レース形式は変わっても強い者が大差をつけた。今年から一斉スタート方式のレースになった富士山ステージは、山岳リーダーのクリスティアーノ・サレルノ(デローザ・スタックプラスチック)が2位ミズロフに1分15秒差をつけ優勝。同時に総合リーダーの座についた。

ゴール地点に見事な視界が開けるゴール地点に見事な視界が開ける photo:Hideaki.TAKAGI

5km地点、チームメイトに守られる鈴木真理(シマノレーシング)5km地点、チームメイトに守られる鈴木真理(シマノレーシング) photo:Haruo.FUKUSHIMA5月21日(金)、静岡県小山町のふじあざみラインでツアー・オブ・ジャパン第5ステージ富士山が行われた。
昨年までは個人TTとして行われてきたこのステージ。今年はマスドスタートのロードレース形式となり、昨年までの「分差」でなく「僅差」の戦いになると見られていた。

11.4kmで標高1200mを上る厳しいヒルクライムコース。TTでのコースレコードは昨年のセルヒオ・パルディージャ(スペイン、カルミオーロ・Aスタイル)のマークした40分21秒。それ以前は今回出場しているアンドレイ・ミズロフ(カザフスタンナショナルチーム)がカペック所属時代に出した40分27秒だ。なお狩野智也(ブリヂストン・アンカー)のベストタイムは42分31秒だ。

5km地点、4位集団5km地点、4位集団 photo:Haruo.FUKUSHIMA10時ちょうどに85人がスタート。最初の直線区間をブリヂストン・アンカーなどがハイペースで引く。その結果20人ほどの先頭ができ、後続はさらにいくつかのグループに分裂する。

先頭はミズロフ、アレクサンドル・シュセモイン(カザフスタンナショナルチーム)、サレルノの3人に。さらには佐野淳哉とヴィンツェンツォ・ガロッファロ(ともにチームNIPPO)と福島晋一(クムサン・ジンセンアジア)らが続く。狩野はこの後方だ。

中間ポイントを過ぎでサレルノがペースを上げてカザフ2人を離すと、あとはゴールまで一人旅になった。並走するチームカーの監督から檄を受けながら上り、独走で優勝を飾った。タイムは40分49秒。サレルノは奈良ステージと合わせてこれがTOJ2勝目だ。

5km地点、先頭のクリスティアーノ・サレルノ(デローザ・スタックプラスチック)とカザフ2人5km地点、先頭のクリスティアーノ・サレルノ(デローザ・スタックプラスチック)とカザフ2人 photo:Haruo.FUKUSHIMA5km地点、2番手を走るアレクサンドル・シュセモイン(カザフスタンナショナルチーム)5km地点、2番手を走るアレクサンドル・シュセモイン(カザフスタンナショナルチーム) photo:Haruo.FUKUSHIMA5km地点、3番手を走るアンドレイ・ミズロフ(カザフスタンナショナルチーム)5km地点、3番手を走るアンドレイ・ミズロフ(カザフスタンナショナルチーム) photo:Haruo.FUKUSHIMA


4位マイケル・マシューズ(チームジャイコ・スキンズ)と5位狩野智也(ブリヂストン・アンカー)4位マイケル・マシューズ(チームジャイコ・スキンズ)と5位狩野智也(ブリヂストン・アンカー) photo:Hideaki.TAKAGI2位には1分15秒遅れてミズロフがゴール。狩野は中盤から追い上げ、43分30秒の5位でゴール。福島晋一(クムサン・ジンセン・アジア)は6位43分56秒だった。

これで個人総合リーダーは鈴木真理(シマノレーシング)からサレルノの手に移った。
サレルノは下馬評どおりの強さを見せ、山岳リーダーの赤いジャージにふさわしい走りを見せた。カザフスタンの2人もタイム差をつけられたもののこの位置は順当なところだろう。

驚くのは4位のマイケル・マシューズ(チームジャイコ・スキンズ)だ。19才のスプリンターは驚くほどのヒルクライム能力を見せ、世界レベルの選手の底力を示した。

6位福島晋一(クムサン・ジンセンアジア)と7位ヴィンツェンツォ・ガロッファロ(チームNIPPO)6位福島晋一(クムサン・ジンセンアジア)と7位ヴィンツェンツォ・ガロッファロ(チームNIPPO) photo:Hideaki.TAKAGIいっぽうで振るわなかったのはチームNIPPOの2人。一昨年の富士山ステージ覇者ガロッファロも、昨年9位の佐野も、ともに1分前後タイムを落としている。これは序盤のハイペースが影響したようだ。

また西薗良太(大学選抜ジャパン)は46分41秒で21位に。長沼隆行(宇都宮ブリッツェン)は47分51秒で26位、リーダージャージの鈴木真理は大きく遅れ、50分01秒で42位という意外な結果に終わった。これら結果の振るわなかった選手たちは一様にうつむき加減で、チームスタッフでさえ声をかけにくいほど。

上りしか無いこのコース。スピードは時速15km前後しか出ないため、先頭の空気抵抗の影響が小さい。
9位佐野淳哉(チームNIPPO)9位佐野淳哉(チームNIPPO) photo:Hideaki.TAKAGIマスドスタート方式になって、むしろ他者のペースに乱された選手が結果的にタイムを落としたようだ。
今年のTOJもやはり富士山ステージで総合優勝争いの行方が見えてきた。

次は伊豆ステージだ。アップダウンしかない過酷なコースで、タイム差をつけられたカザフ、ジャイコ、クムサン、ニッポ、シマノ、ラファらは、デローザ・スタックプラスチック勢に対して総攻撃を仕掛けるだろう。期待されながらも富士山で結果を出せなかった選手たちが動くのは必至。ステージ優勝狙いの動きと、逆転の動きに注目だ。


「明日は総合を守れたらいい」 ステージ優勝&総合リーダーのサレルノ
このステージはできれば勝ちたいと考えていた。今まで見た中で一番美しい富士山で勝てて嬉しい。明日はチームメイトに期待する。仮に違うチームが優勝しても(総合を守れたら)構わないと考えている

「優勝を狙っていたので残念」 狩野智也(ブリヂストン・アンカー)
総合争いは清水都貴で考えて、自分はこのステージを狙った。序盤は自分のペースを守ったが、都貴が離れたので、前のグループを見ながら上げた。
優勝を狙っていたので残念だ。自分のベストタイムにも遠い。リアは22Tや23Tあたりをよく使った。自分のタイムも悪いが、昨年韓国の選手が40分台で上ったりしている。日本の選手は危機感を持って深刻に受け止めないといけないと思う。明日以降もチーム全体で攻める気持ちでいきたい。

ステージ表彰ステージ表彰 photo:Hideaki.TAKAGI

総合リーダーのクリスティアーノ・サレルノ(デローザ・スタックプラスチック)2位に1分45秒差をつけている総合リーダーのクリスティアーノ・サレルノ(デローザ・スタックプラスチック)2位に1分45秒差をつけている photo:Hideaki.TAKAGI第5ステージ富士山 11.4km 結果 
1位 クリスティアーノ・サレルノ(デローザ・スタックプラスチック)40分49秒
2位 アンドレイ・ミズロフ(カザフスタンナショナルチーム)+1分15秒
3位 アレクサンドル・シュセモイン(カザフスタンナショナルチーム)+1分28秒
4位 マイケル・マシューズ(チームジャイコ・スキンズ)+2分39秒
5位 狩野智也(ブリヂストン・アンカー)+2分41秒
6位 福島晋一(クムサン・ジンセンアジア)+3分07秒
7位 ヴィンツェンツォ・ガロッファロ(チームNIPPO)+3分15秒
8位 ナザル・ユマベコフ(カザフスタンナショナルチーム)+3分51秒
9位 佐野淳哉(チームNIPPO)+4分14秒
10位 平塚吉光(シマノレーシング)+4分17秒

個人総合時間賞
1位 クリスティアーノ・サレルノ(デローザ・スタックプラスチック)10時間59分51秒
2位 アンドレイ・ミズロフ(カザフスタンナショナルチーム)+1分45秒
3位 アレクサンドル・シュセモイン(カザフスタンナショナルチーム)+2分15秒
4位 マイケル・マシューズ(チームジャイコ・スキンズ)+2分52秒
5位 福島晋一(クムサン・ジンセンアジア)+3分10秒
6位 ヴィンツェンツォ・ガロッファロ(チームNIPPO)+3分22秒
7位 佐野淳哉(チームNIPPO)+4分10秒
8位 ナザル・ユマベコフ(カザフスタンナショナルチーム)+4分51秒
9位 狩野智也(ブリヂストン・アンカー)+5分17秒
10位 鈴木譲(シマノレーシング)+5分45秒

個人総合ポイント賞
1位 マイケル・マシューズ(チームジャイコ・スキンズ)52ポイント
2位 鈴木真理(シマノレーシング)50ポイント
3位 クリスティアーノ・サレルノ(デローザ・スタックプラスチック)34ポイント

個人総合山岳賞
1位 クリスティアーノ・サレルノ(デローザ・スタックプラスチック)36ポイント
2位 アレクサンドル・シュセモイン(カザフスタンナショナルチーム)18ポイント
3位 アンドレイ・ミズロフ(カザフスタンナショナルチーム)14ポイント

団体総合時間賞
1位 カザフスタンナショナルチーム 33時間08分18秒
2位 チームNIPPO +06分01秒
3位 シマノレーシング +07分20秒

photo:高木秀彰、福島治男 text:高木秀彰

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