UCIグランフォンドワールドシリーズの「ニセコクラシック」が、7月6日から7日にかけて北海道ニセコ町で開催された。強豪市民レーサーが揃った140kmクラスは、終盤に残った5人でのスプリントを制した松木健治(VC VELOCE)が優勝した。


世界各国で開催される「UCIグランフォンド・ワールド・チャンピオンシップ」への出場権を得られる予選大会。ニセコクラシックはその予選大会のひとつで、アジア圏では他にインドネシアのビンタン島で開催される「ツール・ド・ビンタン」がある(ちなみに今年のグランフォンド・ワールド・チャンピオンシップはポーランドで開催される)。

通算6回目、UCIグランフォンドシリーズとなってから4回目の今年の大会には、過去最高の1500名がエントリー。海外からの参加者も増え、申し込みキャンセル待ちが100名以上出るほどの人気となった。


日本初開催の「UCIグランフォンド・ワールドシリーズタイムトライアル

特設のスタート台から発走する個人タイムトライアル特設のスタート台から発走する個人タイムトライアル photo:Satoru Kato
ジャガイモの花が咲き乱れる中を疾走ジャガイモの花が咲き乱れる中を疾走 photo:Satoru Kato個人タイムトライアルの優勝者にもアルカンシェルジャージが与えられる個人タイムトライアルの優勝者にもアルカンシェルジャージが与えられる photo:Satoru Kato

今年は国内で初めて、UCIグランフォンドワールドシリーズ公認の個人タイムトライアルが開催された。昨年は北海道自転車競技連盟の大会として個人タイムトライアルが行われたが、今年は倶知安町に13kmの本格的なタイムトライアル向けコースを設定して行われた。適度なアップダウンがあり、選手権大会も開催出来そうなコースは、大会アンバサダーの三船雅彦氏に「タイムトライアルバイクが有利なコース」と言わしめる。

グランフォンド同様5歳刻みの年代別クラスで争われるが、全体のトップタイムを出したのは、18分36秒66をマークした相楽誠(Rapha Cycling Club)。他のクラスでは19分台がトップとなるところ、ただ1人18分台を出して優勝した。

この個人タイムトライアルでも、UCIグランフォンド・ワールドシリーズタイムトライアルへの出場権が得られる。



140kmクラス 松木健治がスプリントを制して総合優勝

今年は3つに分けてスタートしたグループをパレード中に全て合流させた今年は3つに分けてスタートしたグループをパレード中に全て合流させた photo:Satoru Kato
朝6時35分から1分間隔で3つのグループがスタートした140kmクラス。昨年までは第3グループが合流出来ないままレースが進行したが、今年はパレード区間中にペースをコントロールし、第3グループまでを合流させた上でリアルスタートが切られた。

天気は晴れ。最高気温は20℃前後まで上昇したが、コース最高点となる標高800mを通るニセコパノラマラインは雲が広がって13℃まで気温が下がり、寒さを感じるほど。後半は押し返されるほどの強い風が吹き、北海道の大自然を感じながらのレースとなった。

リアルスタート直後から紺野元汰(SBC Vertex Racing Team )リアルスタート直後から紺野元汰(SBC Vertex Racing Team ) photo:Satoru Kato30km地点、スプリント賞は増田康太(写真右)が先頭通過30km地点、スプリント賞は増田康太(写真右)が先頭通過 photo:Satoru Kato

リアルスタート直後、昨年総合2位の紺野元汰(SBC Vertex Racing Team)がファーストアタック。「何人か同調してくれたらそのまま逃げきりを狙っても良かった」と言う飛び出しだったが、うまく同調が得られず集団に戻る。

スタートから20kmほど経過したあたりで4人が先行する。メンバーは、北野普識(イナーメ信濃山形)、井上和郎(バルバクラブハクサン)、シュウ・ハオユウ(中国、Mac531 Cycling See the world)、高校生の増田康太。メイン集団との差は30秒前後まで開く。

メイン集団から先行する3名にブリッヂをかける岡泰誠(SBC Vertex Racing Team)メイン集団から先行する3名にブリッヂをかける岡泰誠(SBC Vertex Racing Team) photo:Satoru Kato
メイン集団前方でレースを進める紺野元汰(SBC Vertex Racing Team)メイン集団前方でレースを進める紺野元汰(SBC Vertex Racing Team) photo:Satoru Kato45km過ぎ 山岳賞はシュウ・ハオユウ(中国、Mac531 Cycling See the world)が先頭通過45km過ぎ 山岳賞はシュウ・ハオユウ(中国、Mac531 Cycling See the world)が先頭通過 photo:Satoru Kato

30km地点のスプリントポイントは増田が先頭で通過。その後メイン集団との差が詰まり、10秒ほどになったところで井上と北野がメイン集団に戻る。それと入れ替わりに岡泰誠(SBC Vertex Racing Team)が合流。新たに3人の先頭集団が形成されると、メイン集団との差は再び広がる。

45km過ぎの山岳賞に向けた登りでシュウと増田がペースアップすると、岡が遅れていく。山岳賞ポイントはシュウが先頭通過し、増田が2番手通過。約1分遅れてメイン集団が通過する。その後のニセコパノラマラインの下りで逃げは全て吸収され、集団は1つになる。

雑賀大輔(湾岸サイクリングユナイテッド、中央)が加わり3名となった先頭集団雑賀大輔(湾岸サイクリングユナイテッド、中央)が加わり3名となった先頭集団 photo:Satoru Kato
70kmを過ぎてコース後半に入ると、高岡亮寛(Roppongi Express)が飛び出し、山本裕昭(BONDS静岡サイクルRT)が反応。さらに雑賀大輔(湾岸サイクリングユナイテッド)が合流して3人の先頭集団が形成される。メイン集団との差は約1分まで開き、コース中盤の平坦区間を進んで行く。

100kmを過ぎ、終盤のアップダウンが連続する区間に入ると、先頭集団では高岡がペースアップ。雑賀が遅れ、山本が追従する。一方メイン集団は、紺野、岡、田崎友康(F(t)麒麟山Racing)、松木健治(VC VELOCE)、森本誠(GOKISO)井上亮(Magellan System Japan)らを含む10名ほどまで絞られながらも先行する2人を追走し、110km付近で吸収する。その直後、下り区間で発生した70kmクラスの落車を避けきれなかった高岡が落車し、大きく遅れてしまう。

白いジャガイモの花が咲き揃った畑の中を行く先頭集団白いジャガイモの花が咲き揃った畑の中を行く先頭集団 photo:Satoru Kato
残り15km付近で8人に絞られる残り15km付近で8人に絞られる photo:Satoru Kato井上亮(Magellan Systems Japan)を先頭に遅れた70kmの部参加者をかき分けて進む井上亮(Magellan Systems Japan)を先頭に遅れた70kmの部参加者をかき分けて進む photo:Satoru Kato

残り20kmを過ぎると、森本、井上らが登りでふるいにかける加速を繰り返す。この動きに残ったのは、紺野、森本、井上、田崎、松木の5人。勝負は残り100mの登りスプリント勝負へ。

残り100m、松木健治(VC VELOCE)と田崎友康(F(t)麒麟山Racing)が並んでスプリント残り100m、松木健治(VC VELOCE)と田崎友康(F(t)麒麟山Racing)が並んでスプリント photo:Satoru Kato前に出る松木健治(VC VELOCE)前に出る松木健治(VC VELOCE) photo:Satoru Kato

ニセコクラシック140km トップでフィニッシュする松木健治(VC VELOCE)ニセコクラシック140km トップでフィニッシュする松木健治(VC VELOCE) ©️NISEKO CLASSIC
最後の右コーナーを田崎と松木が並んでクリア。そこからは松木がスピード差を見せつけ、数車身差をつけてフィニッシュ。ニセコクラシック初優勝を決めた。

「最後に残った5人の中で、スプリントは紺野君と田崎さんがあると見ていたので2人をマークしていました。田崎さんが先に仕掛けたのでその番手に入って、最後の直線に入ってうまく抜け出せました。

140km 40-44歳表彰式140km 40-44歳表彰式 photo:Satoru Kaoto今年は前半の登りまではちょっと緩いペースでしたが、例年ならペースが緩む中盤の平坦区間で高岡さんが逃げていたので、そこはちょっとキツかったです。終盤の登りでは、他の人をちぎる走りをする森本さんの動きにうまく合わせ、スプリントになれば勝機があると踏んでうまく立ち回りました」と、レースを振り返る松木。

昨年は2分遅れの6位に終わっているが、「昨年は調整に失敗して最後の登りで遅れてしまったのですが、今回は体重を4kgほど落として調整もバッチリ合って走れました。狙った通りの結果ですね」と話す。そして、「次の目標はツール・ド・おきなわです。これから調整し直して1から仕上げて、また勝ちたいです」と、目標を切り替えた。

紺野元汰(SBC Vertex Racing Team)は総合5位紺野元汰(SBC Vertex Racing Team)は総合5位 photo:Satoru Kato一方、1週間前の全日本選手権でUCIポイント獲得圏で走るも、この大会とグランフォンド世界選手権に出るために(UCIポイント保持者は出場出来ない)順位を落としたことが話題となった紺野は、「もっと人数を絞って3人くらいにしたかったけれど、そうならなかったです。マークがきつくて、自分から動いて周りの足を削りたかったけれど、中途半端な動きになってしまい逆に自分の足を削ってしまった感じです。もう少し登れるような体で臨めば良かったのですが、全日本に体を合わせてしまったところもあり、ここで勝つならもうちょっと絞った方が良かったなと感じました」と振り返る。

「次の目標はUCIグランフォンドの世界選手権。昨年おきなわで勝った時からずっと目標にしていたので、そこに全てを捧げるつもりでやっていきます」と語った。



70kmクラスの男子は西谷雅史(チーム オーベスト)、女子は藤村祥子(MOPS)が総合優勝

70km男子 50-54歳 西谷雅史(チームオーベスト)が優勝70km男子 50-54歳 西谷雅史(チームオーベスト)が優勝 photo:Satoru Kato女子70km 19-34歳 藤村祥子(MOPS)が優勝女子70km 19-34歳 藤村祥子(MOPS)が優勝 photo:Satoru Kato
ニセコクラシック2019 140km各クラス結果
男子19-34歳クラス
1位 紺野元汰(SBC Vertex Racing Team) 3時間35分39秒
2位 SU Haoyu(中国、Mac531 Cycling See the world) +27秒
3位 牧野郁斗(イナーメ信濃山形) +28秒
男子35-39歳クラス
1位 井上 亮(Magellan System Japan) 3時間35分38秒
2位 森本 誠(GOKISO) +0秒
3位 藤田耕志(VC VELOCE) +4分25秒
男子40-44歳クラス
1位 松木健治(VC VELOCE) 3時間35分34秒
2位 田崎友康(F(t)麒麟山Racing) +2秒
3位 大野国寿(F(t)麒麟山Racing) +8分7秒
ニセコクラシック2019 70km各クラス結果
男子50-54歳クラス
1位 西谷雅史(チーム オーベスト) 1時間58分18秒
2位 藤原龍治(チーム Paradiso) +4分30秒
3位 酒井浩一(IMEレーシング) +4分31秒
男子55-59歳クラス
1位 岡田幸裕(ぴっとレーシングチーム) 2時間6分18秒
2位 赤澤和徳(チーム・グランプッチ) +1分15秒
3位 GURDORJ Ankhbayar(モンゴル、Monrud)  
女子19-34歳クラス
1位 藤村祥子(MOPS) 2時間7分37秒
2位 中屋菜緒(SWEEP) +15分25秒
3位 安藤沙弥(Team SHIDO) +18分49秒
女子35-39歳クラス
1位 雑賀敬子(湾岸サイクリングユナイテッド) 2時間20分57秒
2位 VAN LAER Cora(ベルギー、Project 852) +5分30秒
3位 牛 孟洋(中国、Innocent) +8分7秒
女子40-44歳クラス
1位 廣瀬博子(Pedalist) 2時間22分6秒
2位 石井美絵(AQULS内房レーシング) +33秒
3位 今井みち子(なるしまフレンド) +4分49秒
女子45-49歳クラス
1位 三浦智穂(Gutaro) 2時間12分57秒
2位 番場しおり(SKG PHARMA) +6分37秒
3位 本庄 恵(BLUE DRAGON) +11分33秒
女子50-54歳クラス
1位 栗原春湖(TEAM AMiGos) 2時間9分22秒
2位 米田和美(MOPS) +6分43秒
3位 前島律子(チバポンズ) +21分29秒

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