雨のシビウツアー第2ステージは精鋭集団によるスプリント勝負に持ち込まれ、最大72,7km/hをマークしたパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が圧勝。中根英登(NIPPOデルコ・ワンプロヴァンス)は山岳区間でメイン集団を牽引する仕事をこなした。



雨に濡れたつづら折れの峠道を進む雨に濡れたつづら折れの峠道を進む (c)Turul Ciclist Al Sibiului/Focus Photo Agency
シビウツアー2020第2ステージ コースプロフィールシビウツアー2020第2ステージ コースプロフィール (c)Turul Ciclist Al Sibiuluルーマニアを舞台に2つのワールドチーム(ボーラ・ハンスグローエ&イスラエル・スタートアップネイション)や、NIPPOデルコ・ワンプロヴァンスなど3つのプロチームが集うシビウ・サイクリングツアー(UCI2.1)。その第2ステージはプロローグの舞台となった古都シビウを発着する181km。コース全体に小さなアップダウンが続くスプリントステージだが、後半50kmに2箇所用意された3級山岳でレースが動いた。

スタート直後の3級山岳で先着したのは総合4位のレミ・ロシャス(フランス、NIPPOデルコ・ワンプロヴァンス)。その後コンチネンタルチーム勢による5名の逃げが生まれ、メイン集団ではワールドチームがコントロールする展開となる。途中激しい雨が降り注ぐコンディションの中、レース開始後1時間の平均速度は50.8km/hにも上がった。

メイン集団では途中2度の踏切停車でリード拡大を許すシーンもあったものの、レース後半にに入ってNIPPOデルコ・ワンプロヴァンスもペースアップに協力し、順調に先頭グループとの差を詰めていく。

沿道の牛がレースを見守る沿道の牛がレースを見守る (c)Turul Ciclist Al Sibiului/Focus Photo Agency
走りながらチームメイトのバイクに注油するパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)走りながらチームメイトのバイクに注油するパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) (c)Turul Ciclist Al Sibiului/Focus Photo Agency
激しい雨の中、逃げグループとの差を詰めていく激しい雨の中、逃げグループとの差を詰めていく (c)Turul Ciclist Al Sibiului/Focus Photo Agency
距離2.4km、平均勾配5.7%の最終山岳に入ると集団先頭に立った中根英登(日本、NIPPOデルコ・ワンプロヴァンス)がハイペースを刻み、この動きで逃げグループを吸収。中根のペースを引き継いだボーラ・ハンスグローエが先頭を固めて頂上を越えると、ハーフウェットのダウンヒルでいくつもの落車が発生したため集団が分裂。先頭では総合首位パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)らが含まれた15名ほどの精鋭集団が飛び出す形となった。

形成優勢となったボーラ勢が逃げ切りを狙ったものの、ルディ・バルビエ(フランス)で勝利を狙うイスラエル・スタートアップネイションが後続グループを引き上げ、合流。40名弱に人数を戻した集団が入り乱れながら集団スプリントを目指した。

フィニッシュ前1kmではヴィーニザブ・KTMが集団先頭に人数を集めたものの、最終ストレートに入るとボーラとイスラエルが隊列を崩しながらスプリントになだれ込む。「完全にごちゃ混ぜのスプリント勝負だった。誰の後ろにつくべきか判断が難しかった」と振り返るパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が残り300mから踏み込み、後方からはバルビエが応戦。しかし好ポジションから突き進んだアッカーマンは、ライバル勢を寄せ付けずに先着。ボーラ・ハンスグローエがステージ2連勝を収めた。

後方を確認するパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)後方を確認するパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) (c)Turul Ciclist Al Sibiului/Focus Photo Agency
今季3勝目を射止めたパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)今季3勝目を射止めたパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) (c)Turul Ciclist Al Sibiului/Focus Photo Agency
「復帰戦で勝利を飾ることができて本当に嬉しい。でも今日は全て予定通り運んだわけではなかったんだ。リードアウト担当のゼーリッヒが残り25kmで落車して、その後(総合首位)コンラッドも登りでパンク。しかしそれでもチームとして集結し勝利を掴むことができた。今日は僕のスプリントも完璧。いい1日になった」と、ブエルタ・ア・ムルシア、UAEツアー第1ステージに続くシーズン3勝目を挙げたアッカーマンは語っている。

STRAVAデータによれば、アッカーマンは1465ワットでスプリントを開始し、その後1623ワットまで踏み込んで最大スピードの72,7km/hに到達。その後1200ワット前後を維持し平均71km/hほどでバルビエらを抑えきった。最後はフィニッシュ前で足を止めるほどの圧勝だった。

総合上位陣はほぼ全員先頭グループでフィニッシュし、コンラッド以下トップ5の総合順位変動はなし。チームメイトと共に笑顔でフィニッシュラインに戻った中根は自身のTwitterに「最初の2時間は冷たい雨に苦しんだけど何とか耐え凌ぎ、みんなのジャケット回収しつつラスト40km地点から1回集団牽引に加わり、今日のステージで最後のKOMの麓から全開で牽引しろと指示があったので昨日の鬱憤を晴らすべく全ての力をぶつけてきた。グロちゃんが4位!!惜しかったけど、ありがとう!」、「エースを任され失敗してしまったら次はチームメイトの為に全力を尽くす。レースのクラスによるけど欧州でエースを任されまた任された仕事をしっかりこなす事が少しずつだが出来るようになってきた。しかしこれはとても難しい。とても苦しい。でも出来た時のチームメイトからの感謝の言葉は本当に嬉しい」と綴っている。

シビウツアーの最終日は個人TTと短距離ロードレースの2ステージ制で行われ、第3Aステージは12.5kmの登坂個人タイムトライアルだ。
シビウツアー2020第2ステージ結果
1位 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 3:58:58
2位 ルディ・バルビエ(フランス、イスラエル・スタートアップネイション)
3位 リッカルド・スタッキオッティ(イタリア、ヴィーニザブ・KTM)
4位 エドゥアルド・グロス(ルーマニア、NIPPOデルコ・ワンプロヴァンス)
5位 アダム・トゥパリック(チェコ、エルコフ・カスパー)
個人総合成績
1位 パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) 8:54:52
2位 グレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) 0:03
3位 マッテオ・バディラッティ(スイス、イスラエル・スタートアップネイション) 0:53
4位 レミ・ロシャス(フランス、NIPPOデルコ・ワンプロヴァンス) 1:20
5位 ルーカ・ワッケルマン(イタリア、ヴィーニザブ・KTM) 2:40
その他特別賞
山岳賞 グレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)
ポイント賞 ルディ・バルビエ(フランス、イスラエル・スタートアップネイション)
ヤングライダー賞 ペトル・ケレメン(チェコ、CCCデヴェロップメントチーム)
チーム総合成績 ヴィーニザブ・KTM
text:So.Isobe

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