いよいよツアー・オブ・ジャパンが5月16日(日)の大阪・堺ステージから始まる。1週間かけて東へ進み、23日(日)の東京ステージまでの7日間654kmのレースだ。今年は昨年までとコースやレース形態が少し異なっている。いずれも僅差での勝負、逆転可能な設定になった。

大きな変更点は2つ
まずは初日の堺ステージが個人TTになったこと。天候におよそ左右されず、個人の力量だけが頼りだ。クリテリウム形式のレースを初日に持ってくると悪天候時はアクシデントがおきやすく、初日から決定的な差がつく恐れがある。

もう一つは富士山ステージが個人TTからマスドスタートのレースになったこと。今まで上位でさえ2、3分単位の差がついてしまい、このステージだけで総合優勝が決まるケースが多かった。今年はそこまでの差は出ないだろう。
この2つの変更で毎日がスリリングで激しい展開が生まれ、東京ステージでの逆転もありうる、見て面白いレースになるのは確実だ。

午前中に独立したクリテリウムもある堺ステージ午前中に独立したクリテリウムもある堺ステージ photo:Hideaki.TAKAGI独立したクリテもある堺ステージ
1. 5月16日(日)堺ステージ 2.65km 個人タイムトライアル 
昨年と同じ場所の大阪府堺市大仙公園を1周する個人TTだ。直角コーナーが多く、一部はJR阪和線と併走する。見どころはスタート地点周辺だ。各選手のタイムがわかり、レース前後の選手たちも間近に見られる。混み合うことが予想されるので、途中のコーナリングやJR阪和線の踏み切りや併走区間も面白いだろう。
 
今回選手はTTバイクでなく、ノーマルバイクだ。海外チームにとっては機材が少なくすむので都合が良い。バイクによる差は少なくなるので、純粋に個人の力勝負だ。観戦時、選手はコーナーやガードレールをセンチ単位まで攻めてくるので気をつけよう。

そして実は見逃してならないものは「第1回堺国際サイクルロード」だ。これはTOJとは別に行われるレースだがチームと選手は同じ。11時に堺市役所前をパレードスタート、大仙公園周回コースでいったん止まって、11時20分から2.7kmを15周する40.5kmで行われる。TTのウォーミングアップととらえるか名誉(実利?)を取るかは選手しだい。観客にとっては1日で2つのレースが見られて嬉しい。ほか、サイクリングパレードや記念行事が行われて飽きさせない。


東大寺大仏殿からスタートの奈良ステージ東大寺大仏殿からスタートの奈良ステージ photo:Hideaki.TAKAGI今年も東大寺前スタート
2. 5月17日(日)奈良ステージ 121.2km
奈良ステージといえば東大寺大仏殿中門前のスタート風景だ。今年もパレード走行のスタート地点だ。鹿と戯れる選手たちと近づけるチャンス。特に海外選手たちはつかの間の観光気分なので、写真に一緒に収まるなんて事ができるかも。選手たちは3kmほど先で降車し、バスで布目ダムスタート地点へ向かう。

奈良ステージのコースはスタート/フィニッシュラインへ向かう坂がきつい。反対側ほどにある小さなコブもアタックポイントだ。先の見えない区間が多くアタックが決まりやすい。過去には小集団や単独でのゴールもあるが、多くは全ての逃げを吸収した集団がバラバラとゴールするもの。ここで同一集団とみなされずに秒差を取られると厳しい。確実に上位でも秒差がつくステージだ。
観戦ポイントはスタート/フィニッシュライン付近だ。ダムのえん堤を行き来して1周で2回見られる。小さくとも自転車があると便利。車で9時までに入っておくか、あるいは東大寺からのシャトルバスに乗るかだ。コースは狭く見通しも悪いので、コース上の移動はできないと思ったほうがいい。



うだつのある町並みの美濃うだつのある町並みの美濃 photo:Hideaki.TAKAGIうだつのある家並みからスタートの美濃
3. 5月18日(火)美濃ステージ 160.7km
ここもパレードスタート地点は見逃せない。「うだつ」という飾り屋根のついた家並みから選手たちがスタート。歴史的構造物群とカラフルな隊列の対比がすばらしい。シャトルバスで移動できる。
コースは1箇所ややきつい上りがあり、ほかはおよそ平坦。レースの動きはきつい上り箇所が中心だが、意外にも平坦のアタックで集団が分かれることもある。高速コースのため、取り残されると命取りだ。過去は小集団、単独、大集団とゴールの形態はそれぞれだ。岡崎和也がゴールまでの大逃げを打ったときの「安全ピン伝説」は記憶に新しい。

観戦はもちろんパレードスタートは外せない。シャトルバスでゴール地点へ行ってもいいが、途中下車プラス徒歩で観戦するのもいい。距離はあるがおすすめは山岳ポイントの上りだ。ゴールへ帰らない覚悟をすれば、最後の決定的なアタックの瞬間を見られる可能性が大きい。

山岳コースの南信州ステージ山岳コースの南信州ステージ photo:Hideaki.TAKAGI「自転車のまち」飯田は山岳コース
4. 5月19日(水)南信州ステージ 148.0km
大会を通じて一番盛り上がるのがこの南信州ステージだ。飯田駅前をパレードスタートし、天竜川沿いの道を子どもたちの声援を受けながら周回コースへ。大きな上りが1箇所、小さな上りもあり集団はばらける展開になる。山岳ポイントからゴールまでが10km以上あり単独での逃げは難しく、毎年10人以内の小集団ゴールになっている。このステージが終わって個人総合成績がそろそろ見え出す頃だ。選手たちは2日連続で飯田に宿泊、翌日は移動日なのでリラックスしている。
観戦はずばり山岳ポイント付近だ。近くでは有志による焼肉観戦ポイントもある(カンパ制)。車で外側を走ればゴールを見れなくもないが、腰を落ち着けて観戦するのが一番だ。

激坂が待ち受ける富士山ステージ激坂が待ち受ける富士山ステージ photo:Hideaki.TAKAGIマスドスタートになって展開は?
5. 5月21日(金)富士山ステージ 11.4km
もはや日本の激坂の代名詞である「ふじあざみライン」を使うレース。標高差1200mを上り、中間過ぎは平均でも18%というあきれるほどの急勾配だ。マスドスタートになった今年は、チームプレーや駆け引きが高い次元で見られるだろう。中間過ぎの激坂区間を越えると平坦になったり勾配の緩急が大きくなる。すでに少人数になっているがここで確実に駆け引きがされるだろう。アシスト陣が活躍できるのは良くて中盤まで。ここを過ぎても複数人数をそろえるチームが有利だ。

観戦はゴール地点かスタート地点だろう。例年ならば中間でも良いのだが、今年はちょっとつらい。でも前もって自走で中間点前後まで上がっておけば、選手たちからは確実に認識される。選手たちも嬉しいだろう。

厳しい山岳の伊豆ステージ厳しい山岳の伊豆ステージ photo:Hideaki.TAKAGI逆転の可能性十分の伊豆
6. 5月22日(土)伊豆ステージ 97.6km
今年はパレード走行がなくなったが、周回コースが延長された。外周道路も使う1周12.2kmを8周するアップダウンに富んだ、というより上りと下りしかないコース。距離は短いものの積算標高差は3000mオーバーの山岳コースだ。富士山でついた数十秒差などすぐに逆転できるほどのコースレイアウトだ。昨年までのコースの順方向プラス園内(正門前を通過)と外周道路の設定。少人数の逃げは必至だ。総合狙いは、例年は富士山に集中すればよかったが、今年はずばりこの伊豆ステージで勝敗が決するだろう。

観戦は全ステージを通じて一番しやすい、どこでもポイントになる。一番はやはり山岳ポイントだろう。移動しながら各所で見られるのがいい。西側市道は移動できない。正門前を通過するのも非日常的で押さえておきたいところ。なおここの駐車場には来年、板張りの屋内250mバンクができる。
またこのステージは完走を目指す選手にとっては最後にして最大の難関だ。周長が長くなった分、関門は緩くなるがそれでも難関に変わりはない。先頭だけでなく後続の選手たちへも熱い声援を送ろう。

東京のど真ん中を経由して大井埠頭へ東京のど真ん中を経由して大井埠頭へ photo:Hideaki.TAKAGI起死回生のアタックが見られるか、最終日
7. 5月23日(日)東京ステージ 112.7km
いよいよ最終日、日比谷シティ前をスタートできる選手は何人だろうか。1.2kmと短めのパレードの後にスタート、大井埠頭の周回コースへ。全くの平坦でハイスピードの戦いが見られる。2位以下の選手・チームによる起死回生のアタックがかかる。平坦コースで一度逃げが決まると吸収するのは容易でない。2、30秒差をひっくり返すことも不可能なことではない。守るほうも攻めるほうもチームの総合力が問われる場面だ。

観戦はゴール地点付近がオーロラビジョンもあってわかりやすい。歩いて周辺を見て回り、ゴールに間に合わせるのがいいだろう。大井埠頭なだけに自走で観戦が一番だ。


このTOJもそしてジャパンカップも、ここ近年観戦マナーが良くなっている。楽しむ応援スタイルも定着してきた。あえて注意点を書くほどのものではないけれど、TOJの場合は「自分」にたいして備えをしておこう。選手がツアーならば、こちら観戦する側もツアーだ。雨対策には傘よりもカッパなど雨具を、日差し対策の帽子と長袖やクリーム、そして全ステージを通じて十分な量の飲食料を持っておくこと、だろう。車で移動の際は交通法規を守り安全運転で。
なによりも選手へは飛び切り大きな声で応援しよう。

photo&text:高木秀彰