3月10日に開催されたパリ〜ニース第3ステージは、積雪によってコースが短縮。ゴール手前の上りで飛び出した6名によるスプリント勝負に持ち込まれ、ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)が有力選手たちを蹴散らしてプロ初勝利を飾った。

新たなスタート地点に向かうチームカーやチームバスの車列新たなスタート地点に向かうチームカーやチームバスの車列 photo:Cor Vos第3ステージは6つのカテゴリー山岳を含む208kmのロングコースで行なわれる予定だったが、ヨーロッパ全域を覆う寒波に伴う降雪の影響で、レース序盤の53kmがカット。4つのカテゴリー山岳を含む後半部の155kmで行なわれた。

チームバスで53km地点に移動し、気温5度の寒さの中スタートを切ったのは170名の選手たち。序盤からスキル・シマノ勢の執拗なアタックによってハイスピードでレースは進行し、33km地点で3名が飛び出すとようやくレースは沈静化。メイン集団はラボバンクがコントロールを担った。

逃げを試みたユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)、ニコラス・マース(ベルギー、クイックステップ)、ヤン・ウゲ(フランス、スキル・シマノ)逃げを試みたユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)、ニコラス・マース(ベルギー、クイックステップ)、ヤン・ウゲ(フランス、スキル・シマノ) photo:Cor Vos逃げたのはヤン・ウゲ(フランス、スキル・シマノ)、ニコラス・マース(ベルギー、クイックステップ)、ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)の3名。タイム差は最大7分まで拡大した。

逃げグループの中で最も積極的な走りを見せたのは、3日連続逃げグループに選手を送り込んだスキル・シマノのウゲで、2つの2級山岳を先頭で通過し、山岳賞ジャージを着るローラン・マンジェル(フランス、ソール・ソジャサン)の座を脅かす存在に。

レース前半はリーダージャージ擁するラボバンクが集団をコントロールレース前半はリーダージャージ擁するラボバンクが集団をコントロール photo:Cor Vosレース後半、メイン集団はケースデパーニュが完全にコントロールし、逃げグループのリードを食いつぶして行った。ゴールまで23kmを残して先頭ではウゲがアタックを仕掛け、ルーランズが反応。しかしこの2人もゴールまで6kmを残して吸収された。

この日、勝負の鍵を握ったのは、ゴール3km手前に佇む2級山岳コート・ド・ラ・マルティニーだ。登坂距離1.1km・平均勾配7.2%のこの上りに向けて集団ではポジション争いが繰り広げられ、チームHTC・コロンビア勢が先頭で上りに突入。ここからアイルランドチャンピオンジャージを着るニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)が飛び出した。

牛に見守られてレースは進む牛に見守られてレースは進む photo:Cor Vos勢いあるアタックを仕掛けたロッシュにはすかさずペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)とトニ・マルティン(ドイツ、チームHTC・コロンビア)が反応。これが決定的な動きになった。

先頭の3名が頂上を通過するその後方では、アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)、イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)がカウンターアタックを仕掛け、下り区間で先頭3名にジョイン。前年大会覇者のルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)や、リーダージャージのラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)は動けなかった。

背後に迫る集団の姿を確認するユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)とヤン・ウゲ(フランス、スキル・シマノ)背後に迫る集団の姿を確認するユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)とヤン・ウゲ(フランス、スキル・シマノ) photo:Cor Vos強力な先頭6名はメイン集団の追撃を許さず、ロドリゲスが先頭で最終ストレートに突入。しかしタイミング良く反応したサガンがロドリゲスに並び、勢い良く抜き去って先頭に。サガンが何度も片手を突き上げる歓喜のガッツポーズでゴールに飛び込んだ。

サガンは今年リクイガスでプロデビューを飾ったばかりの20歳で、1月のツアー・ダウンアンダーでブレイクした選手。当時19歳だったサガンは、第2ステージのゴール前で落車して左腕を20針縫う怪我を負いながらも、翌日の第3ステージでスプリントに絡んで4位に。更に大会最大の難所であるウィランガ・ヒルを含む第5ステージでは、エヴァンスやバルベルデと台頭に渡り合った。

ロドリゲスとロッシュをスプリントで沈めたペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)ロドリゲスとロッシュをスプリントで沈めたペーター・サガン(スロバキア、リクイガス) photo:Cor Vosこのパリ〜ニースでもその才能は思う存分発揮され、初日のプロローグで5位に入ると、前日の第2ステージではスプリントで先行する勇猛な走りで2位に。20歳の若さでこれほど高次元の登坂力、タイムトライアル能力、スプリント力を備えた選手は他にいない。それどころか全選手の中でもトップレベルだ。

その才能は元々シクロクロスやMTBクロスカントリーで磨かれ、2008年のMTB世界選手権クロスカントリーのジュニアで優勝。シクロクロスでは2008年の世界選手権ジュニアで銀メダルを獲得している。

リーダージャージに袖を通したイェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)リーダージャージに袖を通したイェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク) photo:Cor Vosあどけなさの残る出場選手中最年少のサガンだが、そのコメントは強気だ「調子の良さは感じていたし、レース終盤の重要な局面で動いてチャンスを掴んだ。最終ストレートはパワーのある選手向きだった。いいタイミングで飛び出して、後続を引き離して勝利したんだ。昨日のステージでも優勝していたら最高だった」。。

「まだ4ステージが残っている。今日のようなチャンスがまた回ってくる事を望んでいる。でもチームのエースはロマン・クロイツィゲルだ。明日から自分の役割は彼をアシストすること。まだまだ若くて学ぶべきことは多い。(総合成績を狙うような)野望は抱いていないよ」。連日の上位入賞でポイント賞ジャージを獲得したサガン。翌日から登場する難易度の高いカテゴリー山岳でどれほどの走りを見せるのか、注目したい。

20歳の新星がステージ優勝を飾る中、ステージ4位に入った38歳のフォイクトがリーダージャージを獲得した。

「プロローグでいい結果を出した後、イエロージャージをゲットするチャンスがどこかにあるはずだと自分に言い聞かせていた。今は最高の気分だ。このジャージを出来る限り長くキープしたい。明日のステージはトリッキー。展開を見ながらレースを進めたいと思う。そして可能ならば、(最終日)ニースまで総合首位の座を守り抜きたい。去年の同時期よりも調子は良いんだ」。昨年大会総合2位のFシュレクが下位に沈んでいるため、サクソバンクはフォイクトで総合優勝を狙う。

選手コメントはレース公式サイト、およびリクイガス公式サイトより。


パリ〜ニース2010第3ステージ結果
1位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)           3h44'28"
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)
4位 イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)             +02"
5位 トニ・マルティン(ドイツ、チームHTC・コロンビア)
6位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)
7位 ミルコ・ロレンツェット(イタリア、ランプレ)             +06"
8位 サミュエル・ドゥムラン(フランス、コフィディス)
9位 シャビエル・フロレンシオ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)
10位 マルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ)

個人総合成績
1位 イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)         12h40'26"
2位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)             +06"
3位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)       +09"
4位 デーヴィット・ミラー(イギリス、ガーミン・トランジションズ)    +12"
5位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)            +14"
6位 ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)               +20"
7位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)
8位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)      +24"
9位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)           +26"
10位 シャビエル・トンド(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)

ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)

山岳賞
ローラン・マンジェル(フランス、ソール・ソジャサン)

新人賞
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)

チーム総合成績
リクイガス

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos

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