フルクラムRACINGシリーズの最高峰モデル「RACING ZERO CARBON DB」をインプレッション。軽量フルカーボンリムにアルミスポークを合わせたオールラウンドホイールがディスクブレーキに対応。ロードからグラベルまで使える30mmハイトのハイパフォーマンスホイールだ。



フルクラム RACING ZERO CARBON DBフルクラム RACING ZERO CARBON DB (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
フルクラムのホイールラインアップの中でも多くのサイクリストから支持を受けてきたRACING ZEROシリーズ。中でもフルカーボンリムにアルミスポークを使用したRACING ZERO CARBONは、高い反応性と軽量性を誇り、ラインアップのフラッグシップとして君臨するモデル。その人気の「レーゼロカーボン」が待望のディスクブレーキ対応を果たしたのがモデル名に「DB」のつくこのホイールだ。

リムハイトは汎用性の高い30mmを採用。素材には超高弾性のT800 UDカーボンを用いるリムハイトは汎用性の高い30mmを採用。素材には超高弾性のT800 UDカーボンを用いる
極太のアルミ製スポークが構造剛性の高さに寄与する極太のアルミ製スポークが構造剛性の高さに寄与する チューブレスバルブを標準装備し、リムもバルブ根元ナットの座りが良い形状となるチューブレスバルブを標準装備し、リムもバルブ根元ナットの座りが良い形状となる


リムハイトは汎用性の高い30mmを採用。リム素材には超高弾性のT800 UDカーボンを用いており、軽量性と優れた剛性、卓越した反応性を実現している。そしてディスクブレーキの強い制動力に対応するため、ストレスのかかるニップルホール周辺にツィルカーボンを配置する「ARCテクノロジー」を採用し、より強度を向上させる工夫が施されている。

外幅26.5mm、内幅19mmのワイドリムは太さ23mm〜50mmのタイヤに対応する。つまりロードバイクからグラベルバイクまで用途をカバーできる。リム内面にニップル穴が空いていないMo-Mag製法によりリムテープが不要で、バルブを差し替えるだけでチューブレス化ができる利便性も持つ(初期段階でチューブレスバルブが標準装備される)。

ハブ軸胴がカーボン化されたフロントハブ。USBベアリングを搭載するハブ軸胴がカーボン化されたフロントハブ。USBベアリングを搭載する シマノHG用フリーハブ仕様モデルのリアハブ。軽量なカセットボディがセットされるシマノHG用フリーハブ仕様モデルのリアハブ。軽量なカセットボディがセットされる


片側フランジが大径化されたフロントハブ片側フランジが大径化されたフロントハブ 大径化された新設計のアルミ製オーバーサイズフランジハブ大径化された新設計のアルミ製オーバーサイズフランジハブ


ハブには新設計のアルミ製オーバーサイズフランジを採用することで大幅な剛性強化を実現。ボディ部分はフロントハブ胴がカーボンで、リアハブはフルアルミ。滑らかな回転を実現するUSBセラミックベアリングを採用する。

RACING ZEROの代名詞とも言えるダブルバテッドアルミスポークも大きな特徴だ。前後共に2:1(ツー・トゥー・ワン)で組まれ、スポーク数はフロント/リア共に21本。クリンチャーと共にチューブレスタイヤも使用することができる2-WAY FITとなる点もリムブレーキモデルと変わらない。

チューブレスでもリムテープが不要な構造はフルクラム/カンパニョーロの2-WAY FITならではチューブレスでもリムテープが不要な構造はフルクラム/カンパニョーロの2-WAY FITならでは ローターはセンターロック式だが独自の軽量設計ロックリングを使用するローターはセンターロック式だが独自の軽量設計ロックリングを使用する


前後セット重量は1,450gとディスクブレーキ対応タイプとしては非常に軽量に仕上がっている。価格は274,000円(税抜)だ。今回はチューブレスタイヤ仕様としてテスト、インプレッションをお届けしよう。



― 編集部インプレッション

フルクラム RACING ZERO CARBON DBフルクラム RACING ZERO CARBON DB photo:Makoto.AYANO
ディスクブレーキロード時代の本格的な到来により、ホイールに求められる性能やスペックも少なからず変化しているように思われる昨今。カンパニョーロと関係の深いホイール総合メーカーであるフルクラムが提案する新「レーゼロカーボン」のDB版として大いに期待の膨らむモデルだ。

ディスクブレーキタイプのホイールで気になるのは総重量だ。ディスクブレーキの強力な制動力に耐える強度が必要で、かつブレーキング時のその制動負荷のかかり方が左フランジ側にあるローターから発生するという構造。つまり左右不均衡の負荷に耐える構造が求められるため、どうしてもスポーク本数が増え、そのテンション(張力)も強くせざるを得ないのがディスクブレーキホイールの難しさだ。結果、必然的にホイール重量はかさみ、剛性も高めになってしまう傾向がある。

左右不均等の負荷がかかるディスクブレーキだが、アルミ極太スポークと構造剛性の高さが光る左右不均等の負荷がかかるディスクブレーキだが、アルミ極太スポークと構造剛性の高さが光る フリー側のフランジが大径化されたリアハブ。ハブ胴はねじれ剛性への耐性からあえてアルミのままとされるフリー側のフランジが大径化されたリアハブ。ハブ胴はねじれ剛性への耐性からあえてアルミのままとされる


このRACING ZERO CARBON DBの前後セット重量は1,450gと、信頼に足るブランドのホイールとしては抜きん出た軽さだ。頑丈に見える極太アルミスポークが21本、そしてカーボン化した超幅広リム、削り出されたフランジの大きなアルミ製ハブの構成は、他に無いユニークな組み合わせだ。

今回はシマノHG用フリーハブ仕様モデルをテスト。タイヤにはヴィットリアのCORSAチューブレスレディタイヤをセットし、インプレした。スケジュールの都合で、装着したタイヤが安定してから1日だけのテストとなったが、それでも奥多摩一周100kmオーバーの山岳ライドで試すことができた。

外幅26.5mm、内幅19mmのワイドリムは25Cタイヤを取り付けた状態で面一だ外幅26.5mm、内幅19mmのワイドリムは25Cタイヤを取り付けた状態で面一だ
極太スポークと幅広カーボンリム、大きなフランジのメタリックなアルミハブの構成でルックスは独特。リム高30mmと低いながらもボリューム感がある。ツヤのあるリムに、ニップルホール周辺に補強のために貼られるツィルカーボンの「ARCテクノロジー」がアクセントになり、リムブレーキ版とはデザインがかなり違った印象を受ける。

2-WAY FITの場合、チューブレスで使用する際もリムテープは不要のためそのぶん軽量化になる。シーラントを使用してセットアップしたため最軽量の組み合わせではないが、漕ぎ出しが軽く、軽量性は十分に感じられた。構造体としての堅牢さとでも言えばよいだろうか、ホイール全体がしっかりと塊感のある剛体になっているようなフィーリングのおかげで、ペダルを踏んだときの反応性はすこぶる良く、ダッシュやアタックが気持ちいいほどに軽いホイールだ。また、巡航性も高いのが不思議な感覚だ。

コーナリングの際にヨレを感じない剛性感の高さで、ダウンヒルの速さと安定感に優れているコーナリングの際にヨレを感じない剛性感の高さで、ダウンヒルの速さと安定感に優れている photo:Yuto.Murata
極太アルミスポークホイールの良さは構造的な剛性の高さだ。どの方向に対しても堅牢であるため、コーナリングの際のブレやヨレが少なく、ダウンヒルが安定して攻められる。リム高が低いロープロファイルホイールとあってエアロ効果はそれほど高くはなさそうだが、空気の抜けは良いと感じた。低いリム高がとくに不利につながっているホイールではないだろう。

極太スポークはその見た目から剛性が高すぎるという印象があるものだが、実は完成体としてみたときの全体の組み上げテンションは低めに抑えられており、そのため乗り心地は思いのほか良い。むしろ細いステンレススポークを高張力で組んだホイールよりもクッション性に優れるほどだ。その点じつは快適ホイールでもある。

太めのタイヤを低圧で使っても、ホイールがヨレないため下りコーナーは安心して下れる。強いブレーキングに余裕を持って対応でき、狙ったラインにグイグイと切り込んでいけるスーパーダウンヒルホイールだ。

前輪荷重のダンシングをしてもホイールがヨレない。加速性の良さも軽量ホイールならでは前輪荷重のダンシングをしてもホイールがヨレない。加速性の良さも軽量ホイールならでは photo:Yuto.Murata
25Cや28Cタイヤが主流になった今、それらの太さのタイヤとのマッチングは非常に良いワイドリム。タイヤのシェイプがきれいにでることと、エアロダイナミクスという点でも優れている。

25Cのタイヤとの組み合わせでトレッドがきれいなラウンドシェイプとなるカーボン製ワイドリム25Cのタイヤとの組み合わせでトレッドがきれいなラウンドシェイプとなるカーボン製ワイドリム そして興味深いのが50Cまでの太さのタイヤに対応しているということ。つまりシクロクロスはもちろんグラベルロード用のボリュームがあるタイヤまで装着が可能になっているということで、オフロードバイクでの使用にも向くという点だ。グラベルロード以上のモンスタークロスと呼ばれるジャンルもカバーする。

ホイールの構造的な高剛性から路面のギャップからの負荷を受けても安定したハンドリングが可能なため、オフロードでも扱いやすいホイールだと想像できる。安定性にも優れるので、価格を考えなければツーリング的な使用にも向くはずだ。

クリンチャーとチューブレスいずれの場合もリムテープを使用しないことでトラブルの要因も減り、セットアップが簡単。かつそのぶん軽量でもある。そしてローター取り付けはセンターロック式だが、カンパにも共通する独自設計のロックリングを使用するため軽量化につながっている。

エアロ効果の高いディープリムホイールが流行しているため存在としては地味な部類に入るかもしれないけれど、メカニカルなルックス、扱いやすさ、マルチな用途に展開できる守備範囲の広さでも魅力的なホイールに仕上がっている。(CW編集部:綾野)

フルクラム RACING ZERO CARBON DBフルクラム RACING ZERO CARBON DB (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
フルクラム RACING ZERO CARBON DB
タイヤタイプ:2-WAY FIT(クリンチャー/チューブレス)
リム素材:UDフル・カーボン、ARCテクノロジー(ツィル)
リムハイト:30mm
リム外幅:26.5mm
スポーク:エアロアルミ・ストレートプル、アルミニップル
スポーキング:フロント21本(L14本-R7本)、リア21本(L7本-R14本)
フロントハブ:カーボンボディ+アルミ製オーバーサイズフランジ
リアハブ:アルミボディ+アルミ製オーバーサイズフランジ
カセット:シマノ用、カンパ用
重 量:1,450g(前後セット)
価 格:274,000円(税抜)

photo&text:Makoto.AYANO

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