シクロクロス世界選手権の2日目のオープニングレースとなった男子ジュニアレースで、ベルギーの期待を背負うティボー・ネイスが圧勝。ベルギー勢が表彰台を独占しオランダに一矢報いた。村上裕二郎は45位、鈴木来人は58位で泥のタフレースを完走している。



雨模様の中、男子ジュニアレースがスタート。ダリオ・リロ(スイス)が先頭に立つ雨模様の中、男子ジュニアレースがスタート。ダリオ・リロ(スイス)が先頭に立つ (c)Nobuhiko.Tanabe
1995年以来26年ぶりにスイスで開催されたシクロクロス世界選手権の2日目は、前日とは打って変わって雨のマッドレース。コース上は一面重く滑りやすい泥に姿を変え、時間が経つにつれて泥と轍が深くなっていくタフコンディション。前日であれば何ということのない場所が、降車と担ぎを強いられる状況に姿を変えた。

2日目のオープニングレース、男子ジュニアに参加したのは村上裕二郎と鈴木来人を含む56名。序盤からマグナス・シェフィールド(アメリカ)が猛烈にペースを上げたが急勾配の担ぎ上げで足を滑らせ、ベルギーのシクロクロスレジェンド、スヴェン・ネイスの息子であるティボー・ネイスが先頭に立つ。今年ワールドカップのジュニアカテゴリーで1勝している地元スイスのダリオ・リロやレナート・ベルマンス(ベルギー)、ティボー・デルグロッソ(オランダ)らがネイスJr.に続いた。

ベルギー応援団に後押しされながら先頭を走るティボー・ネイス(ベルギー)ベルギー応援団に後押しされながら先頭を走るティボー・ネイス(ベルギー) (c)Nobuhiko.Tanabe
集団の中でレースを進める村上裕二郎(日本)集団の中でレースを進める村上裕二郎(日本) (c)Nobuhiko.Tanabe
序盤にシューズが壊れるトラブルに見舞われたという鈴木来人(日本)	序盤にシューズが壊れるトラブルに見舞われたという鈴木来人(日本) (c)Nobuhiko.Tanabe
先頭グループの中で積極的に飛ばしたのはネイスとリロで、他選手をふるい落としながら先頭を突き進む。すると全4周回中の2周目には「思いがけず後ろとの差ができたので先行することにした」と言うネイスが独走に持ち込んだ。

父親が指揮するテレネット・バロワーズの育成チームのメンバーとして成長を続け、今シーズンはヨーロッパ選手権とナショナル選手権を含む17勝と、ワールドカップとスーパープレスティージュの総合ランキング制覇、UCIランキング首位と圧倒的な成績をもって大一番に臨んだネイスが独走。最終周回突入時に2位グループとのリードは39秒まで広がった。

高低差のある急角度のキャンバーを降りる鈴木来人(日本)	高低差のある急角度のキャンバーを降りる鈴木来人(日本) (c)Nobuhiko.Tanabe積極的に先頭集団のペースを上げるダリオ・リロ(スイス)積極的に先頭集団のペースを上げるダリオ・リロ(スイス) (c)Nobuhiko.Tanabe

安定した走りで独走するティボー・ネイス(ベルギー)安定した走りで独走するティボー・ネイス(ベルギー) (c)Nobuhiko.Tanabe
2位パックを形成するレナート・ベルマンス(ベルギー)とダリオ・リロ(スイス)2位パックを形成するレナート・ベルマンス(ベルギー)とダリオ・リロ(スイス) (c)Nobuhiko.Tanabe
ネイスの後塵を拝したリロは追走していたベルギーの2人(ベルマンスとエミール・フェルストリング)に捕まり、最終周回の下り区間で痛恨のスリップダウンを喫してしまう。これによってベルギー勢がワンツースリー体制を組み上げた。

レース先頭で力強く安定した走りを維持したネイスが、世界選手権デビューとなった昨年大会3位のリベンジとなる独走勝利。涙を浮かべながら両手を広げてフィニッシュし、遅れてやってきたベルギーのチームメイトたち、そして父親とハグを交わした。

キャリア初の世界選手権制覇を成し遂げたティボー・ネイス(ベルギー)キャリア初の世界選手権制覇を成し遂げたティボー・ネイス(ベルギー) (c)Nobuhiko.Tanabe父親の出迎えを受けるティボー・ネイス(ベルギー)父親の出迎えを受けるティボー・ネイス(ベルギー) (c)Nobuhiko.Tanabe

ベルギーが表彰台を独占。前日カテゴリーを総なめにしたオランダに一矢報いたベルギーが表彰台を独占。前日カテゴリーを総なめにしたオランダに一矢報いた (c)Nobuhiko.Tanabe
「(フィニッシュラインを超えた時は)信じられない気分だった。言葉も無いよ。好調を崩していたのでこのタフコースを走れるかどうか分からなかった。レース中盤で少しリードを得ていることに気づいてから自分のペースでレースを進めた。ただただアメージングだ」とレース後のインタビューに答えたネイス。

「もちろんプレッシャーは感じていた。今年は上手く走ることができて、ナショナル選手権とヨーロッパ選手権で勝ち、ワールドカップの総合ランキングでも優勝。自然と優勝候補に挙げられることになり重圧はあったけれど、強い者しか勝てないコースコンディションで生き残ったのは自分だった。ベルギーで表彰台独占できたこともただただ素晴らしい」と、父親が獲得した4勝(U23で2勝、エリートで2勝)に続く、5枚目のアルカンシエルをネイス家に持ち帰ることに成功した。

日本勢は村上裕二郎が5分59秒遅れの45位、スタート直後にトラブルに見舞われた鈴木来人も8分29秒遅れの58位で共に完走を果たしている。以下に2人のコメントを紹介する。

45位でフィニッシュした村上裕二郎(日本)45位でフィニッシュした村上裕二郎(日本) (c)Nobuhiko.Tanabe
村上:「初めての海外レースが世界選手権というのはレベルが高かったと思いますが、目標を高く持つことは大切だなと思いました。この悔しいという気持ちを忘れず、初心である今から再スタートをきります!応援ありがとうございました!」

「来年またこの舞台に戻ってきたい」と悔しさをにじませた鈴木来人(日本)「来年またこの舞台に戻ってきたい」と悔しさをにじませた鈴木来人(日本) (c)Nobuhiko.Tanabe
鈴木:「2回目の世界選手権で、前回より良い状態で臨むことができましたがスタート直後にシューズが壊れるトラブルがあり一瞬にしてリズムが崩れ思うように走ることができませんでした。本当に最低限のラインである完走はできましたがかなり悔しい結果になりました。今年でジュニアカテゴリーが終わりU23にカテゴリーが上がりますが、また来年この舞台に戻ってくることができるように頑張っていきたいと思います。応援ありがとうございました」
シクロクロス世界選手権2020 男子ジュニア結果
1位 ティボー・ネイス(ベルギー) 38:50
2位 レナート・ベルマンス(ベルギー) 0:31
3位 エミール・フェルストリング(ベルギー) 0:38
4位 ダリオ・リロ(スイス) 0:54
5位 ティボー・デルグロッソ(オランダ) 1:08
6位 マルコ・ブレナー(ドイツ) 1:13
7位 イェンテ・マイケルズ(ベルギー) 1:29
8位 フロリアン・リシャールアンドラード(フランス) 1:34
9位 ロリー・マクガイア(イギリス) 1:37
10位 アンドリュー・ストローメイヤー(アメリカ) 1:39
45位 村上裕二郎(日本) 5:59
58位 鈴木来人(日本) 8:29
Text:So.Isobe
Photo:Nobuhiko.Tanabe