スペシャライズドのS-WORKS TARMAC SL7をSL6と乗り比べインプレ。SL6に乗り「やっぱりいいな」と思う。そしてSL7に乗って、「これはいいな」と思った。SL6ですらトップクラスの現代バイクだが、SL7の総合力はそのさらに上を突っ走る。SL7の走りは、SL6の、そしてVENGEの後継機としてふさわしい正統進化を遂げていた。



テストモデルはDURA ACE DI2で組み上げられたS-WORKS TARMAC SL7の完成車テストモデルはDURA ACE DI2で組み上げられたS-WORKS TARMAC SL7の完成車
今回スペシャライズドがリリースしたS-WORKS TARMAC SL7のテストを担当するのはわたくし磯部。シマノのDura-Ace R9170 DI2と、ロヴァールのRapide CLXホイールをセットした完成車パッケージを借り受け、同じくDura-Ace DI2で組んだ同サイズのS-WORKS TARMAC SL6(ホイールはロヴァール CLX50)、そしてS-WORKS VENGE(ホイールはロヴァール CLX64)と乗り比べてのファーストインプレッションをお伝えしたい。

端的に表現するならば、S-WORKS TARMAC SL7は末恐ろしいほどに「気持ちのいいバイク」だ。歴代TARMACに通ずる硬さはありつつも、SL6とは方向性が異なる適度なウィップがあって、それが生み出すリズムがどうして心地良い。軽い車体がもたらす俊敏さ、そしてRapide CLXが誇る伸びやかさが相まった時、口から漏れるのは「うわ、ヤバい」の一言。良いバイク特有の前に出る感覚がとにかく強く、それは速度を上げても一切淀みがない。

踏みしろゆえに苦しい場面で助けてくれる感覚が強い。車体そのものの軽さも大きな武器だ踏みしろゆえに苦しい場面で助けてくれる感覚が強い。車体そのものの軽さも大きな武器だ
そのリズムを生み出すのはボトムブラケット周辺のしなりだ。一概に「しなり」と聞くとパワーロスを連想しがちだが、基本的に(そしてもちろんながら)SL7のそれはレースバイクとしての硬さの中に活きるものだ。疲れが溜まるから次第に踏めなくなるド硬いバイクとは全く異なり、SL7はグイグイ踏み込める。一言で言えば、SL7はレースバイクとして硬くない。

ペダリングの繋がりが良く、激坂のようなギクシャクしがちな場面でも走りは滑らかペダリングの繋がりが良く、激坂のようなギクシャクしがちな場面でも走りは滑らか SL6にもボトムブラケットのしなりは感じるものの、SL7はその動きがよりファインチューニングされた、と思った。もの凄く感覚的な話で恐縮だが、BB軸を横から見て真円軌道を描くのがSL6だとしたら、SL7はフレーム前方方向が硬く、前が潰れた楕円軌道を描く(ような気がする)。

そのためペダリング時に最もパワーが掛かる(時針で表現すると)1時〜4時方向が硬く、踏み込みに対するロスが少ないため反応速度が早い。それだけでは硬いだけのバイクになってしまいがちだが、ここからがSL7が本領を発揮するところ。6時方向、つまりトルクが抜けるあたりにBB周辺が弓なりにしなる「逃し」があって、過度な消耗なく脚が残る上、上死点と下死点でもスムーズにペダリングが繋がる。SL6のパワーバンドが1時〜3時、4時あたりだとしたら、SL7は1時くらいから5時半くらいまで踏めるようなイメージさえ持った。

大きなパワーを掛けても破綻する感覚がなく(トップスプリンターも使うバイクなので当たり前だが)、SL7には良いバイク特有の「ペダルがスルッと回る感覚」が色濃く存在する。小刻みなダンシングを好む方にとっては、もしかするとSL6の方がベターかもしれないが、万人受けするのは確実に新型だ。世界のトッププロが使うピュアレースバイクであるにも関わらず、私のようなホビーライダーに乗りやすいと思わせるキャパシティは単純に凄まじい。

そして、S-WORKS VENGEと乗り比べた時、改めてSL7はTARMACなんだと理解した。上記の通りVENGEのエッセンスが加わったSL7だが、それでも大口径チューブでパワーを真正面から受け止め、ダンシングに対して倒れることなく直線的にドカン!と加速するVENGE特有の乗り味はSL7には無いものだ。

完全スプリンター向きのバイクが消えたことを嘆く向きもあるだろうが(ボーラやドゥクーニンクの一部スプリンターは未だVENGEを使用中)、VENGE寄りでも、TARMACとVENGEの中間でもなく、軽量オールラウンダーたるTARMACの系譜の中に生きるSL7は、一台で全てをこなさなければいけないホビーレーサーにこそ歓迎されるべきだろう。

Rapide CLXホイールと組み合わせた際の総合力の高さが光るRapide CLXホイールと組み合わせた際の総合力の高さが光る
バイク単体も良かったのだが、それ以上に驚いたのがロヴァールのRapide CLXホイールと組み合わせた時の総合力の高さ。単純な巡航性能はもちろんのこと、全開でもがいた時、下りコーナーを攻める時など、特に負担が掛かる場面において、Rapide CLXは良い意味で存在感を消し自然にバイクの動きを支えてくれる。

これまで一般的にホイール選びは「硬いフレームに柔らかいホイール」や「柔らかいフレームに硬いホイール」を組み合わせることでバランスを取ってきたが、走りのベクトルが完璧に同じSL7とRapide CLXの組み合わせは、例えるなら1+1が2.5、あるいは3くらいになっている気さえする。これこそ一つ屋根の下でトータル設計できるスペシャライズドの強みと言えるだろう。

S-Works Aerofly IIハンドルはVENGEと共通。バー上部の滑り止め加工も具合が良いS-Works Aerofly IIハンドルはVENGEと共通。バー上部の滑り止め加工も具合が良い
総合力の塊のようなSL7だが、強いて難点を探すとしたら、乗り心地が平均点であること。一体式ハンドルはフォークの突き上げをコツコツと伝えてくるし、正直に言えば長時間乗っているとリアバックからの突き上げも腰にくる。それを緩和する意味でRapide CLXとAlpinist CLXがチューブレス対応でないことは、体重のある方や、乗り心地を重視する方にとってマイナスポイントに映るかもしれない。

ここまでS-WORKSグレードの完成度が高いとなれば、気になるのはPROグレードの走りだ。今回試乗する機会は無かったものの、スペシャライズドの歴代ミドルグレードは乗りやすさに定評を得てきたし、セットされるホイールがRapide CLXと同じリムを使うRapide CLであることを踏まえれば期待値は上がるばかり。ただしS-WORKSと同じFACT 11rカーボンフレームを使用していたVENGEのPROグレードとは違い、フレームはセカンドグレードのFACT 10rであるため、ここだけは選ぶ際に覚えておいて欲しいところだ。

トッププロが戦う機材であり、ホビーライダーの味方にもなってくれるキャパシティの広さに感嘆トッププロが戦う機材であり、ホビーライダーの味方にもなってくれるキャパシティの広さに感嘆
繰り返しになるが、S-WORKS TARMAC SL7は期待値を大幅に上回るくらい、SL6よりも乗りやすく、扱いやすく、苦しい時に伸びてくれる軽量レーシングバイクだ。スレッドBBになったことで長年ネックだった音鳴りの心配も消えた。

そしてレーサーバイクとして重要な戦歴に関しても、現在開催中のツール・ド・フランスでもジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が山岳ステージで、サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)が平坦スプリントステージで勝利済みと、「All in One」を体現している。

シリアスレーサーからサンデーライダーまで。レースでも練習でも、あるいは厳しい山岳ライドであっても、乗り手の味方になってくれる稀有なバイクだ。



スペシャライズド TARMAC SL7解説

スペシャライズド S-WORKS TARMAC - DURA ACE DI2完成車スペシャライズド S-WORKS TARMAC - DURA ACE DI2完成車 photo:Makoto.AYANO
2017年の「SL6」から3年の時を経て、モデルチェンジを果たした新型TARMAC SL7。大幅な空力性能改善を果たしながら、その最高峰グレードであるS-WORKSは、Rapide CLXホイール装備で6.7kgというUCIルールを下回る数値を叩き出す。

従来スペシャライズドのレースバイクは軽量オールラウンダーのTARMACとエアロロードのVENGEがその座を担ってきたが、開発陣はTARMACをエアロ化させることで2機種を一本化させる道を選んだ。スペシャライズドが誇る設計手法「FreeFoil Shape Library」やWin-Tunnelを駆使し、SL6比で距離40km走行時に平均45秒速いというVENGEに迫る空力性能をSL7に与えている。

特にフロント三角はSL6よりも力強く、エアロを意識したデザインに生まれ変わった特にフロント三角はSL6よりも力強く、エアロを意識したデザインに生まれ変わった photo:Makoto.AYANO
BB規格はプレスフィットのOSBBからスレッドのJISへと切り替わったBB規格はプレスフィットのOSBBからスレッドのJISへと切り替わった photo:Makoto.AYANOS-WORKSグレードの標準装備はロヴァール Rapide CLXだS-WORKSグレードの標準装備はロヴァール Rapide CLXだ photo:Makoto.AYANO


ハンドル周りはTARMAC史上初の専用開発品を用いて完全フル内装を実現したほか、フレームサイズ間の性能差を調整する「Rider-First Engineered」も投入。ボトムブラケットがOSBBからスレッド式(BSA:シェル幅68mm)へと変更されたことは話題となった(車体詳細はテクノロジー解説編へ)。

入荷第1便はすでに売り切れ御礼状態となっており、スペシャライズドによれば次便入荷は年明け予定。現在開催中のツール・ド・フランスなどトップレースでの活躍を観戦しながらじっくり購入モデルを決めるのが良いだろう。



テストモデル:スペシャライズド S-WORKS TARMAC - DURA ACE DI2完成車
サイズ:44、49、52、54、56
カラー:2種類
コンポーネント:シマノ Dura-Ace R9170 Di2
ハンドル:S-Works Aerofly II
ステム:Tarmac integrated stem, 6-degree
サドル:S-Works Power
ホイール:ロヴァール Rapide CLX
タイヤ:Turbo Cotton(26mm)
税抜価格:1,320,000円

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