ピナレロのラインアップへ久しぶりに加わったシクロクロスバイク「CROSSISTA」をインプレッション。東レのT700 UDカーボンを使用し扱いやすさとレース性能を、ピナレロらしさ溢れるフォルムへ詰め込んだ一台を紹介しよう。



ピナレロ CROSSISTAピナレロ CROSSISTA (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
常に世界最高峰のプロロードチームへバイクを供給し、プロライダーの高い要求に応え続けてきたピナレロ。フラッグシップロードバイク「DOGMA」を使用するチームイネオスが積み重ねてきた勝利は数知れず。ロードの常勝チームと共にあるというイメージが非常に強いのがイタリアのピナレロだ。

一方で2016年までFCX HYDROというシクロクロスバイク、DOGMAの名前を冠したMTBをラインアップに置いていたブランドでもある。2017年より数年の充電期間を経て、2019年モデルよりピナレロはシクロクロスと新しいジャンルのグラベルロードという2種類を用意し、オフロードにカムバックを果たした。

DOGMA K10を踏襲したリア三角形状を採用するDOGMA K10を踏襲したリア三角形状を採用する フラットバック形状のダウンチューブはDOGMAから継承しているフラットバック形状のダウンチューブはDOGMAから継承している ピナレロ伝統のONDAフォークを採用するピナレロ伝統のONDAフォークを採用する


今回ピックアップするのはピュアレーシングシクロクロス「CROSSISTA(クロシスタ)」。3年ぶりに登場したシクロクロスバイクには、緩やかな曲線を描くONDAフォークやFlexステイデザイン、そしてエアロダイナミクスを向上させるFlatback(フラットバック)形状のダウンチューブなど、ロードのDOGMAシリーズの基本設計を継承する。

ルックスはDOGMAシリーズのようだが、細かい部分をシクロクロス用に開発。トップチューブの断面形状が担ぎやすさを追求するため、3Dプリンターモデルで細部をチェックしながら形状を煮詰めたという。ランニング時に右肩への食い込みにくい緩やかな曲線を採用しており、泥や砂、階段などが現れるレースで負担を減らしてくれるだろう。

完成車にはMOSTのLYNXというサドルが装備される完成車にはMOSTのLYNXというサドルが装備される 担ぎやすい扁平形状のトップチューブが伸びる担ぎやすい扁平形状のトップチューブが伸びる

非常に薄く作られたチェーンステーが衝撃吸収を担う非常に薄く作られたチェーンステーが衝撃吸収を担う 短めのヘッドチューブが採用されている短めのヘッドチューブが採用されている


フロントフォークとリア三角には、パリ~ルーベに投入されるグランフォンド用マシンであるDOGMA K10のデザインを踏襲。リア三角のFLEXシートステイは、路面からの衝撃をいなすような曲線を描くため、シクロクロスの悪路でも効果を発揮してくれそうだ。伝統であるONDAフォークのオフセット量を50mmとすることで、ハンドルを取られやすいオフロード走行時の安定性を確保している。

33mmタイヤを装着するクリアランスを設けるためにドライブトレイン側のチェーンステーは下方にオフセット。レース規定の33mmを装着した時は左右に9mmずつ余裕が生まれる(リムによって変動)。広いクリアランスを備えたことで泥レースへの対応はもちろん、最大42mm幅のタイヤをセットすることが可能に。レースだけではない楽しみ方がCROSSISTAには広がっているはずだ。

BBはイタリアンスレッド式とされているため、シーズン中でも交換しやすいBBはイタリアンスレッド式とされているため、シーズン中でも交換しやすい 固定力を向上させた新型クランプが採用されている固定力を向上させた新型クランプが採用されている


フレームでのシクロクロスへの適応に加えて、小物もCX用に開発が行われている。例えば、臼式シートクランプがトップチューブに設けたこと。DOGMAシリーズではシートチューブの後輪側に設けているが、CROSSISTAではPRINCEやGANのデザインを踏襲。後輪が泥を跳ね上げながら走るシクロクロスでは、シートチューブの後輪側に泥が付着することが珍しくない。ボルトに泥が詰まることや、フレーム内部に汚れが侵入する心配を低減している。

また、ロードバイク以上にシートに強い力が加わることを想定し、シートクランプを新しく開発。ロード用よりも42%も接触面積が増加するFSCシートクランプを採用することで、レース中にサドルが下がってしまう可能性をできる限り排除している。

最大42mm幅のタイヤを飲み込むクリアランスを備えた最大42mm幅のタイヤを飲み込むクリアランスを備えた 標準で装備されるシートポストにはくびれが設けられており、衝撃吸収性を期待できそうだ標準で装備されるシートポストにはくびれが設けられており、衝撃吸収性を期待できそうだ フロントフォークのタイヤクリアランスは非常に広く取られているフロントフォークのタイヤクリアランスは非常に広く取られている


CROSSISTAは、フラッグシップモデルに使用される東レのTORAYCA T1100 1Kカーボンを用いた最上級モデルの「+」、そしてT700 UDカーボンを用いたベーシックモデルの2種類展開となる。どちらも49、50.5、52、54、56、58(cm)と6サイズが用意され、それぞれ乗り味を最適化した"Made4You"コンセプトを適応している。

今回インプレッションを行ったのはベーシックモデル。フレームセットとシマノULTEGRA完成車が用意されたピュアCXレーシングバイクをライズライドの鈴木祐一さんがテスト。GREVIL+と同時にテストを行ったことも踏まえてコメントを寄せていただいた。GREVIL+のインプレはこちら



― インプレッション

「ピナレロのオフロードへの知見を再認識した1台」鈴木祐一(ライズライド)

「ピナレロのオフロードへの知見を再認識した1台」鈴木祐一(ライズライド)「ピナレロのオフロードへの知見を再認識した1台」鈴木祐一(ライズライド)
シクロクロスとして優秀なバイクですよ。日本だとピナレロがシクロクロスやオフロードもカバーしているイメージは薄いですが、90年代に世界選手権を制したことのあるダニエーレ・ポントーニがピナレロのCXバイクに乗っていた歴史もありますし、イタリア国内としてもオフロードに対するノウハウは持っているんです。

CROSSISTAはシクロクロスに必要な性能を備えている印象があり、上手くまとめられているバイクであると思いますね。このバイクに搭載されているONDAフォークも長い歴史がある上に、実際のハンドリング性能もCXバイクらしい性格を備えていて、ピナレロのフレーム開発とオフロードへの知見をインプレッションを通じて再認識しました。

フレームの剛性はいい塩梅に調整されていて、シクロクロスの特徴でもある細かいコーナーを何百回もクリアしていくというシチュエーションでも脚へのストレスが少ない。リア三角は路面追従性が高く、荒れた路面でもトラクションをかけ続けてくれます。さらに、BBハイトは丁度よい場所に収められていて、腰高でダンシングの振りのリズムが早すぎることもない。

同時にインプレッションを行ったGREVIL+は、バイクパッキング装備も許容できるグラベルロードではなく、高速巡航にフォーカスしたバイクという流行に流されない強烈な個性のあるバイクでした。一方で、CROSSISTAの場合はシクロクロスのレーシングバイクとして非常にニュートラルな性格を持つ1台。ピナレロファンでシクロクロスも揃えたいという方にはピッタリなバイクです。

ピナレロ CROSSISTAピナレロ CROSSISTA (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
ピナレロ CROSSISTA
フレーム:T700 UDカーボン
フォーク:デディケイテッドONDAフォーク
BB:イタリアンスレッド
カラー:448 カーボンマット、449 ホワイト/カーボン、450 カーボン/レッド
サイズ:44、47、50、53、56、59(cm)
価 格:380,000円(税抜、フレームセット)

ピナレロ CROSSISTA(R8000アルテグラ完成車)
コンポーネント:シマノULTEGRA
ブレーキ:ULTEGRA R8070,Flat Mount, W/140 mm disc
ホイール:FULCRUM RACING 500DB
タイヤ:VITTORIA TERRENO MIX
価 格:530,000円(税抜、フレームセット)



インプレッションライダーのプロフィール

鈴木祐一(RiseRide)鈴木祐一(RiseRide) 鈴木祐一(RiseRide)

サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストンMTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。シクロクロスやMTBなど、各種レースにも参戦している。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。

サイクルショップ・ライズライドHP

text:Gakuto Fujiwara
photo:Makoto.AYANO
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