砂のコクサイデを舞台に開催されたUCIシクロクロスワールドカップ第5戦で、マチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)が圧勝。女子はデニセ・ベッツェマ(オランダ、マーラックス・ビンゴール)が勝利した。



砂の登りを走るマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)砂の登りを走るマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス) (c)UCI
シリーズ9戦中、折り返しの5戦目を迎えたUCIシクロクロスワールドカップ。その舞台は砂の代名詞でもある名コース、ベルギーはコクサイデ。長い砂地はアップダウンの連続で、トップ選手でも押し・担ぎを強いられる難所が多く連続する。

日本で関西シクロクロスマキノが開催されたこの日、コクサイデのエリート男子レースに出走したのは48名。この日もまた、連勝街道驀進中のマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)が圧巻のパフォーマンスを見せつけることとなる。

スタートダッシュでこそラース・ファンデルハール(オランダ、テレネット・フィデア)が先頭に立ったものの、「大好きなコースの一つだからとてもモチベーションが高かった」と言うファンデルポールは最初の砂区間で前に出ると、圧倒的なパワーと砂さばきで後続を突き放しに掛かる。

序盤の遅れを取り戻して2位に入ったワウト・ヴァンアールト(ベルギー、チベル・セボンオフロードチーム)序盤の遅れを取り戻して2位に入ったワウト・ヴァンアールト(ベルギー、チベル・セボンオフロードチーム) (c)CorVos
W杯ランキング首位のトーン・アールツ(ベルギー、テレネット・フィデア)は3位W杯ランキング首位のトーン・アールツ(ベルギー、テレネット・フィデア)は3位 (c)CorVosホールショットを決めたラース・ファンデルハール(オランダ、テレネット・フィデア)は4位ホールショットを決めたラース・ファンデルハール(オランダ、テレネット・フィデア)は4位 (c)CorVos


序盤の砂区間で乗れず、さらに下りで前転するなどした世界王者ワウト・ヴァンアールト(ベルギー、チベル・セボンオフロードチーム)は埋もれ、唯一追従したファンデルハールも1周回完了時には16秒のビハインドを許してしまう。こうして欧州王者が「普段通りの展開」で独走体制に持ち込んだ。

ファンデルポールの後ろを固めたのはテレネット・フィデア勢。ファンデルポールやW杯ランキング首位につけるトーンとタイスのアールツ兄弟(ベルギー)、コルヌ・ヴァンケッセル(オランダ)らが列車を組んだが、既に30秒リードを築いていたファンデルポールとの差は縮まらない。徐々にペースを取り戻したヴァンアールトが合流し、フィデア勢を切り崩しながら9周回中5周目には2番手に浮上する。ランキング首位を守りたいアールツが単独3番手となり、表彰台メンバーが選び出された。

砂を得意とするローレンス・スウィーク(ベルギー、パウエルスサウゼン・ファストフートサービス)らが2分半近く遅れる中、ファンデルポールは細かなミスを出しながらも独走勝利。これから温暖なスペインでの合宿に向かう欧州王者がシーズン後半戦に弾みをつける圧勝で会場を後にした。

圧巻のパフォーマンスで勝利したマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)圧巻のパフォーマンスで勝利したマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス) (c)CorVos
エリート男子表彰台エリート男子表彰台 (c)CorVos
2位を走行していたヴァンアールトは、最終的に25秒差まで詰めてフィニッシュ。「スタートでペダルキャッチをミスした悪いリズムが暫く響いてしまった。もちろんマチューがレースをコントロールしていたこともあるけれど、走り自体は彼とそこまで差があるとは思わないよ」とレース後に語っている。



エリート女子:ダークホース、ベッツェマが独走勝利

先頭で長い砂区間を走るニッキー・ブラマイヤー(イギリス、MUDIIITA)先頭で長い砂区間を走るニッキー・ブラマイヤー(イギリス、MUDIIITA) (c)CorVos
またこの日、エリート女子レースでは出入りの激しい勝負が繰り広げられた。好スタートを切った元世界王者マリアンヌ・フォス(オランダ、ワオディールス)は徐々に遅れ、世界王者サンヌ・カント(ベルギー、コレンドン・サーカス)やベテランのニッキー・ブラマイヤー(イギリス、MUDIIITA)、欧州王者アンマリー・ヴォルスト(オランダ、ステイラーツ777)らが競り合う展開でレースは進む。

アタックと吸収を繰り返すうちに、後方からは全米王者のケイティ・コンプトン(アメリカ、トレック)らが次々と合流。5周回中3周目には世界王者が独走に持ち込んだものの、1周回を逃げ切れずに吸収される。ここで脚を使ったカントは遅れがちとなる苦しい展開に陥った。

好スタートを切った元世界王者マリアンヌ・フォス(オランダ、ワオディールス)は徐々に遅れた好スタートを切った元世界王者マリアンヌ・フォス(オランダ、ワオディールス)は徐々に遅れた (c)CorVos巧みな砂捌きを見せたサンヌ・カント(ベルギー、コレンドン・サーカス)は7位に沈んだ巧みな砂捌きを見せたサンヌ・カント(ベルギー、コレンドン・サーカス)は7位に沈んだ (c)CorVos

独走勝利を飾ったデニセ・ベッツェマ(オランダ、マーラックス・ビンゴール)独走勝利を飾ったデニセ・ベッツェマ(オランダ、マーラックス・ビンゴール) (c)CorVos
エリート女子表彰台エリート女子表彰台 (c)CorVos
カントのアタックが飲み込まれると、最後に先頭グループに追いついたデニセ・ベッツェマ(オランダ、マーラックス・ビンゴール)がペースアップ。今シーズン途中からマーラックス・ビンゴール入りし、まだチームバイクも届いていない状態の25歳がペースを刻むと、まず世界王者が、続いてブラマイヤーや欧州王者が脱落。砂区間を軽やかなランニングでこなしたベッツェマがワールドカップ初勝利を飾った。

今年の欧州選手権で3位に食い込み、前日土曜日に開催されたレースでも優勝したベッツェマ。この日は3列目スタートという不利を打ち破っての勝利だった。レース後のインタビューでは「言葉にならないほど嬉しい。もちろん走るからには優勝を狙っていたけれど、本当に勝てるとは思わなかった」と驚きを語っている。


エリート男子結果
1位 マチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス) 1h04'13"
2位 ワウト・ヴァンアールト(ベルギー、チベル・セボンオフロードチーム) +25"
3位 トーン・アールツ(ベルギー、テレネット・フィデア) +48"
4位 ラース・ファンデルハール(オランダ、テレネット・フィデア) +1'45"
5位 コルヌ・ヴァンケッセル(オランダ、テレネット・フィデア) +2'18"
6位 ローレンス・スウィーク(ベルギー、パウエルスサウゼン・ファストフートサービス) +2'22"
7位 ダーン・ソエテ(ベルギ、パウエルスサウゼン・ファストフートサービス) +2'26"
8位 マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、マーラックス・ビンゴール) +2'37"
9位 ヨリス・ニューウィンハイス(オランダ、サンウェブデヴェロップメント) +2'40"
10位 ケヴィン・パウエルス(ベルギー、マーラックス・ビンゴール)
エリート女子結果
1位 デニセ・ベッツェマ(オランダ、マーラックス・ビンゴール) 45'53"
2位 ニッキー・ブラマイヤー(イギリス、MUDIIITA) +08"
3位 アンマリー・ヴォルスト(オランダ、ステイラーツ777) +11"
4位 セイリン・デル・カルメン・アルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス) +12"
5位 アリーチェマリア・アルツッフィ(イタリア、ステイラーツ777) +27"
6位 ラウラ・ヴェルドンショット(ベルギー、マーラックス・ビンゴール) +29"
7位 サンヌ・カント(ベルギー、コレンドン・サーカス) +30"
8位 エレン・ヴァンロイ(ベルギー、テレネット・フィデア) +44"
9位 イヴィ・リチャーズ(イギリス、トレックファクトリーレーシング)
10位 フルール・ナーヘンガスト(オランダ、テレネット・フィデア) +1'03"
text:So.Isobe
photo:CorVos,UCI