ツール・ド・ランカウイ最終日にマキシミリアン・ヴァルシャイド(ドイツ、NTTプロサイクリング)がステージ2勝目。4日目のゲンティンハイランドで区間2位に入ったダニーロ・セラーノ(イタリア、チームサプラサイクリング)が総合優勝を射止め、中根英登(NIPPOデルコ・ワンプロヴァンス)は総合6位を維持して全日程を終えた。



イーグル・スクエアで待機する選手たちイーグル・スクエアで待機する選手たち (c)CorVos
1週間以上に渡り続いたツール・ド・ランカウイ(UCI2.Pro)も最終(厳密に言えば終了翌日にもワンデーレースのマレーシア・インターナショナル・クラシックレースが開催される)第8ステージを迎えた。プロトンはタイ国境線に近い大会名称でもあるランカウイ島に渡り、海に突き出した公園広場「イーグル・スクエア」を出発し、後半は急勾配の3級山岳を含む周回コースを6周回してフィニッシュラインに飛び込む。100km少々という短距離コースであり、終盤には一発逆転を狙ってレースが動くことが予想された。

序盤は総合リーダーのダニーロ・セラーノ(イタリア、チームサプラサイクリング)やマキシミリアン・ヴァルシャイド(ドイツ、NTTプロサイクリング)、ピエール・ロラン(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)などが先行したものの、カウンターで飛び出した中村魁斗 (宇都宮ブリッツェン) やシリル・ゴティエ(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)ら5名を先行させたことで状況は落ち着いた。

しかし序盤のアタック合戦が長期化し、もとより短距離ステージだったこともあり5名のリードは最大1分半止まり。残り25kmを切ると集団から3級山岳でステージ優勝を目指すアタックが勃発し、ドゥシャン・ラヨビッチ(セルビア、NIPPOデルコ・ワンプロヴァンス)とU23世界王者のネオプロ、サムエーレ・バティステッラ(イタリア、NTTプロサイクリング)が先行。2人は逃げグループ内で唯一粘っていたゴティエを置き去りにしてレース先頭に躍り出た。

周回コースには急勾配の3級山岳が用意され、一発逆転を狙った動きが活発化した周回コースには急勾配の3級山岳が用意され、一発逆転を狙った動きが活発化した (c)www.ltdlangkawi.my
ランカウイ島の周回コースを走る選手たちランカウイ島の周回コースを走る選手たち (c)CorVos
約20〜30秒リードを保ったまま逃げるラヨビッチとバティステッラ。最終周回に入るとメイン集団からは26秒差の総合2位につけるイェフゲニー・フェドロフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース)が先行するも、チームサプラサイクリングの必死の追走によって吸収される。超高速状態で山を下ったプロトンが、フィニッシュ目前で粘り続ける2人を視界に捉えた。

必死に逃げるラヨビッチとバティステッラは残り1kmを切ってもなお微妙なタイム差を維持していたが、迫り来る集団を振り切ることは叶わず、バティステッラを千切ったラヨビッチも残り200mで吸収。それと同じくしてヴァルシャイドが腰を上げた。

区間2勝目を飾ったマキシミリアン・ヴァルシャイド(ドイツ、NTTプロサイクリング)	区間2勝目を飾ったマキシミリアン・ヴァルシャイド(ドイツ、NTTプロサイクリング) (c)CorVos
ライバルの攻撃を凌ぎ切ったダニーロ・セラーノ(イタリア、チームサプラサイクリング)ライバルの攻撃を凌ぎ切ったダニーロ・セラーノ(イタリア、チームサプラサイクリング) (c)www.ltdlangkawi.my
絶好のポジションから加速したヴァルシャイドが、ルーカ・パチオーニ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)やタジ・ジョーンズ(オーストラリア、ARAプロレーシングサンシャインコースト)を寄せ付けることなく先着。第3ステージに続くステージ2勝目をマークし、その後方では草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)がステージ9位に入った。

攻防戦を繰り広げた総合上位勢の成績は動かず、今年アモーレ&ヴィータからサプラサイクリングに居場所を移した30歳のセラーノがキャリア初のステージレース総合優勝。また、中根英登(NIPPOデルコ・ワンプロヴァンス)が総合6位を維持したまま8日間の戦いを終えた。「ドゥラがあと少しでステージ優勝だったのにとそこは悔しいところですが、チームメイトたちの力強いサポートのお陰で個人総合6位とステージ優勝の結果を残す事が出来ました。みんなありがとう。そして連日応援してくれた方々、ありがとうございました!!」と中根は感謝を綴っている。

また、入部正太朗は総合107位でNTTプロサイクリングとしての初レースを終えた。チーム公式SNSのビデオインタビューに対して「初めてNTTプロサイクリングの一員としてツール・ド・ランカウイを終えました。チームとしてはマックス選手がステージ2勝と上位入賞多数、そしてグリーンジャージ獲得と本当に素晴らしい結果を得ることができました。正直疲れはありますが、レースを楽しめましたし、今の僕にとっては全てが良い経験になっています。今後もより改善し、(チームに)貢献していきたいと思っていますし、次のレースを楽しみにしています。色々なサポート、ありがとうございます」と語っている。

各賞ジャージ受賞者が並ぶ。ダニーロ・セラーノ(イタリア、チームサプラサイクリング)がリーダージャージを確定させた各賞ジャージ受賞者が並ぶ。ダニーロ・セラーノ(イタリア、チームサプラサイクリング)がリーダージャージを確定させた (c)CorVos
以下に宇都宮ブリッツェン清水監督と、愛三工業レーシングチームの西谷コーチの総括を紹介したい。

清水監督(宇都宮ブリッツェン)コメント

「今日の最終ステージは4名でできることをやって全力を尽くそうということで、まずは逃げのトライをしたいと言ったチーム最年少の中村選手が有言実行の逃げを見せてくれました。最後はやはりまだ実力不足という部分がありましたが、しっかり逃げに乗るという動き、そして誰もが疲労困憊な最終日に逃げるチャレンジしてくれたことは良かったと感じています。最終局面は鈴木龍選手のスプリントで勝利を狙いましたが、混戦の中でなかなか勝機を見出すことができず残念な結果になってしまいました。結果には結びつけることはできませんでしたが、今大会の中でも少しずつ修正・改善しながらやってきて、今後の種になることはあったのではないかと思います。今回のツール・ド・ランカウイは増田選手の個人総合上位を目標に出場しましたが、初日からアジアツアーの洗礼と言ってしまえば簡単なのですが、選手だけでなくチーム全体の動きも含めて正直、慣れていない部分もあったのかなと感じています。そういったこともあってトラブルも多く、チームでポッと来て1回で目標を達成できるほど甘いものではないなということをあらためて思い知らされました。同時に、選手の実力で考えると、さまざまな要素を整えて噛み合えばいい位置にいけるという手応えも感じています。明日のワンデーレースもありますし、その先にはツール・ド・台湾も控えていますので、今回のレースをただ『ダメでした』で終わらせるのではなく、今回経験したことを次の結果にしっかりとつなげられるようにチームで情報共有してやっていきたいと思います」

西谷コーチ(愛三工業レーシングチーム)コメント

ステージでのUCIポイント獲得までは惜しくも届かなかったが、当初の目標としていたステージ一桁順位でのゴールを2回達成とUCIポイント獲得圏内に2名絡むことができたのは予測を上回る結果であった。反面、連携面での課題をクリアするにはまだまだ時間と場数が必要なことは否めない。シーズンは始まったばかりだが、今後もこの課題は引き続き取り組んでいき、今度のレースの勝利に結びつけていきたい。最後に、今回のTour de Langkawiは突然の招待をいただき、準備する時間もないまま戦いを挑むこととなったが、そのような状況の中でも選手らは日々最大限のパフォーマンスを発揮し、結果を追い求めてくれた。この背景には日々過酷な環境下の中、献身的なサポートをしてくれた渡会、久保トレーナー、早川スタッフ、小松メカニック、現地スタッフのクチョン、ロスタムのおかげに他ならず、感謝を申し上げたい。また、3年ぶりにこのレースに帰ってこれたことは愛三工業はじめ、各社サプライヤー、ファンの皆様のご支援の賜物であり、この応援にお応えできるよう今後もチーム一丸となって精進していきたい。8日間の長丁場ではありましたが国内外からのご声援ありがとうございました!

上記コメントは各チームのレポートより。
ツール・ド・ランカウイ2020 第8ステージ結果
1位 マキシミリアン・ヴァルシャイド(ドイツ、NTTプロサイクリング) 2:29:08
2位 ルーカ・パチオーニ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
3位 タジ・ジョーンズ(オーストラリア、ARAプロレーシングサンシャインコースト)
4位 エディスハイディ・ムハマドダニエルハイカル(マレーシア、マレーシアナショナルチーム)
5位 グレブ・ブルッセンスキー(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース)
6位 ケント・ロス(アメリカ、ワイルドライフジェネレーションプロサイクリング)
7位 ベルナール・ファンアールト(インドネシア、Pgnロードサイクリングチーム)
8位 ジョヴァンニ・ロナルディ(イタリア、バルディアーニCSFファイザネ)
9位 草場啓吾(日本、愛三工業レーシングチーム)
10位 ピエルパオロ・フィカーラ(イタリア、チームサプラサイクリング)
個人総合成績
1位 ダニーロ・セラーノ(イタリア、チームサプラサイクリング) 26:39:58
2位 イェフゲニー・フェドロフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース) 0:26
3位 アルテム・オベチキン(ロシア、トレンガヌInc.TSGサイクリングチーム) 0:35
4位 ピエルパオロ・フィカーラ(イタリア、チームサプラサイクリング) 1:07
5位 カンタン・パシェ(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト) 1:09
6位 中根英登(日本、NIPPOデルコ・ワンプロヴァンス) 1:34
7位 クリスティアン・ライレアヌ(モルドバ、チームサプラサイクリング) 1:36
8位 ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、ヴィーニザブKTM) 1:56
9位 カルロス・キンテロ(コロンビア、トレンガヌInc.TSGサイクリングチーム) 1:59
10位 フランチェスコ・ボンジョルノ(イタリア、ヴィーニザブKTM) 2:12
その他の特別賞
ポイント賞 マキシミリアン・ヴァルシャイド(ドイツ、NTTプロサイクリング)
ヤングライダー賞 イェフゲニー・フェドロフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース)
山岳賞 モハメドザリフ・ムハンマドヌルアイマン(マレーシア、チームサプラサイクリング)
チーム総合成績 チームサプラサイクリング
text:So.Isobe
photo:www.ltdlangkawi.my