新スポンサー&ジャージで登場したチームイネオスのお披露目、そしてクリス・フルームの出場と話題を呼ぶ4日間のツール・ド・ヨークシャーが開幕。雨の第1ステージは序盤からの少グループで逃げた4人が集団の追撃を振り切り、ジャスパー・アッセルマン(ルームポット・シャルレ)が大金星を収めた。


チームイネオスの新ジャージに身を包んだクリス・フルームが観客に手を振るチームイネオスの新ジャージに身を包んだクリス・フルームが観客に手を振る photo:SWPix.com/A.S.O
イギリス北部ヨークシャー州で開催されるコンパクトなステージレース、ツール・ド・ヨークシャーは全4ステージ、621.5km で行われる4日間ステージレース。レースのクラスはUCI 2.HC、自転車熱の高まるイギリスにおいて2600万人が観戦(昨年データ)する人気レースだ。

第1・第2が平坦系のステージ、とくに第2ステージでは今年の世界選手権の開催されるハロゲートの周回コースも含まれることが話題だ。第3・第4ステージはヨークシャー特有のアップダウンの繰り返し。全体傾向としては大きな山は無く、アップダウンが凝縮されたパンチャー向きのレースだ。

開幕ステージのドンカスターではチームプレゼンテーションが開催開幕ステージのドンカスターではチームプレゼンテーションが開催 photo:SWPix.com/A.S.O
母国イギリスで人気最高のマーク・カヴェンディッシュ(ディメンションデータ)母国イギリスで人気最高のマーク・カヴェンディッシュ(ディメンションデータ) photo:SWPix.com/A.S.O
出場チームはチームイネオス、カチューシャ・アルペシン、CCC、ディメンションデータの4つのUCIワールドツアーチームに加え、プロコンチネンタルチームがコフィディス、トタル・ディレクトエネルジー、ラリーサイクリング、ヴィタルコンセプトB&Bホテルズ、エウスカディ・バスクカントリー・ムリアス、ハーゲンスバーマン・アクセオン、ルームポット・シャルレ、リワルレディーネスの8チーム。コンチネンタルチームがチームウィギンズ・ルコル、キャニオンDHBブロアホームズ、スウィフトカーボンプロサイクリング、ヴィチュープロサイクリング、リッブルプロサイクリング、そして選抜メンバーによる英国ナショナルチームが出場する。

フルームの他にビッグネームとしてマーク・カヴェンディッシュ、4回大会覇者グレッグ・ファンアーフェルマートらも揃う。ドンカスターからセルビーまでの第1ステージは途中に山岳ポイントも含まれ、アルデンヌクラシックのようなアップダウンに富んだ地形の182.5km。さらに気温の低い雨の中のレースは行われた。

スタート直後は晴れ間が見えたものの、この後雨が降り出すスタート直後は晴れ間が見えたものの、この後雨が降り出す photo:SWPix.com/A.S.O
ヨークシャーの美しい田園風景を行くプロトンヨークシャーの美しい田園風景を行くプロトン photo:SWPix.com/A.S.O
レインギアに身を包んだプロトンが、イギリス北部らしいウェットな天候のなか走る。お披露目となるはずのチームイネオスの赤い(ヴァーガンディ)のウェアも、黒いレインギアのなかに隠されたまま。悪天候にもかかわらず沿道には16万人の観客が詰めかけた。

序盤からプロコン、コンチ、英国ナショナルチームによる逃げ切りを意図する6人の逃げが形成された。特筆すべきビッグネームを含まない、イギリス4人、アメリカ人1、オランダ1人の若者たちにより構成されたグループがワンチャンスを狙う。

ジャスパー・アッセルマン(オランダ、ルームポット・シャルレ)が牽引する逃げる4人ジャスパー・アッセルマン(オランダ、ルームポット・シャルレ)が牽引する逃げる4人 photo:SWPix.com/A.S.O
集団はワールドツアーチームがコントロールし、3分以内の差に置く。先頭にはチームイネオスが集まり、ツール覇者ゲラント・トーマスも積極的に前を引く。そこにカヴェンディッシュでスプリントを狙いたいディメンションデータらも協力。

ヨークシャーの田舎町をつないで走る集団ヨークシャーの田舎町をつないで走る集団 photo:SWPix.com/A.S.O
昨年も逃げ切りステージ勝利が決まったこのレース。下位チームの選手の実力が読めないためワールドチーム追撃に苦心する。逃げの中に含まれる18歳のケヴィン・ファンマールク(アメリカ、ハーゲンスベルマンス・アクセオン)は先日のU23リエージュ~バストーニュ~リエージュ優勝者という期待の若手。

72km地点の山岳ポイントはヤコブ・ヘネシー(イギリス、キャニオンDHBブロールホームズ)が先頭通過し、山岳賞を確定させた。このレースでは、中間スプリントのボーナスタイムは上位通過順に3、2、1秒、そしてフィニッシュで10、6、4秒が与えられる。全体を通して大きな山岳がないだけに、ステージ毎にこれらのボーナスタイムを集めるのも総合争いにおいては重要になる。

新たなチームイネオスのジャージに身を包んだクリス・フルーム(イギリス)新たなチームイネオスのジャージに身を包んだクリス・フルーム(イギリス) photo:SWPix.com/A.S.O
緑豊かなヨークシャーを走る集団緑豊かなヨークシャーを走る集団 photo:SWPix.com/A.S.O
終盤を迎え、逃げはアッセルマン、フェルマールク、ビッガム、ナリーの4人に絞られる。20kmを切って1分30秒差。メイン集団はイネオスが引き続ける状況。逃げる4人対イネオスの5人の構図となり、タイム差は残り5kmで30秒という状況。計算を誤れば集団が追いつけない公算が出てきた。

アルデンヌ地方にも似るアップダウンの道を行くプロトンアルデンヌ地方にも似るアップダウンの道を行くプロトン photo:SWPix.com/A.S.O
残り3km、カヴェンディッシュのためにベルンハルト・アイゼルらが集団牽引の協力を始めたが、時すでに遅し。2kmで20秒差、焦った集団もようやく全体スピードが上がる。

激しい雨のなかペースを上げるメイン集団激しい雨のなかペースを上げるメイン集団 photo:SWPix.com/A.S.O
ラスト200m、怒涛のように追い込む集団に対し、追いつかれる寸前に4人のスプリントも開始された。残り100mで最終スプリントの伸びを見せたのがジャスパー・アッセルマン(オランダ、ルームポット・シャルレ)。バリアのギリギリを攻めたことで観客の振っていた旗がハンドルに絡まる。しかし焦らなかったアッセルマンは伸びを維持して逃げ切った。他の3人は集団に飲み込まれた。

メイン集団に捕まる寸前で逃げ切ったジャスパー・アッセルマン(オランダ、ルームポット・シャルレ)メイン集団に捕まる寸前で逃げ切ったジャスパー・アッセルマン(オランダ、ルームポット・シャルレ) photo:SWPix.com/A.S.O
29歳のアッセルマンは2016年ロンド・ファン・ドレンテ(UCI1.1)以来の勝利。集団はなんとかタイム差無しでまとめ、今後の総合争いに向けては被害を最小限にとどめたものの、勝利を逃す結果に。

優勝したジャスパー・アッセルマン(オランダ、ルームポット・シャルレ)のコメント

これは自分にとって本当にキャリア最大の勝利だ。いまだに信じられない。本当にすごいことで一生忘れられないだろう。今日のプランは逃げに乗って山岳賞ジャージを獲ることだった。でもKOMでは足の調子が良くなく、不満だけが残っていた。プッシュし続けていたけど集団との差は詰まっていたから逃げ切れるとは思っていなかった。逃げではうまく協力しあった全力で走り続けていた。そしてチャンスが見えたから、ギャンブルしてみようと思った。

リーダージャージに袖を通したジャスパー・アッセルマン(オランダ、ルームポット・シャルレ)リーダージャージに袖を通したジャスパー・アッセルマン(オランダ、ルームポット・シャルレ) photo:SWPix.com/A.S.O
最後のスプリントではその瞬間を待ったんだ。フィニッシュラインが見えてもまだ後方とは大きな差があった。勝てるということが信じられなかったよ。この美しい勝利が本当にハッピーだ。リーダージャージを着る明日は何が起こるか楽しみだ。きっとこのジャージが力をくれる。ヨークシャーは自転車で走るには素晴らしいところだ。こんなに天気が悪くてもグランツールやクラシック並の観客達の多さに驚き、素晴らしい体験だった。この日を忘れないよ。

山岳賞はヤコブ・ヘネシー(イギリス、キャニオンDHBブロールホームズ)山岳賞はヤコブ・ヘネシー(イギリス、キャニオンDHBブロールホームズ) photo:SWPix.com/A.S.O敢闘賞はダニエル・ビッガム(イギリス、リッブルプロサイクリング)の手に敢闘賞はダニエル・ビッガム(イギリス、リッブルプロサイクリング)の手に photo:SWPix.com/A.S.O

ツール・ド・ヨークシャー2019第1ステージ
総合成績
1位 ジャスパー・アッセルマン( オランダ、ルームポット・シャルレ) 4:05:45
2位 フィリッポ・フォルティン(イタリア、コフィディス) 0:00:05
3位 ヤコブ・ヘネシー(イギリス、キャニオンDHBブロールホームズ )
4位 ヨナス・ファンヘネヒテン(ヴィタルコンセプト・B&Bホテルズ) 0:00:07
5位 ケヴィン・ファンマールク(アメリカ、ハーゲンスベルマンス・アクセオン)
6位 ダニエル・ビッガム(イギリス、リッブルプロサイクリング) 0:00:10
7位 ボーイ・ファンポッペル(オランダ、ルームポット・シャルレ) 0:00:11
8位 ガブリエル・カーレー(イギリス、チームウィギンズ・ルコル
9位 イーサン・ハイター(イギリス、イギリスナショナルチーム)
10位 シリル・バルト(フランス・エウスカディ・バスクカントリー・ムリアス)
山岳賞
ヤコブ・ヘネシー(イギリス、キャニオンDHBブロールホームズ)5pt

ポイント賞
ジャスパー・アッセルマン( オランダ、ルームポット・シャルレ) 16pt

text:Makoto.AYANO
photo:A.S.O

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