トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)が地元メディアのインタビューに対し、個人加盟していたMPCC(世界アンチドーピング倫理運動)から脱退したと語った。新型コロナウイルスの中で開催されたパリ〜ニース(3月8-15日)と、近年注目を集めるサプリメントのケトンがその原因になったという。



トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィズマのプレゼンテーションにて)トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィズマのプレゼンテーションにて) (c)CorVos
2017年ジロ・デ・イタリア王者のトム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)が、個人として加盟していたMPCC(世界アンチドーピング倫理運動)から脱退したと、オランダWielerflitsのインタビューに答えた。

「MPCCの哲学には非常に共感している。彼らはよりクリーンなスポーツを追求し、現在のドーピング規則が、特にコルチゾンの分野では不十分だと考えている」「しかし、パリ〜ニース(に対するMPCCの対応)は茶番だと思った。レースは開催するべきではなかった。その時既にフランスにおいてもコロナウイルスが発生していたんだ。深刻な問題になっていたのにも関わらず、MPCCは何の発言もしなかった」

2007年に発足したMPCCとは「信頼できる自転車レースを作る運動」を理念に、UCIやWADAのルールよりも厳格かつ独自のアンチドーピング規約を有する運動。現在9つのワールドチーム(アージェードゥーゼール、ボーラ・ハンスグローエ、コフィディス、EFプロサイクリング、グルパマ・FDJ、イスラエル・スタートアップネイション、ロット・スーダル、NTTプロサイクリング、サンウェブ)を含む36チームと、380人の選手などが加盟している。

またデュムランは、近年プロトンで多くの選手の使用が報道されているサプリメントのケトンに対する考えの相違も、脱退した理由の一つだと言う。

「彼ら(MPCC)はケトンの使用は非常に危険であるという論を持ち出してきた。それはとても偽善的な態度であると思ったんだ」

ケトンとは効率的にエネルギーを身体に供給する、脂肪と糖に次ぐ第3のエネルギー源として注目されるサプリメント。チームイネオス(当時チームスカイ)が早くから取り入れ、2019年のツールでは多くのチームが使用したことで話題になった。しかし一方で、オランダのアンチ・ドーピング委員会の委員長は2020年1月に、ケトンを使用するユンボ・ヴィズマに対し「ケトンはグレーゾーンに属するもの」「ユンボ・ヴィズマの使用に対して不快感を覚える」と批判している。

「僕らのチーム(ユンボ・ヴィズマ)はケトンを使用しているので、(僕だけが)MPCCの一員であることに多少の偽善を感じた。これら二つが脱退する動機だ」

今季デュムランが加入したユンボ・ヴィズマは、ジョージ・ベネット(ニュージーランド)が2015年ジロ開幕前に低コルチゾール値を出し、それがMPCCの規定に沿い欠場したことをきっかけに脱退している。

2017年のジロ・デ・イタリアを制したトム・デュムラン(オランダ、当時サンウェブ)2017年のジロ・デ・イタリアを制したトム・デュムラン(オランダ、当時サンウェブ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
晴れてチームとの足並みを揃えることができたデュムラン。同メディアのインタビューでは、ステージレーサーを終えた後のキャリアについても語った。その目標は、意外にも北の地獄パリ〜ルーベなのだという。

「ブラッドリー・ウィギンスの(キャリア終盤の)対応がとても気に入っているんだ。彼は何年もの間、グランツールと長距離タイムトライアルの勝利に集中していた。その後、キャリアの最後2年間をクラシックに切り替えた。僕はそれがとても好きだった。だから僕も同じ道を辿りたい」

text:Sotaro.Arakawa

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