初登場する標高2,304mの急勾配ラ・ロズ峠や、未舗装区間も登場する超級山岳グリエールで加熱するマイヨジョーヌ争い。ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユの山岳個人タイムトライアルを経てパリのシャンゼリゼに凱旋するツール・ド・フランス最終週をプレビューします。



9月15日(火)第16ステージ → コースマップ
ラ・トゥール=デュ=パン〜ヴィラール=ド=ラン 164km


9月15日(火)第16ステージ ラ・トゥール=デュ=パン〜ヴィラール=ド=ラン 164km9月15日(火)第16ステージ ラ・トゥール=デュ=パン〜ヴィラール=ド=ラン 164km photo:A.S.O.パリまで残り833.7km。アルプス山脈とヴォージュ山脈を舞台にした、勝負を決める大会3週目がオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏イゼール県のラ・トゥール=デュ=パンで始まる。

44.5km地点にスプリントポイントが設定されているため、ポイント獲得に興味を示すスプリンターが動けば逃げグループ形成に時間を要すると思われるが、グルノーブルの街を見下ろす2級山岳ポルト峠と2級山岳ルヴェル峠に差し掛かる頃には総合争いに関係しない逃げが生まれているはず。

逃げ切りの展開でも、メイン集団が追い上げる展開でも、残り21km地点の1級山岳サンニジエ=デュ=ムシェロットが勝者を選別するポイントになる。ここで縮小した逃げグループorメイン集団が、最後の3級山岳コート2000/ヴィラール=ド=ランでステージ優勝争いを繰り広げることになる。総合タイム差がタイトな場合、1級山岳サンニジエ=デュ=ムシェロットのボーナスポイントとフィニッシュでのボーナスタイムを狙いたい総合チームが逃げを封じ込めにかかるだろう。もちろん最後の休息日でリズムを崩し、思わぬタイムロスを被る選手も出てくるかもしれない。

カテゴリー山岳とスプリントポイント
12.5km地点 4級山岳ヴィリュー峠(距離2.3km・平均6.8%)
44.5km地点 スプリントポイント
66.5km地点 2級山岳ポルト峠(距離7.4km・平均6.8%)
94.5km地点 2級山岳ルヴェル峠(距離6km・平均8%)
143.5km地点 ボーナスポイント/1級山岳サンニジエ=デュ=ムシェロット(距離11.1km・平均6.5%)
164km地点 3級山岳ヴィラール=ド=ラン(距離2.2km・平均6.5%)



9月16日(水)第17ステージ → コースマップ
グルノーブル〜メリベル 170km


9月16日(水)第17ステージ グルノーブル〜メリベル 170km9月16日(水)第17ステージ グルノーブル〜メリベル 170km photo:A.S.O.超級山岳メリベル/ラ・ロズ峠の戦いは、マイヨジョーヌの持ち主を確かなものにするだけでなく、伝説的な戦いとして長く語り継がれるものになりそうだ。ツール初登場で、今大会最後の山頂フィニッシュであり、今大会最高地点となる標高2,304mという高さを誇り、しかも"ツールらしくない"激坂のラ・ロズ峠。ここでマイヨジョーヌ争いが確定するわけではないが、ここで勝つ力がなければ総合優勝を果たすことなんてできない。

前日同様、マイヨヴェール候補のために設定された45.5km地点のスプリントポイントを経て、まずは超級山岳ラ・マドレーヌ峠の登坂に取り掛かる。特に麓の勾配が厳しい登坂距離17.1km・平均8.4%という標高2,000mの難所を越えると、一旦標高400mの谷底までダウンヒル。短い渓谷路で息を整えた後、残り21.5km地点から高低差1,671mの登坂が始まる。

超級山岳メリベル/ラ・ロズ峠。登坂距離21.5km・平均勾配7.8%。標高1,415mに位置するスキーリゾート地のメリベルに向かう登り前半は6〜8%の常識的な勾配を刻むが、標高が1,800mを超え、フィニッシュまで残り4kmを切ったところで激坂へと姿を変える。何しろラ・ロズ峠は普段から交通量のある峠道ではなく、スキー場を貫く山道を舗装しただけの自転車道。最大勾配が24%に達する激坂であり、その勾配はフィニッシュラインまで緩むことがない。

酸素の薄い標高2,000mオーバーの激坂で繰り広げられる究極の登坂勝負。ステージ優勝者には初代大会ディレクターの名前を冠したアンリ・デグランジュ賞が贈られ、通常の2倍の山岳ポイントが与えられる。

カテゴリー山岳とスプリントポイント
45.5km地点 スプリントポイント
107.5km地点 超級山岳ラ・マドレーヌ峠(距離17.1km・平均8.4%)
170km地点 超級山岳メリベル/ラ・ロズ峠(距離21.5km・平均7.8%・最大24%)



9月17日(木)第18ステージ → コースマップ
メリベル〜ラ・ロシュ=シュル=フォロン 175km


9月17日(木)第18ステージ メリベル〜ラ・ロシュ=シュル=フォロン 175km9月17日(木)第18ステージ メリベル〜ラ・ロシュ=シュル=フォロン 175km photo:A.S.O.ラ・ロズ峠の戦いを終えてもなおアルプスの洗礼は続く。メリベルからニュートラル走行で下山した選手たちの前に待つのは5つの峠道。1級山岳ロズラン峠に始まり、平地で息をつかせるタイミングを与えることなく断続的にアップダウンを繰り返す。獲得標高差4,000mオーバーというたっぷりとした登りが、すでに3週間近く走ってきた脚を苦しめる。総合上位フィニッシュを断念せざるをえなくなったオールラウンダーたちが、アルプス最終日のこの日、栄光のステージ優勝を手にするために序盤から集団を飛び出すだろう。

残り31.5km地点に鎮座する超級山岳プラトー・デ・グリエールが最大の難所。登坂距離6kmで高低差670mを駆け上がる、つまり平均勾配11.2%という数字は前日のラ・ロズ峠の急勾配区間をも上回る。

そして超級山岳プラトー・デ・グリエールの頂上通過後には、1,800mにわたって未舗装区間も登場する。2年前に初登場した際には、フィニッシュから離れていたこともあり重要な勝負所にはならなかったが、今回は未舗装区間からフィニッシュまで30kmしかない。しかも未舗装区間を終えてすぐにダウンヒル。せっかく登りでリードしても、パンクやメカトラに見舞われると大きくタイムロスすることになる。各チームはホイールやスペアバイクを携えたスタッフを未舗装区間に配置すると思われるが、ここではすぐにトラブルに対応できるアシストの存在が重要になってくる。

カテゴリー山岳とスプリントポイント
46km地点 1級山岳ロズラン峠(距離18.6km・平均6.1%)
67.5km地点 3級山岳ラ・ルート・デ・ヴィル(距離3.2km・平均6.6%)
91km地点 2級山岳セジー峠(距離14.6km・平均6.4%)
117.5km地点 1級山岳アラヴィ峠(距離6.7km・平均7%)
143.5km地点 ボーナスポイント/超級山岳プラトー・デ・グリエール(距離6km・平均11.2%・最大15%)



9月18日(金)第19ステージ → コースマップ
ブールカン=ブレス〜シャンパニョル 166.5km


9月18日(金)第19ステージ ブールカン=ブレス〜シャンパニョル 166.5km9月18日(金)第19ステージ ブールカン=ブレス〜シャンパニョル 166.5km photo:A.S.O.過酷な山岳決戦を終えたマイヨジョーヌ候補たちは、翌日の個人タイムトライアルに向けてリカバリーに励む1日。久々にスプリンターたちに出番が回ってくる。何しろスプリンターたちはこの第19ステージと最終日のパリ第21ステージでの勝利を夢見て、制限時間内に山岳ステージを乗り越えてきた。

とは言え、ステージ後半にはスイス国境に近いジュラ山脈の細かいアップダウンが組み込まれているため、完全なるスプリンターステージとは呼べない。スプリンターチームの力も弱まっていることが予想されるため、逃げ屋が勝利をかっさらってしまうことも考えられる。

大集団のスプリントに持ち込まれる場合は、フィニッシュ地点シャンパニョルの残り1.5km地点で通過する橋と、そこから400mほど続く勾配3〜4%の緩斜面でポジションを落とさないように。残り1.1km地点で最終コーナーを曲がると、そこからほぼ真っ直ぐな平坦路がフィニッシュラインまで続いている。

カテゴリー山岳とスプリントポイント
82km地点 4級山岳シャトー・シャロン峠(距離4.3km・平均4.7%)
117.5km地点 スプリントポイント



9月19日(土)第20ステージ → コースマップ
リュール〜ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユ 36.2km


9月19日(土)第20ステージ リュール〜ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユ 36.2km9月19日(土)第20ステージ リュール〜ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユ 36.2km photo:A.S.O.チームタイムトライアルも設定されない今大会唯一の個人タイムトライアルが、パリ・シャンゼリゼを24時間後に控えた最終日前日に登場する。ティボー・ピノの故郷リュールをスタートする36.2kmのコースは、序盤・中盤・終盤の3パートに分けられる。第1計測地点までの序盤はほぼ真っ平で、続く第2計測地点までの中盤は高低差270mほどの登りと下り。そして終盤は完全に登りとなる。

近年ツール主催者が好んでコースに組み込む1級山岳ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユを駆け上がる。登坂距離5.9km・平均勾配8.5%で、序盤から13%を超える急勾配区間も連発。そして残り400mを切ってから勾配は20%まで跳ね上がる。2019年大会の第6ステージでは、未舗装の激坂が追加されたが、今回はオーソドックスな標高1,035mの高原がフィニッシュとなる。

平坦区間でタイムを稼ぐためTTバイクでスタートし、1級山岳ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユの麓で軽量バイクに乗り換える選手も出てくるだろう。そして注目はもちろん地元の英雄ピノはここで輝けるのかどうか。いずれにしてもこの山岳個人TTを終えた時点でマイヨジョーヌを着ている選手が事実上の総合優勝者。翌日、マイヨジョーヌを着て約500km離れたパリに凱旋する。

カテゴリー山岳とスプリントポイント
36.2km地点 1級山岳ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユ(距離5.9km・平均8.5%・最大20%)



9月20日(日)第21ステージ → コースマップ
マント=ラ=ジョリー〜パリ 122km


9月20日(日)第21ステージ マント=ラ=ジョリー〜パリ 122km9月20日(日)第21ステージ マント=ラ=ジョリー〜パリ 122km photo:A.S.O.45年間不動の終着地、パリ・シャンゼリゼ。総走行距離3,484kmの長旅を終えんとする選手たちを、今年もシャンゼリゼ周回コースが出迎える。パリ郊外のマント=ラ=ジョリーをスタートした一行は、互いの健闘をたたえつつ、マイヨジョーヌチームはシャンパンで乾杯をしつつ、ゆったりとパレード走行ペースでパリの中心部を目指す。

今年もノートルダム大聖堂の近くをかすめてルーヴル美術館の中庭を走り、66km地点でシャンゼリゼ周回コースに入る。マイヨジョーヌチームを先頭にフィニッシュラインを一旦通過したところでアタックがスタート。石畳が敷かれたシャンゼリゼ通りや凱旋門の外周路、ルーヴル前のトンネル、コンコルド広場を含む7kmの周回コースを9周する。

3週間前にニースをスタートした176人のうち、パリにたどり着いた選手は果たして何人いるのだろうか。そしてその中にスプリンターは何人含まれているのだろう。2ヶ月遅れのため例年より2時間ほど早い午後7時ごろ、スプリンターたちによる高速バトルで3週間の戦いに幕が下される(日没は午後7時52分)。

カテゴリー山岳とスプリントポイント
13.5km地点 4級山岳ブル峠(距離2.3km・平均3.6%)
82km地点 スプリントポイント




text:Kei Tsuji in Nice, France

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