石畳セミクラシック、ル・サミンで再びドゥクーニンク・クイックステップが他を圧倒。数的優位で昨年覇者ニキ・テルプストラ(オランダ、ディレクトエネルジー)を抑え、フロリアン・セネシャル(フランス)のプロ初勝利をもたらした。



風車の下を進むプロトン風車の下を進むプロトン (c)CorVos
先週末の2連戦で一気に開幕した石畳クラシックシーズン。クールネ〜ブリュッセル〜クールネから僅か2日を明け、今度はベルギー南部のワロン地域を舞台としたセミクラシックレース、ル・サミン(UCI1.1)が開催され、再びタフレースを得意とする各チームが集結した。

ワロン地方のロードレース開幕戦であり、荒れた石畳が多いためパリ〜ルーベの予行演習とも言える本レース。中盤からは難易度3つ星の「ヴィオリー」と「ベル・ヴュ」を含む4ヶ所の石畳区間が含まれる24.8kmの周回コースを4周回するため、石畳セクターは合計16箇所にも及ぶ。

雨に濡れた滑りやすい難コースに向け、3つのワールドツアーチーム(ドゥクーニンク・クイックステップ、ロット・スーダル、アージェードゥーゼール)を筆頭に、12のプロコンチネンタルチームなど、合計174名が出走。この日は普段アシスト役を担う選手で構成されたドゥクーニンク+他チームvs昨年覇者ニキ・テルプストラ(オランダ)率いるディレクトエネルジーという構図が展開されることとなる。

レースを支配したドゥクーニンク・クイックステップレースを支配したドゥクーニンク・クイックステップ (c)CorVos
石畳で集団前方を走るニキ・テルプストラ(オランダ、ディレクトエネルジー)石畳で集団前方を走るニキ・テルプストラ(オランダ、ディレクトエネルジー) (c)CorVos
スタート直後にアレクシー・グジャール(フランス、アージェードゥーゼール)ら3名が逃げたことで、レースは静かな展開で動き出す。しかしメイン集団では大きな落車が発生し、路面に放り投げ出されたマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ドゥクーニンク・クイックステップ)らがリタイア。その後も石畳では断続的に落車やメカトラブルなどが発生した。

周回コースに入ると逃げは吸収され、次いでレミ・カバニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)、スタン・デウルフ(ベルギー、ロット・スーダル)、ロイック・ヴリーヘン(ベルギー、ワンティ・グループゴベール)が逃げたものの、あまり距離を逃げることなく吸収。続いてディレクトエネルジーが組織的なペースアップを行うなど、徐々にサバイバルレースの様相を呈していく。

終盤に入るとアイメ・デヘント(ベルギー、ワンティ・グループゴベール)とピーター・セリー(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)が逃げ、残り1周回突入と時を同じくしてエルマール・ラインデルス(オランダ、ルームポット・シャルル)やティム・デクレルク(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)らが合流し、先頭グループはドゥクーニンクとルームポットが2名づつ入った7名に。後手に回るディレクトエネルジーは30秒ほどのビハインドを負い、アシスト陣による捨て身のペースアップで何とか距離を詰めていく。横風も影響したことで集団の人数は一気に減少した。

中盤、様子見のアタックで抜け出すニキ・テルプストラ(オランダ、ディレクトエネルジー)中盤、様子見のアタックで抜け出すニキ・テルプストラ(オランダ、ディレクトエネルジー) (c)CorVos
ここで雨に濡れた登り基調のパヴェでテルプストラ自らが動いた。過去にツール・ド・フランスの石畳ステージで勝利しているラース・ボーム(オランダ、ルームポット・シャルル)とフロリアン・セネシャル(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)を引き連れ、数秒前の逃げグループにジャンプアップ。エース級選手がもれなく入ったこの10名(ドゥクーニンクとルームポットは3名ずつ)が、13km先のフィニッシュを目指して後続を突き放していく。

すると残り9km、3つ目のパヴェ「ノネット」を機にテルプストラが波状攻撃を仕掛けるも、ボームが追走したことで決まらない。ドゥクーニンク勢もテルプストラの攻撃に苦しめられつつも数的優位は崩れず、残り3km地点の最終パヴェではセネシャルがアタック。反応したボームとテルプストラと共に抜け出したが、ペースが緩んだ瞬間に追いついたデクレルクがそのまま先行する。再三に渡るドゥクーニンクの攻撃で追走グループは牽制状態に陥った。

後方を確認しながらスプリントするフロリアン・セネシャル(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)後方を確認しながらスプリントするフロリアン・セネシャル(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) (c)CorVos
キャリア初勝利を飾ったフロリアン・セネシャル(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)キャリア初勝利を飾ったフロリアン・セネシャル(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) (c)CorVos誕生日だった妻とキャリア初勝利を祝うフロリアン・セネシャル(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)誕生日だった妻とキャリア初勝利を祝うフロリアン・セネシャル(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) (c)CorVos


しかし、力を使っていたデクレルクの勢いは足りず、ルームポットの牽引によって最終盤でキャッチ。ボーム先行でスプリント勝負が始まったが、「チームメイトの素晴らしい働きで足を貯めることができていた」と語るセネシャルが加速する。スプリントで分が悪いテルプストラは追いつけず、25歳のセネシャルがプロキャリア初勝利を飾ってみせた。

「みんなが"今日は自分の日だ"と言ってくれたから勝利を信じていたんだ。集団スプリントを狙っていたけれど、余裕があったので石畳でアタックした。これまで惜しいところで勝利を逃してきたので最高に嬉しいよ。特に今日は妻の誕生日でスタート前にも勝利を頼まれていたんだ。最高のプレゼントになったし、僕にとってもキャリア初勝利。フィニッシュ後に二人でお祝いできて嬉しかったよ。一生忘れられない思い出になった」と、普段エースのアシストを担うセネシャルは言う。

"ウルフパック"にとってはオンループでのゼネク・スティバル(チェコ)、クールネでのボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)に続く石畳クラシック傷なしの3勝目。絶対的エース不在の中で挙げた今回の勝利で、今一度選手層の厚さを見せつけることとなった。

ル・サミン2019表彰台ル・サミン2019表彰台 (c)CorVos
クワレモントビールを飲み干すフロリアン・セネシャル(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)クワレモントビールを飲み干すフロリアン・セネシャル(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) (c)CorVos勝利には手が届かなかったニキ・テルプストラ(オランダ、ディレクトエネルジー)勝利には手が届かなかったニキ・テルプストラ(オランダ、ディレクトエネルジー) (c)CorVos


ル・サミン2019結果
1位 フロリアン・セネシャル(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) 4h38'20"
2位 アイメ・デヘント(ベルギー、ワンティ・グループゴベール)
3位 ニキ・テルプストラ(オランダ、ディレクトエネルジー)
4位 ラース・ボーム(オランダ、ルームポット・シャルル)
5位 ピーター・セリー(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) +01"
6位 ステイン・ファンデンベルフ(ベルギー、アージェードゥーゼル・ラモンディアール)
7位 ティム・デクレルク(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) +06"
8位 エルマール・ラインデルス(オランダ、ルームポット・シャルル) +08"
9位 ヤスパー・アッセルマン(オランダ、ルームポット・シャルル) +14"
10位 レミ・メルツ(ベルギー、ロット・スーダル) +19"
text:So.Isobe
photo:CorVos

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