ジロ・デ・イタリアを象徴するピンク色のジャージ、マリアローザ。前年度覇者フルームのいない第102回大会では、デュムランやログリッチェ、ニバリ、Sイェーツ、ロペスらがマリアローザとトロフェオ・センツァ・フィーネを巡るバトルを繰り広げる。


ジロ総合優勝者の証、マリアローザ

毎ステージ後、その日の総合最上位選手が表彰台でマリアローザを受け取る毎ステージ後、その日の総合最上位選手が表彰台でマリアローザを受け取る photo:LaPresse
ジロ総合リーダーの証であるマリアローザは直訳すると「バラ色ジャージ」。独特の淡いピンク色はガゼッタ・デッロ・スポルト紙の紙の色に由来する。イタリア最大手のスポーツ新聞であるガゼッタ紙が発行部数増加のためにジロを初開催したのは今から110年前の1909年。以降、これまでに101回開催されてきた。現在はガゼッタ紙と同じメディアグループのRCSスポルトが大会を主催している。ジャージスポンサーは元国営電力会社のエネル社。

他のステージレースと同様に、マリアローザ着用の権利を有するのは「最も少ない合計時間で前日までのステージを走りきっている選手」。つまりヴェローナでの最終ステージ後にマリアローザを受け取った選手が総合優勝となる。また、総合優勝者には「トロフェオ・センツァ・フィーネ(終わりのないトロフィー)」と呼ばれる螺旋状の黄金トロフィーが贈られる。

ボーナスタイムは今年も健在で、タイムトライアルを除くステージのフィニッシュ地点で1位に10秒、2位に6秒、3位に4秒、そして2つあるうちの2つ目の中間スプリントポイントで1位3秒、2位2秒、3位1秒のボーナスタイムが与えられる。特に序盤のステージはレースの中でタイム差がつきにくく、ボーナスタイムによるマリアローザの移動もあり得る。たかが数秒のボーナスタイムと侮るなかれ、地道にタイムを積み重ねた選手が最終的にマリアローザ争いや総合表彰台争い、そして総合トップ10争いで微笑むことになるかもしれない。

なお、総合優勝者に与えられる賞金は115,668ユーロ(約1430万円)で、特別プライズとして150,000ユーロ(約1860万円)がプラスされる。ステージ優勝者は11,010ユーロ(約136万円)。マリアローザ着用者は1日につき2,000ユーロ(約24万8000円)。賞金総額は1,499,860ユーロ(約1億8600万円)だ。

トロフェオセンツァフィーネを手にしたクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)トロフェオセンツァフィーネを手にしたクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:LaPresse


前年度覇者フルーム不在 3つの個人TTはデュムランやログリッチェに味方する?

今大会には2人の総合優勝経験者が出場する。2013年と2016年の総合優勝者ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)と、2017年の総合優勝者トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)だ。1年前にセンセーショナルな逆転劇で総合優勝したクリストファー・フルーム(イギリス、チームイネオス)は大会連覇がかかったジロを欠場し、7月のツール・ド・フランスに注力する。

最もマリアローザに近いイタリア人選手であるニバリが1年の空白を経てジロに戻ってくる。しかし今シーズンはUAEツアー総合35位、ストラーデビアンケ31位、ティレーノ〜アドリアティコ総合15位、ミラノ〜サンレモ8位、ツアー・オブ・アルプス総合3位、リエージュ8位と、決して悪くはないが目立ちもしない走りに終始している。チーム移籍も噂される34歳のベテランは、最多13回目の出場となるドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア)やダミアーノ・カルーゾ(イタリア)らのサポートを得る。

ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) photo:Luca Bettini
デュムランは2017年の総合優勝に続いて2018年に総合2位。TTスペシャリストからグランツールレーサーに進化したデュムランを優勝候補に挙げる声は大きい。2018年は3週間を通して常にマリアローザを脅かす存在として活躍しながらも、最終的にチームスカイの牙城を崩すことができなかった。3つの個人TTが設定されたコースはデュムラン向きと見られるが、そのうち2つが山岳TTのため、得意の平地巡航能力をタイムにつなげるのは難しいかもしれない。しかし今やピュアクライマーをも凌駕する登坂力の持ち主となったデュムランは、安定感あるオールラウンダーとして必ずマリアローザ争いに絡んでくるだろう。サム・オーメン(オランダ)やクリス・ハミルトン(オーストラリア)ら、若手中心のチームの主将が2度目の栄冠を目指す。

トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) photo:CorVos
今シーズン最も波に乗っているオールラウンダーは、ずばりプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)だと言って間違いないだろう。UAEツアーとティレーノ〜アドリアティコに続いて、直前のツール・ド・ロマンディで総合優勝。出場した全てのレース(しかもUCIワールドツアーレース)で総合優勝するという破竹の勢いを見せている。元スキージャンパーのログリッチェの強みは、山岳力とTT能力を高次元で融合していること。3週間の安定感は、2018年ツールの総合4位で証明済みだ。ローレンス・デプルス(ベルギー)やアントワン・トールク(オランダ)といった山岳アシストも豊富に揃え、万全の状態でグランツール初制覇に挑む。TTを得意とするデュムランとともに、初日の個人TTで早速マリアローザに袖を通すことになるかもしれない。

プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) photo:Tour de Romandie
2018年に13日間マリアローザを着用し、ステージ3勝の活躍を見せながらも第18ステージで失速し、最終的に総合21位でジロを終えたサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)は「やり残した仕事をやり遂げる」ためにジロに再挑戦する。2018年9月のブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝を果たしたSイェーツは、3月のパリ〜ニースの個人TTでステージ優勝。苦手分野を克服しつつある26歳は、再びエステバン・チャベス(コロンビア)やミケル・ニエベ(スペイン)を従えてボローニャに降り立つ。

サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:Kei Tsuji
2018年総合3位のミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)は持ち前の登坂力を武器に過酷なジロの山岳ステージで攻撃を仕掛けてくるだろう。コロンビアツアーとボルタ・ア・カタルーニャで総合優勝を飾ったロペスを、ヨン・イサギレ(スペイン)やペリョ・ビルバオ(スペイン)らがサポートする。アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)の欠場に伴い、モビスターのエースを託されたのが2015年総合3位のミケル・ランダ(スペイン、モビスター)と2018年総合4位のリチャル・カラパス(エクアドル)。リエージュを7位で終えたランダと、直前のブエルタ・ア・アストゥリアス総合優勝のカラパスがタッグを組む。

ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) photo:CorVos
今シーズン絶好調ドゥクーニンク・クイックステップのエースを担うのは、2016年にマリアローザを3日間着用して総合6位に入ったボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)。パリ〜ニースを総合8位で終え、石畳クラシックとの相性の良さを見せたルクセンブルクチャンピオンはグランツールレーサーとして一皮むけることができるか。2016年総合5位のラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)や2017年総合5位のイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)、2017年総合7位のバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)らもマリアローザ争いに加わるだろう。

タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームイネオス)タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームイネオス) photo:CorVos
フルームのいないチームイネオスでエースを担う予定だったエガン・ベルナル(コロンビア)は直前のトレーニング中に鎖骨を骨折。突如マリアローザ最有力とも目されたエースを失ったチームは、前哨戦ツアー・オブ・アルプスでベテラン勢を下して総合ワンツー勝利を飾った21歳パヴェル・シヴァコフ(ロシア)と24歳タオ・ゲオゲガンハート(イギリス)に望みを託す。さらにベルナルに続く次世代オールラウンダーとして期待の21歳イバン・ソーサ(コロンビア)もメンバー入りしており、チームイネオスは出場チームの中で最年少に近い超若手メンバーでジロに挑む。

歴代マリアローザ獲得選手
2018年 クリストファー・フルーム(イギリス)
2017年 トム・デュムラン(オランダ)
2016年 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)
2015年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2014年 ナイロ・キンタナ(コロンビア)
2013年 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)
2012年 ライダー・ヘシェダル(カナダ)
2011年 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア)
2010年 イヴァン・バッソ(イタリア)
2009年 デニス・メンショフ(ロシア)
2008年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2007年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2006年 イヴァン・バッソ(イタリア)
2005年 パオロ・サヴォルデッリ(イタリア)
2004年 ダミアーノ・クネゴ(イタリア)
2003年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2002年 パオロ・サヴォルデッリ(イタリア)
2001年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2000年 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)
1999年 イヴァン・ゴッティ(イタリア)
1998年 マルコ・パンターニ(イタリア)
1997年 イヴァン・ゴッティ(イタリア)
1996年 パヴェル・トンコフ(ロシア)
1995年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1994年 エフゲニー・ベルツィン(ロシア)
1993年 ミゲール・インドゥライン(スペイン)
1992年 ミゲール・インドゥライン(スペイン)
1991年 フランコ・キオッチォーリ(イタリア)
1990年 ジャンニ・ブーニョ(イタリア)

text:Kei Tsuji in Bologna, Italy
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