1級山岳と超級山岳を越え、最後は1級山岳ロイカーバードを駆け上がってフィニッシュを迎えるツール・ド・スイス第5ステージ。誰もが苦しむ高速な展開の末に、ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)が20名によるスプリントを制した。


雲が立ち込めるスイス西部の山岳地帯を走る雲が立ち込めるスイス西部の山岳地帯を走る photo:CorVos

ツール・ド・スイス2018第5ステージツール・ド・スイス2018第5ステージ photo:Tour de Suisseイエロージャージ争いが本格化する後半の山岳3連戦がスタート。第5ステージはスタート直後に1級山岳ピヨン峠(全長6.7km/平均5%)を越え、後半にかけて超級山岳モンタナヴィラージュ(全長13.5km/平均5.4%)と1級山岳ロイカーバード(全長14km/平均4.5%)に挑む。獲得標高差2,580mの難関ステージは、逃げたい選手がアタックを連発するハイスピードな幕開けとなった。

スタートから1級山岳ピヨン峠の頂上まで、高低差473mの行程を平均スピード36.1km/hで駆け抜けた集団から抜け出す選手は現れなかった。1級山岳ピヨン峠のハイスピードダウンヒルをこなし、UCI(国際自転車競技連盟)の本部が置かれているエーグルの街まで下りきったところでようやく6名の逃げグループが形成される。

氷河が削り出したV字の渓谷を常時50km/h前後のハイペースを刻んで逃げたのは、ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)、ダニエル・オス(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)、シルヴァン・ディリエ(スイス、アージェードゥーゼール)、ウィリー・スミット(南アフリカ、カチューシャ・アルペシン)、ラリー・ワーバス(アメリカ、アクアブルースポート)、ポール・オウスラン(フランス、ディレクトエネルジー)という強力なメンバー。メイン集団から3分のリードを保ちながら、逃げグループは超級山岳モンタナヴィラージュ(全長13.5km/平均5.4%)の登りへと入っていく。

アメリカチャンピオンのワーバスが先頭で独走に持ち込んだ一方で、BMCレーシングがコントロールしたメイン集団から抜け出したリリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー)やロメン・シカール(フランス、ディレクトエネルジー)、オマール・フライレ(スペイン、アスタナ)が追走グループに合流。先頭ワーバス、第1追走スミット、第2追走カルメジャーヌやディリエ、その後ろにメイン集団という位置関係で超級山岳モンタナヴィラージュをクリアした。

超級山岳モンタナヴィラージュで独走に持ち込んだラリー・ワーバス(アメリカ、アクアブルースポート)超級山岳モンタナヴィラージュで独走に持ち込んだラリー・ワーバス(アメリカ、アクアブルースポート) photo:CorVos
メイン集団を牽引するグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)メイン集団を牽引するグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング) photo:CorVos
残り7km地点でアタックを仕掛けるヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーションファースト・ドラパック)残り7km地点でアタックを仕掛けるヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーションファースト・ドラパック) photo:CorVos
1年前の超級山岳フィニッシュで独走逃げ切り勝利を飾っているワーバス。2分以上のリードを得て超級山岳を越えたワーバスだったが、下り区間とその後の平坦区間でタイム差を失っていく。ワーバスのリードは残り18km地点で1分を下回り、最後の1級山岳ロイカーバード(全長14km/平均4.5%)に差し掛かる頃には30秒に。スキーリゾート地に向けたこの日最後の登りが始まると、単独で追走していたカルメジャーヌがワーバスを抜いて先頭に立った。

超級山岳モンタナヴィラージュでメイン集団を長時間牽引したのはグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)。昨年のパリ〜ルーベ覇者によるペーシングで集団の人数が絞られるとともに、先頭カルメジャーヌとのタイム差は縮まっていく。ヴァンアーヴェルマートの牽引によって残り6km地点でカルメジャーヌが吸収されると、集団からは次なる動きが生まれた。

先に飛び出した2014年ツアー・オブ・ジャパンのヤングライダー賞ヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーションファースト・ドラパック)とフランソワ・ビダール(フランス、アージェードゥーゼール)に続いて、総合で36秒遅れのミケル・ランダ(スペイン、モビスター)がアタック。追走する集団の先頭はヴァンガーデレンからグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)にスイッチ。イエロージャージを着るシュテファン・キュング(スイス、BMCレーシング)はここで脱落してしまう。

ランダはカーシーだけを連れて6〜8%ほどの勾配を突き進み、やがてカーシーが脱落してランダの独走状態に。残り4km地点でヴァンガーデレンが役目を終えるとステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)やシモン・スピラク(スロベニア、カチューシャ・アルペシン)、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)といった総合優勝候補も集団先頭に姿を見せる。

ランダはタイム差15秒で残り2kmアーチを通過。ジェスパー・ハンセン(デンマーク、アスタナ)とマーク・パデュン(ウクライナ、バーレーン・メリダ)の集団牽引によってランダのリードは縮まり、10秒差で残り1kmを通過した精鋭集団の中からマティアス・フランク(スイス、アージェードゥーゼール)が鋭いアタックを見せた。

勾配が増したところでスピードを失ったランダは残り200mで吸収。それと同時にディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)がスプリント体制に入る。エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)やトムイェルト・スラフテル(オランダ、ディメンションデータ)の追い上げも届かず、先に仕掛けたウリッシが先頭を守り切った。

ウリッシはラスト650mを1分21秒間590Wを出力し、平均スピード28.7km/hで駆け抜けている。最大出力は870W。スプリント中の出力は18秒間800Wだった。なお、集団は1級山岳ロイカーバード(全長14km/平均4.5%)登坂タイムは29分02秒。平均スピードは28.9km/hに達している。

1級山岳ロイカーバードでアタックしたミケル・ランダ(スペイン、モビスター)1級山岳ロイカーバードでアタックしたミケル・ランダ(スペイン、モビスター) photo:CorVos
最後の1級山岳ロイカーバードを登るリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)やナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)最後の1級山岳ロイカーバードを登るリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)やナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:CorVos
メイン集団の先頭を走るステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)やジェスパー・ハンセン(デンマーク、アスタナ)メイン集団の先頭を走るステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)やジェスパー・ハンセン(デンマーク、アスタナ) photo:CorVos
1級山岳ロイカーバードを制したディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)1級山岳ロイカーバードを制したディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos
「格式の高いツール・ド・スイスでの大きな勝利を誇りに思う。ジロを調子の良い状態で終えていたので、気を抜かず、このスイスではステージ優勝のチャンスがあると思っていた。最後はミケル・ランダの先行が続いたけど、幸い彼に追いつくことができて、そのままスプリントに持ち込めた。この先もまだ自分向きのステージが残されている」と、昨年10月のツアー・オブ・ターキー総合優勝者は語る。ウリッシにとってはこれが今シーズン初勝利で、UAEチームエミレーツはシーズン7勝目。

遅れたキュングからイエロージャージはリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)の手に渡った。「予想外の序盤からの高速な展開に誰もが苦しんでいたと思う。最後の登りはそこまで難易度が高くなかったものの、ペースが速くてかなりハードだった。調子はとても良いので、もっと標高のある自分向きの山岳ステージでは力を出せるはず。このイエロージャージを手に、今日が50歳の誕生日のファビオ・バルダート監督を祝福したい」とポートは語る。総合2位に浮上したウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)からポートは20秒のリードを得ている。

ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)とのエース闘争が繰り広げられる中、攻撃的な走りを見せたランダは「ラスト数キロは強い向かい風が吹いていて、残り200mで吸収されるという後味の悪い結果になってしまった。でも7月に向けて仕上がってきていることを確認できたし、長いトレーニング期間明けのレース5日目に勝負に絡めたのは良い兆し。ツールを狙う選手にとって、明日と明後日のステージは大きな意味をもつだろう」と語っている。

イエロージャージを手にしたリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)イエロージャージを手にしたリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:CorVos
ツール・ド・スイス2018第5ステージ結果
1位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ) 3:37:31
2位 エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)
3位 トムイェルト・スラフテル(オランダ、ディメンションデータ)
4位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)
5位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)
6位 シモン・スピラク(スロベニア、カチューシャ・アルペシン)
7位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
8位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)
9位 サム・オーメン(オランダ、サンウェブ)
10位 ビョルグ・ランブレヒト(ベルギー、ロット・スーダル)
38位 シュテファン・キュング(スイス、BMCレーシング) 0:03:23
個人総合成績
ポイント賞
1位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 22pts
2位 カルヴィン・ワトソン(オーストラリア、アクアブルースポート) 19pts
3位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) 16pts
山岳賞
1位 ロメン・シカール(フランス、ディレクトエネルジー) 22pts
2位 ラリー・ワーバス(アメリカ、アクアブルースポート) 20pts
3位 フィリッポ・ザッカンティ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ) 17pts
ヤングライダー賞
1位 サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) 17:04:13
2位 エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ) 0:00:01
3位 ビョルグ・ランブレヒト(ベルギー、ロット・スーダル) 0:00:38
チーム総合成績
1位 モビスター 50:32:04
2位 バーレーン・メリダ 0:01:46
3位 アスタナ 0:01:55
text:Kei Tsuji
photo:CorVos

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