最終第8ステージは総合争いの選手たちを尻目に飛び出したライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)が逃げグループの小集団スプリントを制し優勝。総合優勝はゴールデンジャージを守りぬいたマイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTCコロンビア) が手にした。

周回コースには4回登りが登場する周回コースには4回登りが登場する (c)CorVosサウザンドオークス近郊をめぐる1周約33.6kmの周回コースを4周するサーキットレースで行なわれた第8ステージ。ウェストレイクからアグオラ・ヒルの4回登る、134.3kmの闘いだ。最終ステージにありがちなクリテリウムではなく、総合争いの選手にとって最終日まで差をつけることが可能なコースレイアウトだ。

一周ごとの標高差は約330mで、4周すると1200mの獲得標高となる厳しいコースだ。数表を争う僅差にいる総合上位陣にとって逆転をかける文字通り最後のチャンスだ。

そしてステージ優勝を狙って序盤から逃げ出したのは以下の7人だ。
仮装したファンが選手たちを追いかける仮装したファンが選手たちを追いかける (c)CorVos
ジョージ・ヒンカピー(アメリカ、BMCレーシング)
ジェレミー・ヴェンエル(アメリカ、ビッセル)
トーマス・ラブー(オランダ、チームタイプワン)
ヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ、レディオシャック)
カルロス・バレード(スペイン、クイックステップ)
オスカル・プホル(スペイン、サーヴェロテストチーム)
セバスティアン・ラングヴェルト(オランダ、ラボバンク)

このなかでもっとも総合で上位につけるのはヒンカピーの6分3秒遅れ・総合18位だ。山岳ジャージを着るトーマス・ラブーは「攻撃は最大の防御」の言葉どおり、山岳ポイントをさらに加算する動きに出た。

逃げ集団に乗ったヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ、レディオシャック)が敢闘賞逃げ集団に乗ったヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ、レディオシャック)が敢闘賞 (c)CorVosこの逃げは最終4周回目に入っても続いた。残り1ラップのゴールラインを通過した時点で約3分の差をつける逃げ集団。逃げきる可能性が出てきたタイム差だ。後続のリーダージャージを着たマイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTCコロンビア)のいるメイン集団は、HTCコロンビア勢がペースをコントロールする。しかし、連日のハードワークで消耗したアシスト陣はその力も徐々に弱まりつつあるように見える。

ステージ優勝へのモチベーション高く逃げ続ける7人の集団も、ラスト1周に入った時点で人数を減らそうとお互いアタックがかかり始める。バレードがアタックすると、プホルが反応。ヒンカピーも追従する。その3人の勢いにラブーらが遅れかける。ポポヴィッチは後方から上がってくるライプハイマーが来るのに備えた前方待機の役割だ。

リーダージャージのロジャース集団では、総合2位のザブリスキー擁するガーミンと、総合3位のライプハイマー擁するレディオシャックの攻撃が激しさを増しつつあった。

ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)とライプハイマー自身がハイペースを保ち、集団の人数を絞る。ロジャースはさすがに遅れはしないが、この動きでトニ・マルティンらHTCコロンビア勢がすべて脱落してしまう。

スプリントを制しステージ優勝を挙げたライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)スプリントを制しステージ優勝を挙げたライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ) (c)CorVos逃げ集団から下がってきたポポヴィッチがリーダージャージ集団に合流し、レディオシャックはクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック)とライプハイマーをあわせ3人の勢力になる。ガーミンにはライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)がザブリスキーのアシストとしてつく。
そしてラスト15kmを切って最後の可能性にかける総合争いが始まった。

残り12km、登りでライプハイマーがアタックを開始。ロジャースは当然のようにマークに入り、捕まえる。すると今度は後方からザブリスキーがカウンターアタックをかけて飛び出す。
これも抑えこんだロジャースだが、再びライプハイマーがアタックをかける。これに対応するロジャース...。
繰り返すうちにロジャースの反応が鈍りだす。追いつかせるかにみえたライプハイマーが再加速して逃げると、ロライプハイマーとザブリスキーを抑えて勝利を喜ぶ マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTCコロンビア)ライプハイマーとザブリスキーを抑えて勝利を喜ぶ マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTCコロンビア) (c)CorVosジャースの後方から一気に加速したザブリスキーがライプハイマーにブリッヂをかけて追いつく。ロジャースはたまらず間隔を開けてしまい、絶体絶命のピンチに陥った。

ひとりで追うのは不利とばかり、一緒に取り残されたラングヴェルトにロジャースが声をかけると、ラングヴェルトは協力して前に出る。2人の力をもって追いつき、事なきを得た。

しかし今度は新たな脅威が生まれた。アタックしたヘジダルと、そのマークで追ったホーナーの2人が、思いのほか遠く前を行くようになってしまう。
ライプハイマーとザブリスキーの2人を抑え込んだロジャースだったが、ヘジダルとホーナーの2人を逃がせば、1分32秒遅れの総合6位にいるホーナーが自分を逆転してしまう可能性が出てきたのだ。総合8位のヘジダルにもジャンプアップの可能性が出てきた。

総合トップ3のお見合い牽制合戦は、強風にも煽られて大きく失速。ヘジダルとホーナーの2人とロジャース集団との差はみるみる1分近くに広がる。



逃げ続けたジョージ・ヒンカピー(アメリカ、BMCレーシング)逃げ続けたジョージ・ヒンカピー(アメリカ、BMCレーシング) (c)CorVosそしてヘジダルとホーナーの二人は前を行く逃げ集団に追いつき、人数を増してますます加速してタイム差が開く危険が発生する。もしホーナーがステージをとれば、ボーナスタイムを合わせると1分22秒に差が広がると逆転優勝されるという事態になってしまった。

まさに孤軍奮闘するロジャースは孤独に先頭を引く。ライプハイマーとポポヴィッチの2人でさえ、どちらの可能性に賭ければいいのか迷う状況になった。

しかし、前の逃げ集団も、それまでの利害関係が崩れだした。ゴールスプリントに弱いバレードが登りで逃げ出したいとアタックを掛け、それを捕まえるヒンカピーはスプリントが得意なため、あえてペースを上げようとはしない。お互いの意志が噛みあわず、ペースは思いのほか上がらない。しかし、逃げ切りだけは確定的になった。

ステージ表彰。ヘジダル、ヒンカピー、バレードステージ表彰。ヘジダル、ヒンカピー、バレード (c)CorVos小グループでのスプリントは本来ならヒンカピーの得意分野。しかし、序盤から逃げ続けてきた仕事量がヒンカピーから脚力を奪っていた。ヘジダルが後方から仕掛けると、ヒンカピーには追い込む脚は残っていなかった。

ヘジダルは2009年ブエルタ・ア・エスパーニャ第12ステージで超級山岳ベレフィケ峠を制して優勝しているカナダ人。今年はアムステル・ゴールドレースでも2位になるなど、徐々に頭角をあわわしてきている。
2003年まではマウンテンバイクのクロスカントリー出身で、世界選手権でも2位になったことがある逸材だ。

ザブリスキーの逆転優勝はならなかったが、結果的にガーミンは第3ステージのザブリスキーの優勝とあわせ2勝目を挙げ、結果的にはこの重要なアメリカンレースで満足な結果を残すことができた。

ゴールデンジャージを守りきった マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTCコロンビア)ゴールデンジャージを守りきった マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTCコロンビア) (c)CorVos総合優勝を果たしたロジャースは、ブエルタ・ア・アンダルシアで総合優勝を挙げているほか、ツール・ド・ロマンディでもリーダージャージを着る活躍を見せた(最終的には4位)。
2007年ツール・ド・フランスでの落車による大怪我がもとで一時はスランプに陥ったが、順調に力をとり戻しつつある。



選手たちのコメント

ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)
このチームで2008年からレースに出始めてからずっと、望むポジションで走らせてもらっている。このままいい感じで行きたいね。今日はその証明になった。

各賞ジャージを着た選手たちによる表彰式各賞ジャージを着た選手たちによる表彰式 (c)CorVos今日は「ミックが失うレース」だった。クリス(ホーナー)を連れて行くことでデイブ(ザブリスキー)の総合を逆転されることは心配していなかった。それをチェックするのはミック次第だと思っていたから。
今日チームはアグレッシブに攻めてレースを魅せたかったんだ。最終ステージで勝てたのは締めくくりとしてはいいね。
デイブ(ザブリスキー)がミック(ロジャース)を逆転するというのはちょっと大げさすぎるオーダーだった。でも僕らは出来る限りのベストを尽くしたと思う。


マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTCコロンビア)
我々にとっては本当にビッグデーだ。カリフォルニアに拠点をおくアメリカンチームにとって、このレースはツール・ド・フランスに次いで重要なレースだ。
本当にタフな一日だった。でもゴールデンジャージを守りきってツアー・オブ・カリフォルニアを制することができたのは本当に興奮するね。
今日は僕にとっていつでも完璧な状況じゃなかった。レディオシャックの2人がいて、ガーミンの2人がいた。僕はただロスを最小限にするべく、デイブとリーヴァイが僕から離れて行ってしまわないように走った。
ライダー(ヘジダル)とクリス・ホーナーとはタイム差があったから、僕は彼らを行かせたんだ。3人のレースよりはコントロールしやすいと思ったからね」。
今年、僕はトレーニングや自転車レースへのアプローチ方法を大きく変えた。このツアーの勝利は僕にとってとても満足の行くステップになった。


ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)
2つのジャージを獲得したことはとてもハッピーだ。いい仕事をしたと思う。これはとても重要なレースだから。ハッピーだからまた来年も出場したい。


トーマス・ラブー(オランダ、チームタイプワン)
朝起きたとき、山岳ジャージを着て逃げたらカッコイイと思い、そうしたんだ。今日の目標は達成したよ!






第7ステージ結果
1位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ) 3h21'56"
2位 ジョージ・ヒンカピー(アメリカ、BMCレーシング)
3位 カルロス・バレード(スペイン、クイックステップ)
4位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック)
5位 オスカル・プホル・ムニョス(スペイン、サーヴェロテストチーム)+05"
6位 セバスティアン・ラングヴェルト(オランダ、ラボバンク)+28"
7位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)
8位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTCコロンビア)
9位 デーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)
10位 ヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ、レディオシャック)


個人総合成績
1位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTCコロンビア) 33h08'30"
2位 デーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)+09"
3位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)+25"
4位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック)+01'04"
5位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)+01'08"
6位 イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク) +01'44"
7位 ロリー・サザーランド(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア・マキシス)+01'58"
8位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)+02'06"
9位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)+02'42"
10位 フィル・ツァズィチェク(アメリカ、フライVオーストラリア)+03'21"


ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)

山岳賞
トーマス・ラブー(オランダ、チームタイプワン)

新人賞
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)

チーム総合成績
ガーミン・トランジションズ


text:MakotoAYANO
photo:(c)CorVos

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