マヴィックのアルミホイールである「キシリウム」シリーズ3モデルを乗り比べインプレッション。軽量なローハイトリムがもたらす抜群の操作性と加速性、チューブレスタイヤの優れた乗り心地と転がり性能を有したコストパフォーマンスの高いホイールを紹介しよう。



マヴィックのアルミホイール「キシリウム」シリーズ3モデルを乗り比べマヴィックのアルミホイール「キシリウム」シリーズ3モデルを乗り比べ
1999年に誕生して以来、高性能アルミホイールの代名詞として世界中のサイクリストに愛用されてきたマヴィックの「キシリウム」シリーズ。優れた反応性、軽量性、そして耐久性を有したレーシングホイールとして一目置かれる存在であり、マヴィックの歴史を作り上げた伝統的なモデルとしても知られる。

ディスクロードの普及とともにカーボンホイールの勢いが年々増す中でも、歴史あるホイールブランドのラインアップを支えるベーシックなモデルとしてアルミのキシリウムは健在。キシリウムプロ UST、キシリウムエリート UST、キシリウム USTという3種類の製品をリム/ディスクの両仕様で展開している。

マヴィック キシリウムプロ USTディスクマヴィック キシリウムプロ USTディスク
キシリウムプロはアルミのジクラルスポークを採用。リアは独自のイソパルス組みだキシリウムプロはアルミのジクラルスポークを採用。リアは独自のイソパルス組みだ ニップルのネジ山を直接リムに設けた「FOREテクノロジー」ニップルのネジ山を直接リムに設けた「FOREテクノロジー」

いずれもマヴィックが提唱するチューブレスシステムのロードUSTに対応していることが大きな特徴。ホイールにはチューブレスタイヤのイクシオンプロ USTも標準装備され、他に買い足す必要なく購入から即チューブレス仕様で乗り出すことが可能だ。ETRTO規格に沿って作られたロードUSTはタイヤ交換やメンテナンスも容易で、タイヤのビード上げもフロアポンプで問題なく行うことができる。

今回テストしたディスクブレーキモデルは3種類ともにリムハイト22mm、内幅19mmという設計で、アルミホイールらしいローハイトのルックスに仕上がる。上位2モデルには独自の「ISM4D」を用いており、リムウォールを滑らかに切削することで剛性を維持しつつ軽量化を図っている。リム内周が波打ったような見た目も特徴的だ。対して、ノーマルのキシリウムはよりシンプルな「ISM」加工が施され、リム内周のニップルホール間を削ぎ落とすことで軽量化を実現している。

マヴィック キシリウムエリート USTディスクマヴィック キシリウムエリート USTディスク
リム表面を滑らかに切削した「ISM4D」によって剛性を維持したまま軽量化を図るリム表面を滑らかに切削した「ISM4D」によって剛性を維持したまま軽量化を図る キシリウムエリートは扁平形状のエアロスチールスポークを採用するキシリウムエリートは扁平形状のエアロスチールスポークを採用する

リムの素材は6061アルミ合金より30%も強度が高いとされる独自の「マクスタル」を採用。特殊なアルミ合金リムによって日々のハードな使用に耐えうる耐久性も獲得している。

また、プロとエリートの2モデルはリム自体にニップル用のネジ山を切る「FOREテクノロジー」を採用。タイヤを装着するリムベッドにホールを空けることなくニップルを通すことができ、穴あけによる剛性低下を招くこともなく、チューブレス化する際に必要な気密性確保にも一役買っている。ニップルホールが無いため、FOREテクノロジー採用の2モデルはリムテープを貼ることなくチューブレスタイヤが使用可能。

マヴィック キシリウム USTディスクマヴィック キシリウム USTディスク
リム内周部を削ぎ落とし軽量化を実現する「ISM」加工リム内周部を削ぎ落とし軽量化を実現する「ISM」加工 ノーマルのキシリウムは前後とも2クロスで組まれているノーマルのキシリウムは前後とも2クロスで組まれている

3モデルを比べた時、見た目に大きく違ってくるのがスポークだ。最もグレードが高いキシリウムプロは、アルミ合金を使用したジクラルスポークで組み上げたことが最大の特徴。極太のアルミスポークを用いることで、軽量でありながらレーススペックの剛性感や反応性を実現している。

対して、他の2モデルは一般的なスチールスポークを採用。キシリウムエリートは太さのある平たいエアロスポークとしており、見た目にもハイグレードな雰囲気を醸し出す。スポークの組み方もプロとエリートはリアに独自の「イソパルス」を採用。フリー側をラジアル、反フリー側を2クロスとすることで左右のスポークテンションを近づけ、駆動効率の向上を狙っている。

マヴィック アクシウムエリートEVO USTディスクマヴィック アクシウムエリートEVO USTディスク
ハブはいずれもアルミニウム製で、ボディの太さやフランジの形状などはそれぞれに最適化されている。フリーにはインスタントドライブ360を採用しており、40Tの面ラチェットが9度ごとに細かく噛み合うことで優れたパワー伝達性を発揮してくれる。ディスクローターはセンターロック方式だ。

前後セット価格はキシリウムプロ USTディスクが145,000円(税抜)、キシリウムエリート USTディスクが100,000円(税抜)、キシリウム USTディスクが75,000円(税抜)だ。

さらにエントリーグレードのホイールとして「アクシウムエリートEVO UST」も展開。内幅19mmのワイドリムにイクシオンプロ USTチューブレスタイヤを装備して、58,000円(税抜)という驚異のコストパフォーマンスを実現している。ロードチューブレスを気軽に試してみたいというユーザーにはもってこいのホイールだ。



― 編集部インプレッション

踏み込んだ瞬間に加速するような反応性の高さが印象的なキシリウムプロ踏み込んだ瞬間に加速するような反応性の高さが印象的なキシリウムプロ
今回はアルミリムのキシリウムプロ UST、キシリウムエリート UST、キシリウム USTという3モデルを乗り比べた。最初に結論から言えば、価格が高いモデルは良い、安いモデルは性能が劣る、という感触では全く無く、それぞれ使用シーンやライドスタイルに合わせた味付け(チューニング)が施されているという印象だ。それはつまり、レース向けなのかロングライド向けなのか、そういった違いであると感じた。

"キシリウム"と言えば自分が学連や実業団、はたまたJCRC等のレースを走っていた時には非常に多くのライダーが愛用しており、トレーニングからレースまでガンガン走り倒すような人がこぞって信頼を寄せていたイメージがある。アルミならではの頑丈さ、軽量なローハイトリムによる操作性の良さ、レースレベルの走りに対応した反応性、比較的手が出しやすい価格帯、といったキシリウムの良さは最新モデルでも失われることなく受け継がれている。

黄色のスポークが見た目のアクセントとなったマヴィックらしいデザイン黄色のスポークが見た目のアクセントとなったマヴィックらしいデザイン
キシリウムプロはスピードの上げ下げが頻発するレースシーンで存分に活躍するだろうキシリウムプロはスピードの上げ下げが頻発するレースシーンで存分に活躍するだろう
そんな中、現行キシリウムならではの良さは、共通して「もたつかないシャキッとした軽快な走り」と言えるだろう。3モデルともにリムの剛性と軽量性が秀逸で、踏み込んだ時の反応スピードの速さに気持ち良さを感じた。ローハイトのため巡航していてもエアロ感はないのだが、ダンシングやコーナリングなどバイクを倒すような動作を思い通りにできるのはこのハイトのおかげでもある。

対して、各モデルのリムとスポークの違いがそれぞれの個性に貢献している。ノーマルのキシリウムは3モデルの中で最もしなやかさがあり、アセンブルされている28Cタイヤと相まってかなり快適性が高い。アスファルトがひび割れたような荒れた路面を走っても手に伝わる突き上げ感が極端に少なく、非常に滑らかな走り心地が印象的だった。一定ペースでゆったり走るようなシーンには最適だろう。

スピードと快適性を上手く両立し、足当たりの良さも心地よいキシリウムエリートスピードと快適性を上手く両立し、足当たりの良さも心地よいキシリウムエリート
アルミホイールらしいシンプルなローハイトのおかげで操作性も抜群だアルミホイールらしいシンプルなローハイトのおかげで操作性も抜群だ
そこからキシリウムエリートに乗りかえると、ISM4Dリムによるホイール外周部の軽さに驚かされた。タイヤも25Cがパッケージングされるため、キシリウムとは純粋にリムだけの比較にはならないのだが、漕ぎ出しや挙動は一気に軽くなるため、よりスピードを出して走りたいと思わせてくれる。同じ巡航速度でもリムが軽いキシリウムエリートのほうが使うパワーは少なくて済む印象だ。

最後にキシリウムプロに乗ると、やはりアルミスポークならではのレーシーな乗り味へ一気に様変わりした。ペダリングで言うなら時計の0時~2時の間、パワーをかけた瞬間に加速するような踏み込みとタイムラグなくバイクが反応する感覚が心地よい。かつ、100で踏んだ力がきちんと100の推進力に変わるようなロスの無さはスポークの剛性感によるものだろう。スチールスポークだと若干の逃しがあったのだと感じる一方で、足当たりは硬めになるため、長時間気持ち良く走り続けるには相応の脚力が求められる印象だ。バイクを自分の力で走らせている感覚が楽しいホイールであり、細かなスピードの上げ下げが求められるレースシーンでこそ存分に性能を発揮してくれそうだと感じた。

路面からの突き上げ感が少なく滑らかで快適性の高い乗り心地に仕上がったキシリウム路面からの突き上げ感が少なく滑らかで快適性の高い乗り心地に仕上がったキシリウム
いずれのホイールにもチューブレスタイヤのイクシオンプロ USTが標準装備されるいずれのホイールにもチューブレスタイヤのイクシオンプロ USTが標準装備される キシリウムにはワイドな28Cタイヤが標準装備され快適な乗り味を演出しているキシリウムにはワイドな28Cタイヤが標準装備され快適な乗り味を演出している

もちろん、すべてのホイールにおいてマヴィックのチューブレスタイヤも相当に良い仕事をしてくれた。イクシオンプロ USTは数あるチューブレスタイヤの中でも特に乗り心地とトラクションに優れている印象で、不快な振動をカットしてくれるとともに路面を捉えている安心感も大きい。5Barほどまで空気圧を落としても転がりの良さが大きく損なわれる感覚もなく、長時間のライドで疲労軽減に役立ってくれることだろう。不意の段差でバイクが弾かれるようなこともなく、ハンドルをしっかり保持できるので安全面でも効果を発揮してくれると感じた。このレベルのタイヤが標準装備されるのだから、それだけでも購入する価値は高いと思わせてくれる。

自身のライドスタイルに合わせて選び分けられる三者三様の良さがあった自身のライドスタイルに合わせて選び分けられる三者三様の良さがあった
まとめると、ピュアレーシングなキシリウムプロ、快速ファストライド向けなキシリウムエリート、快適ロングライド向けなキシリウム、という位置付けになるだろうか。三者三様の良さがあり、自身の楽しみ方や用途に応じてチョイスしてほしいラインアップだ。完成車のホイールからアップグレードを検討している人は、ぜひキシリウムシリーズも選択肢にいれておいて損はないはずだ。(CW編集部:村田)



マヴィック キシリウムプロ USTディスク
タイヤタイプ:ロードチューブレスレディ
リム:マクスタル、ハイト22mm、内幅19mm
スポーク:ジクラル、前後24本、フロント-2クロス、リア-イソパルス
ハブ:アルミニウム、インスタントドライブ360、シールドカートリッジベアリング
重量:1,650g(F770g、R880g)
付属タイヤ:イクシオンプロ UST 25mm
価格:145,000円(税抜)

マヴィック キシリウムエリート USTディスク
タイヤタイプ:ロードチューブレスレディ
リム:マクスタル、ハイト22mm、内幅19mm
スポーク:スチール、前後24本、フロント-2クロス、リア-イソパルス
ハブ:アルミニウム、インスタントドライブ360、シールドカートリッジベアリング
重量:1,670g(F770g、R900g)
付属タイヤ:イクシオンプロ UST 25mm
価格:100,000円(税抜)

マヴィック キシリウム USTディスク
タイヤタイプ:ロードチューブレスレディ
リム:マクスタル、ハイト22mm、内幅19mm
スポーク:スチール、前後24本、フロント/リア-2クロス
ハブ:アルミニウム、インスタントドライブ360、シールドカートリッジベアリング
重量:1,690g(F775g、R915g)
付属タイヤ:イクシオンプロ UST 28mm
価格:75,000円(税抜)

マヴィック アクシウムエリートEVO USTディスク
タイヤタイプ:ロードチューブレスレディ
リム:S6000アルミニウム、ハイト22mm、内幅19mm
スポーク:スチール、前後24本、フロント/リア-2クロス
ハブ:アルミニウム、インスタントドライブ360、シールドカートリッジベアリング
重量:1,790g(F825g、R965g)
付属タイヤ:イクシオンプロ UST 28mm
価格:58,000円(税抜)

impression&photo:Yuto Murata
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