトのブライアン・コカールを牽引して力を使い果たし、ロズ峠を麓から登り始めたときにはもうエネルギーが空っぽだったという。スプリンターのコカールの最終発射台で、デブシェール自身もスプリンター脚質。シャンゼリゼの勝利を狙うコカールは生きのびたが重要な発射台を失った。

大きく遅れてタイムアウト失格になったイェンス・デブシェール(ベルギー、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)大きく遅れてタイムアウト失格になったイェンス・デブシェール(ベルギー、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト) photo:Makoto.AYANO
心配された雨は降ること無く持ちこたえた。covid-19対策とマクロン大統領がロズ峠頂上に上がったことで警備も厳重ななか、荒天にならなかったのは幸い。確かに日中は夏を錯覚させる暑さだったが、7月と違って9月中旬の山岳の荒天は気温のうえでも凄惨なステージになる心配があった。

クイーンステージでもマイヨジョーヌを守ったプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)クイーンステージでもマイヨジョーヌを守ったプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) (c)A.S.O./Pauline Ballet
クイーンステージに帯同したエマニュエル・マクロン大統領クイーンステージに帯同したエマニュエル・マクロン大統領 (c)A.S.O./Pauline Ballet


text&photo:Makoto AYANO in Meribel FRANCE
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