盗難やイタズラを検知、GPSで愛車の現在位置を通知してくれるIoTデバイス「オルターロック」の詳細情報をチェックする。機能の要となる振動検知機能や、万が一盗難されてしまった場合のGPSトラッキング機能などを実際に使用してみて確認した。



ボトルケージ台座に取り付けるスマートデバイス オルターロックボトルケージ台座に取り付けるスマートデバイス オルターロック
スマートスピーカーなどで目にする機会が多くなった"IoT"という言葉。IoT(Internet of Things)とは「モノのインターネット」と呼ばれ、様々な物同士をネットワークで接続することで、遠隔でデータ通信やデバイスの操作などを可能にする仕組みのことを指す。近年ではスマート化などと言われており、自動車などもインターネットとの接続が前提となって開発が行われているほどだ。

そのIoT化の波はついに自転車にも到達し、オルターロックという盗難防止デバイス/サービスが誕生した。オルターロックはデバイス内に加速度センサーが搭載されており、そのセンサーが振動や移動を検知するとアラームが鳴るという盗難やイタズラの抑止をメインとしたもの。

もちろん自分が乗る時には異変だと検知されないように、持ち主と判定するためのスマホとペアリングして使用する仕組みが採用されている。例えば、ペアリングしたスマホが遠くに離れた場合は、自動的にスタンバイ状態となり警戒モードとなる。もちろん、手動で警戒モードのオン/オフを切り替えることも可能となっており、ユーザーが使いやすいように作られている。

付属するのはスタートガイドと取付用ボルト、オルターロック装備をアピールするステッカー付属するのはスタートガイドと取付用ボルト、オルターロック装備をアピールするステッカー ペアリング前に行うのは自転車情報の登録だペアリング前に行うのは自転車情報の登録だ

チューブとボトルケージの間にオルターロックを挟み込むチューブとボトルケージの間にオルターロックを挟み込む スマホのアプリとデバイスの両方揃い、初めて機能が発揮されるスマホのアプリとデバイスの両方揃い、初めて機能が発揮される


警戒モード時に自転車の動きを検知した時、デバイスのアラームが鳴るだけではなく、異変があったことをペアリングしたスマホに通知。持ち主は離れた場所にいる時でも、愛車に何かが起こったことを知ることが可能となっている。非常事態を知ることができる安心感は、ちょっとしたコンビニ休憩などでも盗難の心配のある高級スポーツバイクユーザーにとって大きなメリットだろう。

単なる振動検知ブザーではなく、スマホに送られてくる通知には自転車の位置情報も含まれていることが最大の特徴だ。オルターロックにはGPSが搭載されており、デバイスが異変を検知した時に座標を取得してくれる機能が備えられている。アラームが鳴ってもなお、盗まれてしまった場合でも、乗り捨てられた場所を知ることができるため、愛車が手元に戻ってくる可能性は高い。

さて、実際のデバイスを見てみよう。サイズが長さ150mm×幅47mm×厚さ8mmの板状とされており、ボトルケージ台座に取り付けられる穴が設けられている。本体の約1/3は曲げられており、反ドライブサイド側のシートチューブに沿うような形状となっている。ボトルケージに隠れてしまう大きさとしないのは、GPSなどの電波状況を良い状態に維持するため。フレームとの見た目の相性や空力などをできる限り阻害しないように、後方に流れる設計としている。ドライブサイドから自転車を見た時、写真を撮影した時にオルターロックが存在を主張しない事も開発者のこだわり。

フランジは風を後方に流せるようなデザインフランジは風を後方に流せるようなデザイン
スポーツバイクの洗練された見た目をそれほど崩さないスポーツバイクの洗練された見た目をそれほど崩さない ドライブサイドから見るとオルターロックの存在は主張しすぎないドライブサイドから見るとオルターロックの存在は主張しすぎない


自転車の横位置写真を撮影しても、オルターロックが備えられていることはわからない自転車の横位置写真を撮影しても、オルターロックが備えられていることはわからない
実測重量は本体が55g、付属するボルトが6g、計61gという結果となった。極限まで軽さを追求している人ならば重量物となりうるが、取り立てて重いわけではない。取り付ける位置も通常はボトルケージ台座であり、ハンドルやサドルなどダンシング時の振りが変わるような場所ではない。何十万円もする愛車を盗まれない事の方が優先順位は高いはずだ。

デバイス側に設置されたボタンはペアリングに使用する物の1つだけ。電源ボタンも配置されていないのは、窃盗犯がオルターロックを操作するのを防ぐため。各種設定等は全てスマートフォンから行う。そのためオルターロックを導入した時は、アプリで色々と操作を試してみたほうが良い。

オルターロック導入手順は秀逸な設計が行われている。ペアリングに移る前にマイバイクの情報を入力する必要があるのだ。入力するのは自転車のブランド名とモデル名、特徴コメント、車体番号、防犯登録番号、車体の写真。各種番号をキチンと管理できている人ならば、盗まれてから直ぐに番号を控えた資料を出せるのだろうが、少なくともズボラな筆者は控えていないので、このようなアプリで管理できることは非常にありがたい。

本体とボルトで61g本体とボルトで61g
また、ペアリング前に入力するというフローも素晴らしい。几帳面な方ならばペアリング後に各種情報を入力できるかもしれないが、筆者は後回しにすると直ぐに忘れてしまう。盗まれた時にこれらの情報を入力していなかったと気がつくのが目に見えている。アプリに登録しておくことで、愛車が盗難されたときも盗難届を提出する際に必要な情報を直ぐに出すことができる。

入力後に行うペアリング方法も非常にシンプルだ。アプリのデバイス設定画面が開いた後に、デバイスに1つしか無いボタンを押し、、スマホから認証コードを送信するだけ。うまく行けばスマホが電波をキャッチするため、表示の通り作業を進めていくだけだ。シンプルな連携作業はBluetooth機器とのペアリングに慣れていない方でも、スムースに作業を行えるだろう。

オルターロックで設定できるのは以下の項目
オートガード オン/オフ
振動検知感度 低/中/高
アラーム オン/オフ
アラームの長さ 5~120秒(5秒毎)
電波強度 弱/中/強
システム音 オン/オフ
オートガードというのは、ペアリングしたスマホがオルターロックから離れると自動的に警戒(振動検知)モードに移行する機能のこと。この機能をオフにすると警戒モードへの切り替えが手動になる。アプリの設定画面を開けばワンタップでオン/オフの操作を行えるため、シチュエーションに応じてモードを切り替えやすくなっている。

オルターロックのアプリTOP画面オルターロックのアプリTOP画面 自転車情報の登録はパーツなどの特徴、防犯登録番号などを記入する自転車情報の登録はパーツなどの特徴、防犯登録番号などを記入する 設定でオートガードやアラームのオンオフを切り替えられる設定でオートガードやアラームのオンオフを切り替えられる


オートガードのデバイスとスマホの連携距離は、上述の「電波強度」で行うことができる。室内やビルといった要因で連携距離が変化するため、電波の強弱となっているのだろう。強ければ長い距離、弱ければ短い距離でオートガードが発揮する。サイクリングのコンビニ休憩など少しだけ自転車を離れる場合は「弱」など細かく使い分けることが可能だ。

さて、肝心の振動検知センサーはバイクラックにかけている時に風で揺られる可能性も考慮し、横方向の動きよりも縦方向の動きに敏感に反応するように調整されている。「高」では安定感のあるデスク上に置いたデバイスを小指で小突くだけで警報がなるほど。自転車に取り付けた場合でもサドルに手をかけただけでも異変を検知する。誤って検知する可能性も多いため、運用にも工夫が必要になりそうだ。

「低」ではスタンドに立てた自転車を左右に軽く揺らしても反応しないため、バイクラックに掛けた自転車が風に揺られただけではアラームが作動しにくいと考えられる。一方で、バイクラックからソーッと降ろしただけ、立てかけていた自転車を揺らさずに気をつけていても、気が付かないような段差を通過しただけでもアラームは反応してくれる。

スマホの通知画面。第一報はリスト一番下、その後移動を検知する度に位置情報を教えてくれるスマホの通知画面。第一報はリスト一番下、その後移動を検知する度に位置情報を教えてくれる 異変を検知したら、画面のような通知が出現する異変を検知したら、画面のような通知が出現する 位置情報は住所や地図で表示される。地図はピンチイン・ピンチアウトが行える位置情報は住所や地図で表示される。地図はピンチイン・ピンチアウトが行える


駐輪するシチュエーションは千差万別であるため、ユーザーそれぞれの使用状況に合わせる必要がある。駐輪する場所の安定性が感度を決める上で決め手となってきそうだ。レースイベントなどで複数の自転車と一緒にバイクラックにかける場合は「低」とし、安定した室内や駐輪スペースでは「高」とするといった使い方が考えられる。

先述しているようにガサツな筆者の場合では、毎回の駐輪で設定を変更するというのは現実的ではない。加えて、自転車と離れると自動的に警戒モードへと切り替わることがオルターロックの魅力だ。そんなガサツな筆者ですらアプリを開く動機を持てるように、オルターロックはシクロワイアードを始めとする各社ニュースフィード一覧や、ロードクエストのようなサイクリングスポット共有SNSなどにアプリ内からアクセスできるように設計を行っている。アプリを日常的、サイクリングの機会に開くようになれば、設定も細かく変更するようになるはずだ。

GPSのトラッキングに関しては、テストで使用してみた所、自分が通過した道の上にピンが打たれており、その精度の高さには驚かされた。もちろん都市部のようにビルが立ち並ぶ場合は精度が低くなるケースもあるかもしれない。しかし、GPSで愛車の現在位置がある程度、把握できるようになれば安心感に繋がるだろう。

盗難情報登録のページに移動すると、盗難届を出す時に必要な日時・場所を表示される。SNS投稿のためのテンプレートが用意されている盗難情報登録のページに移動すると、盗難届を出す時に必要な日時・場所を表示される。SNS投稿のためのテンプレートが用意されている 日常的にオルターロックのアプリを開けるようにニュースフィードも用意されている日常的にオルターロックのアプリを開けるようにニュースフィードも用意されている サイクリングスポットの情報もオルターロックのアプリからアクセスできるサイクリングスポットの情報もオルターロックのアプリからアクセスできる


オルターロックでは一度盗難やイタズラを検知した場合、その後の移動もトラッキングする仕組みとなっている。振動を検知した後、一定の時間が経過した際に再び振動を検知すると通知を送ってくる仕組みだ。位置情報の取得は約1分20秒ごと。サイクルコンピューターのように1秒毎に設定しないのは、バッテリーライフを長くするため。移動の軌跡を追うことは叶わないが、捜索場所の限定には繋がる。

盗難検知後、SNSに情報を投稿できるようにテンプレート文、5日間だけ閲覧ができる位置情報掲載マップのURLが登場する。オルターロックのツイッターアカウントは盗難情報をリツイートしてくれることもあるため、自分のフォロワー以外にも情報が届きやすくなるはずだ。


どのような錠を使用していてもサイクリング途中で愛車の側から離れるのは気が気でない。オルターロックを使用していても、その心配は少なからず存在しているのも事実。しかし、アラームが鳴ることによって窃盗犯を牽制することができ、なおかつ自分でも愛車の異変に気がつけるというのは、確実に安心につながっている。

これまで自転車盗難が心配で、カフェ休憩などを敬遠していた方も気楽に自転車に乗ることができるようになるはずだ。また、イベント会場でも心無い人による窃盗が抑止され、安心して楽しむことができるはず。サイクリングにおける不安事項を1つ減らすことができるオルターロックは、自転車の楽しさを引き出してくれる存在だ。



AlterLock デバイス仕様
サイズ:長さ150mm x 幅47mm x 厚さ8mm
重量:約60g
バッテリー:リチウムポリマー
充電端子:USB (Micro-B)
稼働時間:最大1.5ヶ月※ 利用状況により異なる
通信方式:Bluetooth Low Energy / Sigfox
防水/防塵:IP66
付属品:取付用ボルト2本

AlterLock 価格
デバイス価格:8,900円(税込)
サービス利用料:年額3900円もしくは月額390円(いずれも税込)

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