NTTサイクリングのヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー)が母国メディアのインタビューに答え、新型コロナウイルスの影響でレースが中断していた期間に行った、標高4,700mを再現した低圧・低酸素テントでのトレーニングについて語った。



ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、NTTプロサイクリング)ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、NTTプロサイクリング) photo:CorVos
現アワーレコード保持者のヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、NTTプロサイクリング)は母国メディアのSporzaに対し、外出自粛期間中に高地の環境を再現したテントでの疑似高地トレーニングについて「数週間を高地テントで過ごすことでとても強くなれる。赤血球をたくさん作り出すことでEPOを使用した選手のような気分になれるんだ」と語った。

カンペナールツが再現したのは標高4,700mの世界。一般的に効果があるとされる標高1500~3000mよりも遥かに高い環境にした理由をこう話す。

「たしかに(4,700mは)とても高い。医学的にもこの高さが命の危険がないギリギリと言われている。これ以上高いと負荷が大きすぎて身体が壊れ始めてしまう。でも4,700mは、十分なエネルギーを保ちつつ(身体が)赤血球を作り出す最適な高さなんだ」

3週間をこの低圧・低酸素テントで過ごしたカンペナールツは、その期間中は週8時間しか自転車に乗れなかった言う。しかし、外出が制限され高地合宿が行えず、ベルギーの海面に近い標高に住むカンペナールツにとって満足のいく効果が出たという。

昨年アワーレコードを更新したヴィクトール・カンペナールツ(当時ロット・スーダル)昨年アワーレコードを更新したヴィクトール・カンペナールツ(当時ロット・スーダル) photo:Ridley
多くのプロ選手にとって定番となっている高地トレーニング。標高の高い山岳でのレースへの順応の他に、酸素濃度が薄い環境で過ごすことで血中の酸素濃度が低下し、身体が環境に適応するため赤血球数やヘモグロビン濃度が増加するといった効果がある。

近年はクライマーだけではなく、カンペナールツのようなタイムトライアルを得意とする選手や、スプリンターのペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)も、2016年からアメリカで定期的に高地トレーニングを行っている。

特にグランツールで総合順位を狙う選手たちにとって高地合宿は不可欠になっており、トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)は外出自粛期間中の4月のインタビューで「高地合宿を行えなければ、ツールでの勝利はあり得ない」「もしこの夏に高地合宿が許されないのならば、ツールに出場したとしても(総合順位とは)異なる考え方や目標を持つことになるだろう」と、その重要性を強調している。

8月1日から再開を予定しているワールドツアー。カンペナールツが目標とするのは9月下旬予定の世界選手権個人タイムトライアルと、3つの個人TTが設定されているジロ・デ・イタリア(10月3日開幕予定)だ。

疑似高地トレーニングをこなし、外出自粛期間が明けて屋外練習に励むカンペナールツは「この計画は成功だった。今週、標高を下げてまた行う予定だ」と、レース再開に向け再び低圧・低酸素テントの利用を語っている。

text:Sotaro.Arakawa

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