MTBトレイルのあり方にまた新たな動きが見えた。富士山麓を走る常設トレイル「Fujiyama Power-line Trail(フジヤマ パワーライン トレイル)が完成。送電線下の自社所有地を整備し、中級以上を対象としたMTB有料トレイルとして7月23日にオープンした。


オープン初日の7/23には、初日限定の無料走行会が行われ、116名のライダーが集まったオープン初日の7/23には、初日限定の無料走行会が行われ、116名のライダーが集まった photo:Makoto.AYANO
富士山の南麓、静岡県富士市にあるいくつもの送電線を巡る巡視路。鉄塔の点検整備に使う山道をMTB専用の常設有料トレイルに進化させたのがFujiyama Power-line Trail(フジヤマ パワーライントレイル)だ。オープン記念のフリー走行会で実走取材してのレポートで紹介しよう。

スタッフに先導されてコース入口までクルージングで向かうスタッフに先導されてコース入口までクルージングで向かう トレイルビルドを手伝ったCJエリートライダーの鈴木智之さんが案内してくれたトレイルビルドを手伝ったCJエリートライダーの鈴木智之さんが案内してくれた


略称「FPT」と呼ぶこのトレイルは、送電線と鉄塔の持ち主である東京電力パワーグリッド静岡総支社(東電PG)の事業としてスタートした。19の鉄塔をつなぐその巡視路を、予約制にて通年営業を行うMTB常設有料トレイルとしたのだ。利用料金は一日一人4,000円、2名以上のグループから予約を受け付ける。

コース入口へと入る。営業時には地図を渡され、それに沿って向かうコース入口へと入る。営業時には地図を渡され、それに沿って向かう トレイルの入り口にたどり着いた。設置されたカメラで走りに入った人を把握するトレイルの入り口にたどり着いた。設置されたカメラで走りに入った人を把握する


トレイルの全長、というか「走ることになる総距離」は20kmほど。そのうちFPTとなるトレイル部は7.6kmで、200m弱の高低差を下り基調で走っていく。営業時にはスタート地点からトレイル入り口への地図を渡されて、それに沿って向かうことになる。

走り出してすぐのトレイル。草地に見えて溶岩の存在を感じるガレ場だ走り出してすぐのトレイル。草地に見えて溶岩の存在を感じるガレ場だ
コース難易度としては「中級以上の技術と体力を持つライダー向け」だ。下り基調ではあるが、アップダウンを繰り返すので下りっぱなしではない。人工的に走りやすくしているが、ゴツゴツした溶岩のガレ場が続くところもある。富士山の裾野そのものを走るだけのことはある。

スイッチバックの急登。歩いてバイクを押す人が続出スイッチバックの急登。歩いてバイクを押す人が続出
急傾斜のサインがある先は落ちるような下り。テクニックがあれば何とか乗れるが急傾斜のサインがある先は落ちるような下り。テクニックがあれば何とか乗れるが 腰を思いっきり引いてのトライアル的な激下り腰を思いっきり引いてのトライアル的な激下り


山頂を右手に、富士山の裾野を東から西に走っていく。緑のトンネルの中は美しく、スパッとよく開けた場所は爽快だ。

道中には富士山の縦筋とも言える沢がいくつもある。急斜面にはスイッチバックを作り、沢には簡易的な橋を通した。ウッドチップが敷かれた路面はグリップが良く、ブレーキも効く。

見渡しのいいトレイルヘッドから送電線ルートを眺める見渡しのいいトレイルヘッドから送電線ルートを眺める photo:Makoto.AYANO
地元富士市のMTBショップに集った有志によるディグから始まったコース造りは、東電の送電部門が力を注ぎ始めたとたん一気にトレイルになったそうだ。鉄パイプなどの設備を使い、山を通るプロはどのようにマウンテンバイクトレイルをつくったのか。そういったトレイルビルドの観点でコースをみても面白い。

先の林まで続く見晴らしのいいダウンヒルセクション先の林まで続く見晴らしのいいダウンヒルセクション photo:Makoto.AYANO
急斜面はコース上にいくつも出てくるし、岩場の細い箇所も通る。MTBを自在に操れなければ乗ったまま行くのは難しく、テクニックがなければMTBを押して歩く箇所は多い。上級者でも危険を自分で管理して走るスキルと意識が必要だ。そういった意味でMTB初級者向けではない。

つづら折れの急登。テクニックがあればなんとか乗って登れるだろうつづら折れの急登。テクニックがあればなんとか乗って登れるだろう
急な登り返しは乗るのが難しいところも多い急な登り返しは乗るのが難しいところも多い 谷間になっている沢を渡ることも谷間になっている沢を渡ることも


バーム(バンクのついたコーナー)が造られているわけでもないから、スピードを出して下るゴキゲンなコースでもない。ニュアンスが伝えにくいが、MTBパークではなく、北米によくある『管理された自然トレイル』という印象だ。

スイッチバックの下り。テクニックがあれば乗ったまま下れるスイッチバックの下り。テクニックがあれば乗ったまま下れる photo:Makoto.AYANO
7.6kmあるトレイル部分の往路は1時間ほどで走り切れる。トレイル出口には水タンクとブラシを備えた洗車場もある。泥を落として気を取り直し、復路へ。ここから舗装路で登り直すことになる。

見通しの効く直線路を登る見通しの効く直線路を登る photo:Makoto.AYANO
急勾配の下りに自信がなければ押していくのが安全だ急勾配の下りに自信がなければ押していくのが安全だ 走り終わってホッと一息。走りごたえあります走り終わってホッと一息。走りごたえあります photo:Makoto.AYANO


舗装路での登り返しの復路は全長13kmほどだ。標高差で280メートルほどを細い林間の舗装路で登り、多めに登ったところから下り基調の広い広い舗装路でクルージングしながら駐車場に戻る。この復路を走り切る時間は1時間強。上りが嫌いじゃない人なら、後半の下り基調もあわせて復路の走りも楽しめるだろう。

復路の林道ののぼり。それなりに脚を使います復路の林道ののぼり。それなりに脚を使います photo:Makoto.AYANO
走り慣れているライダーが全部走って、1周だいたい2~2.5時間ほどかかりそうだ。筆者が一日楽しむなら、午前に1・2本、午後もう1本ぐらいの感覚である。

スタート地点に下り基調で戻る快走ルートスタート地点に下り基調で戻る快走ルート 富士市のサイクルショップ minzuu bikeの古郡今日史さんもトレイルビルドを手伝ったひとり。ガイドツアーにも応じてくれる富士市のサイクルショップ minzuu bikeの古郡今日史さんもトレイルビルドを手伝ったひとり。ガイドツアーにも応じてくれる


ペダルアップ(自力での上り)がとにかく苦手だと言う人は、復路のつづら折れで登り返す前半部の登りはきつい。そういった方のために、要望に応じてクルマ(ワンボックスカー)での搬送サービスもあるという。MTBごと出発点まで運んでくれるわけだが、常に搬送を行っているわけではなく、搬送台数にも限りがあるが、体力に応じて申し込み時に相談してみるといい。

トレイル出口には水タンクとセルフ洗車キットが用意されていたトレイル出口には水タンクとセルフ洗車キットが用意されていた 希望者はワンボックスカーで搬送してくれる。しかしすべての人に対応するのは難しいとのこと希望者はワンボックスカーで搬送してくれる。しかしすべての人に対応するのは難しいとのこと


個人的に気になるのは冬の走り心地だ。冬場オープンの常設トレイルはなかなか少ないため、オフシーズンのいいMTB遊び場になるかもしれない。それに冬のほうが富士山がよく見える。この日は確認できなかったが、晴れた日なら富士山が望めそうなスポットが1箇所あった。見えればフジヤマがデカく見える距離だ。

送電鉄塔の下を走り抜ける送電鉄塔の下を走り抜ける photo:Makoto.AYANO
そしてこの送電線下は、東電PG社の自社私有地だそうだ。『自社資産を使う新事業』といった社内での公募時に『鉄塔をつなぐ巡視路をMTBコースに』というMTB好き若手社員のアイディアが採用された、というのが誕生の経緯。周囲の地主にも承諾をいただいて、MTB専用トレイルとして通年営業運営することとなった。これが前例になり、各電力会社の新事業例として広がったら楽しい。

静岡県富士市の新たなるスポーツ事業としてのオープンになった静岡県富士市の新たなるスポーツ事業としてのオープンになった オープン記念のフリー走行会。スタッフが先導してコースへと案内してくれたオープン記念のフリー走行会。スタッフが先導してコースへと案内してくれた photo:Makoto.AYANO


フジヤマパワーライントレイルは話題性に富んでいる。『世界遺産の富士山を走れる』『東電の運営するMTBトレイル』『トレイルづくりのノウハウ』etc...。たしかにコースは危険が多くて入門者には難しく、簡単ではない。とはいえ経験豊富なライダーならひょいひょい乗りこなせるだろうし、技を磨けて、気兼ねなく走れるトレイルだ。流行のオリンピック的なダイナミック&ドラマチックなコースとは真逆にあるが、オリンピックに出たいMTBerならこのトレイルを簡単に走り切らなければならない。

近隣のメリダX-BASEでレンタルできるe-MTB近隣のメリダX-BASEでレンタルできるe-MTB お話を伺った飯塚一樹さん(東京電力パワーグリッド)お話を伺った飯塚一樹さん(東京電力パワーグリッド)


MTBを乗りこなせる、あるいは乗りこなしたいひと向けのトレイルだ。登りもあって体力的にも甘くはないが、楽しい。オトナの乗れる仲間たちと来たい。

Fujiyama Power-line Trail 概要

Fujiyama Power Line Trail プロフィールマップFujiyama Power Line Trail プロフィールマップ
Fujiyama Power Line Trail コース図Fujiyama Power Line Trail コース図 ©Fujiyama Power Line Trail
【利用方法】予約制での利用(予約制で2名以上から利用可能となる)。メールにて10日間前までに申し込み、3日前までに走行料金の振込を。詳細はホームページにて。
【走行料金】1日1名 4000円(2名以上より利用可能)
【駐車場】『富士山こどもの国・草原の国 草原の国オートキャンプ場 駐車場』 住所:静岡県富士市桑崎1015
【利用期間】4~9月 : 9:00~17:00(最終スタート目安時 15:00)、10~3月 : 9:00~16:00m(最終スタート目安時 14:00)
【MTBレンタル】:なし 推奨レンタルバイク施設:MERIDA X BASE
【コースプロフィール】トレイル部 全コース長:7.6km 高低差 -185m(下り基調)/舗装林道 全コース長:12.2km= 4.6km 高低差+280m(上り基調)+ 7.6km 高低差 -125m (下り基調)周回時間目安:2時間強
【利用可能施設】FPTの利用者であれば、富士山こどもの国内シャワーやレストランといった園内施設を入園料なく使える。トレイル内は『自然』なので、トイレは駐車場で済ませておきたい。
【上り直しの搬送】申し込みによって可能。

text : 中村浩一郎(E-Spo/静岡県東部地域スポーツ産業振興協議会)
photo:綾野 真
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