平坦基調のサンホセ~モデストの195.5kmで行なわれた第4ステージは予想通り集団スプリントに持ち込まれ、フランチェスコ・キッキ(イタリア、リクイガス)がカヴェンディッシュ、JJアエドを下して大金星のステージ勝利を挙げた。

この日も前半は厳しい山岳の続くステージだ。コースはスタートしてすぐにシエラ・グランデへの標高588mへの登りが10km続く。
山脈の脊梁を越えるようにして長く下り、再びハミルトン山を巻くように上る。コースの約半分は山がちだが、残り83kmは下りと平坦になるため集団コントロールがしやすく、勝負はゴールスプリントに持ち込まれる可能性が高いとの予想だ。天候はカリフォルニアらしい晴天に恵まれた。(まずはレースを取り巻く風景をどうぞ)

リーダージャージを着たザブリスキーとジョナサン・ヴォーターズ監督リーダージャージを着たザブリスキーとジョナサン・ヴォーターズ監督 (c)CorVos総合5位につけるマーク・デマール(ユナイテッドヘルスケア・マキシス)総合5位につけるマーク・デマール(ユナイテッドヘルスケア・マキシス) (c)CorVos

レディオシャックの巨大なバスには人だかりができるレディオシャックの巨大なバスには人だかりができる (c)CorVosレディオシャックのヨハン・ブリュイネール監督はアメリカ人にも英雄だレディオシャックのヨハン・ブリュイネール監督はアメリカ人にも英雄だ (c)CorVos


ジェリーベリーのサポートカーは可愛い!ジェリーベリーのサポートカーは可愛い! (c)CorVos天使が登場天使が登場 (c)CorVos


カウレディー登場カウレディー登場 (c)CorVosレディオシャックの応援ボードレディオシャックの応援ボード (c)CorVos


フランチェスコ・キッキ(リクイガス)に用意されたスペシャルバイクフランチェスコ・キッキ(リクイガス)に用意されたスペシャルバイク (c)CorVosサインを求めるファンたちサインを求めるファンたち (c)CorVos

スタートして行く集団スタートして行く集団 (c)CorVos

さっそくゼロキロメートル地点のアクチュアルスタートからアタックが開始され、逃げが決まった。逃げたのは8人、リストは以下だ。

ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)
ユルゲン・ファンデワール(ベルギー、クイックステップ)
ロバート・ブリットン(アメリカ、ビッセル)
ジェレミー・パワーズ(アメリカ、ジェリーベリー)
ライアン・アンダーソン(ケリー・ベネフィット)
デヴィデ・フラッティーニ(イタリア、チームタイプワン)
スコット・スチュアート(アメリカ、チームタイプワン)
マックス・ジェンキンス(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア・マキシス)


リブストロングのメッセージボードを掲げる観客リブストロングのメッセージボードを掲げる観客 (c)CorVos連日のコンチネンタル勢の抵抗に加え、今日はラボバンクのボームとクイックステップのファンデワールの2人のプロツアーライダーが加わっている。このなかで総合成績が最もいいのはボームの1分47秒遅れ・総合26位だ。

このなかで最後の山岳ポイントを越え、最終的にラスト80kmまで残ったのは上記リストの上から4人。ボーム、ファンデワール、ブリットン、パワーズだ。

コース後半は下りと平坦基調の80km。メイン集団はゴールスプリントに持ち込みたいチームによる集団コントロールによってじわじわと差を詰めるだけだ。

集団内ではゴールデンリーダージャージのザブリスキー擁するガーミン・トランジションズ勢がザブリスキーを守るように走る。80kmを切った時点で逃げる先頭グループとのタイム差は4分30秒程度。ここから徐々にタイム差がつめられていく。

集団が前を泳がせることを止め、意識的にペースアップして差が急激につまり出したのは残り60km地点から。
4分35秒あったタイム差は55km地点で2分45秒に。残り35kmで3分5秒、残り32kmで2分15秒。確実に射程距離内に収められていく。

そしてスピードの上がる集団内では落車が発生。これにサーヴェロテストチームのハインリッヒ・ハウッスラーとテオ・ボスの2人のスプリンターが巻き込まれてしまう。
2人は集団に復帰したものの、ボスのバイクの不調をメカニックがチームカーから直しながら走るなど、スプリントに臨む前に手痛いトラブル。

そして横風が強く区間では中切れが発生し、集団が分断されるハプニング。意図的にスピードを上げた先頭集団は20人の小集団になる場面も。総合トップ3とアームストロングら重要なライダーはほぼすべて含まれたが、アンディ・シュレクやファビアン・カンチェラーラらが後方に取り残され、展開を大きく左右しかねない場面だった。

コースが進路を変えると身体に受ける風向きも変わり、バラけた集団も元に戻る。再び前を逃げる4人との差が縮まり出すと、今度は4人が抵抗を始めた。

アタックを掛けるラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)アタックを掛けるラース・ボーム(オランダ、ラボバンク) (c)CorVosブリットンとボームがアタックを掛け、抜け出しを図る。残り16kmで2人が先行し、逃げのペースを再びハイテンポに維持しようとする。後方から追い上げる集団の計算は修正を余儀なくされる。

集団スプリントへの準備をすすめるHTCコロンビアが前に集まりだすと、モデストの街へと入る。待っているのはゴール地点を一度通る街中の周回コースだ。

残り10km、ボームが最後の抵抗のアタック。フィニッシュラインを単独で通過する。後方集団はコンチネンタルチームのスパイダーテックが前を固め、大観衆の拍手を受ける。しかし、残り7kmでボームは飲み込まれる。

残り6km。サーヴェロテストチーム勢が前に出て列車を組み、先頭を固める。残り4kmではまたしても飛び出すラボバンクのジャージ。今度アタックをかけるのはマーティン・チャリンギ(オランダ)だ。
ラボバンク銀行がレーススポンサーをつとめるだけに、この日のラボバンクは意欲的。チャリンギに代わって飛び出すのはポール・マルテンス(ドイツ)だ。

そして残り2.3kmのコーナーで落車が発生。これにアームストロングが巻き込まれ、ストップしてしまう。怪我はなく、ホイールの故障のみだったが、レディオシャックはチームメイトがアシストのために留まった。

マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTCコロンビア)をオグレディがピッタリマークマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTCコロンビア)をオグレディがピッタリマーク (c)CorVos残り2kmを切ってクイックステップ勢がボーネンのために列車を組むが、残り1kmでHTCコロンビア列車が線路を乗っとる。リクイガスも割って入ろうとして、広いコースにいくつかの線路が敷かれた。

そしてHTCトレインから発射されたのはカヴェンディッシュ。これにホアンホセ・アエドが肩を並べる。しかし2人ともを交わしてしまった緑のジャージはフランチェスコ・キッキだった。
失速したカヴェンディッシュはJJアエドにも交わされ、3位に沈んだ。その最高速に達しないスプリントは今後に心配の種を残すことになった。



JJアエドを下したフランチェスコ・キッキ(イタリア、リクイガス)JJアエドを下したフランチェスコ・キッキ(イタリア、リクイガス) (c)CorVos小柄なイタリアンスプリンターのキッキは、今季、南米アルゼンチンで1月に開催されたツール・ド・サンルイスでステージ優勝、ツアー・オブ・カタールの第4ステージ第6ステージで2勝を挙げ、セッティマーナ・コッピ・エ・バルタリ第1aステージで勝利している。この勝利が今季5勝目だ。
キッキはかつて北アメリカ開催のツアー・オブ・ミズーリで2度勝利しているため、アメリカとの相性がいいようだ。

なおキッキにはキャノンデールからスペシャルペイントのバイクが与えられており、西部劇風のカラーリングのそのバイクには「シェリフ(保安官)」と描かれている。


スプリントに加われなかったトム・ボーネンとアシストのフルスマンススプリントに加われなかったトム・ボーネンとアシストのフルスマンス (c)CorVosキッキは言う「サガンがラスト300mでいいポジションに引き上げてくれた。アメリカ合衆国でまた勝利を挙げられたことを誇りに思うよ。アメリカでハードにレースし、勝つことを愛している。カヴェンディッシュと僕はライバルだけど、バイクを降りるといい友達だ。勝利はいつもいいね。ナンバーワンの男を打ち負かすのはもっといいもんだ」。

リーダージャージを難なく守ったザブリスキーは言う「グレートなカリフォルニア州でリーダージャージを着て走るのを本当にエンジョイしているよ。これは僕が本当に欲しかったもの。僕にとっては特別な時間だね。今日はただチームを信頼しておとなしくしていた。僕らは今日は楽に走った。チームは全員ジャージを守るためだけに走った」。


この日も1分24秒遅れてしまったアンディ・シュレク(サクソバンク)この日も1分24秒遅れてしまったアンディ・シュレク(サクソバンク) なお山岳賞はこの日逃げに加わって2度のKOMポイントを一位通過したライアン・アンダーソン(カナダ・ケリーベネフィット)が獲得した。

ラスト3kmで落車したアームストロングには規定で集団と同タイムが与えられている。総合上位陣にはまったく動きが無かった。


第4ステージ結果
1位 フランチェスコ・キッキ(イタリア、リクイガス) 4h55'02"
2位 フアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク)
3位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTCコロンビア)
4位 テオ・ボス(オランダ、ラボバンク)
5位 ジョナサン・キャントウェル(フライVオーストリア)
6位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、BMCレーシングチーム)
7位 ケン・ハンソン(アメリカ、チームタイプワン)
8位 アンドレアス・スタウフ(ベルギー、クイックステップ)
9位 アレックス・キャンデラリオ(アメリカ、ケリー・ベネフィット)
10位 ギヨーム・ボワバン(カナダ・スパイダーテック)

個人総合成績
1位 デーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)18h04'35"
2位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTCコロンビア)+4"
3位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)+6"
4位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)  +21"
5位 マーク・デマール(ユナイテッドヘルスケア・マキシス) +24"
6位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ) +27"
7位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)
8位 ロリー・サザーランド(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア・マキシス)
9位 ピーター・ステティナ(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)
10位 トーマス・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)

敢闘賞のラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)敢闘賞のラース・ボーム(オランダ、ラボバンク) (c)CorVosポイント賞
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTCコロンビア)

山岳賞
ライアン・アンダーソン(カナダ・ケリーベネフィット)

新人賞
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)

チーム総合成績
レディオシャック



新山岳リーダーのライアン・アンダーソン(カナダ・ケリーベネフィット)新山岳リーダーのライアン・アンダーソン(カナダ・ケリーベネフィット) (c)CorVos







text:MakotoAYANO
photo:(c)CorVos