「具体的な目標が見えたのでもう一段追い込んだ練習ができる。シーズン再開が本当に楽しみ」と言うのは、全日本XCO王者の山本幸平(Dream Seeker MTB Racing Team)。UCIが発表したMTBのUCIワールドカップと世界選手権カレンダーについて、今のトレーニングについて、そしてオンライントレーニングなど話を聞いた。



今年2月のアジア選手権で10勝目を挙げた山本幸平(Dream Seeker MTB Racing Team)今年2月のアジア選手権で10勝目を挙げた山本幸平(Dream Seeker MTB Racing Team) photo:Hisanori.Ueda
「フランス人のコーチから毎日トレーニングメニューが送られています。レースこそありませんが、ほぼシーズン中と変わらない強度で練習をこなしています」と言うのは、現在長野県にある自宅でシーズン再開を見据える山本幸平(Dream Seeker MTB Racing Team)。筆者はUCI(世界自転車競技連合)が5月16日に発表したMTBスケジュールについて、オンラインインタビューで話を聞いた。

「3月あたりは状況を捉えられませんでしたし、その時は追い込まずに自転車を楽しむような乗り方をしていました」と言う山本。キャリアの集大成となる東京五輪を見据え、今季は10度目のアジア選手権優勝を皮切りに、連戦のギリシャで総合8位に入るなど好調な滑り出しを見せていたが、USカップ参戦のために渡米した段階でパンデミックを受けレースキャンセルに。帰国してからは自宅で過ごし、4月上旬からはレース期間と同じリズムでコンディショニングに努めているという。

「やっぱりUCIカレンダーが出るまでは具体的な目標がなかったわけですから、高強度練習をするにしても、どうしても最後の最後まで追い込みきれない部分はありました。でも今はプラン立てができますし、もう一段階高いレベルまで我慢して追い込んで練習ができる。これはメンタル的に大きいですね。今はズイフトも取り入れながら、毎週日曜日はレースという前提でメニューをこなしています」。

アジア選手権から連戦したギリシャのステージレースでは総合8位に入ったアジア選手権から連戦したギリシャのステージレースでは総合8位に入った (c)DS2020
新しいUCIカレンダーは、9月5日から10月11日までの6週間の間にワールドカップ5戦と世界選手権が連続する超過密スケジュール。しかし山本は「ローカルレースを含めれば過去に近いスケジュールを過ごしたことがありますが、ここまでのビッグレース連戦は誰にとっても初めて。移動、レース、休養とうまくリズムを掴まないとコンディションもメンタルも落としてしまう。どちらの面も"良い状態"で臨む必要があります」と前置きしながら、自分にとっては決してマイナスではない、と言う。

「自分に関して言えば、もう10年以上も常に移動を繰り返しながらほぼ一人で練習を重ねてきたという経験があります。ですので今の状況も、あまり自分にとっては大きな影響は無いんです。そいう意味ではヨーロッパの選手たちとも条件はイコール。そこで僕のベテランらしい、賢くしつこい走りやコンディショニングの経験を生かしたいですね」。

ナショナルチームの参加体制、そして日本国内の5輪参加資格争いも明確になっていない現状で、まだ山本や、チームメイトである北林力の参加スケジュールは未定だ。しかし東京五輪での”良い走り”という目標は一切変わらず、そのステップとして山本の視線は今年のワールドカップ、そして世界選手権を見据えている。

「ここまで東京五輪に向けてやってきたので途中で諦めるってことは絶対にありません。でも、今のレースが無い準備期間も、十分な基礎練習ができたし、家族とリラックスする時間が取れているし、美味しいもの、少しお酒も楽しんだり、今までできなかったことができています。いままで十年間こんな生活はできていなかったので、良い意味で充電ができました。引退後のことを考えると、現役中にこういう時間を取れたというのはプラスにも捉えられますよね。コロナ問題も第2波、第3波が来ると言われていますが、僕は選手としてひたむきに取り組むだけ。ワールドカップ初戦までまだ3ヶ月ありますから、やれることをコツコツと積み上げていきたいですね。”山本幸平はまだまだ走れる”というところを見せたい」。

ウインターシーズンはトレーニングの一貫としてシクロクロスにも参戦したウインターシーズンはトレーニングの一貫としてシクロクロスにも参戦した photo:So.Isobe
自宅からオンラインインタビューに応じてくれた山本幸平(Dream Seeker MTB Racing Team)自宅からオンラインインタビューに応じてくれた山本幸平(Dream Seeker MTB Racing Team) MTB界隈で最近話題になったのが、国内のトップMTB選手が集った日本初のオンラインオフロードレース「Rising Sun “STAY HOME” Adventure Race」だ。Youtube配信も行われたレースで山本は国内勢トップの2位でフィニッシュ。「北海道時代からローラー台トレーニングは好きでしたが、オンラインサイクリングはすごく良いトレーニング。このご時世ですからズイフトのレベルもすごく上がっているし、実際”こんなに強い選手いるのかよ!”ってくらい強い選手もいますよね。簡単に追い込めるし、参加するだけじゃなくて見てくれる方にも面白かったと思います。インパクトというか、すごく可能性があるなと感じました」と、オンラインレースに大きな可能性を感じたようだ。

コロナ禍においてもポジティブにトレーニングを重ねる日本XCOの絶対王者。充実した長いオフシーズンを経て、身体の仕上がりはここ近年と比べても高いレベルにあると言う。

「このレースが無い期間でもしっかりと練習できていますし、身体の使い方など基礎的な部分を見直すことができました。身体のキレ味としてはかなり高いレベルにありますし、来たるワールドカップに向けて面白い走りができるんじゃ無いかと期待しています。ドリームシーカーには僕と、若い北林君もいます。二人を注目してもらえたら、と感じています」と、その視線はシーズン再開を見据えている。

text:So.Isobe