ブエルタ・ア・エスパーニャ初登場の1級山岳アルファカル峠でベンジャミン・キング(アメリカ、ディメンションデータ)が逃げ切り勝利。ライバルたちに成功されながらも安定の走りを見せたミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)がマイヨロホを守った。


アンダルシア内陸部の山岳地帯を進むアンダルシア内陸部の山岳地帯を進む photo:Unipublic
ブエルタ・ア・エスパーニャ2018第4ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2018第4ステージ photo:Unipublicブエルタ・ア・エスパーニャ2018第4ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2018第4ステージ photo:Unipublic

大会最初の本格的な山頂フィニッシュが登場したブエルタ・ア・エスパーニャ第4ステージ。まずは1級山岳カブラ・モンテス峠(全長15.7km/平均5.9%)を駆け上がって内陸の高原まで標高を上げると、そこからグラナダのスプリントポイントを経て、選手たちは1級山岳アルファカル峠(全長12.4km/平均5.4%)に突入する。標高1,440mで、中盤にかけて勾配が10%を超えるブエルタ初登場の1級山岳アルファカル峠で逃げグループとメイン集団が登坂バトルを繰り広げる展開となった。

ステージ序盤のコスタ・デル・ソル(太陽海岸)の平坦路で形成されたのは、3日連続逃げとなるルイス・マテマルドネス(スペイン、コフィディス)とピエール・ロラン(フランス、EFエデュケーションファースト・ドラパック)を含む9名の逃げ。この日はベンジャミン・キング(アメリカ、ディメンションデータ)やニキータ・スタルノフ(カザフスタン、アスタナ)、ラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ)らが逃げの伴侶となった。

すでに総合でタイムを失っている選手たちによる逃げ(総合最高位キングは4分33秒遅れ)。チームスカイは無理に逃げを追わず、タイム差4分30秒で最初の1級山岳カブラ・モンテス峠へと入っていく。登坂時間が48分を超えるこの登りでタイム差はさらに広がり、山岳賞ジャージを着るマテマルドネスが先頭通過してから7分後にメイン集団は頂上にたどり着いている。

チームスカイはその後も逃げ追走に力を使わず、残り40km地点でタイム差は10分を超えた。やがて最後の1級山岳アルファカル峠が近づくとモビスターをはじめ総合系チームが集団先頭でポジション争いを開始。そのペースアップの影響で、タイム差が8分まで縮まった状態でこの日最後の登りが始まった。

レース序盤はコスタ・デル・ソル(太陽海岸)の平坦路を走るレース序盤はコスタ・デル・ソル(太陽海岸)の平坦路を走る photo:Unipublic
白い岩肌が露出したアンダルシアの山岳地帯白い岩肌が露出したアンダルシアの山岳地帯 photo:Unipublic
先頭でフィニッシュに向かうベンジャミン・キング(アメリカ、ディメンションデータ)とニキータ・スタルノフ(カザフスタン、アスタナ)先頭でフィニッシュに向かうベンジャミン・キング(アメリカ、ディメンションデータ)とニキータ・スタルノフ(カザフスタン、アスタナ) photo:CorVos
集団内で登りをこなすマイヨロホのミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)集団内で登りをこなすマイヨロホのミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) photo:CorVos
低木が茂る岩山の登りが始まってすぐ、フィニッシュまで12kmを残して先頭に立ったのはスタルノフとキングの2人。ペースを刻んで登坂を続けたスタルノフとキングが、3番手ロランに追いつかれることなくフィニッシュにやってきた。残り1kmを切ってからグッと距離を縮めたロランを振り切るように、スタルノフとキングが残り150mからスプリント。先着したキングが、ディメンションデータのシンボルである掌を広げるポーズでフィニッシュに飛び込んだ。

逃げグループから8分遅れで1級山岳アルファカル峠に突入したメイン集団で強力なペースを作ったのはロットNLユンボ。イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)やヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)は登りの前半でメイン集団から脱落している。

ロットNLユンボの集団牽引はチームスカイのアシスト体制を丸裸にすることに成功したが、マイヨロホのミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)は安定の走りでライバルの動きをチェックした。メイン集団の人数が10名強まで絞られたところで、頂上まで3.5kmを残してサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)がアタック。総合12位/37秒遅れのイェーツが快調にメイン集団を引き離し始める。

モビスターやアスタナがメイン集団の先頭に立ってペースを作ったが、飛び出したイェーツはリードを保ったまま残り1kmアーチを通過。続いて、総合7位/32秒遅れのエマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)がカウンターアタックを仕掛けてイェーツ追撃モードに入る。結局イェーツはトップから2分48秒遅れのステージ8位でフィニッシュし、追い上げたブッフマンが2分50秒遅れのステージ9位。ともに総合ライバルたちからリードを奪う結果となった。

ライバルたちと登りをこなすミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)ライバルたちと登りをこなすミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) photo:CorVos
メイン集団から抜け出すアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)メイン集団から抜け出すアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:CorVos
メイン集団から飛び出したサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)メイン集団から飛び出したサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:CorVos
イェーツのアタックを見送ったメイン集団イェーツのアタックを見送ったメイン集団 photo:CorVos
スタルノフとの一騎打ちを制したベンジャミン・キング(アメリカ、ディメンションデータ)スタルノフとの一騎打ちを制したベンジャミン・キング(アメリカ、ディメンションデータ) photo:CorVos
「今日は初めから逃げに乗る作戦で、あるところで逃げ切りの可能性を確信した。自分が最強だという自信がなかったので早めに仕掛けてTTモードで登りをこなしたんだ。もし自分にマイヨロホ獲得のチャンスがあればスタルノフにステージ優勝を譲ることも考えた。暑い中で身体もあちこち攣っていたけど、気持ちを強く持って挑んだ結果だ」と、グランツールでステージ初優勝を飾った29歳の元全米チャンピオンは語る。今季勝ち星の少ないディメンションデータにシーズン6勝目をもたらした。

総合首位クウィアトコウスキーはイェーツから27秒、ブッフマンから25秒、ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)から8秒、そしてアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)から2秒失ったものの、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)らと同タイムでフィニッシュしてマイヨロホをキープ。アタックを成功させたブッフマンとイェーツがそれぞれ総合2位と総合3位に順位を上げた。クウィアトコウスキーは全長12.4kmの登りを27分27秒でこなしており、平均スピードは27.3km/h。平均勾配5.4%の登りでVAMは1,390だった。

「今日は逃げが決まっても問題なかったので、他のチームにコントロールを任せる作戦だった。ロットNLユンボが主導権を握ってレースを動かしたけど、結果的に彼らはそこまで得るものがなかった。自分は総合優勝候補ではないのでレースを動かすのはキンタナやバルベルデ、ベネット、ブッフマンの役目。今日は自分にとって集団内で力を温存できるパーフェクトな展開だった」とマイヨロホを守ったクウィアトコウスキーは語る。クウィアトコウスキーは総合成績、ポイント賞、複合賞でトップ。3日連続で逃げ、ステージ4位に入って敢闘賞を獲得したマテマルドネスが山岳賞首位をキープしている。

キンタナらを引き連れてフィニッシュするミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)キンタナらを引き連れてフィニッシュするミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) photo:CorVos
グランツールでステージ初優勝を飾ったベンジャミン・キング(アメリカ、ディメンションデータ)グランツールでステージ初優勝を飾ったベンジャミン・キング(アメリカ、ディメンションデータ) photo:CorVosマイヨロホを守ったミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)マイヨロホを守ったミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) photo:CorVos
ブエルタ・ア・エスパーニャ2018第4ステージ結果
1位 ベンジャミン・キング(アメリカ、ディメンションデータ) 4:33:12
2位 ニキータ・スタルノフ(カザフスタン、アスタナ) 0:00:02
3位 ピエール・ロラン(フランス、EFエデュケーションファースト・ドラパック) 0:00:13
4位 ルイス・マテマルドネス(スペイン、コフィディス) 0:01:08
5位 ベン・ガスタウアー(ルクセンブルク、アージェードゥーゼール) 0:01:39
6位 イエール・ワライス(ベルギー、ロット・スーダル) 0:01:57
7位 オスカル・カベド(スペイン。ブルゴスBH)) 0:02:24
8位 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 0:02:48
9位 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 0:02:50
10位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) 0:03:07
11位 アリツ・バグエス(スペイン、エウスカディ・ムリアス)
12位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 0:03:13
13位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) 0:03:15
14位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
15位 エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)
16位 ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)
17位 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)
18位 ヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)
19位 トニー・ガロパン(フランス、アージェードゥーゼール)
20位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)
21位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック)
22位 ダビ・デラクルス(スペイン、チームスカイ)
23位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)
24位 ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)
25位 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)
48位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) 0:08:11
67位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) 0:11:51
敢闘賞 ルイス・マテマルドネス(スペイン、コフィディス)
個人総合成績
1位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) 13:47:19
2位 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 0:00:07
3位 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 0:00:10
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 0:00:12
5位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) 0:00:25
6位 ヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ) 0:00:30
7位 トニー・ガロパン(フランス、アージェードゥーゼール) 0:00:33
8位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
9位 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) 0:00:37
10位 エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ) 0:00:42
ポイント賞
1位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) 46pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 33pts
3位 ベンジャミン・キング(アメリカ、ディメンションデータ) 29pts
山岳賞
1位 ルイス・マテマルドネス(スペイン、コフィディス) 36pts
2位 ピエール・ロラン(フランス、EFエデュケーションファースト・ドラパック) 20pts
3位 ベンジャミン・キング(アメリカ、ディメンションデータ) 12pts
複合賞
1位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) 12pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 14pts
3位 ベンジャミン・キング(アメリカ、ディメンションデータ) 24pts
チーム総合成績
1位 アスタナ 41:23:14
2位 モビスター 0:01:31
3位 ボーラ・ハンスグローエ 0:02:03
text:Kei Tsuji
photo:CorVos, Unipublic

最新ニュース(全ジャンル)