従来の登坂区間に加え、強風とパンク多発の未舗装路によるサバイバルレースとなった伝統のパリ〜トゥール。メイン集団の混乱を尻目に54kmに渡る単独逃げを成功したイエール・ワライス(ベルギー、ロット・スーダル)が2度目の勝利を勝ち取った。



大きな石が転がる未舗装路区間ではパンクが頻発した大きな石が転がる未舗装路区間ではパンクが頻発した photo:CorVos
イエール・ワライス(ベルギー)とロット・スーダルのメンバーたちイエール・ワライス(ベルギー)とロット・スーダルのメンバーたち photo:CorVosニキ・テルプストラ(オランダ、トタル・ディレクトエネルジー)ニキ・テルプストラ(オランダ、トタル・ディレクトエネルジー) photo:CorVos


今年で113回目を迎えた伝統のパリ〜トゥール(UCI1.HC)がフランス中部の平野部で開催された。昨年はロンバルディアの1週間前開催に変更されたが、今年はロンバルディアの翌日へと移動した上での開催となった。

プロフィールだけを見ればスプリンター向きのフラットコースだが、終盤50kmには「コート」と呼ばれる登坂区間が7箇所も凝縮されている。例年最終盤のアップダウンで抜け出したアタッカーと集団の追走劇が繰り広げられる展開が常だが、昨年にコース変更が行われ、ワイン畑の中を縫うように刻まれた未舗装路がアクセントとして加えられている。

長くワールドツアーカレンダーに組み込まれてきた大会だけに、7のUCIワールドチームを筆頭にベルギーやフランスのプロコン/コンチネンタルチーム合わせて23チームが顔を揃えた。なお昨年大会の未舗装路区間ではパンクが多発し各チームから非難の声が上がったものの、変わらず9箇所組み込まれたことを受けてドゥクーニンク・クイックステップは出場を見送っている。

スタート直後のアタック合戦からエシュロンが発生したスタート直後のアタック合戦からエシュロンが発生した photo:CorVos序盤に逃げたアレックス・ドーセット(イギリス、カチューシャ・アルペシン)ら序盤に逃げたアレックス・ドーセット(イギリス、カチューシャ・アルペシン)ら photo:CorVos

勝負所を前にセーアン・クラーウアナスン(デンマーク、サンウェブ)とボーイ・ファンポッペル(オランダ、ルームポット・シャルル)が先行する勝負所を前にセーアン・クラーウアナスン(デンマーク、サンウェブ)とボーイ・ファンポッペル(オランダ、ルームポット・シャルル)が先行する photo:CorVos
この日は序盤からアレックス・ドーセット(イギリス、カチューシャ・アルペシン)らが逃げを打ったものの、レース中盤の横風区間でメイン集団が活発化したことで吸収される。この動きで集団分断が発生し、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)を含む大勢の選手が遅れを取った。

本格的な勝負所を前にした残り68km区間では、昨年独走勝利を挙げたセーアン・クラーウアナスン(デンマーク、サンウェブ)とボーイ・ファンポッペル(オランダ、ルームポット・シャルル)が先行。横風で遅れたメンバーが追いつき、人数を戻すメイン集団に対して約1分差で逃げを開始した。

先頭では登り区間でアナスンがファンポッペルを千切り独走体制に持ち込む。163km地点の第1登坂「コート・ド・グゲン(距離800m/平均勾配6.4%)」を超え、続く未舗装路区間では、後続の選手が落車し、集団の勢いが止まったことを利用したイエール・ワライス(ベルギー、ロット・スーダル)が単独追走に打って出た。

集団前方で走るニキ・テルプストラ(オランダ、トタル・ディレクトエネルジー)集団前方で走るニキ・テルプストラ(オランダ、トタル・ディレクトエネルジー) photo:CorVos
パンクしたセーアン・クラーウアナスン(デンマーク、サンウェブ)をパスするイエール・ワライス(ベルギー、ロット・スーダル)パンクしたセーアン・クラーウアナスン(デンマーク、サンウェブ)をパスするイエール・ワライス(ベルギー、ロット・スーダル) photo:CorVos
未舗装路セクター7「シャンセイ・ロイニィ(距離2100m)」では先頭を走るアナスンが痛恨のパンクで脱落。これによってワライスが単独先頭に立ち、メイン集団内では2014年パリ〜ルーベ覇者のニキ・テルプストラ(オランダ、トタル・ディレクトエネルジー)もパンクに見舞われてしまう。強風とアップダウン、そしてパンクが頻発する未舗装路でレースは大きくシャッフルされることとなった。

先頭を突き進むワライスのリードは約1分。「(アタックは)自分から仕掛けたものではなく、気付いたら単独になっていたんだ。後ろから小集団が追いつくだろうと思っていたけれどそれも起こらず。アナスンがパンクしたことで完全に先頭に立ってしまった。こんなコースではレースをコントロールするのはとても難しい。男と男の勝負になると思ったよ」と語るワライスに対してレト・ホレンシュタイン(スイス、カチューシャ・アルペシン)が追走したものの、最終的に集団へと引き戻されている。

追走するメイン集団でアタックを繰り出すオリヴァー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼル)やアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)追走するメイン集団でアタックを繰り出すオリヴァー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼル)やアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) photo:CorVos
アタック合戦を繰り返すメイン集団から1分差で逃げるイエール・ワライス(ベルギー、ロット・スーダル)アタック合戦を繰り返すメイン集団から1分差で逃げるイエール・ワライス(ベルギー、ロット・スーダル) photo:CorVos
2度目のパリ〜トゥール勝利を遂げたイエール・ワライス(ベルギー、ロット・スーダル)2度目のパリ〜トゥール勝利を遂げたイエール・ワライス(ベルギー、ロット・スーダル) photo:CorVos
後続のメイン集団では、残り30kmを切ってグルパマ・FDJとアージェードゥーゼルが猛烈なペースアップを行ったことでバラバラに。パンクから復活したテルプストラやオリヴァー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼル)らフランドルクラシックの名手たちが抜け出しを試みたものの、アタックと吸収を繰り返したことでワライスとの差は縮まらない。55秒差で残り5km地点を駆け抜けたワライスが、2014年に続く2度目のパリ〜トゥール制覇を成し遂げた。

集団にメイン集団から抜け出したテルプストラとナーセンに対し、30秒差で逃げ切ったワライスは、「シーズンを勝利で締めくくれるなんて、これ以上のことはない。ここ数週間とても調子が良く、コース的にもぴったりなこのレースに照準を合わせていたんだ。しかもこんな勝ち方ができるだなんて更に最高だ。タフな序盤区間ではしたたかに走り、後半区間に向けて力を温存したんだ。最初の横風分断でも先頭グループの中で楽に走れていたのでコンディションの良さを確認できたんだ」と喜ぶ。

2位ニキ・テルプストラ(オランダ、トタル・ディレクトエネルジー)、優勝イエール・ワライス(ベルギー、ロット・スーダル)、3位オリヴァー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼル)2位ニキ・テルプストラ(オランダ、トタル・ディレクトエネルジー)、優勝イエール・ワライス(ベルギー、ロット・スーダル)、3位オリヴァー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼル) photo:CorVos
「今日は向かい風区間がたくさんあったけれど、良く下見ができていたので落ち着いてこなせたことが成功に繋がった。残り4kmでも40秒差があったので勝利を確信したんだ。今回は僕のパリ〜トゥール3勝目。1度はU23時代で、2度のエリート勝利。"ミスター・パリ〜トゥール"と呼ばれるのは本当に誇りだ。"キング・パリ〜トゥール"とも呼ばれたけれど、本当に嬉しい気分だ」とコメントを残している。
パリ〜トゥール2019結果
1位 イエール・ワライス(ベルギー、ロット・スーダル) 5:34:20
2位 ニキ・テルプストラ(オランダ、トタル・ディレクトエネルジー) 0:29
3位 オリヴァー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼル) 0:30
4位 アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) 0:36
5位 アモリ・カピオット(フランス、スポートフランデレン・バロワーズ) 0:49
6位 アイメ・デヘント(ベルギー、ワンティ・グループゴベール)
7位 ラルスイティング・バク(デンマーク、ディメンションデータ) 0:51
8位 ベルト・デバッケル(ベルギー、ヴィタルコンセプト・B&Bホテルズ) 0:53
9位 ケヴィン・イスタ(ベルギー、ワロニー・ブリュッセル)
10位 ジュリアン・フェルモート(ベルギー、ディメンションデータ)

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