東京都稲城市の多摩川河川敷で2月11日(火・祝)に開催されたシクロクロスイベント、稲城クロスをレポート。昨年の台風19号の被害を受けたコースだったが、ボランティアによる復旧作業により無事開催を迎えた。今回からストライダー14xアドベンチャークロスもラインアップ。家族連れの参加が増え、来場者数2,000人を超え大いに盛り上がった。



朝日に照らされる稲城クロスの会場朝日に照らされる稲城クロスの会場 photo:Michinari.TAKAGI
大会当日は雲ひとつない快晴で絶好の自転車日和大会当日は雲ひとつない快晴で絶好の自転車日和 photo:Michinari.TAKAGI昨年10月の台風19号の被害を受けたコースだったが、ボランティアによる復旧作業のおかげで開催することができた昨年10月の台風19号の被害を受けたコースだったが、ボランティアによる復旧作業のおかげで開催することができた


都心のサイクリストにとってなじみ深い多摩川河川敷で、チャンピオンシステムの手で開催されているシクロクロスイベントが「稲城クロス」だ。オリンピックによってシクロクロス東京がお休み中の今、都心から最も近い場所で開催されるシクロクロスイベントであり、同じくチャンピオンシステムが運営し、相模原方面に向かうサイクリストの拠点にとして親しまれるカフェ「CROSS COFFEE」からもほど近い。

昨年10月の台風19号がもたらした豪雨によって大会会場の河川敷は一時水の底に沈んでしまったものの、ボランティアの尽力によってコース整備が進めあられ、何とか予定通り第4回大会開催にこぎつけた。

東京五輪のロードレースが通過する稲城市は”自転車のまち”としての活動に力を注いでおり、稲城クロスもそのバックアップを受けている。地域の協力を得て開催される大会はキッズやC4、C3クラスなどビギナー層をメインにしている(C2以上はオープンレースに集約)が、年々参加人数が上昇。今回も約350人がエントリーしたほか、観戦を含めた来場者数は2,000人(主催者発表)にも及んだ。シリアスレースというよりも、ビギナーウェルカムの裾野を広げる大会というのが稲城クロスの位置付けだ。

ストライダー14xアドベンチャークロスはルマン式スタート。バイクが待つピットまでランで駆けていくストライダー14xアドベンチャークロスはルマン式スタート。バイクが待つピットまでランで駆けていく photo:Michinari.TAKAGI
ストライダーを受け渡すピットも大混雑ストライダーを受け渡すピットも大混雑 親御さんたちも子供に必死のアピール親御さんたちも子供に必死のアピール

身体と同じくらいのストライダーを持ち上げてシケインを越えていく身体と同じくらいのストライダーを持ち上げてシケインを越えていく photo:Michinari.TAKAGI
晴天に恵まれた第4回大会のオープニングレースは、今回新たに加わった「STRIDER 14x ADVENTURE CROSS」。4~6歳の子どもたちが14インチホイールと着脱式ペダルユニットを搭載したストライダー14xでオフロードのコースを駆け巡る。ランからスタートし、親御さんが待つピットでバイクに乗り、地面を蹴ってランニングバイクでコースを回っていく。その後再度ピットインをして着脱式ペダルユニットを装着してフィニッシュを目指すという、まさに親子の絆が勝負を分ける(?)家族参加型レースだ。子どもたちの表情は真剣そのもので、コース脇から応援する親御さんも手に汗握る白熱したレースとなった。

親御さんのピット作業と子供の走りが勝敗を決める親御さんのピット作業と子供の走りが勝敗を決める 一列棒状の接戦が繰り広げられる一列棒状の接戦が繰り広げられる

着脱式ペダルユニットを装着し、ピットアウト着脱式ペダルユニットを装着し、ピットアウト ペダルをつけたストライダーで走り抜けていくペダルをつけたストライダーで走り抜けていく


小学生によるキッズクラスを皮切りにメインのシクロクロスレースが始まっていく。コ―ルアップ前までは笑顔だったキッズたちも、スタートラインに並ぶと緊張感を高めるのはトップレースと何ら変わらない。スタートが切られると一気に加速し、第一コーナーに飛び込む。フラットコースとあってスピードが求められ、トップの選手たちはバニーホップを繰り出すなどかなりハイレベルな争いを繰り広げた。

コ―ルアップ前までは笑顔だったキッズ達もスタートラインに並ぶとレースモードに切り替わって緊張感が漂うコ―ルアップ前までは笑顔だったキッズ達もスタートラインに並ぶとレースモードに切り替わって緊張感が漂う photo:Michinari.TAKAGI
総勢39名が第一コーナーに飛び込んでくる総勢39名が第一コーナーに飛び込んでくる 多摩川河川敷を走る多摩川河川敷を走る

シケインでは抜き抜かれつの争いシケインでは抜き抜かれつの争い キッズクラスでも難易度の高いバニーホップでシケインをクリアする選手もキッズクラスでも難易度の高いバニーホップでシケインをクリアする選手も


ビギナーフレンドリーを掲げる稲城クロスが初回から続けているのが、シクロクロスならではの技術をレクチャーする「CXスクール」だ。国内トップライダーを講師に迎えるスクールは毎回人気を博しており、今回はフルタイムワーカーでありながら今年の全日本選手権で9位に入った斎藤朋寛選手(RIDELIFE GIANT)が男子スクールを担当したほか、同じく全日本選手権で今年初の表彰台を射止めた西山みゆき選手(Toyo Frame Field Model)が女子スクールを、マスターズで上位を走るホストチーム所属の石川正道選手(CHAMPION SYSTEM JAPAN TEST TEAM)がキッズスクールをレクチャーしてくれた。

スクールはシクロクロスの基本動作となるバイクの乗り降りに始まり、ブレーキング、コーナーリング、シケインの越え方など初級者向けの内容だ。参加者からも度々質問が飛んでおり、積極的に参加して楽しい雰囲気でスキルアップを図っていた。

シケインのレクチャーを受け、チャレンジするシケインのレクチャーを受け、チャレンジする photo:Michinari.TAKAGI
CXスクール女子担当は西山みゆき(TOYO FRAME FILD MODEL)CXスクール女子担当は西山みゆき(TOYO FRAME FILD MODEL) 参加者からの問いに分かりやすく丁寧に答える参加者からの問いに分かりやすく丁寧に答える


また、会場にはブースも多く出店されており、中でもCROSS COFFEEブースはホットコーヒーやホットレモネードといったドリンク類から、バゲットサンドやミネストローネスープなどフード類まで、ちょっと何かを飲みたい時にも、しっかり食べたい時にも大満足の内容で大好評。大会を主催するチャンピオンシステムのブースでは青空オーダージャージ相談会を開催。オリジナルジャージを作る際の疑問点などを聞くことができたほか、K-PLUSヘルメットの試着会や子供向けの「ぬりえチャレンジ」(子どもを飽きさせない取り組みはありがたい限りですね)も人気を得ていた。

稲城クロスといえばお馴染み矢野口駅前のサイクリストの憩いの場のCROSS COFFEEも出店稲城クロスといえばお馴染み矢野口駅前のサイクリストの憩いの場のCROSS COFFEEも出店 チャンピオンシステムのブースでは青空オーダージャージ相談会が行われていたチャンピオンシステムのブースでは青空オーダージャージ相談会が行われていた

子供向けの『ぬりえチャレンジ』も行われていた子供向けの『ぬりえチャレンジ』も行われていた キャニオンブースではグラベルバイクのグレイル CFなどの試乗会が行われていたキャニオンブースではグラベルバイクのグレイル CFなどの試乗会が行われていた


今回はキャニオンが大規模なブースを展開していたことも話題。キャニオンといえばご存知シクロクロス世界王者のマチュー・ファンデルポール(オランダ)が駆ることでも有名だが、今回はロードバイクのUltimateとEndurace、そしてグラベルバイクのGrailという3モデルを揃えた試乗会を実施。加えて、この日の特別プログラムとして午前と午後の2回、稲城市内の里山を駆ける「キャニオングラベルライド」も行われた。このライドレポートは後日紹介しよう。

子どもたちに人気のランニングバイク「ストライダー」や、オリジナルのサイクルキャップを手掛ける「CYCLONE」もブースを構えた。1つ1つハンドメイドで作られるサイクルキャップは柔らかで被りやすい風合いで、動物柄やユニークな柄をあしらった個性的でオシャレなデザインも特徴だ。

C4のスタート前に選手たちと記念写真を撮る高橋勝浩市長C4のスタート前に選手たちと記念写真を撮る高橋勝浩市長
10時から始まる一般カテゴリーのオープニングとなるC4のスタートに合わせ、”自転車のまち稲城”を掲げる高橋勝浩市長も応援に駆けつけた。「稲城クロスは4回目の開催ということで、ますます知名度も上がっています。どうぞ頑張ってください!」という挨拶と共にレースがスタート。高橋市長は以降カテゴリーのスターターや表彰式のプレゼンテーターも務め、大会の盛り上がりを自ら肌で感じていたようだ。

2つのC4レース、C3、マスターズ、女子とレースが進むにつれ会場も盛り上がり、サイクリングロードを走っていたサイクリストやランナー、あるいは公園を訪れていた方も観戦に興じる。そして大トリを飾るオープンレースがスタートした。

60名以上が集まったオープンレースがスタート。普段上位カテゴリーを走る選手たちが勝負を繰り広げた60名以上が集まったオープンレースがスタート。普段上位カテゴリーを走る選手たちが勝負を繰り広げた
普段は一緒に走ることのないC1、C2、L(女子)1の選手や、足に覚えのある選手たち60名以上が一斉にスタート。スクールの講師を務めた斎藤選手は後方スタートながら、抜きどころの少ないコースであっという間に先頭へ。それまでトップを走っていた青木誠選手(AX Cyclocross team)を捉え、「直線までに脚のある青木選手を引き離しておきたかった」と、シケインと階段が続くセクションで独走態勢に持ち込み、そのまま見事優勝を飾った。

シケインと階段は稲城クロス一番の見所。選手にとっては無理しがち(?)なポイントかもシケインと階段は稲城クロス一番の見所。選手にとっては無理しがち(?)なポイントかも 昨年の台風19号で一時水没したコース。新しく出現した砂区間も選手の手(脚?)を焼いた昨年の台風19号で一時水没したコース。新しく出現した砂区間も選手の手(脚?)を焼いた

「前夜に50回は練習した」というMVDPポーズを披露した斎藤朋寛選手(RIDELIFE GIANT)「前夜に50回は練習した」というMVDPポーズを披露した斎藤朋寛選手(RIDELIFE GIANT)
ホストチームのチャンピオンシステムチームと、CROSS COFFEEスクールの講師としてもお馴染みの安藤選手(SHIDO-WORKS)ホストチームのチャンピオンシステムチームと、CROSS COFFEEスクールの講師としてもお馴染みの安藤選手(SHIDO-WORKS) おやまさん、お疲れ様。おやまさん、お疲れ様。


「シケインから階段が続くエリアでスキルの差を感じていたので、そこで差をつけようと思いました。昨日はシクロクロスの世界チャンピオンになったマチューの優勝ポーズを50回練習しましたが、その通りになったので最高でした」と笑う斎藤選手。CW取材班はレース後、圧倒的なスキルを披露した斎藤選手に稲城クロスの攻略法を聞いてみた。

「もちろん自転車レースなので脚があることが大前提ですが、ターンが多い稲城クロスはいかに上手くコーナーを攻略するかが鍵ですね。視線やライン取りなど、見ているとC1であっても漠然と走っている方が多いんですが、だからこそスキルが身につけばチャンスが増えます。車体を安定させるため、速く抜けるためにもコーナリング中のペダリングは不可欠ですし、コーナリング中にペダリングするならブレーキを当て効きさせる必要もある。こういった事は私が講師を担当させてもらった時はお教えしてますし、どんな方でも数回走ればよりスムーズに走れるようになるんです。

で、レースとなればコーナーが左右に連続して、そこにはライバルが走っている。単純な脚力だけで言えば2位の青木選手の方があると思うのですが、それだけじゃないのがシクロクロスの面白いところですよね。タイヤもいろいろな種類がありますが、稲城クロスではIRCのSERAC EDGEのような転がりの軽いものが良いでしょう。平坦ですから例え泥コンディションであっても、ノブの高いマッドタイヤよりトラクションは稼ぎやすいと感じます。CROSS COFFEEでも頻繁にCXスクールは開催されていますし、そういうチャンスを活かしてスキルを伸ばすのは良い手だと思いますね」

流石の走りを披露したオープンレースのトップスリー流石の走りを披露したオープンレースのトップスリー
スムーズな走りで一気にジャンプアップした斎藤朋寛選手(RIDELIFE GIANT)スムーズな走りで一気にジャンプアップした斎藤朋寛選手(RIDELIFE GIANT) 「このコースなら転がりの軽いタイヤがオススメです」「このコースなら転がりの軽いタイヤがオススメです」


優勝した斎藤朋寛選手(RIDELIFE GIANT)によるオンボード動画



チャンピオンシステムジャパン代表 棈木亮二さん コメント

「昨年の第2回は雪が降るほど寒かったので大変でしたが、今年は晴れて自転車日和というのが功を奏して来場者数も2,000人を超えました。

会場は昨年10月の台風19号でコース全体が沈みとても荒れた状態になってしまったのですが、チャンピオンシステムのスタッフや近隣のサイクリストの皆さんと協力して、丸一日かけて会場中の倒木やがれきゴミを除去してコース整備に努めました。ただマイナス面だけではなく、重い砂の区間があったりとコースに変化も加わりました。これはこれで楽しんでもらえたと思います(笑)。

チャンピオンシステムジャパン代表 棈木亮二さんチャンピオンシステムジャパン代表 棈木亮二さん
今後、稲城クロスは今年10月中旬に開催を予定していますし、その他にも水面下で準備を進めていることがあります。来年もチャンピオンシステムのシクロクロスイベントにご期待ください。引き続きよろしくお願いします!」

text&photo:Michinari.TAKAGI