「ホビーレーサーの甲子園」ツール・ド・おきなわ市民レースの各クラスの優勝者たちによるレポート。第1弾は市民100kmマスターズで優勝した酒井洋輔さん(ゲリラ豪雨)。好きな酒を断ち、ダラけた生活に区切りをつけ、専門コーチングも受けてわずか3年目で掴んだ栄冠。優勝だけにこだわったという走りとは?



市民100kmマスターズで優勝した酒井洋輔(ゲリラ豪雨)市民100kmマスターズで優勝した酒井洋輔(ゲリラ豪雨) photo:Makoto.AYANO沖縄優勝までの道のり
自転車を始めて3年になりますが、とにかく早く経験を積みたくて、半年からレースにエントリーし始めました。また当時は周りに自転車仲間いなかったので誰も教えてくれる人もおらず、そのためには積極的にレースに出て、自分から経験値を感じ取るしかないな、と。

そのうち会場などで徐々に仲間ができ始めました。今回沖縄に一緒に参戦した方々もそうです。ですが1年半くらいで伸び悩む時期がやってきました。そんな中、仲間の1人の斎藤さんの活躍に刺激を受け、どうやらスマートコーチングってとこに通ってるとの事だったので、自分も真似て翌月からそこに通い始めましたが、これが大きな機転となりました。

沖縄入りしたらソーキそばですね沖縄入りしたらソーキそばですね そこでコーチの安藤隼人さんと出会い、それまでただ単にガムシャラにキツい事だけを繰り返してた練習方法から、いかに身体の使い方を意識して考えて自転車に乗るか、またプランをたてて狙ったゾーンを追い込むか!って方向に練習内容が変わっていきました。そこから少しずつ色んな面が向上してきた感があり再びモチベーションを維持して練習に取り組める様になりました。

で、普段は旅行とかもしない自分はツール・ド・おきなわの名前は聞いたことはありましたが、あんな遠いとこ行けないべ!みたいなノリで実は最初は全く興味ありませんでした(笑)。あまりにも周りから、沖縄、沖縄って単語が入ってくるので、去年は締め切り10日程前になって初めてサイトを覗いてみたら、100キロアンダー39がまだ受付中!当時39歳の自分は何かの縁かもしれない、斎藤さんも行くようだし久しぶりの旅行と思って一回いってみっか!ロードレースも一回経験しておこう!みたいな軽いノリでエントリー。

表彰後にスマートコーチングの仲間と記念撮影表彰後にスマートコーチングの仲間と記念撮影 特に沖縄対策とかしてませんでしたが(いつどんな大会に出ても備えられる様に常にトレーニングはしてた)15位という思ってた以上の結果を出せたので楽しい思い出となり、また来年も行きたいな!となりました。そこでロードレースの面白さ、未知の領域に興味をもち次はニセコクラシックにエントリー。「グランフォンド世界選手権」の出場権というキーワードがカッコ良くて、それを目指して練習を重ねていきました。そのあたりから長い距離を走り抜けるための練習なども始めました。

で、世界選手権出場権を獲得しまして、今年の9月には初の海外旅行となるポズナンでの大会にも出場してきました。そこでは恐ろしいほどの豪華メンバーの方々とご一緒させてもらい、非常に貴重な経験になりました。

ニセコが終わって今年の沖縄にエントリーする時にどのカテゴリーにエントリーするか悩みました。140へステップアップするか、年齢的に1番有利な100キロマスターズにするか。で結局、勝ちにこだわりたいなと思って100キロマスターズに決めました。

実は去年、安藤さんが「早くスマートコーチングのジャージを沖縄の表彰台で見たいなぁ」と言っていたのがずっと胸の中にあったってのも100キロマスターズへのエントリーをした大きな動機の1つです。てな訳で、今年は勝ちだけを狙っての沖縄挑戦となりました。

レースで使用したスペシャライズドVENGE+ROVAL64ホイールレースで使用したスペシャライズドVENGE+ROVAL64ホイール
レース
今年はシード圏内だったので、割と前列の方でスタート。最初の奥の登りは前方で淡々と。落車が起きても巻き込まれない事に気をつけて登る。多少位置を下げる事があっても特に気にしない。強い強度でのアップをしておいたので割と楽に登れた。

そこから与那までの平坦でも集団中程の楽に走れる位置にこだわって、やはり落車に巻き込まれない状況を想定して走り続ける。ほとんど無理をしてなくて流してるだけでこの区間が1番心拍数が低かった。1つ目のキーポイントの与那の登りでは、早いうちに機を見て左横からサッと前に上がる。去年ここでも淡々と走ってたら先頭集団から遅れることになってしまいレースが終わってしまったので、その反省を活かして今年は序盤から前方付近に位置取り展開に乗り遅れない様にする。

そして何事も無く無事に前方で登り切り、先頭集団にちゃんと残る事が出来た。そのあとの学校坂でも同じ感じで。勾配やペースの変化に対してシッティングとダンシングをちょくちょく使いわける。兎に角無駄な事をしない効率的な走りを意識。

残ってる周りのメンバーと自分を色々比較して、そんなに不利ではなさそうなところでは、無理に合わせて休み過ぎたりしない感じでペーシングしてたら、中盤で何回か飛び出す型になってしまったけど、意図的にアタックして飛び出した訳では無いので冷静にこなす。

羽地ダムへの登りを走る市民100kmマスターズの選手たち羽地ダムへの登りを走る市民100kmマスターズの選手たち photo:Makoto.AYANO
こんな中盤から単独逃げをかますつもりは無かったので、早く吸収してくれないかなぁ、と。そして無理せずにその差をキープ出来そうなところではちょっと踏んで再び休んで待つという感じで。無駄に休んで、せっかく思わぬ型で稼げた差のアドバンテージをチャラにしちゃうのはもったいないので。余裕があれば吸収されそうになる直前でちょっと踏んでみて、後ろに迫ったトレインの先頭の人が焦ってくれたら良いなぁ、とか。まあとにかく色々考えてた。

レース後半戦は平担では平和的なペースでローテして、いくつか現れる1.5キロほどの登りの度に1人の選手が必ずといって良いほど先頭1本引きでペースを上げ続けて人数を絞りにかけだす。この人(結果的に2位になった栗山さん)に着いていけるかどうかが、勝負の分かれ目となった。この辺りから結構キツくなってくるが、このペース上昇が永遠に続く訳じゃないので、毎回毎回この数分さえ凌げれば勝負に残れはずだ! と自分に言い聞かせながら必死でついていく。

慶佐次の補給ポイントでも全く意図せず単独で飛び出す型になってしまったが、ここも冷静に。まあ混雑して遅れる可能性のある補給ポイントで苦もなく前方でしっかりボトルキャッチ出来てラッキーくらいの気持ちで吸収されるのを待つ。そして、いよいよ1番の勝負どころ羽地へ。

市民100kmマスターズで優勝した酒井洋輔(ゲリラ豪雨)が羽地ダムへの登りを行く市民100kmマスターズで優勝した酒井洋輔(ゲリラ豪雨)が羽地ダムへの登りを行く
2505番のゼッケンの方が入りからペース上げて、何時もの人(栗山さん)が2番手、その後ろに自分といった型で登っていく。ここはトンネルに入るまで全くペースが落ちずに、ここまでの中で1番キツい耐えどころだった。で、トンネル抜けて右に曲がって、今度は自分も自分のペースで上げていく。羽地が終わった時点でそれまで7〜8人いた人数が3人に絞られていた。

市民100kmマスターズの選手たち市民100kmマスターズの選手たち photo:Makoto.AYANO市民100kmマスターズの選手たち市民100kmマスターズの選手たち photo:Makoto.AYANO


市民100kmマスターズの選手たち市民100kmマスターズの選手たち photo:Makoto.AYANO市民100kmマスターズの選手たち市民100kmマスターズの選手たち photo:Makoto.AYANO


これはこの3人での勝負になりそう。ローテ回しながらも、自分に有利そうな場面で少し上げてみたりして、相対的な力の残り具合を考える。イオン坂で少しペースアップかけたら、1人脱落したようで、1対1の条件で最後の平坦区間での勝負となった。ここでスプリントが決して得意ではない自分は、残り3キロの看板が見えたところからアタックをかけて、後ろの選手が自分の真後ろにぴたりとつけない、つまり同条件で風の抵抗を受けてもらうかたちにして、我慢比べ勝負に持ち込む。スプリント力には自信は無いが、高速巡航の粘りの走りならそんなに不利では無いかなと。自分の機材はヴェンジにCLX64を履いた装備でもあるし。

ここからはVO2MAXでの5分走をやりきるつもりで。アタックでつけられた差は数秒程度でそんなに離せなかったけど、相手もドラフティングを使わないので早めに心折れてくれたら良いなと思っていたけど、これが非常にしぶとくて、いつ振り向いても数メートル後ろに変わらない差で追ってきている。後で聞いてみたら「最後まで何が起きるかわからないから絶対諦めないで追っていた!」とのこと。ぞっとしたけど感心しました。

ここからがこのレースで1番キツかったけど、相手も苦しそうだったので自分も必死で耐える。「一生に一度しかないかチャンスだ」と言い聞かせながら必死でペダルを回す。残り500の看板が見えた辺りで勝利を確信したけど、念のため残り100の看板が見えるくらいまでは気を抜かず踏んで、最後はしっかりとガッツポーズを決めてゴールする事が出来た。

市民100kmマスターズ優勝 酒井洋輔市民100kmマスターズ優勝 酒井洋輔 photo:Satoru Kato
が、正直なところ…フィニッシュラインを超える瞬間は、喜び100%って感じでは無くて、ホントにここフィニッシュラインで合ってんのかな?違ってたらどうしよう…みたいな、実は変な心配しながらのゴールだった。そのあと公園内に入る辺りで、中鶴さん、川又さんに声をかけられ、そこで、「どうだった?」「勝った…はずです」。みたいな会話。そして川又さんが携帯で速報確認してくれて、1位確定を確認してようやく心の底から「よっしゃぁあー!」と歓喜の雄叫びを上げる事ができた。

正直、周りにはそんなに言ってなかったけど、密かに勝ちだけを意識して備えをしてきたレースだったので、喜びとともにホッとした!ってのなレース直後の率直な感想でした。

市民100kmマスターズで優勝した酒井洋輔(ゲリラ豪雨)市民100kmマスターズで優勝した酒井洋輔(ゲリラ豪雨) photo:Makoto.AYANO
意識して練習してきたことは、自分は住んでる場所柄、ローラー練習が多い。横浜駅のすぐ近くなので、長い坂とかは皆無で、脚を止めずに走り続けられる場所も無い。パワーゾーン的には満遍なく練習しています。脚質的には「中途ハンパー」です」(笑)。

実走する時は毎週水曜日に四谷でスマートコーチングがあるので、そこまでの往復と日曜日に最低100キロのロング。基本的にトイレと給水以外は休憩無しにしています。後は近所の住宅地の坂を繰り返し登る。ほぼ1人での練習なので、風を受け続けてきたせいか、以前と比べて頭の位置が低いフォームが維持できる様になってきた気がします。

レース後に仲間たちに良い結果を伝えることができてホントに良かったです。とくに同行した2人に伝えることができた時はなんともいえない嬉しさがありました。真っ先に報告したかった安藤さんはすぐに見つかりませんでした(笑)。
安藤さんに会えたのは、表彰式までの長い待ち時間で若干疲れてややテンション下がってた時でした。でも、結果を伝えることが最高のカタチでできてとても嬉しかったです。勝ちだけを狙ってたので、ホッとしたってのが喜び以上にあったかもしれません。

これまでも良い結果の出たレース後は、嬉しいのは勿論ですがあそこで諦め無くて良かったなぁー、あのキツさ乗り越えといて良かったなぁーと、ホッとする気持ちの時が結構あります。まあ、レース内容にもよりますが。

「ゲリラ豪雨」の名前の由来は、創設メンバーが何となくカッコ良さそうだから!という理由で付けたそうです。自分は昨年末にチームに加入したばかりなので、その辺の詳しい事情はよくわかりません(笑)。

表彰式は正直緊張しました。ステージ横の待機席のメンツが豪華だったのと、皆さんの自転車に対する会話のレベルが高くて、なんだか場違いな感じがしてました。そこに中鶴さんがビール持ってきたりしてくれて少しリラックス。
表彰台には割と慣れてるはずなのに、結構頭の中が真っ白で表情も硬くなっていました。ですが、メダルを首にかけてもらう時の感動はハッキリ覚えてます。その後2位と3位の方が両手を上げて下さったので、そこで少し緊張が解けましたね。ありがとうございました。

レース前には鍼でコンディショニングレース前には鍼でコンディショニング 大会までの準備と打ち上げ
今回のレースでは前日に沖縄入りしまして、名護に着いてすぐにソーキそばを食べて、その後世界選手権でご一緒させて頂いた今大会はSBCから参戦している岡選手情報によるマッサージを受けてきました。岡選手が普段東京で通ってるマッサージの先生方が、今回沖縄まで遠征して金、土曜の2日間限定営業してたのです。

その後会場へ向かい、受付して昨年チャンプの紺野さんトークショーなどをみて自転車を預けてホテルへチェックイン。夜は今回一緒だった、斎藤さん、龍さんとホテルの部屋で食べて喋ってリラックスして過ごし10時頃就寝。翌朝は5時にホテルをタクシーで出発して、オクマリゾートまで行き、そこからはバスでスタート地点へ。自転車受け取って奥の最初の登りを利用してアップ。しっかり準備してきてたので、臆することなく割と高い強度でしっかりアップ出来まして心拍もそこそこ上げることができて良い感じでした。

体育館での打ち上げの後、夜は名護の焼き肉屋さんでスマートコーチング仲間達と打ち上げでした。これを祝勝会というカタチにできて良かったです。約2週間ぶりにお酒を飲んだので、酔い潰れないか心配でしたが、楽しく飲み続けられました。自分は外食だと焼き肉が1番好きなので、これまた最高の打ち上げでした。

地元の友人やスマートコーチングの仲間と焼き肉で宴会地元の友人やスマートコーチングの仲間と焼き肉で宴会
因みにお酒は好きなんですが、そんなに強くないので飲むと睡眠の質が落ちるので、大会前は控えていました。無理して我慢してる感はありませんでした。というか、練習で追い込むと、その後はスッキリして「酒いらねー」みたいな日が増えてきまして。以前は365日、水より酒飲んでる時間の方が多いんじゃね?っていう生活をしてた自分からしたら信じられない生活ぶりです。そういえばタバコも自転車を初めてから2週間くらいでスパッとやめれました。

小学校から続けてた剣道を高校卒業と共に辞めてからは特に運動もしてなくてダラけた生活を続け、エンデュランス系のスポーツとは全く縁の無かった自分が、今こうして自転車に乗ってる事が驚きです。

あと、安藤さんを始めとするスマートコーチング仲間、今回同行した斎藤さん、龍さん、それと地元のチームゲリラ豪雨、その他多くの自転車仲間の方々、いつも自分の自転車を見てくれてる横浜風魔の高木さん、最後に遠く離れた大分からいつも応援してくれる自分の家族にこの場を借りてお礼を言わせていただきます。「ありがとうございました!」
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著者: 砂田 弓弦
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