おきなわ市民100kmアンダー39で優勝した川田直輝(FUNNY RIDE)のレポートをお届け。昨年は入念な試走と市民140kmクラスの出場を経て、今年は市民100kmを選択。羽地ダムの登りでアタックを敢行し、独走で優勝を掴んだ。独自の分析も必読だ。

市民100kmアンダー39に優勝した川田直輝(FUNNY RIDE)市民100kmアンダー39に優勝した川田直輝(FUNNY RIDE) photo:Makoto.AYANO香川県でヒルクライムメインにレースをしているFUNNY RIDEの川田直輝と申します。ツール・ド・おきなわは昨年、市民140kmを走り、今年で2回目の挑戦です。初出場の昨年は9月に一人で試走に沖縄を訪れるという力の入れようでした。そのときは、単独で走るととにかく地脚が無いと話にならないハードなコースと理解しました。

小柄でヒルクライムには自信のあった僕は、とにかく走って・食ってで、10月に月間走行2200キロ、体重は57キロまで増量して挑戦した。結果は登りで非常に苦しむというショッキングなものだった。その反省から、今年はヒルクライムシーズンと同水準の55.5キロでレースに臨む。10月の月間走行距離は1800kmと控え目だが、ロードレースを2戦走り、メリハリをしっかりつけたトレーニングを積んだので不安要素ではない。

沖縄へは前日の土曜日の昼に到着。試走と脚の状態の確認で、大浦からレース会場までの20キロ弱を走る。明日最高のパフォーマンスを発揮できるよう、2週間かけて疲労抜きしてきたが、まだまだ回復しきっていない。脳裏に不安がよぎるが、もう自分を信じて回復走レベルの走りをするしかない。

レース当日は4時半に起き、スタート地点へ移動。昨年の成績からシード権を獲得していたので、自転車を並べる必要はなく、ウォーミングアップを行う。

奥の登りでゆっくり登り始めるが、今年一の身体の軽さを感じる。めでたく本日ピークを迎えることが出来ているようだった。

スタート直後の奥の登りはニュートラカーが先頭にいるので程よい強度で淡々と。

辺戸岬を周り西海岸に出る辺りは、昨年落車のあったポイント。そのためか、集団はハイペースで縦伸びした状態で進む。

やんばる路は厳しいアップダウンが繰り返すやんばる路は厳しいアップダウンが繰り返す photo:Makoto.AYANO
特に緩む事なく普久川ダムの登りへ。昨年は苦しんだこの登り。今年は昨年よりタイムが速いにも関わらず楽にこなすことができた。

先頭付近で安波まで下り、学校坂へ。ここの急坂をサイクルプラスの濱野選手が一本引き。濱野さん劇場の開幕であった。

その後の長い下り基調のアップダウンでも常にペースが緩まないようペースコントロールしてくれていた。内心「あぁ、こういう人が沖縄で勝つ人なんだろうな」と思っていた。

約55キロ地点で緑色のジャージの選手が勢いよくアタック。単独で抜け出していく。もちろん集団は容認。追走も掛かるが、追いつけずに戻ってくる。

結局約20キロ、有銘の登りまで逃げ続け、吸収と同時にこのレースで2位のKosinski選手がカウンターアタック。ブリッジするかどうか迷うが、ここから単独で逃げ切れられるとも思えないし、僕が追うと集団がぞろぞろ付いて来ると思ったので容認した。

因みにこの頃には濱野選手の姿は見えなくなり、集団をコントロールするのはほぼ僕になっていた。慶佐次の補給場で落車があったから巻き込まれたのかもしれない。

アップダウンをペースを緩まさずにローテしていくうちに集団は5名まで絞られた。しかし羽地前の平坦で思いの他Kosinski選手とタイム差が広がっていたので集団を鼓舞し少しペースを上げる。

最後の難関、羽地ダムへの急勾配の登り最後の難関、羽地ダムへの急勾配の登り photo:Makoto.AYANO
いよいよ勝負所、羽地ダム。仕掛けたのはこのレース4位の田中選手。アタックではなく、タレずに登り続けれる最速ペースといった感じ。しばらく後ろに付いて走るが少し脚に余裕を感じたのでトンネル前で先頭に出て、ペースアップする。Kosinski選手ももういつでも捉えれる範囲だ。

緑のゼッケンが市民100kmアンダー39の選手緑のゼッケンが市民100kmアンダー39の選手 photo:Makoto.AYANO助け合って進む市民100kmアンダー39の選手たち助け合って進む市民100kmアンダー39の選手たち photo:Makoto.AYANO


最後の力を振り絞って登る市民100kmアンダー39最後の力を振り絞って登る市民100kmアンダー39 photo:Makoto.AYANO応援にも力が入る!応援にも力が入る! photo:Makoto.AYANO


トンネルを抜け右折した先のピーク手前でKosinski選手をパス。後ろの集団もバラバラになり少し離れていたので、ピークでアタック。羽地のアップダウンを全力で逃げる。

後続は何人か合流して追ってくるだろうが、皆が脚のない今の状況では統率は取れないだろうと思う。川上関門前に後ろを確認するが、後続は見えない。

追い風基調の58号線に出る。ここからは一切後ろを見ない。たったの1秒も失えないし、後続が近づいてきたところで踏み直しが効くようなペースでは走っていない。ただただ腸腰筋を使った大きなペダリングを意識して耐える。

とても長く感じた15キロの単独走。残り50メートルまで全力で踏み続け、後ろを確認後ガッツポーズでゴールラインへ。

市民レース100kmアンダー39で独走優勝を飾った川田直輝(FUNNY RIDE)市民レース100kmアンダー39で独走優勝を飾った川田直輝(FUNNY RIDE) photo:Satoru Kato
信じられない。沖縄で優勝するなんて。

全てはこんな自転車バカを応援してくれる家族、共に苦しみあってきた練習仲間、ここまで関わってくれた全ての人のおかげです。

来年は待望の第1子が産まれてくる予定なのでレース活動がどうなるかは不明ですが、機会に恵まれれば市民140kmでリベンジしたいと思っています。

市民100kmアンダー39に優勝した川田直輝(FUNNY RIDE)市民100kmアンダー39に優勝した川田直輝(FUNNY RIDE) photo:Makoto.AYANO
最後にレポートとは異なるのですが、市民100kmと140kmに参加して気付いたことがあるので、僕の考えを書き記しておきます。

100kmと140kmでは集団走行時の密集度と下りやコーナーの速度に差がありました。集団走行の苦手な僕ですが、140kmと違い100kmでは集団の密集度に恐怖心を感じることはほとんどなかったです。

そして、市民最高峰クラスの210kmでは毎年のように落車が頻発しています。集団走行の経験が浅い人が、「210キロは上手い人しか出ないだろう」と思いエントリーすれば、慣れない密集度の中でミスを犯す可能性は大いにあるのではないかと思います。

集団走行に不慣れな方は100キロから挑戦の方がよっぽど恐い思いをせずに済むと思います。大好きなツール・ド・おきなわが、落車のない安全なレースとなることを願っています。

使用機材
フレーム:FOCUS IZALCO MAX
ホイール:GIANT SLR0
タイヤ:HUTCHIUSON FUSION5 GALACTIC 11STORM TLR 25c
ギヤ:53-39 11-28T

text:川田直輝(FUNNY RIDE)

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