ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、NTTプロサイクリング)のインタビューがチーム公式サイトに掲載された。今季序盤に2勝を上げ、数年に及ぶ苦しいシーズンから復活を遂げた矢先の新型コロナウイルスによる中断。当時の複雑な感情や、最大の目標に掲げるミラノ~サンレモへの思い語った。



ツアー・ダウンアンダー第5ステージで勝利を挙げ幸先よいスタートを切ったジャコモ・ニッツォーロツアー・ダウンアンダー第5ステージで勝利を挙げ幸先よいスタートを切ったジャコモ・ニッツォーロ photo:Kei Tsuji
「結果としてはもちろん、単純に争える力が戻ってきたということが何よりも最高だった」。ジャコモ・ニッツォーロは2020年シーズン序盤をこう表現する。

ワールドツアー初戦のツアー・ダウンアンダー第5ステージ。カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)やサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)ら、ピュアスプリンターによる混戦となったスプリント勝負を、他チームのリードアウトを上手く利用したニッツォーロが見事制した。

昨季3勝を上げた31歳のイタリア人スプリンターだが、ワールドツアーでの勝利は実に8年振り(2012年エネコツアー第5ステージ以来)となる。だが、この嬉しい勝利もあくまでも通過点だったとニッツォーロは語る。

ニッツォーロはパリ~ニース第2ステージで今季2勝目を挙げているニッツォーロはパリ~ニース第2ステージで今季2勝目を挙げている (c)CorVos
「ダウンアンダーでの勝利は素晴らしかったが、それほど気持ちを集中させていたわけではないかった」「本当の目標はヨーロッパにあるからね」

その言葉通りパリ~ニースの第2ステージ、寒さと雨が選手の体温を奪うサバイバルなコンディションのなか、ニッツォーロは今季2勝目を上げる。「たしかその時はまだミラノ~サンレモが(3月に)開催予定だったので、パリ~ニースはその最終調整の場だった。もちろんあの時は調子も良くチームにも恵まれていたし、パリ~ニースで勝つことは目標の一つだったんだ」

ジロ・デ・イタリアのポイント賞を二度(2015、2016年)獲得し、2016年のイタリア選手権王者にもなったニッツォーロ。しかしここ数年は怪我に苦しみ、2018年には8シーズン所属したトレック・セガフレードを去り、新天地となるディメンション・データ(現NTT)に移籍した。そして昨季オフ、数年ぶりに満足なトレーニングを積めたことが、この結果に繋がったという。「長期間の怪我を経て、3年振りにようやく何の問題もない、よい冬を迎えることができたんだ」

トレック・セガフレード時代にはイタリア王者にも輝いているニッツォーロトレック・セガフレード時代にはイタリア王者にも輝いているニッツォーロ photo:Kei Tsuji
数年振りに復活を遂げたニッツォーロだったが、直後に新型コロナウイルスの感染拡大により全レースが中断。一転して失意の底にあったという当時に気持をこう語る。「はじめの数日はかなり落ち込んだ。こんなに良い状態なのに、どうしてこんなことが起こってしまうのかと」「でも正直に言うとそんな考えは数日間で消え、世界を客観的にみることができた。何が起こっているか、それは自転車レースよりもよほど深刻なことであると気づいた」

ニッツォーロの最大のターゲットは出身地ミラノをスタートするミラノ~サンレモ。UCIが発表した新レーススケジュールによると、イタリアに春の訪れを告げるモニュメントは、今年真夏の8月8日に開催される。「僕のような特徴を持った選手にとって最高のレースだと思うし、僕が生まれた街からスタートするレースなので、特別な気持ちになる」

8月に開催予定のミラノ~サンレモを見据えるジャコモ・ニッツォーロ8月に開催予定のミラノ~サンレモを見据えるジャコモ・ニッツォーロ (c)CorVos
ミラノ~サンレモには過去一度も万全な状態でスタートラインに立てたことがないというが、300km近くを7時間かけて争う過酷なレースに対し、スプリント力に登坂力も兼ね備えるニッツォーロは自信を見せる。「優勝を狙える自信はある」「集中力を極限まで高め、アグレッシブに、チャンスと思えるものには可能な限りトライしたいと思っている」

苦しみから抜け出したニッツォーロは、得意の混沌を味方につける。

text:Sotaro.Arakawa