緑色のマイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)は最強スプリンターの証。第107回ツール・ド・フランスの平坦ステージで高速バトルを繰り広げる注目スプリンターをチェックしておこう。



平坦ステージだけでなく、スプリントポイントでのポイント獲得が鍵

制限時間内に山岳ステージをこなさなければマイヨヴェールは手に入らない制限時間内に山岳ステージをこなさなければマイヨヴェールは手に入らない photo:Kei Tsuji
グリーンジャージを意味するマイヨヴェールはポイント賞ランキングトップの選手に与えられる特別賞ジャージ。チェコの自動車メーカーで、大会のオフィシャルカーサプライヤーでもあるシュコダがスポンサーを務める。

ツール主催者ASOは21あるステージを「平坦」「中級山岳」「上級山岳」「個人TT」の4種類に分類。それぞれ異なるポイント配分を設定している。2015年に「平坦ステージ」の優勝者に多くのポイントが与えられるシステムが導入されたことで、ピュアスプリンターがマイヨヴェール争いにおいてリードを得やすいポイント配分となっている。

ステージ中盤に登場するスプリントポイントのポイントシステムは継承。1ステージ・1スプリントポイントに固定されており、スプリントポイントでのポイント配分は全ステージ共通(TTを除く)。スプリントポイント通過上位15名まで、「上級山岳ステージ」のフィニッシュと同等のポイントが与えられる。

このスプリントポイントでの獲得ポイントがマイヨヴェール争いに大きな影響を及ぼす。山岳ステージでも、コース前半にスプリントポイントが設定されている場合は、スプリンターチームがレースをコントロールするだろう。山岳ステージで逃げに乗るスプリンターも出てくるはず。上位15名までポイントが与えられるため、10名に満たない逃げグループが形成されている場合は集団前方が活性化する。ポイント賞狙いの選手は、1日に2回スプリントすることになる。スプリントポイントで脚を使えば、当然ステージ優勝に影響が出るため、平坦ステージで各チームの思惑が入り乱れそうだ。なおボーナスタイムが与えられる「ボーナスポイント」ではポイントは与えられない。

また、厳しい山岳ステージを乗り切ることが出来ない限り、マイヨヴェール獲得のチャンスは回って来ない。そのためスプリンターたちはグルペットを形成し、タイムアウトの時間内にゴールを目指す。仮に審判の判断でタイムアウトが救済された場合は、その日のステージ優勝の獲得ポイントと同ポイントが減点される。
毎年のように圧倒的なポイント差でマイヨヴェールを獲得しているペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)毎年のように圧倒的なポイント差でマイヨヴェールを獲得しているペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Kei Tsuji
ポイント配分(いずれも上位15名に付与)
平坦ステージ(第1,3,5,7,10,11,14,19,21ステージ)
優勝者50pts、以下30、20、18、16、14、12、10、8、7、6、5、4、3、2pts
中級山岳ステージ(第2,4,6,12,16ステージ)
優勝者30pts、以下25、22、19、17、15、13、11、9、7、6、5、4、3、2pts
上級山岳ステージ&個人TT(第8,9,13,15,17,18,20ステージ)
優勝者20pts、以下17、15、13、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1pt
スプリントポイント
先頭通過者20pts、以下17、15、13、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1pt


サガンの記録更新を止めるスプリンターは誰だ

過去8年間で7回マイヨヴェールを獲得しているのがペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)。7回という記録はエリック・ツァベルの6回やショーン・ケリーの4回を上回る揺るぎないものであり、まだ30歳のサガンはその記録をさらに伸ばしていくと見られる。

2020年シーズンは中断前にパリ〜ニースでステージ2位&ステージ3位、再開後にミラノ〜サンレモ4位と、まだ勝ち星がないサガン。10月3日開幕のジロ・デ・イタリアへの出場を表明しているサガンはピーキングを遅らせていることも考えられる。今年も平坦ステージでピュアスプリンターと競り合い、丘陵ステージで優勝を狙い、山岳ステージで逃げてポイントを稼ぐ走りでマイヨヴェールを狙ってくるだろう。

ドーフィネでマイヨヴェールを獲得したワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)ドーフィネでマイヨヴェールを獲得したワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) (c)CorVos
グレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、CCCチーム)グレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、CCCチーム) (c)CorVosフィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)ら4名フィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)ら4名 (c)CorVos

サガンと同様にパンチャー系選手として注目したいのは、グレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー)とマッテオ・トレンティン(イタリア)のCCCコンビやフィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)、そしてジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)ら。そしてストラーデビアンケとミラノ〜サンレモを制したワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)はサガンの最大の対抗馬になり得る。

2019年ツール第10ステージの集団スプリントを制しながら、その4日後のTT落車でリタイアしたファンアールト。選手生命も危ぶまれた怪我からは完全復活を遂げており、ドーフィネでは初日に小集団スプリントを制してポイント賞を獲得した。しかしユンボ・ヴィスマにとってはログリッチやデュムランの総合成績が最優先事項のため、ファンアールトが自由に動くことのできるステージは限定される。

昨年ツールでステージ3勝を挙げたカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)昨年ツールでステージ3勝を挙げたカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) (c)CorVos
直前のワロニーで勝利しているサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)直前のワロニーで勝利しているサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) (c)CorVos今季勝ち星が無いエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス・ソルシオンクレディ)今季勝ち星が無いエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス・ソルシオンクレディ) (c)CorVos

平坦ステージでのスプリント勝利を目指すピュアスプリンターとしては、初出場した2019年ツールでパリ・シャンゼリゼを含むステージ3勝を飾ったカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)やサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス・ソルシオンクレディ)らに注目したい。ユアンはクルーゲやデブイスト、ベネットはモルコフやアスグリーン、ヴィヴィアーニはコンソンニやラポルトに導かれる形でスプリントに挑むことになる。

直前のイタリア選手権で優勝してトリコローレ(イタリアチャンピオンジャージ)を獲得し、さらにヨーロッパ選手権で優勝したジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、NTTプロサイクリング)は現在最も波に乗るスプリンター。コース特性に合わせてエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)とエースの座を分け合う。

イタリア選手権、ヨーロッパ選手権を制し波に乗るジャコモ・ニッツォーロ(イタリア)イタリア選手権、ヨーロッパ選手権を制し波に乗るジャコモ・ニッツォーロ(イタリア) (c)CorVos
アンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション)アンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション) photo:Kei Tsujiアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー)アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー) photo:So.Isobe

アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)とナセル・ブアニ(フランス、アルケア・サムシック)の欠場を嘆くフランス人ファンを、ブライアン・コカール(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)は喜ばせることができるだろうか。

ベテラン勢として、アンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション)やジョン・デゲンコルプ(ドイツ、ロット・スーダル)、アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)、ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・マクラーレン)も初日からマイヨジョーヌ獲得を狙ってくる。

例年よりもピュアスプリンターとリードアウトトレイン要員が少ない印象の2020年ツール。その証拠としてスタートリストに名前を連ねる176名の平均体重は過去10年の中で最も軽い(平均体重68.1kg)。
歴代マイヨヴェール受賞者
2019年 ペテル・サガン(スロバキア)
2018年 ペテル・サガン(スロバキア)
2017年 マイケル・マシューズ(オーストラリア)
2016年 ペテル・サガン(スロバキア)
2015年 ペテル・サガン(スロバキア)
2014年 ペテル・サガン(スロバキア)
2013年 ペテル・サガン(スロバキア)
2012年 ペテル・サガン(スロバキア)
2011年 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)
2010年 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)
2009年 トル・フースホフト(ノルウェー)
2008年 オスカル・フレイレ(スペイン)
2007年 トム・ボーネン(ベルギー)
2006年 ロビー・マキュアン(オーストラリア)
2005年 トル・フースホフト(ノルウェー)
2004年 ロビー・マキュアン(オーストラリア)
2003年 バーデン・クック(オーストラリア)
2002年 ロビー・マキュアン(オーストラリア)
2001年 エリック・ツァベル(ドイツ)
2000年 エリック・ツァベル(ドイツ)
1999年 エリック・ツァベル(ドイツ)
1998年 エリック・ツァベル(ドイツ)
1997年 エリック・ツァベル(ドイツ)
1996年 エリック・ツァベル(ドイツ)
1995年 ローラン・ジャラベール(フランス)
1994年 ジャモリディネ・アブドヤパロフ(ウズベキスタン)
1993年 ジャモリディネ・アブドヤパロフ(ウズベキスタン)
1992年 ローラン・ジャラベール(フランス)
1991年 ジャモリディネ・アブドヤパロフ(ウズベキスタン)
1990年 オラフ・ルードヴィッヒ(ドイツ)
text:Kei Tsuji in Nice, France

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