東京五輪ロードレース開催まで半年を切った。コース沿道のどこで観戦できるかはまだ情報がないが、コース後半にあたる静岡県小山町では観戦に関しての準備が進んでいる。そこで栗村修さんと一緒に観戦ポイントについて研究してみた。



栗村修さんと小山町オリンピック・パラリンピック推進局・局長の池谷精市さん栗村修さんと小山町オリンピック・パラリンピック推進局・局長の池谷精市さん
東京五輪ロードのコースマップを手にした栗村修さん東京五輪ロードのコースマップを手にした栗村修さん ツアー・オブ・ジャパンや全日本選手権ロード開催の実績がある静岡県小山町。フィニッシュとなる富士スピードウェイや富士山周辺道路はそれまでの開催経験を活かしつつ、東京五輪ロードを迎えるべく準備を進めている。

今回は開催200日前イベントとして開催された「サイクルフェスタ in OYAMA」において、TOJディレクター&J SPORTS解説者の栗村修さんとコース沿道の観戦ポイントについて掘り下げてみた。栗村さんとともにお話を聞いたのは静岡県小山町オリンピック・パラリンピック推進局・局長の池谷精市さん。開催直前までまだ未定の部分もあるが、現状考えられる観戦スポットと方法について伺った。

東京2020オリンピック競技大会 自転車ロードレース 男子ロードのコース東京2020オリンピック競技大会 自転車ロードレース 男子ロードのコース
CW 東京五輪ロードですが、観戦に関しての情報がまだほとんどなく、沿道では観ることができないのではないか? という疑問の声もあります。勝負どころの明神峠などに立ち入って観ることができるのかも関心事です。

小山町オリンピック・パラリンピック推進局・局長の池谷精市さん小山町オリンピック・パラリンピック推進局・局長の池谷精市さん 池谷 まず五輪ロードはコース沿道で観ることができます。ただし、五輪組織委員会では、コース上で歩道がない箇所や、車道と歩道がしっかりと分離されていないところについては観戦を御遠慮いただきたいという考え方を示しています。それは安全確保ができないから、ということです。

そして、まずお断りとして何事にも五輪組織委員会の決定が必要で、私たちが先行して発表するわけにはいかないのですが、三国・明神峠には観客に入ってもらって観戦できるようにする方向で進んでいます。

CW そうなんですね。では、静岡県内でとくにコース後半の見どころについて、地元で調整が進んでいる観戦スポットについて現状を教えていただけますか。

南富士エバーグリーンライン(昨夏のプレ大会より)南富士エバーグリーンライン(昨夏のプレ大会より) photo:Satoru Kato栗村 ではまず、最初の勝負どころと言われる469号線、南富士エバーグリーンラインのスキー場への長い登りはどうでしょうか? 普段は自動車専用道で、ここからレースは始まると言われています。それまでの道志みちですでに集団はある程度バラけているとは思いますが、この長い上りが最初のセレクションだと思われます。
(※女子ロードのコースは男子のコースから短縮されたものになるため、ここでは男子ロードの観戦について話しています)

池谷 エバーグリーンラインは富士急行が管理している道路なので、富士急行さんのほうで観戦できるようにするという情報が入っています。ただしまだ実際にどうなるかという具体的な案は示されていませんので、情報アップデートをお待ち下さい。その手前のサファリパークに近い「牧場」エリアは草原が広がって富士山が眺められる美しいポイントで、ここでも観戦できるようにする計画があります。

東京2020オリンピック自転車ロードレースコース 静岡県周辺地図東京2020オリンピック自転車ロードレースコース 静岡県周辺地図 (c)静岡県
CW そこまでのアクセスについてはどうですか?

池谷 いずれも歩いて登ることが必要でしょう。エバーグリーンラインの頂上付近の水ヶ塚公園、スキー場、遊園地付近は裾野市ですので、沿道に行けるかどうかは私たち(小山町)にはまだ情報がありません。

質問を投げかける栗村修さん質問を投げかける栗村修さん 栗村 そのあたりの区間だと登りは厳しくても1回だけの通過ですから、観戦プロ的には優先度が下がりそうです。そこからの富士山スカイラインの下りは長くて猛スピードのため、危険があり、観戦には向かないでしょうね。

栗村 テストイベントの際に感じたのですが、下りはかなり高速なので、観戦は気をつけたいですね。やはり安全にレースを観るには登りがいいですね。選手たちが苦しんだりアタックを掛けたりするシーンを見れますからね。

池谷 下りに関しては観戦禁止と指定されなくても、危険ですので、安全管理の観点からも観戦を御遠慮いただきたいというのが基本的なスタンスです。

昨夏のプレ大会で三国峠を登る選手たち昨夏のプレ大会で三国峠を登る選手たち photo:Satoru Kato
CW 峠での観戦はどうでしょうか?

池谷 前回のテストイベントのときには観戦者を入れなかった明神峠については、沿道で観てもらえるような方法を考えています。

コースのディテールについて話し合う小山町オリンピック・パラリンピック推進局・局長の池谷精市さんと栗村修さんコースのディテールについて話し合う小山町オリンピック・パラリンピック推進局・局長の池谷精市さんと栗村修さん CW 峠での観戦は何が問題になるのでしょう?

池谷 まずそこまでのアクセスをどうするかという問題があります。自転車や車がコース上に入ると問題が起こる要素となるので、観戦者の方は麓に自転車を停めて、徒歩でコースにアクセスしてもらう方法で調整しています。峠の頂上までは3kmほどです。

栗村 3km歩くのは、ツール・ド・フランスの山岳での観戦としては普通にある方法ですね。体力さえあれば大丈夫ですね。

池谷 明神峠は3km歩けばいちばん勾配がきついポイントにたどり着くんですが、そこまで行かなくても途中途中で富士山も見えます。私は2km歩いた地点でも十分に景観と観戦が楽しめると感じました。

CW 歩く覚悟があるなら勝負どころの山岳ポイントでも観戦ができそうで、安心しました。フィニッシュとなる富士スピードウェイのある小山町周辺の沿道では何度か選手たちが通過する様子を観戦できるようですね。小山町として観戦者の方に対応する準備はありますか?

コースとレースの進み方を研究して複数回観戦できるスポットを探そうコースとレースの進み方を研究して複数回観戦できるスポットを探そう 池谷 小山町内にはコースに沿ってうまく移動すると複数回観ることができるポイントがあります。そのときの現場の状況によりますが、数を追うなら3回の観戦が可能です。そのうえで登りなどでうまくスピードが落ちるポイントを選べば十分にレースを観ることができるでしょう。

そして、私たち小山町では道の駅すばしりで観戦できる「コミュニティライブサイトin道の駅すばしり」を計画しています。いわゆるパブリックビューイングで、男・女ロードの7月25・26日の両日開催する予定です。TOJと同等の大型ビジョンカーでスタートからゴールまでを男女ともに完全中継します。特に男子は2回、すぐ傍のR138を通るのでナマで観戦できます。入場は無料で、飲食、競技体験、来場者プレゼントなどお祭り感覚で楽しめるファンゾーン的なおもてなしを用意する予定です。

「コミュニティライブサイト」会場となる道の駅すばしり「コミュニティライブサイト」会場となる道の駅すばしり 栗村 そのパブリックビューイングでは、なんと私・栗村が解説としてマイクを握り、みなさんと一緒にライブ&映像で観戦を楽しむことになっているんですよ!

池谷 ほかにも小山町内にはレースが何度も通過するポイントもあります。また、速いスピードで通過しているところよりも選手が頑張っているところが観たいという希望もあるようですから、登りで観戦しやすいおすすめポイントも選定している最中です。コース沿道付近の公民館を開放するなど、各所に休憩スペースや給水所を設置して熱中症対策など工夫したいと思っています。

CW コースに沿った移動は徒歩になりますが、観戦場所はいろいろ選べそうですね。

池谷 主要なポイントには駐車場を設けて、そこからコース沿道には徒歩でアクセスしやすい動線を考えたものにしたいと思っています。コミュニティライブサイトもそのひとつです。うまく観戦するには、コース地図でレースの通り方をよく研究して、動き方を考えてください。東京・府中でのスタートは午前11時、富士スピードウェイでのフィニッシュは17時過ぎです。小山町周辺での交通規制も早めに始まりますので、各地点の通過予測時間をみて十分余裕を持って動くと良いでしょう。

富士スピードウェイ全景富士スピードウェイ全景 (c)富士スピードウェイ
栗村 ところで富士スピードウェイ周辺は有料チケット保有者のみ観戦できるということですよね?

池谷 もちろんメインスタンド周辺の有料席での観戦は約束されていますが、メインスタンドに入る手前のサーキット周辺道路でも観戦できるよう、現在UCIとの調整中だと聞いています。確かに観戦できそうなスペースがあるのですが、問題は現状でそこまでの輸送手段が無いため、それをどうするか検討中のようです。続報を待ちましょう。チケットホルダーの方の輸送に関しては確保されています。

五輪コースのフィニッシュ地点、富士スピードウェイとプリモシュ・ログリッチェ五輪コースのフィニッシュ地点、富士スピードウェイとプリモシュ・ログリッチェ photo:So.Isobe有料のメインスタンド観覧席。但しチケットはすでに売り切れ有料のメインスタンド観覧席。但しチケットはすでに売り切れ photo:Makoto.AYANO


栗村 男子ロードのチケットに関して、私の自転車関係者の知り合いで当選した方が一人も居ないのですが...(笑)。私は担当する「コミュニティライブサイトin道の駅すばしり」を盛り上げることに勝負かけます!(笑)。雰囲気から楽しめる会場にしたいと思っています。

池谷 明神峠など山場のエリアにもできるだけ多くの観戦者に入っていただきたいと考えていますが、やはり全面交通規制がかかり、車も自転車も通行禁止ですので、徒歩移動が原則になることは覚えておいてください。本場ヨーロッパにように自転車でコースに入るのは日本では警察の許可が降りません。また峠での観戦に限らず、盛夏ですので熱中症が心配です。休憩所にはなるべく氷や水なども用意しますが、ご自身でも対策を十分にされることをおすすめします。

CW 須走地区などでも電柱を撤去して電線を地中に埋めるなどして景観を楽しめるよう工事が進んでいると報道されていますね。さて、ここまでの話で、総括すると栗村さん的おすすめ観戦ポイントはどこでしょうか?

複数回通過するポイントは観戦にはおすすめだ複数回通過するポイントは観戦にはおすすめだ 栗村 小山町内はロンド・ファン・フラーンデレンのようにコースが入り組んだ感じで、何度も観れるのでおすすめですね。ベルギー観戦プロのように動けば、複数箇所で観れて、グッズや選手の投げるボトルをゲットできる確率も高くなります。とくに「冨士霊園」付近なら効率的に複数回観戦できそうです。

そして観戦の「セミプロ」の皆さんはコミュニティライブサイトin道の駅すばしりで私・栗村の解説を聞きながら、選手が来たら沿道に出て応援するのが安全も確保されているためおすすめです。無料ですが、有料チケットを超えるサービスでお迎えします!(笑)。

そして三国峠や明神峠はコアなファンならテッパンの観戦エリア。ツール・ド・フランスのラルプデュエズのようなもので、1回しか観れないけれど、もっとも応援しがいのある厳しいポイントで観ることができます。駐車場を確保して、クルマを停めて歩いて観戦に向かってください。暑いなか補給食や水分を十分に持って観戦することが必要で、自身での体調・危機管理能力が必要であるためやや上級者向きです。

三国峠の急勾配区間を駆け上がるプリモシュ・ログリッチェ(昨年の来日時のコース試走より)三国峠の急勾配区間を駆け上がるプリモシュ・ログリッチェ(昨年の来日時のコース試走より) photo:So.Isobe
池谷 小山町では総合文化会館に駐車場を、峠の麓には駐輪場を準備する計画です。そのほか、沿道には休憩所(公民館やテント)を設けて開放する予定で、駐車場、駐輪場、休憩所(トイレ、給水、医療ケア)などの場所を示した観戦マップを作成し、大会の3か月前頃にホームページに掲載、チラシ等で配布することを予定しています。ご期待ください。

CW 五輪開催まで半年。これからコース沿道周辺の他の自治体でも観戦スポットの提案が続々と出てきそうですね。情報をチェックして自分の動きにあった観戦場所・方法を考えたいですね。



開催200日前イベント サイクルフェスタ in OYAMA

会場となった小山町総合文化会館。五輪ロード当日も観戦の拠点として機能する会場となった小山町総合文化会館。五輪ロード当日も観戦の拠点として機能する 昨夏のプレ大会ロードレースの写真展も開催されていた昨夏のプレ大会ロードレースの写真展も開催されていた


小山町で1月18日に開催されたカウントダウンイベント「サイクルフェスタ in OYAMA」の様子をフォトレポート。会場となったのは池谷局長の話にも出てきた小山町総合文化会館。栗村さんによる観戦講座や実際の競技自転車に触れるコーナーなど、様々な企画が目白押し。オリンピックロードレースをより盛り上げるために工夫を凝らした多くの企画を盛り込んだイベントだった。

栗村さんによる観戦講座が開催された栗村さんによる観戦講座が開催された 競技用自転車に触れることができる展示も競技用自転車に触れることができる展示も


沿道でスマホによるセルフィーは危険。危険防止に叩き落とす選手も居るとか沿道でスマホによるセルフィーは危険。危険防止に叩き落とす選手も居るとか 各国の応援フレーズを紙に書いて応援するのもオススメだ各国の応援フレーズを紙に書いて応援するのもオススメだ


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参加国の国旗をつくって応援参加国の国旗をつくって応援 金太郎が自転車に乗った記念クッキー金太郎が自転車に乗った記念クッキー



取材協力:静岡県小山町オリンピック・パラリンピック推進局
photo&text:綾野 真(シクロワイアード編集部)

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