V2-Rからフルモデルチェンジを果たしたコルナゴの「V3-RS」をインプレッション。軽量オールラウンダーの立ち位置は変わらず、エアロダイナミクスと各所の剛性を強化。優れたクライミング性能を引き継ぎつつ全方位に性能を進化させた1台を紹介しよう。



コルナゴ V3-RSコルナゴ V3-RS (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
数ある老舗イタリアンバイクメーカーの中でも、どの時代においても存在感を放ち続けているレーシングブランドと言えばコルナゴを思い浮かべない人はいないだろう。強豪プロチーム「モルテニ」のメカニックとして手腕を発揮したエルネスト・コルナゴ氏が1954年に興したブランドであり、エディ・メルクスやジュゼッペ・サロン二といったスター選手たちに鍛え上げられた性能で以て、実に7000勝以上の実績を重ねてきた。

現代レースシーンで見れば、Bboxブイグテレコムやユーロップカーにバイクサポートしており、新城幸也もコルナゴのバイクを駆り世界トップレースを戦ってきた。2017年のUAEチームエミレーツ結成とともにコルナゴもワールドツアーへ返り咲き、以降ファビオ・アル(イタリア)やアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー)といったトップ選手たちの走りを支えている。

空力性能を向上させるD型断面の専用シートポストを装備空力性能を向上させるD型断面の専用シートポストを装備 リア三角はエアロや剛性を高めるコンパクトな形状にアップデートされたリア三角はエアロや剛性を高めるコンパクトな形状にアップデートされた フォーク後ろ側をスパッと切り落としたようなカムテールデザインフォーク後ろ側をスパッと切り落としたようなカムテールデザイン

コルナゴのカーボンバイクと言えば、1980年代後半にフェラーリ社との共同開発によって誕生したC35を皮切りとしたラグドのフラッグシップ「Cシリーズ」が代表的なモデル。一方で、2015年に登場した「Vシリーズ」もまたレースで多くの選手がメインバイクとして使用し幾多の勝利を収めてきた。

フェラーリ社とのコラボレーションによって誕生した初代V1-rは、モノコックフレームを採用したブランド史上最軽量のオールラウンドレーサーとして新城やピエール・ロラン(フランス)を始めとするユーロップカーの主力バイクとして活躍。2017年にアップデートされたV2-Rは、C64を差し置いて昨今UAEチームエミレーツのメインバイクとして使われるほどになった。

前作V2-Rよりも直線的なフレーム形状へ変更されている前作V2-Rよりも直線的なフレーム形状へ変更されている ブレーキケーブル内装を可能とするコルナゴオリジナルのコックピットパーツブレーキケーブル内装を可能とするコルナゴオリジナルのコックピットパーツ
スルーアクスルのエンドを避けるようにシフトワイヤーがフレーム内を通っているスルーアクスルのエンドを避けるようにシフトワイヤーがフレーム内を通っている オイルラインがステム下に沿ってコラムスペーサー内にアクセスするオイルラインがステム下に沿ってコラムスペーサー内にアクセスする

そして今年、2年の開発期間を経てモデル名の数字を一つ更新した「V3-RS」が登場。V2-Rのシンプルなフレームワークを受け継ぎつつも、最新のエアロデザインを多数盛り込みトレンドに沿ったスペックを獲得して進化を果たした。

見た目で大きく変更された箇所としては、エアロフォルムの定番となったコンパクトなリアトライアングルが挙げられる。前方投影面積を減らし、かつよりソリッドな反応性を実現する剛性向上にも貢献するデザインだ。他にも、翼断面形状の後端を切り落としたカムテール形状を各チューブに積極的に採用することで空力性能を強化している。

BBはコルナゴオリジナル規格のスレッドフィット82.5BBはコルナゴオリジナル規格のスレッドフィット82.5 ディスクブレーキはフラットマウント、12mmスルーアクスルの仕様だディスクブレーキはフラットマウント、12mmスルーアクスルの仕様だ

また、ディスクブレーキに最適化されたコックピット周りにも注目。専用設計のステムを使用しブレーキのオイルラインをコラムスペーサー内に導くことで、ケーブルのフル内装を可能とした。円形の前側を切り落としたD型のコラムを採用しており、そのスペースを通ってフレーム内にアクセスしている。無線/電動変速コンポーネントの場合は一切ケーブルが露出しないルックスに仕上がり、機械式変速の場合はダウンチューブ上側からシフトワイヤーがアクセスするルーティングとなる。

フレーム形状とともにカーボンレイアップも見直され、V2-Rと比較してヘッド周辺で6%、リア三角周辺では12%の剛性向上を実現し、かつ垂直方向の衝撃吸収性も強化することで優れた快適性も両立。ディスクブレーキ特有のねじれ耐性に強化されたフレームにも関わらず、前作比でおよそ45gの軽量化も果たしており、ヒルクライム性能はさらに進化した。

モデル名ロゴをシートチューブに配置モデル名ロゴをシートチューブに配置 機械式変速のワイヤーはダウンチューブ上側からアクセスする機械式変速のワイヤーはダウンチューブ上側からアクセスする ヘッドにはコルナゴのクローバーマークがあしらわれるヘッドにはコルナゴのクローバーマークがあしらわれる

ジオメトリーはコルナゴ伝統のレーシングに特化した直進安定性能と切れ味鋭いハンドリングを両立させたものに。欧州の荒れた石畳を想定しワイドな28Cタイヤが装着可能なホイールクリアランスを備えている。BBはコルナゴオリジナル規格のスレッドフィット82.5。ねじ切りされたアルミアダプターをフレームに挿入、ベアリング受けを装着しそこにプレスフィットBBを圧入する方式だ。

ディスクとともにリムブレーキモデルもラインアップ。フレームセット価格でリムブレーキモデルが51万円(税抜)、ディスクブレーキモデルが56万円(税抜)だ。ヘッドセット、シートポスト、シートクランプが付属する(フレームセットの場合ハンドル&ステムはオプション品)。今回はカンパニョーロの機械式RECORDとBORA WTO 45ホイールで組まれた試乗車にてテストした。



― インプレッション

「V2-Rよりもさらに乗りやすく快適性も強化された、登坂性能が光る1台」藤野智一(なるしまフレンド)

「V2-Rよりもさらに乗りやすく快適性も強化された、登坂性能が光る1台」藤野智一(なるしまフレンド)「V2-Rよりもさらに乗りやすく快適性も強化された、登坂性能が光る1台」藤野智一(なるしまフレンド) コルナゴは今までC40からC64、エアロロードのCONCEPTまで様々なモデルを試乗してきました。トップモデルであるC64は踏めば踏んだだけ進んでくれる剛性感が非常に大きく、パワーやスプリント力があれば大きな武器になるバイクでしたが、いかんせん硬すぎるような印象でしたね。UAEチームエミレーツでもV2-Rを選択している選手は多かったと思います。

そんなプロ選手からの信頼も厚いV2-Rが進化して、今作ではさらに乗りやすくなったと感じます。コルナゴはフォークとステアリングの角度が独特なので割と癖のある乗り味なのですが、今回ディスクブレーキ化によるものなのかハンドル周りの一体感が増しており、ハンドリングなども癖のないものになりましたね。ダンシング時にハンドルも振りやすくなったと思います。

また縦方向の剛性を調整したおかげか、リア三角は柔らかく乗り心地もすごく良くなっています。グランツールを走るバイクではありますが体に優しい印象で、C64とは全く違うキャラクターのバイクだなと。長い距離のレースで脚を貯められるでしょうし、レースバイクながらロングライドにも良いと思います。

ただ、スプリントなど大パワーをかけるとリアがよじれるような感覚がありました。ハンドルに体を預けてもがくと後輪が路面を噛んでいないようなイメージで、荷重位置を考えて踏み込んであげる必要がありそうです。もちろん、パワーをかけたときにはトップモデルらしい良い反応を見せてくれますよ。

オールラウンドに使えるバイクですが、走りで言えばやはり登りは光るものがあります。重量の軽さも相まって”登りやすさ”を際立って感じられました。軽量ホイールを合わせてあげればヒルクライムマシンとしても大いに活躍することでしょう。個人的には45mmハイトくらいのホイールで、チューブレス仕様で乗りたいかなと思いますね。

「バランスの取れた剛性感、オールラウンド性に磨きがかかっている」藤澤優(ワイズロード上野アサゾー店)

まず乗ってすぐに感じられるレーシーな走り、さすがトッププロ選手たちが使うマシンだなと思わせるパフォーマンスを誰もが享受できます。パワーを受け止めてスッと前に進んでくれる感触はまさにフラッグシップのそれで、自分の出力なんかでは全然足りないくらい、もっともっといけると思わせてくれますね。

「バランスの取れた剛性感、オールラウンド性に磨きがかかっている」藤澤優(ワイズロード上野アサゾー店)「バランスの取れた剛性感、オールラウンド性に磨きがかかっている」藤澤優(ワイズロード上野アサゾー店)
トップグレードではありますが特に硬いという印象はありません。シートステーが細身なのもありますが振動吸収性は高くて乗り心地も良く、パワーを受け止める剛性はあるものの脚にくるような反発は感じませんね。総じてバランスが良く扱いやすさは際立っており、走りもかなりオールラウンダーなイメージです。

やはり今までのVシリーズと同じく登りは軽いですよ。ダンシングの振りのリズムも良くて、一定ペースからさらに上げていくシーンでも鋭い加速を見せてくれます。踏んでも回しても気持ちよく進んでくれるあたりトップ機材だなと感じられますね。

また、ディープリムホイールを抜きにしても平坦の走行性能も上手く両立されていると思います。ハイスピードの維持も容易で、スプリントで50km/hくらいまで上げてみましたけどまだまだいけそうな感じがありました。高速域でも直進安定性は高く、きれいに真っ直ぐ進んでくれるのは安心感がありますね。下りのコーナーでもバイクをしっかり倒していけますし、思ったとおりのラインをトレースしてくれました。

今回のようにハイトの高いホイールを合わせれば、アップダウンで非常に気持ちの良い走りでゴールスプリントも狙えるまさにロードレース仕様という印象。ハイトが低くて軽いホイールに切り替えればヒルクライムレースでも勝負できるマシンと、幅広く使えるオールラウンドレーサーな1台ですね。

コルナゴ V3-RSコルナゴ V3-RS (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
コルナゴ V3-RS
BB規格:スレッドフィット82.5
タイヤクリアランス:最大28C
サイズ:4420S / 450S / 480S / 500S / 520S / 540S / 560S / 580S
カラー:RZWH / RZGR / RZRD / RZWB
価格:510,000円(税抜、リム)
   560,000円(税抜、ディスク)



インプレッションライダーのプロフィール

藤野智一(なるしまフレンド)藤野智一(なるしまフレンド) 藤野智一(なるしまフレンド)

92年のバルセロナ五輪ロードレースでの21位を皮切りに、94/97年にツール・ド・おきなわ優勝、98/99年は2年連続で全日本選手権優勝など輝かしい戦歴を持つ。引退してからはチームブリヂストンアンカーで若手育成に取り組み同チームの監督を務めた。2012年より出身チームのなるしまフレンドに勤務し、現在は神宮店の店長を務める。ブリヂストン時代にはフレームやタイヤの開発ライダーも務め、機材に対して非常に繊細な感覚を持つ。

なるしまフレンド神宮店
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藤澤優(ワイズロード上野アサゾー店)藤澤優(ワイズロード上野アサゾー店) 藤澤優(ワイズロード上野アサゾー店)

大学時代に浅田顕監督の元で経験を積んだ後、スペインへ遠征し2年半ほど本場ヨーロッパのロードレースに挑戦。トップ選手らとしのぎを削った経験を活かし、トレーニングやレース機材のアドバイスを得意とする。現在はワイズロードの中でも最もロードに特化した「上野アサゾー店」の店長を務める。店内に所狭しと並んだ3万~4万点ものパーツを管理し、スモールパーツからマニアックな製品まであらゆるロードレーサーのニーズを満たすラインアップを揃える。

ワイズロード上野アサゾー店
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ウェア協力:イザドア

text:Yuto.Murata
photo:Makoto.AYANO