シュワルベが同社のハイエンドタイヤに据えるPRO ONE TUBELESS EASY(プロワン・チューブレスイージー)をインプレッション。「Souplesse(スープレス=しなやかさ)」を開発キーワードに、チューブラーのような走り心地を目指したというチューブレスタイヤをテストした。



シュワルベPRO ONE TUBELESS EASY シュワルベPRO ONE TUBELESS EASY photo:Makoto.AYANO
本場ヨーロッパで安定した人気を誇り、「欧州基準」とされる性能を誇るシュワルベのスポーツバイクタイヤ。昨年のユーロバイクで発表されたPRO ONE TUBELESS EASY は、同社がロードバイク用タイヤシリーズの頂点に位置するハイエンド製品と銘打ってリリースしたことで話題を呼んだ。同社がそれまでハイエンドに据えてきたチューブラーのPRO ONEを廃してチューブレスに舵を切ったことから、その本気度が伺える。

シュワルベPRO ONE TUBELESS EASY シュワルベPRO ONE TUBELESS EASY photo:Makoto.AYANO
この3月から日本での本格展開が始まったPRO ONE TUBELESS EASY。フランス語で「Souplesse(スープレス=柔軟性、しなやかさ)といった意味)」をキーワードに、伝統的なチューブラータイヤのような走り心地を求めて開発したチューブレスタイヤだという。

素直な丸断面のトレッド素直な丸断面のトレッド photo:Makoto.AYANO
シュワルベにはすでにマウンテンバイクタイヤで高評価を得ているチューブレス製品群があるが、同社としてのチューブレスロードタイヤは2012年に最初の製品をリリース。2014年にONE TUBELESS、2016年にPRO ONE TUBELESS EASY前モデルがデビュー、そしてカーカスやコンパウンド、さらに新たなETRTO規格に適応したサイズ・設計変更を経てのモデル刷新となった。名称の変更こそ無いが、全面的なフルモデルチェンジだ。

シュワルベPRO ONE TUBELESS EASY 性能チャート(前モデル比)シュワルベPRO ONE TUBELESS EASY 性能チャート(前モデル比) タイヤ構造図タイヤ構造図


PRO ONE TUBELESS EASY は現代の主流となりつつある内幅19Cリムにあわせて設計され、「スープレス・カーカス」と呼ぶしなやかなカーカス構造と、シリカの含有量が大幅に増加した新ADDIX RACEマルチコンパウンドの組み合わせで最大限のスピードを追求。すべての路面コンディションにおいてコントローラブルかつ最速のタイヤを目指して開発された。前モデルと比べて13%低い転がり抵抗を実現。コーナリンググリップは22%以上、耐パンク性は30%向上、タイヤ形状による空力性能も最適化された。

ビード部にシーリングリップを設けてリムウォールとの嵌合性を高めるビード部にシーリングリップを設けてリムウォールとの嵌合性を高める タイヤ裏側には独特のシボがあるタイヤ裏側には独特のシボがある


シュワルベが謳う「TUBELESS EASY(チューブレスイージー)」とは、タイヤサイドの補強材の繊維をモノフィラメントにしてラバーの浸透性を向上。高い気密性を実現することで安易かつ確実チューブレス化を可能にしたテクノロジー。「チューブレスレディ」という呼称は商標の問題で使えるメーカーが限られるためシュワルベ独自の呼び方となっているが、シーラントを使うことで運用するチューブレスレディと同じと考えていい。

耐カット性に優れるハイテクファブリックのV-Guardがパンク防止のためにトレッド下にインサートされる。嵌合性の肝となるビード部には「シーリングリップ」を設けることでリムウォールとの嵌合性を高め、装着のしやすさと気密性の向上を図っているのに加え、リムへの装着性の良さにも貢献しているという。

タイヤのサイド部には「TLE」の表示があるタイヤのサイド部には「TLE」の表示がある シュワルベPRO ONE TUBELSS EASYシュワルベPRO ONE TUBELSS EASY


シュワルベのチューブレスイージータイヤの他のラインアップとしては、軽量のタイムトライアルモデルであるPRO ONE TT TUBELESS EASYがあるほか、セカンドグレードに位置する(PROがつかない)ONE  TUBELSS EASYがある。また、チューブタイプ(クリンチャー)としてのPRO ONE、ONE も選ぶことができる。

オレンジ色のロゴが最上位モデルの証となるPRO ONE TUBELESS EASYのサイズバリエーションは、700C×25C、28C、30Cの3種のラインナップ。カタログ重量データは700×25Cで245gとなる。

速く、軽く、安全。そしてチューブラーのような乗り味を追求して開発されたというハイエンドタイヤ、PRO ONE TUBELESS EASYの実力とは?

インプレッション

剛性の高さからくる転がり性能としなやかさによる快適性を併せ持つ乗り味剛性の高さからくる転がり性能としなやかさによる快適性を併せ持つ乗り味 photo:Gakuto.Fujiwara
25Cの実測重量は248g(カタログ値245g)25Cの実測重量は248g(カタログ値245g) まず気になる重量は、700×25Cが245g、28Cは270g、30Cは295g(カタログ重量)。今回テストした700×25Cの実測重量は248gで、カタログ値+3gだった。11,000円(税抜)のプライスは各社のチューブレスレディタイヤと比べてやや高価と言えるだろう。

まずはチューブレスタイヤで気になるのはリムとの嵌合の良し悪し。USTで好評のマヴィックのカーボンチューブレスホイール COSMIC PRO CARBON SL USTをテスト用ホイールとして使用した。嵌め込みについてはビード上げの最後でタイヤレバーを使用する必要があったが、苦労するほどではなくスムーズと言えるものだった(もっとも同ホイールはマヴィックYKSIONタイヤの組み合わせでもタイヤレバーを使用する場合がある)

エア充填によるビード上げはフロアポンプで一発OKだった。それは実感としてシュワルベがHPで公表している各ホイールメーカーとの嵌合適性チャートの通りというところ。シュワルベによればETRTO(欧州タイヤおよびリム技術機構)の定めた規格を遵守したうえで設計し、市場にある多数のホイール製品との嵌合性をテストしたとのこと。

シュワルベPRO ONE TUBELSS EASY シュワルベPRO ONE TUBELSS EASY photo:Makoto.AYANO
内幅19Cリムに装着した状態でタイヤ太さをノギスで測るとちょうど25mmジャストで、誤差もなくデータどおり。ビードの設計が良いからか、タイヤサイドは自然な立ち上がりで、トレッド形状はクセのない素直な丸断面となる。タイヤのサイド部には「TLE」の表示がある。これは使用ミスを防ぐためで、チューブタイプには「TUBE ONLY」と記される。

シーラントは30ccを注入。エア漏れを防ぎつつ、パンクした際のセルフ補修を狙う最小量だ。空気の保持性としては1日で0.5気圧程度下がるようで、これはチューブレスレディとしての平均値だろう。一般に完全な空気保持層を備えずシーラントに依存する構造であるチューブレスイージー(レディ)は日々の乗車前にその都度空気圧を確認するようにしたい。また、定期的なシーラント追加注入が必要だ。このあたりはタイヤ重量の軽さとのトレードオフといったところか。

雪解け水の流れる那須高原の山岳道路にて。ウェット路面のグリップの高さに感心した雪解け水の流れる那須高原の山岳道路にて。ウェット路面のグリップの高さに感心した
インプレ期間に2度、那須高原での120km/獲得標高2,245mライドと、奥多摩周遊道路+今川峠の150km/
獲得標高2,358 mのライドを走ることができた。2日ともがっつり山岳ルートで、かつ那須では残雪と凍結もあったため、タイヤにとっては過酷なテストができた。

まず乗り味としてはソリッドな剛性感と、チューブレスの身の上であるしなやかさ、振動吸収性の良さが両立した、癖がないとてもニュートラルなフィーリングで、とても好印象だ。

路面の凹凸をいなす快適性はチューブレスならでは路面の凹凸をいなす快適性はチューブレスならでは
チューブレス特有の「もちもち感」はあまり無く、転がりが軽いとも重いとも偏らない、いたって素直な走行抵抗で、すべての要素のバランスが高次元で取れていると感じる。ほぼスリックトレッドでも雪解け水の流れるウェットな路面でスリップする気配は感じず。グリップは高く、剛性のあるチューブラータイヤに近い感触。具体例を挙げればヴィットリア・コルサ、コンチネンタル・コンペティションなどに近い印象だ。(シュワルベのチューブラーを使用したことがないのは恐縮だが)。

新コンパウンド「ADDIX」の刻印がある新コンパウンド「ADDIX」の刻印がある フランス語でSouplesse(スープレス)、英語ならSupple(サップル)というのは近年のロードバイクタイヤが目指す性能のキーワードになっている表現。それをキャッチコピーに掲げるほどしなやかさが重視されているという感触はないのだが、むしろ扱いやすく非常に好バランスな、チューブラーを越えたチューブレスタイヤだと思う。

空気圧を色々と試した結果、体重60kgで6気圧程度がベスト。荒れ気味の舗装路での快適さを増すことを狙うなら5.5気圧まで下げれば快適に乗ることができると感じた。ちなみに他社メーカーのチューブレス系タイヤの空気圧例では、マヴィックYKSIONが5気圧、IRC FORMULA PRO TUBELESS(新型と旧型)とヴィットリアCORSA TLRで6気圧程度がマイベスト。

トレッドはセンターとサイド部で異なるデュアルコンパウンド構造となっており、軽い転がりとコーナリンググリップを高めている。芯のある硬さとしなやかさは好感触で、ふわふわしない、腰砕け感も少なく、速く走るほどに完成度の高さを感じるタイヤだ。下りコーナリングもダウンヒルも、その安心感から感じる限りはグリップの限界値がかなり高そうだ。レースで使うにも最適な性能だろう。

タフなタイヤであるためブルベやツーリングにも勧められそうだタフなタイヤであるためブルベやツーリングにも勧められそうだ photo:Gakuto.Fujiwara
今や標準となった25Cの太さはレース派には定番的な太さだが、ディスクブレーキ採用ロードバイクなら28Cを基準にしても良さそうだと感じた。

耐パンク性については長期間使わなければ分からないが、ライド中に尖った石を踏んでしまいヒヤッとさせられたが、カット傷は無く、ひとまず頑丈そうなタイヤであることは確認できた。しなやかで柔らかいチューブレスタイヤには切れやすい製品もあるので、この点は安心できそうだ。ちなみにトレッド下には14mm幅の耐パンクベルト「V-Guard」が埋め込まれており、これは前モデルより4mm幅広くなったという。

加えてサイドウォールはケーシングのターンアップ(捲り)構造により3層となっているため、サイドカットにも強いだろう。300km走ってトレッドの摩耗もとくに無く、振動吸収性も良好。タフさが求められるブルベなどにも勧められそうだ。(インプレッション:綾野 真/CW編集部)

シュワルベ PRO ONE TUBELESS EASY
700×25C 245g
700×28C 270g
700×30C 295g
※20×1.10、26×1.10、650×25B、650×28Bサイズもあり
カラー:ブラック
価格:11,000円(税抜)
日本総代理店:ピーアールインターナショナル