マグラがリリースする電動ドロッパーポスト「VYRON eLECT(ヴァイロン・エレクト) 」を長期インプレッション。 取り付け自由度が高く、電子制御によるワンタッチ操作で伸縮可能なドロッパーは、オフロードライドの可能性を広げる逸品だ。



マグラ VYRON eLECT ドロッパーポストマグラ VYRON eLECT ドロッパーポスト photo:Makoto.AYANO
MAGURA社は1893年創業のドイツの老舗機械部品メーカー。BMWが1923年に最初のモーターサイクルであるR32を生産したときからずっとブレーキや油圧クラッチ、ハンドル関連のパーツを供給し続けているメーカーだ。サイクル界でもディスクブレーキやサスペンション等の製品に定評があり、とくにMTB用のディスクブレーキの扱いやすさ、ラインナップの豊富さは高い評価を得ている。

今回紹介する「VYRON eLECT(ヴァイロン・エレクト) 」は、リモートコントロールに電波を使用したスマートな電動ドロッパーシートポストだ。

リモコンはゴムのOリングでどこにでもつけることができるリモコンはゴムのOリングでどこにでもつけることができる マイクロUSBによる給電ポートと電源のON/OFFスイッチが防水カバーに隠れるマイクロUSBによる給電ポートと電源のON/OFFスイッチが防水カバーに隠れる


マグラのeLECTワイヤレスリモートコントロールシステムとは、サスペンションユニットの減衰力などをコントロールする技術だが、そのeLECTシステムをドロッパーポストに応用したのがこの製品の目玉的テクノロジーだ。コントロールの通信に電波を使用するため、本体を操作するためのケーブル類が無く、ドロッパーポストの伸縮作動はボタン操作により完結する。

シートポストの固定と開放(伸縮)は、内蔵されたモーターと油圧バルブによって行われる。ポスト内には油圧ダンパーとバルブ開閉用のモーター、充電式バッテリーが内蔵され、ハンドルなどに設置したリモコンのボタンを押すことで電波により通信。無線式コントロールを可能にしている。

ハンドル等に設置するリモコンにはボタン電池が使用され、ボタンのクリックによりポスト本体と通信を行う。本体とスイッチ(従来品ならハンドル部のレバー)をつなぐケーブル類が無いため、ハンドルやフレーム上のケーブル配線を行う必要は一切ない。

通信やバルブ作動を司る心臓部はヤグラ後部にある通信やバルブ作動を司る心臓部はヤグラ後部にある ポスト径は30.9mmと31.6mmの2種類が用意され、それぞれ3種類のストローク長から選べるポスト径は30.9mmと31.6mmの2種類が用意され、それぞれ3種類のストローク長から選べる


ポストはストローク量150mm・125mm・100mmの3タイプの長さがラインアップされ、それぞれの範囲内でサドル高を調整することができる。

ポスト径は30.9mmと31.6mmの2種類が用意される。内臓のダンピングオイルにはMAGURAロイヤルブラッドミネラルオイルが使用され、長期間メンテナンスフリーで使用できるという。

Design&Innovation Award金賞を含め、多くの賞に輝いているVYRONドロッパーシートポストを長期インプレした。



インプレッション

マグラ VYRON eLECT  ケーブル類は一切なく、抜き挿しもノーマルポストと変わらないマグラ VYRON eLECT ケーブル類は一切なく、抜き挿しもノーマルポストと変わらない photo:Makoto.AYANO
マウンテンバイクやグラベルバイクの多様化によってますます使用シーンが広がるドロッパーシートポスト。サドル高を上下させることでライディングの幅を広げるアイテムだが、下り系オールマウンテンライドのみならず最近はクロスカントリー系レースでも装着率が高まっている。重量増があったとしてもサドルを下げることで重心コントロールの幅が広がるため、ダウンヒルへの対応力を大幅に高めることができる。もはやサスペンション同様に不可欠なパーツになっていると言っても過言ではない。

VYRON eLECT(ヴァイロン・エレクト)は2016年に発表されたが、日本での販売は電波法規制への対応に時間がかかったため2019年に開始された。昨年8月に購入したモデルをプライベートなライドを含む長期間使用してのインプレを記そう。

クロスカントリー&トレイルライドでもドロッパーを効かせるとダウンヒルへの対応力は大きく上がるクロスカントリー&トレイルライドでもドロッパーを効かせるとダウンヒルへの対応力は大きく上がる photo:gakuto.Fujiwara
内蔵バルブを作動させるバッテリーはヤグラ後部にある通信部に備わったマイクロUSBコネクタにより充電を行う。本体はエア式サスペンションのような構造のため、エアはサスポンプ等で注入する。指定空気圧は13〜15気圧。

ポスト長の選択は、ストローク量とあわせて挿入した際の長さの幅を計算して選ぶ。参考情報として、ポストの部の長さはカタログデータで240㎜。ポストを最も深く挿入して最も縮めた場合、出しろ(シートチューブ端からシートレールクランプまでの高さ)は56㎜となる。そしてシートピラーの最深部までの挿入部分の深さを差し引きして選ぶのがコツだ。なかでも挿入深さはシートの高さに直接関わってくる重要なポイント。シートチューブ内にサス固定機構やボトルケージのネジなど、突起物による挿入制限も調べてから長さを決めたい。まず手持ちのノーマルポストを挿して測るのがいいだろう。

ハンドル右グリップ部に来るようにセット。最新のシマノMTBコンポとの相性も良いハンドル右グリップ部に来るようにセット。最新のシマノMTBコンポとの相性も良い
リモコンにはCR2032電池を内蔵し、ハンドル等への装着はゴム製のOリングにて取り付ける。このシンプルな方法によってハンドル等のどこにでも取り付けが可能だ。

初期設定はまずリモコンと本体の同期から。マニュアルに沿ってボタンを操作し、ランプの色が変わることで通信状態を確認しながら進めると、難なく同期完了。エアを注入する前の状況では伸縮しないため同期の完了が判りにくいが、リモコンのボタンを押してポスト内部で「ジッ、ジー」という微音がすれば弁の開閉が行われている。

シマノの新型XTR採用のXC系マウンテンバイク、スコットSPARKに取り付けてみる。ポスト本体のバイクへの取り付けはノーマルポストと変わらない。もっとも伸びた状態で自分の最高サドル高に合わせて取り付けるのが、まずは一般的な取り付け方だ。

内部で「ジッ、ジー」という微音がすれば、弁の開閉が行われている内部で「ジッ、ジー」という微音がすれば、弁の開閉が行われている 給電ポートとスイッチのある心臓部は防水カバーで覆われる給電ポートとスイッチのある心臓部は防水カバーで覆われる


リモコンはハンドル左側に設置してみる。シマノの新型12スピード仕様のXTRの場合、変速レバーは左には無いが、スコットSPARKの独自機構であるサスストローク操作レバーが取り付けられているため、取り付けの制約は右と同様にある。しかりリモコンの取り付けはクランプバンド等を用いず、ゴムのOリングを使用するだけであるため、自由度が非常に高い。XTRのI-SPEC EV構造採用レバーとの相性は良く、隙間を利用してリモコンのスイッチ部が親指を置く丁度良い位置にもってくることができた。

作動はワンタッチだ。ボタンを押せば内蔵の弁が0.5秒開き、ポストが伸びる。体重をかけることで縮めるのは一般的なドロッパーポスト同様だ。リモコンのボタン操作は軽いクリックで可能。作動まで0.5秒ほどのタイムラグがあるため、ケーブル式のような即レスポンスではない。しかしスイッチを押す動作が指で軽く触れるだけで完了するため、グリップを強く握らなければいけないダウンヒル中などのシーンでもストレス無く操作できるのはメリット。指のプッシュ操作から腰を浮かせるタイミングに馴れるのがコツだ。

本体重量は595gと、一般的なケーブル式ポストと比べて重めの数値だが、これはケーブルや機械式の操作レバーを含まないことを計算に入れると、その差は大きくない。

ライバル製品としてはスラムの電動ドロッパー「Reverb AXS」(108,000円・税別)がある。AXSシステム内で使用すること、そして作動スピードやレスポンスに関してはスラムに分があるようだ。Reverb AXSのリモコン部はシフター同様に大きく、固定に場所を取るためVYRONのほうが取り付けは簡単だと言える。そして価格もリーズナブルだ。

作動はリモコンボタンに軽くワンプッシュするだけだ作動はリモコンボタンに軽くワンプッシュするだけだ
しかしVYRONのリモコンの取り付けは、ゴムのOリングで留めるだけという簡単なぶん、脱落の可能性があることに注意したい。藪に突っ込んだ際に外れかけたことがあり、「もし紛失してしまったら」と肝を冷やしたことがある。リモコンには付属の保護カバーを取り付け、紐ストラップを通しておくなど工夫しておきたい。

無線となることでフレーム形状による取り付けの制約がほとんど無く、シートポスト径さえ同じなら別のバイクにも簡単に挿し替えできるのはメリット。筆者の場合はMTB2台とグラベルロードにも使い回している。なんといってもリモコンの付け替えもOリングのみのため、ドロップハンドルなどでも都合よく取り付けられる自由度がある。ドロッパーの使用頻度の低いバイクであれば、下りでサドルを下げる必要があるケースでのみ使用するなど、TPOに応じた使い回しが可能だ。

スイッチ操作から0.5秒で作動する。一呼吸おく感じだスイッチ操作から0.5秒で作動する。一呼吸おく感じだ
長期間使用していると、経験することになるのはライド中のバッテリー切れだ。電池残量を大まかに確かめることはでき、作動の反応スピードが落ちることでも判別できるのだが、その兆候から作動停止まではすぐだ。過放電によるバッテリー性能低下を防ぐ意味でも1ヶ月に1度の充電が推奨されているので、これを守ればライド中の電池切れはないだろう。

本体の電池のもちは作動400回ぶんとデータにあるが、なお不測の事態は突然やってくる。むしろ気をつけたいのはリモコンの電池切れだ。電源のボタン電池はコンビニでの入手が可能なポピュラーなものだが、予備を携帯しておくと安心だ。筆者は予備のボタン電池を防水袋に入れてサドルの裏側に貼り付けて常備している。

eLECTシステム心臓部は防水機構になっているが泥や水を被りやすいため、700Cチューブを切ったもの被せて防汚カバーにしているeLECTシステム心臓部は防水機構になっているが泥や水を被りやすいため、700Cチューブを切ったもの被せて防汚カバーにしている
また、心臓部にあたるUSB給電ポートやスイッチ類は防水パッキンに覆われているが、もっとも泥や水を被りやすい場所にあるためゴムチューブを切ったものを被せて防水・防汚としている(上)。これはTIPSとしてぜひオススメしておきたい。



マグラ VYRON ELECT データ
・ストローク量:150mm / 125mm / 100mm
・全長:446mm(150mm) / 421mm(125mm) / 396mm(100mm)
・重量:595g
・取り付け時長さ:56mm ~ 206mm(150mm) / 181mm(125mm) / 156mm(100mm)
・必要(最低)挿入長:120mm
・最大挿入長:240mm
・油圧制御/圧縮エア伸長式(エアは米式バルブで再充填可能)
・サドルクランプ:2本ボルト
・適合シートポスト内径:30.9mm / 31.6mm
・適合充電コネクタ:マイクロUSB
・充電所要時間:約3時間
・満充電時動作可能回数:約400回
・電波法による技術適合証明取得済

品番
#2701423 適合径30.9mm 可変長150mm
#2701424 適合径30.9mm 可変長125mm
#2701425 適合径30.9mm 可変長100mm
#2701426 適合径31.6mm 可変長150mm
#2701427 適合径31.6mm 可変長125mm
#2701428 適合径31.6mm 可変長100mm

付属品
・ELECTリモートコントローラー
・ELECTリモートキャップ
・リモコン取り付け用Oリング2種
・リモコン台座ゴム
・充電用マイクロUSBケーブル
・取扱説明書(英語・日本語)

価格:68,000円(税別)

photo&text:Makoto.AYANO
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