2つの1級山岳が設定されたブエルタ・ア・ムルシア第3ステージは、30名に縮小した集団によるスプリント勝負でルーク・ロバーツ(オーストラリア、チームミルラム)が優勝。妻の出産に立ち会うためにレースを去ったロバート・ハンター(南アフリカ、ガーミン)に代わって、ホセ・フフレ(スペイン、アスタナ)が総合首位に。

ブエルタ・ア・ムルシア第3ステージ・コースプロフィールブエルタ・ア・ムルシア第3ステージ・コースプロフィール image:www.regmurcia.comスペイン南東部のムルシア地方で開催中のブエルタ・ア・ムルシア。第3ステージは2つの1級山岳が設定された大会最難関の山岳コースで行なわれた。

124km地点で1級山岳エスプーニャ峠(標高700m)を越え、休むまもなく次の1級山岳コジャド・ベルメホ(標高1150m)にアタック。「マルコ・パンターニ」の名前を冠したこのコジャド・ベルメホ頂上からゴールまでは33kmしかない。

接戦を繰り広げたセルゲイ・ラグティン(ウズベキスタン、ヴァカンソレイユ)とルーク・ロバーツ(オーストラリア、チームミルラム)接戦を繰り広げたセルゲイ・ラグティン(ウズベキスタン、ヴァカンソレイユ)とルーク・ロバーツ(オーストラリア、チームミルラム) photo:Cor Vosレースは序盤からビッグネームが動いた。メイン集団から飛び出して逃げグループを形成したのはブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)を含む10名。しかしレディオシャック勢が直ぐさま反応し、ウィギンズらを集団に引き戻した。

アタックの末に逃げを決めたのは、リエーヴェ・ヴェストラ(オランダ、ヴァカンソレイユ)を含む4名。この4名は50km地点で9分のリードを築き、1級山岳エスプーニャ峠を先頭で通過。しかし勝負どころのコジャド・ベルメホの上り手前でメイン集団に吸収された。

ラグティンとの接戦を制したルーク・ロバーツ(オーストラリア、チームミルラム)ラグティンとの接戦を制したルーク・ロバーツ(オーストラリア、チームミルラム) photo:Cor Vosそんな中、リーダージャージを着ていたハンターは、妻が第2子出産のために分娩室に入ったという報を受け、レース途中でリタイア。レースはリーダージャージ不在のまま、今大会最大の山岳に突入した。

コジャド・ベルメホで飛び出したのはピーター・ウェーニング(オランダ、ラボバンク)やワウテル・ポールス(オランダ、ヴァカンソレイユ)ら5名。クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)がペースを刻むメイン集団は大きくバラけ、25名ほどに縮小した状態で頂上を越えた。

今シーズン1勝目を飾った元団体追い抜き世界チャンピオンのルーク・ロバーツ(オーストラリア、チームミルラム)今シーズン1勝目を飾った元団体追い抜き世界チャンピオンのルーク・ロバーツ(オーストラリア、チームミルラム) photo:Cor Vosゴールまでは下りと平地。ウェーニングら5名を追ったのは、ランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)やデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)、ウィギンズら、有力選手たちを含む25名の小集団。結局ゴールまで1kmを残して先頭5名は飲み込まれ、最後は集団によるスプリント勝負に持ち込まれた。

有力スプリンターを欠く中、先頭でゴールを駆け抜けたのはチームミルラムのロバーツ。アテネ五輪の団体追い抜きで金メダルを獲得しているロバーツが、そのスピードを活かし、山岳賞ジャージを着るセルゲイ・ラグティン(ヴァカンソレイユ)を僅差で沈めた。

トラック競技出身のロバーツは、前述のアテネ五輪の他にも、トラック世界選手権では2002年から3年連続団体追い抜きで優勝を飾っている。この日のような山岳ステージでの小集団スプリントにはめっぽう強く、今年のツアー・ダウンアンダーウィランガステージでも、集団からただ一人ゴール前で抜け出して2位に。総合でも5位に入った。

レース後、チームミルラムのラルフ・グラブシュ監督(HTCコロンビア所属のベアトの実兄)は「今日はチームにとってパーフェクトな展開だった!これまでの努力が報われて非常に満足している。チームはロバーツとローレッガー(ダウンアンダー山岳賞)を先頭集団に送り込むことに成功し、良い展開に持ち込んだ。強力なスプリンターがいない状況で、最も強いのはルークだった」と、今年チームに合流したばかりのロバーツの活躍を喜んだ。

また、この日は総合上位につけていたスプリンターたちがことごとく遅れたため、総合成績が大きく変動。ステージ3位のホセ・フフレ(スペイン、アスタナ)がタイム差無しの総合首位に立った。ウィギンズ、メンショフ、アームストロング、アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)ら有力選手たちは、総合で5秒差につけている。

いよいよ翌日、ブエルタ・ア・ムルシアの総合争いが決する第4ステージ個人タイムトライアルが行なわれる。コースは全長22kmで概ねフラット。ウィギンズ、メンショフ、アームストロング、クレーデンらがステージ優勝と総合優勝をかけてハイスピードバトルを繰り広げるはずだ。

レース展開はレース公式サイト、コメントはチームミルラム公式サイトより。

ブエルタ・ア・ムルシア2010第3ステージ結果
1位 ルーク・ロバーツ(オーストラリア、チームミルラム)      4h16'47"
2位 セルゲイ・ラグティン(ウズベキスタン、ヴァカンソレイユ)
3位 ホセ・フフレ(スペイン、アスタナ)
4位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)
5位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)
6位 ステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク)
7位 ステファン・デニフル(オーストリア、サーヴェロ・テストチーム)
8位 ミシェル・クレダー(オランダ、ガーミン・トランジションズ)
9位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)
10位 ホセ・エラーダ(スペイン、カハ・ルラル)

個人総合成績
1位 ホセ・フフレ(スペイン、アスタナ)               12h52'39"
2位 ルーク・ロバーツ(オーストラリア、チームミルラム)
3位 フランティセク・ラボン(チェコ、チームHTC・コロンビア)
4位 ラブ・ルーグ(オランダ、ヴァカンソレイユ)
5位 トーマス・ローレッガー(ドイツ、チームミルラム)
6位 トマス・マルチンスキ(ポーランド、 CCCポルサット・ポルコウィチェ)
7位 ワウテル・ポールス(オランダ、ヴァカンソレイユ)
8位 マッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ)
9位 ピーター・ウェーニング(オランダ、ラボバンク)
10位 セルゲイ・ラグティン(ウズベキスタン、ヴァカンソレイユ)      +05"

山岳賞
セルゲイ・ラグティン(ウズベキスタン、ヴァカンソレイユ)

ポイント賞
グレーム・ブラウン(オーストラリア、ラボバンク)

チーム総合成績
ヴァカンソレイユ

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos

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