アルプス山脈を乗り切ったスプリンターたちによるスプリント争い。最高速度69.9km/hでアルノー・デマールとアレクサンドル・クリストフを抜き去ったペテル・サガンが今大会3勝目を飾り、マイヨヴェールの座を確固たるものにした。


アルプス山脈を離れ、ひまわりの咲く平野に入るアルプス山脈を離れ、ひまわりの咲く平野に入る photo:CorVos
序盤から逃げたミヒャエル・シェアー(スイス、BMCレーシング)ら4名序盤から逃げたミヒャエル・シェアー(スイス、BMCレーシング)ら4名 photo:Kei Tsuji
ツール・ド・フランス2018第13ステージツール・ド・フランス2018第13ステージ photo:A.S.O.ツール・ド・フランス2018第13ステージツール・ド・フランス2018第13ステージ photo:A.S.O.

過酷なアルプス3連戦を乗り切ったスプリンターたちによる久々の高速バトルに注目が集まったツール・ド・フランス第13ステージ。ラルプデュエズの麓に位置するブール=ドアザンをスタートした一行は、アルプスの山々を背にV字の渓谷を西へ。イゼール川とローヌ川が作り出した平野を走り、オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏のヴァランスにフィニッシュする。

前半ステージで活躍したフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)、ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)、アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・スーダル)といったピュアスプリンターたちが第12ステージで相次ぎリタイアしたため、集団スプリントに興味を示すチームが減少(この日は152名がスタート)。それに伴い逃げ切りのチャンスが上昇したため、この日は「逃げ屋」トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)が早速動きを見せた。

アルプス山脈を背にした下り基調の幹線道路で形成されたのはデヘント、ミヒャエル・シェアー(スイス、BMCレーシング)、トーマス・スクーリー(ニュージーランド、EFエデュケーションファースト・ドラパック)、ディミトリ・クレイス(ベルギー、コフィディス)という4名の逃げグループ。タイム差はすぐさま3分24秒まで拡大した。

「逃げ屋」の存在を警戒してか、この日はグルパマFDJ、ボーラ・ハンスグローエ、UAEチームエミレーツの3チームが、それぞれアルノー・デマール(フランス)、ペテル・サガン(スロバキア)、アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー)のためにメイン集団のペースメイクを開始。タイム差は2分以下に抑え込まれたままステージ後半に向かった。

マイヨヴェールを着て走るペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)マイヨヴェールを着て走るペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos
グルパマFDJとボーラ・ハンスグローエ、UAEチームエミレーツがメイン集団を牽引グルパマFDJとボーラ・ハンスグローエ、UAEチームエミレーツがメイン集団を牽引 photo:CorVos
序盤の3級山岳を登るメイン集団序盤の3級山岳を登るメイン集団 photo:Kei Tsuji
序盤は集団後方に控えるマイヨジョーヌのゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)序盤は集団後方に控えるマイヨジョーヌのゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
ツール出場6回目のデヘントが自身通算10回目となるスプリントポイント(71km地点)先頭通過を果たし、その2分後方ではアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)がジョン・デゲンコルプ(ドイツ、トレック・セガフレード)とペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)を下して集団先頭通過している。3級山岳と4級山岳をクリアした逃げグループとメイン集団のタイム差は残り60km地点で早くも1分を切った。

向かい風の中でもハイペースを刻んだ逃げグループだったが、スプリンターチームの本格的な追撃には敵わなかった。残り22km地点から独走したシェアーも残り6km地点で吸収。単独で50km/h以上のペースを刻み、最後まで抵抗し続けたシェアーがステージ敢闘賞を獲得している。

スプリンターチームだけでなく、リスク回避のために総合系チームも集団先頭に上がった状態でヴァランスの街へと突入する。残り2kmの連続コーナーを曲がり、追い風が吹く直線路に入ったところでグルパマFDJとトレック・セガフレードが先頭でリードアウトを開始。最も人数を揃えるグルパマFDJが主導権を奪ったタイミングで、フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)がロングスパートを仕掛けた。

残り900mで加速したジルベールが数秒のリードを得たものの、グルパマFDJのリードアウトトレインがこれを許さない。残り300mでジルベールが吸収されると、アシストたちの後ろで力をためていたスプリンターたちが腰を上げる。

残り250mで最初に仕掛けたアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)を追う形でヨーロッパチャンピオンジャージのクリストフとマイヨヴェールのサガンがスプリントを開始。3名が横並びで加速勝負を繰り広げ、フィニッシュラインまで伸び続けたサガンが先着した。最後のペダリング3〜4回転分の力強さと絶妙なタイミングのハンドル投げにより、サガンがクリストフをホイール1個の差で下した。

独走で逃げ続けたミヒャエル・シェアー(スイス、BMCレーシング)独走で逃げ続けたミヒャエル・シェアー(スイス、BMCレーシング) photo:CorVos
アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)を先頭にスプリントが始まるアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)を先頭にスプリントが始まる photo:Kei Tsuji
横一線でスプリントするアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)、アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)横一線でスプリントするアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)、アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Kei Tsuji
ハンドルを投げ込んだペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が先着ハンドルを投げ込んだペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が先着 photo:Kei Tsuji
「残り600mの時点でポジションを落としていたけど、登りの緩斜面を利用してポジションアップ。スプリント開始が遅れてしまったけど、クリストフの番手から飛び出して何とか前の2人を抜き去ることができた。今日は久々のリラックスしたステージで、選手全員がしっかりリカバリーできたと思う。チームメイトの動きも良かったし、ファンタスティックだ」。圧倒的なポイント差でマイヨヴェールを着るサガンは、第2ステージと第5ステージに続く今大会ステージ3勝目を喜ぶ。ツールではステージ通算11勝目。

この日サガンが残り500mを平均スピード59.9km/hで走行。およそ残り250mから本格的に踏み始め、残り50mで最高スピード69.9km/hに達している。

前日の落車負傷により総合7位のヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)が欠場したため、総合8位以下の選手たちが1つずつ総合順位を上げた他は総合成績に変動は無し。ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)がマイヨジョーヌを着て平穏な1日を終えている。

ステージ3勝目を飾ったマイヨヴェールのペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)ステージ3勝目を飾ったマイヨヴェールのペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Luca Bettini
フィニッシュライン通過後に手を挙げるペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)フィニッシュライン通過後に手を挙げるペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Kei Tsuji
ステージ3勝目を飾ったペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)ステージ3勝目を飾ったペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Kei Tsuji
マイヨジョーヌを着て平穏な1日を過ごしたゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)マイヨジョーヌを着て平穏な1日を過ごしたゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsujiステージ敢闘賞を獲得したミヒャエル・シェアー(スイス、BMCレーシング)ステージ敢闘賞を獲得したミヒャエル・シェアー(スイス、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji
ツール・ド・フランス2018第13ステージ結果
1位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 4:45:55
2位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)
3位 アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)
4位 ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、トレック・セガフレード)
5位 グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
6位 イヴ・ランパールト(ベルギー、クイックステップフロアーズ)
7位 マグナス・コルトニールセン(デンマーク、アスタナ)
8位 アンドレア・パスクアロン(イタリア、ワンティ・グループゴベール)
9位 ソニー・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
10位 テイラー・フィニー(アメリカ、EFエデュケーションファースト・ドラパック)
DNS ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) 53:10:38
2位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) 0:01:39
3位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) 0:01:50
4位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ) 0:02:46
5位 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) 0:03:07
6位 ミケル・ランダ(スペイン、モビスター) 0:03:13
7位 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) 0:03:43
8位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 0:04:13
9位 ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ) 0:05:11
10位 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ) 0:05:45
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 398pts
2位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ) 170pts
3位 アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) 133pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) 84pts
2位 ワレン・バルギル(フランス、フォルトゥネオ・サムシック) 70pts
3位 セルジュ・パウェルス(ベルギー、ディメンションデータ) 63pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 ピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール) 53:27:19
2位 ギヨーム・マルタン(フランス、ワンティ・グループゴベール) 0:01:58
3位 エガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ) 0:06:49
チーム総合成績
1位 モビスター 160:28:10
2位 チームスカイ 0:04:03
3位 ロットNLユンボ 0:12:06
text&photo:Kei Tsuji in Valence, France

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