ジロ第14ステージは1級山岳モンテグラッパの下りで飛び出したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)が40kmを逃げ切って優勝。ダビ・アローヨ(スペイン、ケスデパーニュ)がマリアローザを獲得した。

スタート地点に登場したフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)スタート地点に登場したフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ) photo:Kei Tsujiいよいよこの日からジロ・デ・イタリア2010は山岳ステージが始まる。最終週の厳しい山岳ステージに比べれば比較的容易なステージだが、カテゴリー1級山岳モンテグラッパが選手の行く手を阻む。

モンテグラッパは146km地点から登り始め、164.2kmの山頂まで18kmのヒルクライム。獲得標高は1501m。平均勾配7.9%で、最大勾配は14%という厳しい山岳。この登りに至るまでは平坦基調なため、レース前半に逃げたい選手のアタックが頻発した。

逃げグループを形成するウィリアム・ボネ(フランス、Bboxブイグテレコム)やフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)逃げグループを形成するウィリアム・ボネ(フランス、Bboxブイグテレコム)やフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ) photo:Riccardo Scanferla逃げが決まったのは39km地点。フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)、ウィリアム・ボネ(フランス、Bboxブイグテレコム)、アレッサンドロ・ビゾルティ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)、スティーブ・クミングス(イギリス、チームスカイ)、マルクス・アイベッガー(オーストリア、フットオン・セルヴェット)、ダミアン・モニエ(フランス、コフィディス)の6人が逃げグループを形成した。

この6人は65km地点で8分15秒のタイム差を生み出すが、その後は集団をコントロールするサクソバンク勢のペースによりタイム差は減少。マリアローザのリッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア)にとってはこの日が総合リーダーについて初めての本格山岳。どこまで走れるかに注目が集まる。

1級山岳モンテ・グラッパで逃げグループから飛び出したアレッサンドロ・ビゾルティ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)1級山岳モンテ・グラッパで逃げグループから飛び出したアレッサンドロ・ビゾルティ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス) photo:Kei Tsujiこの6人は4分ほどの差をもって146km地点のモンテグラッパの登りに差しかかる。ここで一人飛び出したのはビゾルティ。軽快なペダリングで単独先頭をひた走る。追走に回ったのはモニエ。追いつかないが粘りの走りで単独2位を走る。

リクイガス・ドイモの支配的な集団牽引でハイスピードのままモンテグラッパに突入したメイン集団からは、登り始めから選手が脱落していく。いよいよ登りがきつくなると、リクイガスの山岳アシスト、シルヴェスタ・シュミット(ポーランド)がペースメイク。一気にメイン集団は人数を減らしていく。マリアローザのポルトもついていけない。

モンテ・グラッパでメイン集団のペースを上げるリクイガスモンテ・グラッパでメイン集団のペースを上げるリクイガス photo:Kei Tsujiリクイガスの隙をついてアタックをしたのは総合10位につけるブラッドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)。いい勢いで飛び出し、逃げグループから降りてきたクミングスのアシストを受けてひとり集団と差をつけるも、山頂まで残り10kmを切ったところで集団に吸収される。

ビゾルティはひとり粘り強い走りを見せる。しかしメイン集団ではヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)がアタックをし、これにミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)が加わる激しい展開となり、この動きの中でビゾルティは吸収された。

メイングループから脱落したマリアローザのリッチー・ポルト(オーストラリア、サクソバンク)メイングループから脱落したマリアローザのリッチー・ポルト(オーストラリア、サクソバンク) photo:Riccardo Scanferla先頭のニーバリとスカルポーニに、イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)とカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)が加わり、先頭は4人に。アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)とカルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロテストチーム)は遅れ、2人で追走態勢に入る。

モンテグラッパの山頂をトップで通過したのはバッソ。この4人から1分8秒遅れてヴィノクロフとサストレが山頂を通過。マリアローザのポルトは苦しみ4分35秒遅れで山頂をパス。

メイングループのペースを上げるミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)メイングループのペースを上げるミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ) photo:Riccardo Scanferla下りの得意なニーバリは、25kmあるこの下りを利用して抜け出しに成功。見事なダウンヒルテクニックでぐんぐんと残りの3人に対して差をつけていく。その後ろではヴィノクロフがサストレを置き去りに単独で追走を開始。下りでレースに動きが生じる。

25kmある下りを終えて、ゴールまでは平坦路を15km。この平坦路に入った時点でニーバリはエヴァンス、スカルポーニ、バッソに対して40秒、ヴィノクロフに対して1分37秒、追走集団に3分22秒差をつける。ポルトはさらに後ろのグループに残された。

両手を広げてゴールするヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)両手を広げてゴールするヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス) photo:Kei Tsuji平坦路でも力強くペダリングするニーバリに対し、バッソが引かない追走グループはペースを上げ切れない。単独でさらに追走してるヴィノクロフも、疲労がにじみタイム差は逆に開く一方に。

そのままニーバリは単独でゴールまでやってきた。最後はジャージの胸のリクイガスのロゴを指差しアピールしてゴール。このジロではバッソとのダブルエースとして臨んだが、自身の得意とする走りでエースの座を固める総合ジャンプアップを果たした。

23秒遅れのトリオはイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)先頭23秒遅れのトリオはイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)先頭 photo:Kei Tsuji2位集団は残り200mで後方からバッソがスプリントをかけ、スカルポーニとエヴァンスを一蹴。リクイガスのワンツーとなった。ヴィノクロフは結局1分34秒差の5位でゴールした。

総合上位の選手が含まれる集団は2分25秒差でゴール。人数を揃え、平坦区間でタイム差を詰めてきた。ここには総合2位のダビ・アローヨ(スペイン、ケスデパーニュ)が含まれ、マリアローザのポルトは含まれない。

マリアローザを獲得したダビ・アローヨ(スペイン、ケースデパーニュ)マリアローザを獲得したダビ・アローヨ(スペイン、ケースデパーニュ) photo:Kei Tsujiマリアローザの行方はポルトのゴールタイム次第となる。最後まで懸命にスピードを上げたポルトだったが、4分46秒遅れの集団でゴール。この結果、マリアローザはアローヨの手に渡った。ポルトは山岳初日でローザを失う若さを見せたが、まだアローヨから39秒遅れの総合2位に留まっている。



翌第15ステージは、このジロの最難関ステージのひとつ。超級山岳モンテゾンコラン山頂ゴールが設定される。急勾配のこの登りで、総合順位がさらに変動することは間違いない。








ジロ・デ・イタリア2010第14ステージ結果
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)      4h57'51"
2位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)             +23"
3位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)  
4位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)
5位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)     +1"34"
6位 ブラニスラウ・サモイラウ(ベラルーシ、クイックステップ)    +2"25"
7位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)
8位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ)
9位 リーナス・ゲルデマン(ドイツ、チームミルラム)
10位 マルコ・ピノッティ(イタリア、チームHTCコロンビア)

個人総合順位
1位 ダビ・アローヨ(スペイン、ケスデパーニュ)         61h22'54"
2位 リッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア)         +39"
3位 シャビエル・トンド(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)     +2'12"
4位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、リクイガス・ドイモ)    +2'35"
5位 リーナス・ゲルデマン(ドイツ、チームミルラム)          +3'52"
6位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロテストチーム)      +5'27"
7位 ブラッドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)        +6'32"
8位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)        +6'51"
9位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)      +7'15"
10位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)       +7'26"

ポイント賞 マリアロッサ
アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)

山岳賞 マリアヴェルデ
マシュー・ロイド(オーストラリア、オメガファーマ・ロット)

新人賞 マリアビアンカ
リッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア)

チーム総合成績
リクイガス・ドイモ

敢闘賞
イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)

フーガ(逃げ)賞
アレッサンドロ・ビゾルティ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)


text:Yufta Omata
photo:Kei Tsuji,Cor Vos,Riccardo Scanferla