ツアー・オブ・ブリテン3日目は、およそ60km以上に渡って逃げが決まらない慌ただしい展開に。終盤の登りで絞り込まれた末の登りスプリントでジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)が勝利し、パトリック・ベヴィン(ニュージーランド、BMCレーシング)が同タイムの総合首位に躍進した。



序盤からアタック合戦が長く続いた。後ろにアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・スーダル)の姿も見える序盤からアタック合戦が長く続いた。後ろにアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・スーダル)の姿も見える photo:www.tourofbritain.co.ukアシストとして走るゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)アシストとして走るゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:www.tourofbritain.co.uk

渓谷のワインディングを駆け抜けていく渓谷のワインディングを駆け抜けていく photo:www.tourofbritain.co.uk
イギリス最大規模のステージレース、ツアー・オブ・ブリテン(UCI2.HC)の舞台は、イングランド西部にある港湾都市ブリストルを発着する127.2km。短距離ステージではあるが前半から無数のアップダウンが続き、フィニッシュ前8km地点に用意される1級山岳プロヴィデンスレーン(距離1km、平均勾配8%)がカギ。ダウンヒルを終えてもノンカテゴライズの登坂やコーナーが続くテクニカルなレイアウトがスプリンターの壁となって立ちはだかった。

逃げ切りに可能性があるだけに、リアルスタートが切られると逃げ屋が次々とアタックを仕掛けた。15kmを過ぎても明確なエスケープは組織されず、19km地点の第一中間スプリントでは8秒差の総合3位につけるパトリック・ベヴィン(ニュージーランド、BMCレーシング)が先着し、ボーナスタイムを加算する。

小雨降る中、逃げができては集団が引き戻す展開が続き、28km地点の2級山岳頂上はシルヴァン・シャヴァネル(フランス、ディレクトエネルジー)が先頭通過。続いてアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・スーダル)やパスカル・エーンクホーン(オランダ、ロットNLユンボ)が入った一団が抜け出して先行したが、結局はチームスカイ率いる集団に飲み込まれている。

単独でアタックするトニ・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)単独でアタックするトニ・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン) photo:www.tourofbritain.co.uk1分弱のリードで逃げたジョン・モールド(イギリス、JLTコンドール)やトニ・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)1分弱のリードで逃げたジョン・モールド(イギリス、JLTコンドール)やトニ・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン) photo:www.tourofbritain.co.uk

集団を徹底的にコントロールするクイックステップフロアーズ集団を徹底的にコントロールするクイックステップフロアーズ photo:www.tourofbritain.co.uk
するとトニ・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)が単独アタックし、ここにジョン・モールド(イギリス、JLTコンドール)とアンジェロ・トゥリク(フランス、ディレクトエネルジー)、さらにはイギリスナショナルチームとして参加しているベン・スウィフト(イギリス)が合流。これを見た集団はようやくペースを緩め、フィニッシュまで60kmを切った段階で、ようやくこの日の逃げが決まった。

しかし残り距離が短く、さらにワールドツアー所属選手が2名入ったことでタイム差は1分以上には広がらない。ステージ優勝に懸けるクイックステップフロアーズが集団先頭を固め、後方ではワウト・プールス(オランダ、チームスカイ)のために働くツール覇者ゲラント・トーマス(イギリス)がボトル運びを行うシーンも見られた。

残り10kmを切ると4名のリードは10秒以下となり、集団は逃げを飲み込みつつ1級山岳プロヴィデンスレーンに突入。先頭でフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)が動き、19歳の注目株トーマス・ピッドコック(イギリス、チームウィギンズ)がアタックする後方ではアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・スーダル)や、リーダージャージのアレッサンドロ・トネッリ(イタリア、バルディアーニCSF)が遅れていく。ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)らが積極的に攻めたものの、下りを経て再び集団の人数が膨れ上がった。

1864年に開通したクリフトン吊り橋を渡る1864年に開通したクリフトン吊り橋を渡る photo:www.tourofbritain.co.uk
登りスプリントを制したジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)登りスプリントを制したジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) photo:www.tourofbritain.co.uk
残り1kmから始まる緩斜面の登りストレートに入るとユンゲルスの牽きで集団は一列棒状に。ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)を従えた状態で残り250mまで先頭に立ち続け、アラフィリップは早駆けしたマッズウルス・シュミット(デンマーク、カチューシャ・アルペシン)の番手に滑り込んでスプリントを開始する。追い上げるベヴィン、エミルス・リーペンス(ラトビア、ワンプロサイクリング)を抑えたままアラフィリップ先頭でフィニッシュに飛び込んだ。

「今日勝てて嬉しいよ。休養明け始めてのレースだったからなおさらだ。ボブと自分は開幕ステージからステージ優勝を狙って積極的に動いていたことが結果に繋がった。今日はコースも僕向きで脚もフレッシュだった。ボブの素晴らしいリードアウトに感謝しなければならないよ」と喜ぶアラフィリップ。ボーナスタイムを得て2秒差の総合3位にポジションを上げている。

タイム差0で総合首位に浮上したパトリック・ベヴィン(ニュージーランド、BMCレーシング)タイム差0で総合首位に浮上したパトリック・ベヴィン(ニュージーランド、BMCレーシング) photo:www.tourofbritain.co.uk
ポイント賞リーダーとなったジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)ポイント賞リーダーとなったジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) photo:www.tourofbritain.co.uk
また、総合リーダーのトネッリが遅れ、中間スプリントのボーナスタイムとステージ2位に入ったベヴィンが前日覇者キャメロン・マイヤー(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)と総合同タイムで並び、リーダージャージを手に入れている。

「もう必死だったよ。最初にできた逃げは危険だったのでバルディアーニとスカイが全力で追走していた。落ち着くかと思ったらレースモードになったりとせわしない1日だった。これからのチームの目標はチームTTまでに総合順位を落とさないこと。その上で総合首位につけている以上に良い結果は無いよ。明日を乗り越えることができれば総合優勝を視野に入れたい」とベヴィンは語っている。

ステージ結果
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) 2h47'41"
2位 パトリック・ベヴィン(ニュージーランド、BMCレーシング)
3位 エミルス・リーペンス(ラトビア、ワンプロサイクリング)
4位 エイサン・ハイター(イギリス、イギリスナショナルチーム)
5位 ジャスパー・デブイスト(ベルギー、ロット・スーダル)
6位 コナー・スウィフト(イギリス、マディソン・ジェネシス)
7位 マッズウルス・シュミット(デンマーク、カチューシャ・アルペシン)
8位 ヤシャ・ズッタリン(ドイツ、モビスター)
9位 ディオン・スミス(ニュージーランド、ワンティ・グループゴベール)
10位 サンドロ・メウリーズ(ベルギー、ワンティ・グループゴベール)
個人総合成績
1位 パトリック・ベヴィン(ニュージーランド、BMCレーシング) 11h03'11"
2位 キャメロン・マイヤー(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)
3位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) +02"
4位 ヤシャ・ズッタリン(ドイツ、モビスター) +12"
5位 ワウト・プールス(オランダ、チームスカイ)
6位 クリス・ハミルトン(オーストラリア、サンウェブ)
7位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)
8位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)
9位 ヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーションファースト・ドラパック) +19"
10位 スコット・デーヴィス(イギリス、ディメンションデータ) +22"
ポイント賞
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) 27pts
2位 パトリック・ベヴィン(ニュージーランド、BMCレーシング) 27pts
3位 ヤシャ・ズッタリン(ドイツ、モビスター) 21pts
山岳賞
1位 スコット・デーヴィス(イギリス、ディメンションデータ) 26pts
2位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) 17pts
3位 キャメロン・マイヤー(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) 14pts
チーム総合成績
text:So.Isobe
photo:www.tourofbritain.co.uk