スロベニアンデュオが最大勾配25%の超級山岳ロス・マチュコスを制覇。激坂でタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)とプリモシュ・ログリッチェ(ユンボ・ヴィズマ)がライバルたちを突き放し、ポガチャルが総合3位浮上&ヤングライダー賞1位浮上、ログリッチェがマイヨロホのリード拡大に成功した。


アスレティックビルバオのホームスタジアムである『サン・マメス』をスタートアスレティックビルバオのホームスタジアムである『サン・マメス』をスタート photo:Unipublic
『サン・マメス』のピッチでサッカーごっこ『サン・マメス』のピッチでサッカーごっこ photo:Unipublic
9月6日(金)第13ステージ ビルバオ〜ロス・マチュコス 166.4km9月6日(金)第13ステージ ビルバオ〜ロス・マチュコス 166.4km photo:Unipublic9月6日(金)第13ステージ ビルバオ〜ロス・マチュコス 166.4km9月6日(金)第13ステージ ビルバオ〜ロス・マチュコス 166.4km photo:Unipublic

3級山岳が4つと2級山岳が2つ、そして最後に超級山岳が1つ。バスク州のビルバオをスタートする第13ステージはカンタブリア州に広がるピコス・デ・エウロパ山脈(カンタブリア山脈)を走る。登りと下りしかないような166kmコースの獲得標高差は4,000m。最後は超級山岳ロス・マチュコスを駆け上がる。「バカパシエガ(パシエガ牛)」のモニュメントがある標高880mの登りは距離6.8kmで平均勾配9.2%。最大勾配が25%に達する激坂であり、しかも後半にかけて延々と12%オーバーの急勾配が続く。

アスレティックビルバオのホームスタジアムである『サン・マメス』をスタートしたのは、2015年大会の総合優勝者ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)を除く164名の選手たち。前日と同様に激しいアタック合戦で幕開けた戦いは、2つ目の3級山岳に差し掛かったところでようやく落ち着きを見せる。前日にも増して人数が多い、29名の逃げ集団が形成された。

逃げ集団を形成した29名
セルジオ・イギータ(コロンビア、EFエデュケーションファースト)総合10分21秒遅れ
ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、カチューシャ・アルペシン)総合16分54秒遅れ
マッテオ・ファッブロ(イタリア、カチューシャ・アルペシン)
ステフ・クラス(ベルギー、カチューシャ・アルペシン)
ピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール)
ジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール)山岳賞2位
クレマン・ヴァントゥリーニ(フランス、アージェードゥーゼール)
ニクラス・イーグ(デンマーク、トレック・セガフレード)
ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、トレック・セガフレード)
ロバート・パワー(オーストラリア、サンウェブ)
マーティン・トゥスフェルト(オランダ、サンウェブ)
ワウト・プールス(オランダ、チームイネオス)
ダビ・デラクルス(スペイン、チームイネオス)
スガブ・グルマイ(エチオピア、ミッチェルトン・スコット)
ダミアン・ホーゾン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)
フィリップ・ジルベール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)
ルイス・メインチェス(南アフリカ、ディメンションデータ)
フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)
セルジオルイス・エナオ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)山岳賞3位
ブルーノ・アルミライル(フランス、グルパマFDJ)
ドメン・ノヴァク(スロベニア、バーレーン・メリダ)
アントニオ・ペドレロ(スペイン、モビスター)
トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)
ダルウィン・アタプマ(コロンビア、コフィディス)
ヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス)
セルゲイ・チェルネツキー(ロシア、カハルラル・セグロスRGA)
アンヘル・マドラソ(スペイン、ブルゴスBH)山岳賞1位
ミケル・ビスカラ(スペイン、エウスカディ・ムリアス)山岳賞5位
エクトル・サエス(スペイン、エウスカディ・ムリアス)

モビスターが逃げに選手を送り込んだのに対して、ユンボ・ヴィズマとアスタナはメンバー全員がメイン集団内。山岳ポイントを最大37ポイントを獲得できるとあって山岳賞の上位3名(マドラソ、ブシャール、エナオ)もしっかりと逃げに入る。しかし逃げ集団は人数の多さから協調体制を築けず、この日3つ目の2級山岳アソン峠でのデヘント、プールス、ブランビッラらのアタックによって崩壊。そこから延々と吸収と合流を繰り返す不安定な状態が続き、2級山岳アリサス峠の下り区間で飛び出したサエスが他の逃げメンバーに対して単独で2分のリードを築いてレースは終盤へ。

ステージ前半にアタックするトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)ステージ前半にアタックするトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) photo:Unipublic
総合2位のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)総合2位のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Unipublic
メイン集団をコントロールするユンボ・ヴィズマメイン集団をコントロールするユンボ・ヴィズマ photo:CorVos
逃げ集団とメイン集団のタイム差が8分30秒を超えたため、イギータがミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)を抜いて暫定ヤングライダー賞トップに立つ。ロペスのジャージを守るため、そしてロペスの総合タイムを挽回するため、アスタナがそれまで一定ペースを刻んでいたユンボ・ヴィズマの前に出てメイン集団のペースを上げ始めた。

先頭サエスは単独追走アルミライルに22秒、追走グループに1分22秒、アスタナ率いるメイン集団に3分15秒のリードを持って最終超級山岳ロス・マチュコスの麓に到着。激坂の登坂が始まると2番手アルミラルが先頭サエスを追い抜き、さらに追走グループから飛び出したラトゥールがアルミラルを追い抜いて先頭へ。蛇行しながら急勾配区間を進む逃げの後ろでは、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)がアタックの口火を切った。

キンタナを追いかけるメイン集団の中で積極的な走りを見せたのはタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)。先行していたキンタナが捕らえられると、「人生で一番軽いギアを用意した」というプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)がポガチャルとともに攻勢に出る。ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)やキンタナは遅れ、スロベニア勢のペースに唯一対応していたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)もついに遅れた。

ハイペースで超級山岳ロス・マチュコスを駆け上がったログリッチェとポガチャルは、残り1.4kmでそれまで逃げ続けていたラトゥールを追い抜いていく。残り1kmアーチ付近の最後の急勾配区間でもログリッチェとポガチャルのタンデム走行は崩れず、最後はポガチャルがログリッチェの前でフィニッシュラインを切った。体重66kgのポガチャルは超級山岳ロス・マチュコスで平均393Wを出力し、平均勾配9.2%の登りを平均スピード18.9km/hで駆け上がっている。

スロベニア人選手によるワンツー勝利。バルベルデとキンタナ、ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)は27秒、ロペスは1分01秒ものタイムをログリッチェとポガチャルから失う結果となった。

先行したピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール)を捉えるプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)ら先行したピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール)を捉えるプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)ら photo:Kei Tsuji
先頭に立ったプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)とタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)先頭に立ったプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)とタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:Kei Tsuji
先頭で超級山岳ロス・マチュコスを駆け上がるプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)とタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)先頭で超級山岳ロス・マチュコスを駆け上がるプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)とタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:Kei Tsuji
ログリッチェらを懸命に追うアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)ログリッチェらを懸命に追うアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Kei Tsuji
超級山岳ロス・マチュコスを制したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)とプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)超級山岳ロス・マチュコスを制したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)とプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) photo:CorVos
アンドラの第9ステージに続く今大会2勝目を飾ったポガチャルは「初めてのグランツールでステージ2勝なんて信じられない。表現できないほどの嬉しい感情に包まれている。今日はタイムを失わないことが大事だと思っていたので、ステージ優勝は驚きだ」とコメントする。

総合3位に浮上するとともにヤングライダー賞ジャージを手にした最年少選手(20歳)のポガチャルは「ログリッチェは強力で、彼からタイムを奪うことはできなかった。彼がいる限りこのブエルタで勝つのは不可能だと思っている。初めてのグランツールなので、これから身体がどう反応していくのか分からない。とにかくここまでの2週間は完璧なので、このままバッドデーを迎えることなく今の状態を持続したい。そしてプリモシュと一緒にマドリードの総合表彰台に上りたい」と意気込んでいる。

「スロベニアの自転車界にとって素晴らしい日だ」と語るのはマイヨロホのリード拡大に成功したログリッチェ。第13ステージを終えて総合2位バルベルデとのタイム差は2分25秒まで拡大。3分01秒差でポガチャルが続いている。「今日はもっとライバルたちが攻撃してくると思っていたので、こんなに大きなタイム差は予想していなかった。とにかく今は少しでも大きなタイム差を持っておきたい」と総合リーダーはコメント。ポガチャルの9歳年上にあたる29歳がグランツール初制覇に向けて順調に駒を進めた。

山岳賞ジャージはアンヘル・マドラソ(スペイン、ブルゴスBH)がキープ。しかし逃げ集団の中でコツコツと山岳ポイントを稼いだジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール)が2ポイント差に詰め寄っている。

メカトラで立ち止まるジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール)メカトラで立ち止まるジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール) photo:Kei Tsuji
20分遅れでフィニッシュを目指す新城幸也(バーレーン・メリダ)20分遅れでフィニッシュを目指す新城幸也(バーレーン・メリダ) photo:Kei Tsuji
急勾配区間を終えても超級山岳ロス・マチュコスのフィニッシュは見えてこない急勾配区間を終えても超級山岳ロス・マチュコスのフィニッシュは見えてこない photo:Kei Tsuji
ステージ2勝目を飾ったタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)ステージ2勝目を飾ったタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos
マイヨロホのリードを広げたプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)マイヨロホのリードを広げたプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) photo:CorVos
ブエルタ・ア・エスパーニャ2019第13ステージ結果
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 4:28:26
2位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)
3位 ピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール) 0:00:27
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
5位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
6位 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)
7位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) 0:01:01
8位 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、トレック・セガフレード) 0:01:08
9位 マルク・ソレル(スペイン、モビスター)
10位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)
14位 ニコラ・エデ(フランス、コフィディス) 0:01:23
19位 カールフレドリク・ハーゲン(ノルウェー、ロット・スーダル) 0:02:28
27位 ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・メリダ) 0:03:02
99位 新城幸也(日本、バーレーン・メリダ) 0:20:04
DNS ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)
個人総合成績
1位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) 49:20:28
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 0:02:25
3位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 0:03:01
4位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) 0:03:18
5位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 0:03:33
6位 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) 0:06:15
7位 ニコラ・エデ(フランス、コフィディス) 0:07:18
8位 カールフレドリク・ハーゲン(ノルウェー、ロット・スーダル) 0:07:33
9位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) 0:07:39
10位 ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・メリダ) 0:09:58
ポイント賞
1位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) 109pts
2位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 86pts
3位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 82pts
山岳賞
1位 アンヘル・マドラソ(スペイン、ブルゴスBH) 32pts
2位 ジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール) 30pts
3位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 25pts
ヤングライダー賞
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 49:23:29
2位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) 0:00:17
3位 セルジオ・イギータ(コロンビア、EFエデュケーションファースト) 0:08:51
チーム総合成績
1位 モビスター 147:10:03
2位 アスタナ 0:25:51
3位 ユンボ・ヴィズマ 0:43:44
text&photo:Kei Tsuji in Los Machucos, Spain

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