愛媛県内子町でのシクロクロス全日本選手権。午前中に行われたU23は2年前のU23チャンピオン経験者である織田聖が2枚めのナショナルジャージに袖を通した。ジュニアは地元愛媛の星、村上兄弟の弟の裕二郎が松本一成をスプリントで下した。



昨年覇者村上功太郎(松山大学)が脚の様子をみる昨年覇者村上功太郎(松山大学)が脚の様子をみる photo:Makoto.AYANO優勝候補の織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)優勝候補の織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Makoto.AYANO


この日の第3レースとなる男子U23は午前10時40分スタート。晴天に恵まれ、ジャケットを脱ぎたくなるほどの暖かくなった日差しの中、23歳以下カテゴリーの選手たちが内子町役場の前を流れる小田川沿いの県道56号線の直線へと飛び出していく。

U23スタート ホールショットは織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)U23スタート ホールショットは織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Makoto.AYANO
ホールショットをとったのは織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)。力強いペダリングで加速して集団の先頭にたつと、そのまま河川敷の芝区間に入ると徐々に後続を引き離し始める。スタートで手痛いミスをしたのがディフェンディングチャンピオンの村上功太郎(松山大学)だった。ペダルを踏み外して失速。再びペダルをキャッチして漕ぎ始めるも集団の中程より後方に位置を下げてしまった。

激坂急登区間を乗ったままクリアする織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)激坂急登区間を乗ったままクリアする織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Makoto.AYANO
ロードレースも走る織田はパワーあふれるペダリングで独走、順調に後続を引き離し続ける。村上も順調に追い上げて順位を上げていく。1周目が終わる頃には積田連(SNEL CYCLOCROSS TEAM)に次ぐ3位までジャンプアップ。さらなる追撃に期待がかかる。

追い上げを続ける村上功太郎(松山大学)だが追い上げを続ける村上功太郎(松山大学)だが photo:Makoto.AYANO 積田連(SNEL CYCLOCROSS TEAM)に追いついた村上功太郎(松山大学)だが、織田聖はまだ遠い 積田連(SNEL CYCLOCROSS TEAM)に追いついた村上功太郎(松山大学)だが、織田聖はまだ遠い photo:Makoto.AYANO


激坂急登区間をこなす積田連(SNEL CYCLOCROSS TEAM)と 村上功太郎(松山大学)激坂急登区間をこなす積田連(SNEL CYCLOCROSS TEAM)と 村上功太郎(松山大学) photo:Makoto.AYANO
順調に差を開く織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)順調に差を開く織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Makoto.AYANO
しかし織田の勢いは村上のそれを大きく上回っていた。序盤こそ差を詰めていた村上だったが、中盤以降は織田のラップタイムに+10秒ほどを毎周回で失うことに。織田は最後には2位に浮上した村上に対して2分12秒の差をつけてフィニッシュに向かう。ホームストレートに入ると、走りながら肩のゼッケンを外し、その「1」を頭上に掲げながら余裕のフィニッシュ。織田の平均時速23.5/hは村上より1km/h速かった。

U232度めの勝利を飾った織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)U232度めの勝利を飾った織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Makoto.AYANO
昨年のU23レースは雪の野辺山だったが、そこでは大きく崩れて8位に終わった。そのとき勝ったのが2位の村上。2017年覇者の織田は2年越しで再びU23王者の2度めのタイトルをモノにした。

「スタートでホールショットをとれて独り抜け出せたので、スタート後1分で自分のペースに持ち込めた。そのまま落ち着いて淡々と走りました。村上君の遅れを確認して、これは行くしかないと思いました。最初は『コータロー』コールばかりだったんですが、途中から僕の名前を呼ぶ声も聞こえたので頑張れました」「デンマークの世界選のようなこのコースは本当に自分向き。ロードレースの要素も多く含むような自分向きのコースで、今年フランスでロードレース修行をしてきていたので、その持ち味を活かすことができた」と織田。

優勝した織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)と父・達さんが祝福優勝した織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)と父・達さんが祝福 photo:Makoto.AYANO男子U23表彰  優勝は織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)男子U23表彰 優勝は織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Makoto.AYANO


追い上げるも届かなかったディフェンディングチャンピオンの村上。「ペダルキャッチにミスしたのは、プレッシャーに負けてしまったようです。気分だけが先に行ってしまい、キャッチできたと思ったら外れて、もう一回踏み直して一周目には3位まで上げることができて、それからだったんですが...。今日は不利な要素が多かった。ロード的な走りでは聖さんには敵わないですね」。

優勝した織田は、ロードシーズン中はフランスのコンチネンタルチームに加入し、本場のロードならではのスピードを身に着けてきた。目指すは世界選手権での上位入賞だ。「これでUCIポイントも取ることができたので、世界選でも2列めスタートできる位置にいるので、きっちりと練習していきたい。U23最後の年にまた勝つことができた。去年は雪のレースで失敗してエリートに上がり損ねたので、今年はU23最後の年に優勝して悔いのないようにエリートに上がろうと思っていたんです。アンダー23の忘れ物は、しっかり拾えたので良かった」。

男子ジュニア

男子ジュニアスタート 松本一成(TEAM SCOTT JAPAN)と鈴木来人(BonneChance)が先頭を争う男子ジュニアスタート 松本一成(TEAM SCOTT JAPAN)と鈴木来人(BonneChance)が先頭を争う photo:Makoto.AYANO
U23レースに先だって第2レースとしてスタートした男子ジュニア。ホールショットを争った 鈴木来人(BonneChance)と松本一成(TEAM SCOTT JAPAN)が先行し、芝区間へ。後方でもたついたのは村上裕二郎(松山工業高校)。兄の功太郎がペダルキャッチに失敗したことの前触れか、「スタート直後のペダルキャッチが上手くいかず、はまったと思ったらズコンっと外れてしまい、ほぼ最後尾でシングルに入りました」。

男子ジュニア 先頭を行く村上裕二郎(松山工業高校)男子ジュニア 先頭を行く村上裕二郎(松山工業高校) photo:Makoto.AYANO追い上げる村上裕二郎(松山工業高校)追い上げる村上裕二郎(松山工業高校) photo:Makoto.AYANO


しかし順調に追い上げ、1周目が終わる頃には松本に追いつく。そこからは松本と村上のランデブーが始まった。松本が先行することが多く、パワフルに踏んでいく。最後尾からの追い上げに使った体力を、うまく温存させる村上。最後の半周で村上が前に出て、先行を図るが、松本もそれを許さない。

男子ジュニア 松本一成(TEAM SCOTT JAPAN)を追う村上裕二郎(松山工業高校)男子ジュニア 松本一成(TEAM SCOTT JAPAN)を追う村上裕二郎(松山工業高校) photo:Makoto.AYANO
男子ジュニア 松本一成(TEAM SCOTT JAPAN)をマークする村上裕二郎(松山工業高校)男子ジュニア 松本一成(TEAM SCOTT JAPAN)をマークする村上裕二郎(松山工業高校) photo:Makoto.AYANO
ほぼ並んだまま最後の階段を駆け登ってホームストレートに入って先に仕掛けたのは松本。しかし村上は背後から加速するとスプリントで松本を一蹴、大きく手を挙げてフィニッシュ。その後ろで松本は頭を抱える。

村上裕二郎(松山工業高校)が松本一成(TEAM SCOTT JAPAN)をスプリントで交わす村上裕二郎(松山工業高校)が松本一成(TEAM SCOTT JAPAN)をスプリントで交わす photo:Makoto.AYANO
男子ジュニアで松本一成(TEAM SCOTT JAPAN)を下した村上裕二郎(松山工業高校)男子ジュニアで松本一成(TEAM SCOTT JAPAN)を下した村上裕二郎(松山工業高校) photo:Makoto.AYANO
2位でフィニッシュ。顔を覆う松本一成(TEAM SCOTT JAPAN)2位でフィニッシュ。顔を覆う松本一成(TEAM SCOTT JAPAN) photo:Makoto.AYANO
スタートのミスを挽回しつつも省エネにつとめ、最後は鮮やかな加速力で勝負をつけた村上。「疲労が溜まっていて、イッセイ(松本)を風よけに使えば脚は溜めることができると思いました。階段など駆け上がる力は彼に劣ると思っていたので、ラストのキャンバー区間で必死に前に出て、最後まで前に出られないようにした。できればラスト一周で逃げ切りたかったけど、スプリントでは勝つことができた」。

「地元開催ということで「ユウジロウ」コールがあって嬉しかった。焦らずペースを上げていき、1周目が終わる時に先頭に追いつけました。ラストはスプリントで負けるかと思いましたが、冷静に踏めたのでよかったと思います。今回は特別な気持ちで走り、焦らずレースを進められたことが勝因だと思います。調子はかなり悪い状態でしたが、やる気に満ち溢れていたので勝てました。地元開催でたくさんの応援が力になりました」。

男子ジュニア表彰 優勝は村上裕二郎(松山工業高校)男子ジュニア表彰 優勝は村上裕二郎(松山工業高校) photo:Makoto.AYANO
松山工業高校のクラスメートに祝福される村上裕二郎松山工業高校のクラスメートに祝福される村上裕二郎 photo:Makoto.AYANO
破れた松本。マウンテンバイクではジュニアチャンピオンであり、言うまでもなく松本駿の息子で、璃奈の弟。勝負慣れした貫禄の走りに思えたが、今回は村上が一枚上手だった。「もう少し作戦を考えながら走れるようにしたかったです。自分から負け筋を作ってしまったので、まだそういうとこは足りてないんだなって思いました」。

女子ジュニア 

女子ジュニアは渡部春雅(駒澤大学高等学校)と石田唯(北桑田高校)の2人の争い女子ジュニアは渡部春雅(駒澤大学高等学校)と石田唯(北桑田高校)の2人の争い photo:Makoto.AYANO
女子ジュニアは2人きりのレース。渡部春雅(駒澤大学高等学校)と石田唯(北桑田高校)は、ともに高校2年生。そしてインターハイロードの1位と2位のコンビだ。お互いをよく知るマッチレースはスタートから渡部が先行し、石田が食い下がる展開。オフロードの経験ではMTBもトレランも全国レベルの渡部が数段上だ。

女子ジュニア 渡部春雅(駒澤大学高等学校)がキャンバーを慎重に行く女子ジュニア 渡部春雅(駒澤大学高等学校)がキャンバーを慎重に行く photo:Makoto.AYANO
中盤までランデブーを続けた二人だが渡部が独走状態に入り、優勝。「この内子でレースが走れたことが嬉しかった。まだまだこれからも試合が続くので頑張っていきたい」と渡部。「やっぱり春雅ちゃんは強かった」と石田。

女子ジュニアで優愛した渡部春雅(駒澤大学高等学校)女子ジュニアで優愛した渡部春雅(駒澤大学高等学校) photo:Makoto.AYANO女子ジュニア表彰 1位 渡部春雅(駒澤大学高等学校) 2位 石田唯(北桑田高校)女子ジュニア表彰 1位 渡部春雅(駒澤大学高等学校) 2位 石田唯(北桑田高校) photo:Makoto.AYANO


渡部は駒澤大学高等学校の「ひとり自転車部」として活動。学校に練習環境がないため授業の後は兼部する陸上競技部でランニングで練習しているという。来年はジュニア世界選手権自転車競技大会への出場が目標。そして2024年パリ五輪への出場を目指している。

男子U17+U15

男子U17+U15のスタート 柚木伸元(Pro Ride)がホールショット男子U17+U15のスタート 柚木伸元(Pro Ride)がホールショット photo:Makoto.AYANO
男子U17で優勝した柚木伸元(Pro Ride)男子U17で優勝した柚木伸元(Pro Ride) photo:Makoto.AYANO男子U15 佐々木啄人 (BonneChance)男子U15 佐々木啄人 (BonneChance) photo:Makoto.AYANO


女子U17+U15

女子U17+U15スタート 中島瞳(TRIGON with KURE/BOUNCE)がホールショット女子U17+U15スタート 中島瞳(TRIGON with KURE/BOUNCE)がホールショット photo:Makoto.AYANO
女子U17 1位 大蔵こころ(松山城南高等学校)女子U17 1位 大蔵こころ(松山城南高等学校) photo:Makoto.AYANO女子U15 1位の日吉愛華(LimitedTeam846まるいち)女子U15 1位の日吉愛華(LimitedTeam846まるいち) photo:Makoto.AYANO

男子U23
1位 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) 50:56
2位 村上功太郎(松山大学) +2:12
3位 積田連(SNEL CYCLOCROSS TEAM) +3:19
4位 堀川滉太(NEBcycling) +3:58
5位 渡邉歩(EQADS) +4:18
6位 出羽秀多(チーム36隊) +5:42
男子ジュニア
1位 村上裕二郎(松山工業高校) 39:54
2位 松本一成(TEAM SCOTT JAPAN) +2
3位 鈴木来人(BonneChance) +58
4位 中島渉 (TRIGON with KURE/BOUNCE) +1:56
5位 副島達海(Limited team 846) +2:14
6位 高本亮太(Limited team 846) +2:32
女子ジュニア
1位 渡部春雅(駒澤大学高等学校) 38:32
2位 石田唯(北桑田高校) +55
text&photo:Makoto AYANO