シエラネバダ山脈を走るブエルタ・ア・アンダルシア第4ステージで、首位ウェレンスをふるい落とすためにミッチェルトン・スコットとアスタナが総攻撃。サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)が独走勝利を飾り、ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)が首位に浮上した。


急勾配の1級山岳アザリャナス峠を登るステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)ら急勾配の1級山岳アザリャナス峠を登るステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)ら photo:CorVos
ブエルタ・ア・アンダルシア2019第4ステージブエルタ・ア・アンダルシア2019第4ステージ photo:Vuelta a Andalucía
『ルタ・デル・ソル』ブエルタ・ア・アンダルシア第4ステージは、距離が120kmと短いながらも、獲得標高差が2,600mに達するクイーンステージ。前半に1級山岳プルチェ峠(全長8.9km/平均7.7%)、後半に1級山岳アザリャナス峠(全長7.3km/平均9.6%)が登場する難関コースで総合争いが繰り広げられた。

序盤からレースを動かしたのは総合逆転を狙うミッチェルトン・スコットとアスタナだった。エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット)を含む11名の逃げグループを追う形で、最初の1級山岳プルチェ峠でアスタナがペースアップ。平均勾配7.7%の登りを平均19.7km/hで駆け上がったメイン集団は先頭の逃げグループを捉え、人数を減らしながらステージ後半の連続山岳に向かった。

山岳賞を狙って独走したセルジオ・サミティエル(スペイン、エウスカディバスクカントリー・ムリアス)は2級山岳ゲハルシエラ(全長10.4km/平均3.4%)で吸収。徐々にアシストを減らすロット・スーダルに対して、ミッチェルトン・スコットとアスタナが総攻撃を開始した。フィニッシュまで36kmを残してサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)やルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)らがアタックを繰り出すと、ついに総合首位ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)が遅れてしまう。

ウェレンスのいない、ミッチェルトン・スコット3名(Sイェーツ、Aイェーツ、ヘイグ)とアスタナ4名(フルサング、イサギレ、ビルバオ、サンチェス)が占拠する先頭集団。アシストを失ったウェレンスを尻目に、精鋭集団は急勾配の1級山岳アザリャナス峠に突入する。断続的に勾配が10%を超える登りで、ビルバオのアタックにカウンターをかける形でSイェーツが飛び出した。

フィニッシュまで27kmを残して独走に持ち込んだSイェーツ。総合で14分47秒遅れの2018年ブエルタ・ア・エスパーニャ覇者は、フルサングやヨン・イサギレ(スペイン、アスタナ)、アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)、ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)、セルジオ・イギータ(コロンビア、フンダシオンエウスカディ)を含む追走グループから47秒リードで1級山岳アザリャナス峠をクリアする。

人数を揃える追走グループに下り区間でタイム差を詰められながらも、Sイェーツが26秒差で独走勝利を飾った。ステージ2位には、2020年にEFエデュケーションファースト入りが決まっている21歳のイギータが入り、チームメイトに守られながらステージ7位に入ったフルサングが総合首位に浮上した。

独走勝利を飾ったサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)独走勝利を飾ったサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:CorVos
2018年のブエルタ総合優勝以来となる勝利を飾ったSイェーツは「大会前半よりも脚の調子が上がっている。アスタナが最初の1級山岳でハイペースを刻んだおかげで、かなりハードな展開になった。すでに自分は総合で順位を下げていたので、ライバルが必死で追いかけてくることはないと思ったんだ。アスタナと他のチームにプレッシャーを与えるためにアタック。他のチームの後ろで走る展開にはしたくなかった」とコメント。この日ジャック・ヘイグ(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)が精鋭集団から脱落したため、双子の兄弟アダム・イェーツの総合5位がミッチェルトン・スコットの総合最高位となっている。

「こんなシーズンの早い時期に勝つのは珍しい。冬場に良いトレーニングを積めているので、このまま調子を上げていきたい」。そう語るSイェーツは3月10日開幕のパリ〜ニースに出場予定。その後、ボルタ・ア・カタルーニャに出場し、ジロ・デ・イタリアで前年度のリベンジを狙う予定だ。

「総合リードを奪うという目標をチームとして達成できた」と語るのはウェレンスからリーダージャージを奪い、最終日を前に総合優勝に王手をかけたフルサング。「ステージ後半にかけてウェレンスにプレッシャーを与えるためにミッチェルトン・スコットと協力してアタックを連発。完璧な展開だった。サイモン・イェーツを追うこともできたけど、彼はすでに総合で遅れていたので、より総合で危険な選手たちをコントロールすることにしたんだ。今日はアスタナのチームメイトたちがとにかく強力で、完璧な仕事をしてくれた」。

総合2位にはチームメイトのヨン・イサギレ(スペイン、アスタナ)、総合4位にペリョ・ビルバオ(スペイン、アスタナ)がつけており、フルサングの直近のライバルは11秒差で総合3位につけるクライスヴァイクとなる。「明日も決してイージーなステージではないけど、チームは強力なので、最後まで総合リードを守り抜きたい」とジャージキープを誓った。

大会連覇の夢が潰えたウェレンスは「最終ステージを前にリーダージャージを失ってしまって残念。総合トップ10に3名を揃えるアスタナは強力で、予想通り厳しいステージになった。でもステージ2勝という成績を残せたので、今のコンディションには満足しているし、次なる目標のレースに向けて自信を得た」と前向きだ。『アルデンヌクラシック』を狙う27歳はポイント賞ジャージを着て最終ステージを走る。

総合リーダージャージを手にしたヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)総合リーダージャージを手にしたヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ) photo:CorVos
ブエルタ・ア・アンダルシア2019第4ステージ結果
1位 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 3:01:03
2位 セルジオ・イギータ(コロンビア、フンダシオンエウスカディ) 0:00:26
3位 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)
4位 アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)
5位 ヨン・イサギレ(スペイン、アスタナ)
6位 ペリョ・ビルバオ(スペイン、アスタナ)
7位 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)
8位 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ) 0:01:20
9位 ジャック・ヘイグ(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)
10位 エクトル・カレテロ(スペイン、モビスター) 0:02:51
19位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) 0:03:26
115位 初山翔(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ) 0:19:00
個人総合成績
1位 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ) 13:43:41
2位 ヨン・イサギレ(スペイン、アスタナ) 0:00:07
3位 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) 0:00:11
4位 ペリョ・ビルバオ(スペイン、アスタナ) 0:00:21
5位 アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 0:00:57
6位 ジャック・ヘイグ(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) 0:01:08
7位 セルジオ・イギータ(コロンビア、フンダシオンエウスカディ) 0:01:12
8位 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ) 0:01:43
9位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) 0:02:53
10位 ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・メリダ) 0:03:41
ポイント賞
1位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) 53pts
2位 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ) 49pts
3位 ヨン・イサギレ(スペイン、アスタナ) 44pts
山岳賞
1位 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 16pts
2位 アルバロ・クアドロス(スペイン、カハルラル・セグロスRGA) 15pts
3位 ヨン・イサギレ(スペイン、アスタナ) 12pts
チーム総合成績
1位 アスタナ 41:11:31
2位 ミッチェルトン・スコット 0:02:02
3位 モビスター 0:12:02
text:Kei Tsuji
photo:CorVos

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