32kmのアップダウンコースで行われた個人タイムトライアルでローハン・デニスが下位に50秒差をつけて快勝。コロンビア勢は苦戦を強いられ、マイヨロホのサイモン・イェーツが総合リード拡大に成功した。


比較的ゆったりとスタートしていくローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)比較的ゆったりとスタートしていくローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji
ブエルタ・ア・エスパーニャ2018第16ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2018第16ステージ photo:Unipublicブエルタ・ア・エスパーニャ2018第16ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2018第16ステージ photo:Unipublic

休息日にしっかり身体を休めた選手たちがブエルタ・ア・エスパーニャ最後の1週間をカンタブリア州でスタートさせた。第16ステージはブエルタ・ア・エスパーニャ2回目の個人タイムトライアル。アルタミラ洞窟壁画で有名なサンティリャーナ・デル・マルをスタートし、往年の名選手オスカル・フレイレの生誕地トレラベガを目指す32kmで争われた。

前半から標高50〜200mほどの丘を越えていくコースはアップダウンの連続で、獲得標高差は400mほど。とは言え勾配のある登りは登場せず、トップ選手はインナーチェーンリングを使うことなく踏み切れるコース。パワフルなTTスペシャリスト向きのコースだけに、各国のTTチャンピオンがステージ上位を独占した。

アメリカTTチャンピオンのジョセフ・ロスコフ(アメリカ、BMCレーシング)とスペインTTチャンピオンのヨナタン・カストロビエホ(スペイン、チームスカイ)が前半に好タイムを叩き出したものの、第1ステージで勝利してマイヨロホを着たローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)がさらにその上を行く。オーストラリアTTチャンピオンのデニスは165名の中で唯一38分の壁を破る37分57秒という圧倒的なトップタイムをマークした。

37分57秒のトップタイムで優勝したローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)37分57秒のトップタイムで優勝したローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Luca Bettini
ステージ2位/50秒差 ジョセフ・ロスコフ(アメリカ、BMCレーシング)ステージ2位/50秒差 ジョセフ・ロスコフ(アメリカ、BMCレーシング) photo:Luca Bettiniステージ3位/50秒差 ヨナタン・カストロビエホ(スペイン、チームスカイ)ステージ3位/50秒差 ヨナタン・カストロビエホ(スペイン、チームスカイ) photo:Luca Bettini
スプリントすることなく流してフィニッシュするローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)スプリントすることなく流してフィニッシュするローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji
中間計測通過タイム
第1計測(10km地点) 第2計測(21.4km地点)
1位 ステフェン・クライスヴァイク 12:05 1位 ローハン・デニス 27:04
2位 ローハン・デニス 00:05 2位 ステフェン・クライスヴァイク 00:24
3位 ミカル・クウィアトコウスキー 00:09 3位 ミカル・クウィアトコウスキー 00:37
4位 アレハンドロ・バルベルデ 00:17 4位 エンリク・マス 00:39
5位 ジョセフ・ロスコフ 00:19 5位 ジョセフ・ロスコフ 00:46
6位 サイモン・イェーツ 00:20 6位 サイモン・イェーツ 00:48
7位 エンリク・マス 00:22 7位 ネルソン・オリヴェイラ 00:51
8位 ネルソン・オリヴェイラ 00:25 8位 ヨナタン・カストロビエホ 00:51
9位 ヨナタン・カストロビエホ 00:25 9位 ローレンス・デプルス 00:53
10位 ティボー・ピノ 00:29 10位 サイモン・ゲシュケ 00:55
16位 ローレンス・デプルス 00:37 13位 アレハンドロ・バルベルデ 01:03
17位 ミゲルアンヘル・ロペス 00:40 14位 カスパー・アスグリーン 01:09
18位 ナイロ・キンタナ 00:40 15位 ヨン・イサギレ 01:10
19位 トニー・ガロパン 00:41 20位 トニー・ガロパン 01:19
21位 サイモン・ゲシュケ 00:42 21位 ティボー・ピノ 01:26
22位 ヨン・イサギレ 00:43 22位 ナイロ・キンタナ 01:30
28位 カスパー・アスグリーン 00:49 24位 リゴベルト・ウラン 01:31
29位 エマヌエル・ブッフマン 00:49 31位 ミゲルアンヘル・ロペス 01:43
30位 リゴベルト・ウラン 00:50 36位 エマヌエル・ブッフマン 02:05


32kmコースを平均スピード50.593km/hで駆け抜けたデニスが、ロスコフとカストロビエホに50秒差をつけての圧勝。「序盤と終盤を抑えて走り、中盤にかけて全力でプッシュする作戦がはまった。パワーの数値を見ながら、きっと良いタイムが出ると思っていた。最高のチームメイトであるジョセフ・ロスコフが2位に入ったことも本当に嬉しいよ」と今大会ステージ2勝目を飾ったデニスはBMCレーシングのワンツー勝利を喜ぶ。

デニスが目を向けるのは2週間後に迫ったロード世界選手権の個人タイムトライアル。デニスはチームタイムトライアルで世界タイトルを経験しているが、個人タイムトライアルではまだ勝利も表彰台も経験していない(2014年5位、2015年6位、2016年6位、2017年8位)。デニスは「世界選手権に向けて良い状態にある。今日を最後にブエルタを離れて、帰宅して最後の調整を行うよ」とコメントしている。

ステージ4位/51秒差 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)ステージ4位/51秒差 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Luca Bettini
ステージ5位/51秒差 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)ステージ5位/51秒差 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) photo:Luca Bettini
ステージ13位/1分28秒差 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)ステージ13位/1分28秒差 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:Luca Bettini
ステージ15位/1分35秒差 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)ステージ15位/1分35秒差 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Luca Bettini
ステージ26位/2分10秒差 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)ステージ26位/2分10秒差 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Luca Bettiniステージ31位/2分19秒差 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)ステージ31位/2分19秒差 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) photo:Luca Bettini

総合上位陣の中で序盤から快走したのは総合5位のステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)だった。第1計測(10km地点)でデニスのトップタイムを5秒更新したクライスヴァイクは、後半にペースを落としながらもステージ4位でフィニッシュ。総合6位エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)もステージ6位に入る走りを見せ、それぞれ総合順位を上げることに成功している。

総合2位アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)から26秒、総合3位ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)が33秒のリードをもってスタートした最終走者サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)の走りは安定していた。中間計測で6位のタイムを連発したイェーツは、終始クライスヴァイクとマスを除く総合ライバルたちをリードする走りを披露。最終的に1分28秒遅れのステージ13位にまとめ、バルベルデから7秒、キンタナから42秒を奪うことに成功した。

「自分の走りにはとても満足している。良い走りだったし、総合リードを広げることもできた。タイムトライアル能力の改善にずっと取り組んでいるので、今日のレースに不安はなかった。不安どころか、楽しみながら走ることができた」と、総合首位を固めたイェーツは語る。

「でもまだ総合争いは終わっていない。3つの山頂フィニッシュが残っているし、マドリードはまだまだ遠くに感じる。総合ライバルたちとのタイム差はまだ小さく、苦しい戦いを強いられる日も来ると思う。ジロで失速した原因もまだつかめていないし、バッドデーがやってこないことを願うばかり。世界選手権も視野に入れているので、このブエルタの期間中に調子を上げる作戦が今のところ上手く進んでいる。攻撃は最大の防御であり、明日からもチャンスがあれば攻めるよ」。

総合3位に浮上したクライスヴァイクやマス、イェーツに加え、バルベルデが大きくタイムを失うことなく「時間との戦い」を終えた一方で、総合表彰台圏内から脱落したキンタナらコロンビア勢は苦戦を強いられた。総合4位ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)と総合8位リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック)はそれぞれ総合順位を1つ下げる結果に終わっている。ジャージは設定されていないが、ヤングライダー賞トップの座はロペスからマスに移った。

ステージ13位/1分28秒差 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)ステージ13位/1分28秒差 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:Kei Tsuji
2位に50秒差をつける圧倒的な勝利を飾ったローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)2位に50秒差をつける圧倒的な勝利を飾ったローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsujiマイヨロホのリード拡大に成功したサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)マイヨロホのリード拡大に成功したサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:Kei Tsuji

ブエルタ・ア・エスパーニャ2018第16ステージ結果
順位 名前 タイム 平均速度
1位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) 37:57 50.593
2位 ジョセフ・ロスコフ(アメリカ、BMCレーシング) 00:50 49.506
3位 ヨナタン・カストロビエホ(スペイン、チームスカイ) 49.506
4位 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) 00:51 49.485
5位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) 49.485
6位 エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ) 01:03 49.231
7位 ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル、モビスター) 01:05 49.189
8位 ローレンス・デプルス(ベルギー、クイックステップフロアーズ) 01:07 49.147
9位 サイモン・ゲシュケ(ドイツ、サンウェブ) 01:10 49.084
10位 カスパー・アスグリーン(デンマーク、クイックステップフロアーズ) 49.084
13位 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 01:28 48.710
14位 ヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ) 01:29 48.690
15位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 01:35 48.567
21位 トニー・ガロパン(フランス、アージェードゥーゼール) 01:52 48.221
26位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 02:10 47.860
27位 ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) 02:11 47.841
28位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) 02:16 47.741
31位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) 02:19 47.682
42位 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 03:01 46.867
個人総合成績
1位 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 64:52:58
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 0:00:33
3位 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) 0:00:52
4位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 0:01:15
5位 エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ) 0:01:30
6位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) 0:01:34
7位 ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) 0:02:53
8位 ヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ) 0:03:04
9位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) 0:03:15
10位 トニー・ガロパン(フランス、アージェードゥーゼール) 0:04:43
ポイント賞
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 116pts
2位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 83pts
3位 ディラン・トゥーンス(ベルギー、BMCレーシング) 73pts
山岳賞
1位 ルイス・マテマルドネス(スペイン、コフィディス) 64pts
2位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) 57pts
3位 ベンジャミン・キング(アメリカ、ディメンションデータ) 56pts
複合賞
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 13pts
2位 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 13pts
3位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) 16pts
チーム総合成績
1位 モビスター 194:50:08
2位 バーレーン・メリダ 0:00:47
3位 ボーラ・ハンスグローエ 0:31:49
text:Kei Tsuji in Torrelavega, Spain
photo:Kei Tsuji, Luca Bettini