「身体の状態は去年より良かった。この調子だと4月に良い成績を出せるんじゃないかという感触です。五輪代表選考のランキングについてはまだまだこれからです」。ツアー・ダウンアンダーを過去最高の総合29位で終えた新城幸也(バーレーン・マクラーレン)に話を聞いた。



ダウンアンダーを終えてインタビューを受ける新城幸也(バーレーン・マクラーレン)ダウンアンダーを終えてインタビューを受ける新城幸也(バーレーン・マクラーレン) photo:Kei Tsuji
2014年総合56位、2017年総合70位、2018年総合43位、2019年総合39位、そして2020年総合29位。仕事内容が異なるため単純比較できないが、新城はツアー・ダウンアンダーでの総合成績を毎年上げている。係数の高いUCIワールドツアーレースでUCIポイントを20ポイントを獲得した新城は、JCFの東京オリンピック代表選考ランキングにおいて首位に躍り出た。
JCF代表選考ランキング(1月27日現在)
1位 新城幸也(バーレーン・マクラーレン) 311ポイント
2位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) 256.8ポイント
3位 石上優大(NIPPOデルコ・ワンプロヴァンス) 161.5ポイント
4位 中根英登(NIPPOデルコ・ワンプロヴァンス) 115ポイント
5位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム) 108ポイント
コアラと新城幸也(バーレーン・マクラーレン)コアラと新城幸也(バーレーン・マクラーレン) photo:Kei Tsuji
5回目のダウンアンダーを終えた新城は、UCIワールドツアーレースのカデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレース出場のため閉幕翌日にヴィクトリア州に移動している。なお、同レースのフィニッシュ地点は2010年に新城が9位に入ったロード世界選手権と同じジーロングだ(フィニッシュ位置は異なる)。

「今から7月まで大きな休みも入れずに走り続けます」と語る新城に、ダウンアンダーについて、そして東京五輪を含む大きなシーズンに向けての展望を聞いた。

後半にかけてポジションを上げる新城幸也(バーレーン・マクラーレン)後半にかけてポジションを上げる新城幸也(バーレーン・マクラーレン) photo:Kei Tsuji

まずはダウンアンダー第6ステージを走り終えて

とにかく落車もせずに、いい調子をキープしながら走り終えることができて良かったです。今日は最後のウィランガヒルに向けてチームメイト2人が前の逃げに乗っていて、集団内には僕とルカ(ピベルニク)とサンティアゴ(ブイトラゴ)とハーマン(ペーンシュタイナー)が残っていました。1回目も2回目もウィランガヒルは前から10番手以内で入りました。

残り2km地点でインピーと一緒に遅れ、彼は集団に戻ったんですが自分は戻れなかった。追い込んだら(脚が)終わると思って、そこからは刻んで行きました。

今回のエースナンバーが意味するものは?

確かにチーム内のゼッケンはアルファベット順ではないものの、今回のリーダーはラファエル(バルス)でした。チームがオリンピックの代表選考のために配慮してくれたこともあるかもしれない。

去年の総合39位という成績から、今年は総合50位以内が目標でした。エースをアシストしながら総合50位以内に入ってUCIポイントを10ポイント獲得できればと考えていたので、今回総合30位以内で20ポイントを獲得したのは予想以上でした。

ハラーとともに前半は集団後方で走る新城幸也(バーレーン・マクラーレン)ハラーとともに前半は集団後方で走る新城幸也(バーレーン・マクラーレン) photo:Kei Tsuji
第1ステージを迎えた新城幸也(バーレーン・マクラーレン)第1ステージを迎えた新城幸也(バーレーン・マクラーレン) photo:Kei Tsuji

総合成績アップは良いコンディションの証拠?

今回はチームにスプリンターがいなかったので忙しくなかったんです。身体の状態がすごく良いから総合成績が良くなったというより、エースのラファエルも落車負傷でリタイアしてしまい、仕事が半減したことが成績につながったのだと思います。

去年は平坦ステージの残り10kmからまずは僕が風除けになって前に上がり、シビー(シーベルグ)とハイン(ハウッスラー)、フィル(バウハウス)に繋いだ。さらに登りではポッツォヴィーヴォやローハン(デニス)の位置取りをしたり、毎日風を受けて走っていました。今年は風を受けずに入っていたので、ツアー全体を通して登り以外で脚を使っていませんでした。毎日疲労を積み重ねる感じではなかったので、例年よりフレッシュな状態でウィランガヒルに挑めました。

「今年は状態が最高だな」というほどではないものの、身体の状態は去年より良かったです、特に登りの走りに関しては。第6ステージでは15名ほどが逃げ切ったので、ウィランガヒルの実質的な登坂タイムは30位ぐらいです。

最終周回に入る新城幸也(バーレーン・マクラーレン)最終周回に入る新城幸也(バーレーン・マクラーレン) photo:Kei Tsuji
ペーンシュタイナーとブイトラゴをアシストし、ステージ40位に入った新城幸也(バーレーン・マクラーレン)ペーンシュタイナーとブイトラゴをアシストし、ステージ40位に入った新城幸也(バーレーン・マクラーレン) photo:Kei Tsuji

マクラーレンがスポンサーに加わったことによる変化は?

マクラーレンのスタッフがチームに加わったので体制が大きく変わりました。テクノロジー、パフォーマンス、マネジメントの3部門の担当者がいて、さらにロッド(エリングワース)がイギリスのやり方を持ち込んでいる。新しいプロジェクトが始まった感じですけど、まとまりがあります。

トレーナーも変わって、トレーニングも変わりました。でもタイ合宿は今までと同じように行いますし、フランス語を話すスペイン人のトレーナーと毎日連絡して、例えばアジア選手権に出場するかどうかなど、話し合っています。

JCF代表選考において現状ランキング首位に立ったことについて

例えばブリッツェンはこれからアジアのステージレースを走るので、僕のリードは微々たるものだと思っています。まだまだこれからですね。チームとは「どうすればオリンピックに出れるのか?」という話し合いをしていて、まずはシーズン前半の5月までにたくさんのレースに出てUCIポイントを取る必要があることをチームは理解してくれています。

ダウンアンダーで全然走れなかったら「どうしたものか」という状態になっていたと思います。でも来週のカデルエヴァンスでもポイント獲得のチャンスがある。ダウンアンダーとカデルエヴァンスでUCIポイントを取って、春先のチャンスのあるレースでUCIポイントを取っていくしかないんですね。でもカヴェンディッシュとプールスが揃うUAEツアーでは、平坦ステージでも山岳ステージでも忙しく働くことになると思います。

フィニッシュ手前の位置どりを説明する新城幸也(バーレーン・マクラーレン)フィニッシュ手前の位置どりを説明する新城幸也(バーレーン・マクラーレン) photo:Kei Tsuji
ステージ41位に入った新城幸也(バーレーン・マクラーレン)ステージ41位に入った新城幸也(バーレーン・マクラーレン) photo:Kei Tsuji

1月という時期にUCIワールドツアーを走る意味は?

シーズン前半にコンディションのピークを持っていくという意味では良いと思います。このダウンアンダーがなければ本格的な参戦は3月なので、それからだと7月まで5ヶ月しかない。

この調子だと4月に良い成績を出せるんじゃないかという感触です。ツールやブエルタを総合80位前後で走っていた頃は、登りでも前の50人ぐらいに残れていた。それぐらいのコンディションまで持っていきたいと思っています。ここ2〜3年はそういった走りができず、グランツールでも総合100位前後だった。

今のイメージはアムステルゴールドレースで10位に入った2014年です。その年もダウンアンダーでシーズン初戦を迎えてからタイ合宿して、渡欧してティレーノ〜アドリアティコを走って、ブエルタ・アル・パイスバスコとフレーシュブラバンソン(ブラバンツペイル)を走ってアムステルゴールドレースで10位。そしてその年にツールの総合成績が一番良かった(総合65位)。

今年も、ティレーノの予定はないですけど、そういう流れです。それらのレースをこなすことで間違いなくコンディションは良くなります。

東京オリンピックを意識した体づくりは?

これからです。ここまでは、登りの少ないダウンアンダーのためにバイクペーサーで平坦の走りを強化していたので、登りを意識したトレーニングは行ってこなかった。来週カデルエヴァンスを走ってからタイ合宿に戻って、登りのトレーニングを入れていきます。ツール・ド・フランスに出れるかどうかは4月と5月の走りによりますけど、仮にツールを走っても、メリハリを付けて走れるので(仮に東京オリンピックが確定していても)問題ないです。

text:Kei Tsuji in Adelaide, Australia