標高2,135mの1級山岳グランサッソ・ディタリアにフィニッシュするジロ・デ・イタリア第9ステージでマリアローザのサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)が勝利。クリストファー・フルームやファビオ・アルが1分以上のタイムを失った。


ゆったりとしたペースで進むメイン集団ゆったりとしたペースで進むメイン集団 photo:Kei Tsuji
5月13日(日)第9ステージ ペスコ・サンニータ〜グランサッソ・ディタリア 225km ☆☆☆5月13日(日)第9ステージ ペスコ・サンニータ〜グランサッソ・ディタリア 225km ☆☆☆ photo:RCS Sport5月13日(日)第9ステージ ペスコ・サンニータ〜グランサッソ・ディタリア 225km ☆☆☆5月13日(日)第9ステージ ペスコ・サンニータ〜グランサッソ・ディタリア 225km ☆☆☆ photo:RCS Sport

イタリア半島の背骨を形成するアペニン山脈でジロは前半戦のクライマックスを迎えた。全長225kmという長い山岳ステージに設定されたカテゴリー山岳は3つ。2級山岳ロッカラーゾと2級山岳カラーシオ(高低図の1級表示は間違い)を越え、そこから標高2,135mの1級山岳グランサッソ・ディタリア(全長26.5km/標高差1,029m/平均3.9%/最大13%)を駆け上がる。

「大きな石」を意味する標高2,914mのグランサッソ山の中腹に位置し、1999年にマルコ・パンターニがライバルたちを圧倒したカンポ・インペラトーレへの登りがジロに登場するのは4回目。平均勾配3.9%という数字だけを見ると侮ってしまいそうだが、直前の2級山岳カラーシオとセットで考えると登坂距離は50kmに迫る。しかも残り4km地点から先は平均勾配が9%を超え、最大勾配は13%。今大会2回目の休息日を前に、獲得標高差4,000mの本格山岳ステージでマリアローザ候補たちが再び火花を散らした。

正式スタートが切られるとすぐに10名を超えるグループの先行が始まる。後方から数名の選手が追いつく形で最終的に14名の逃げグループが形成された。逃げメンバーは以下の通り。

逃げグループのメンバー(ゼッケン番号順)
ミカエル・シュレル(フランス、アージェードゥーゼール)総合39位/10分45秒差
ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
ファウスト・マスナダ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)総合36位/8分57秒差
マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、バーレーン・メリダ)
ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、バーレーン・メリダ)
シモーネ・アンドレッタ(イタリア、バルディアーニCSF)
チェザーレ・ベネデッティ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)
ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・フィックスオール)
ナトナエル・ベルハネ(エリトリア、ディメンションデータ)
ヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーションファースト・ドラパック)
マキシム・ベルコフ(ロシア、カチューシャ・アルペシン)
ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、トレック・セガフレード)総合32位/6分40秒差
ローラン・ディディエ(ルクセンブルク、トレック・セガフレード)
アレックス・トゥリン(イタリア、ウィリエール・トリエスティーナ)

スタートともに飛び出したマヌエーレ・ボアーロ(イタリア、バーレーン・メリダ)らスタートともに飛び出したマヌエーレ・ボアーロ(イタリア、バーレーン・メリダ)ら photo:Kei Tsuji
ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・フィックスオール)を含む逃げグループティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・フィックスオール)を含む逃げグループ photo:CorVos
アスタナを先頭に山岳を進むプロトンアスタナを先頭に山岳を進むプロトン photo:LaPresse
山岳地帯を一直線に進む中、タイム差は6分から8分を行ったり来たり。ミッチェルトン・スコットに逃げを捕まえる意思はなく、淡々と過度にタイム差が広がらないことだけに気を払いながらメイン集団のペースを作る。

レース中盤の2級山岳ロッカラーゾに先頭で差し掛かったのはマスナダ。しかし頂上手前でチェーンを落としてしまい、チームメイトのバッレリーニに押されながらの先頭通過となる。コミッセールはこれを違反行為としてマスナダの山岳ポイントを取り消し、先頭を譲って2番手通過したベルハネにに最大ポイントが与えられている。2つのスプリントポイントはいずれもバッレリーニ、ベルコフ、トゥリンの順で通過した。

レース時間が6時間近くに達する長丁場の大半は、大きな動きのないまま進行した。第2ステージ2位、第3ステージ4位、第7ステージ6位のヤコブ・マレツコ(イタリア、ウィリエール・トリエスティーナ)はレース中盤にバイクを降りている。

2級山岳カラーシオで逃げグループは人数を絞り込みながら、アスタナ牽引に切り替わったメイン集団から4分リードのまま頂上を越えていく。この日最後の1級山岳グランサッソ・ディタリアの登りに差し掛かった時点でタイム差は3分半。標高2,135mまで続く長い登りで先頭がシュレル、マスナダ、ボアーロ、ヴィスコンティ、カーシー、ブランビッラに絞られると、そこからマスナダが単独でアタックした。

アスタナがメイン集団のペースを上げるアスタナがメイン集団のペースを上げる photo:CorVos
雪が残る1級山岳グランサッソ・ディタリアを登る雪が残る1級山岳グランサッソ・ディタリアを登る photo:Kei Tsuji
アタックを繰り返すジュリオ・チッコーネ(イタリア、バルディアーニCSF)アタックを繰り返すジュリオ・チッコーネ(イタリア、バルディアーニCSF) photo:CorVos
ボアーロらの追走を振り切って独走に持ち込んだマスナダは、残り10km地点でメイン集団から2分のリード。しかし登り中盤の平坦区間でミッチェルトン・スコットやアスタナがハイペースを刻むメイン集団が大きく差を詰め、残り4kmから勾配が増すとマスナダは失速。ジャック・ヘイグ(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)が牽引するメイン集団によって残り3kmを切ったところでマスナダは吸収される。

続いてジュリオ・チッコーネ(イタリア、バルディアーニCSF)が先頭でアタックを仕掛けると、メイン集団からファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)が脱落。続いてローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)も遅れていく。チッコーネの執拗なアタックはその後も続き、反応してペースが上がるメイン集団から残り2km地点でクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)も脱落した。

メイン集団はチッコーネを先頭に11名(チッコーネ、ピノ、ポッツォヴィーヴォ、イェーツ、カラパス、チャベス、ロペス、ベネット、フォルモロ、オコーナー、デュムラン)に絞られた状態で残り1kmを切る。残り500mで加速したドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ)に反応できたのはサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)とティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)、エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット)、リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)だけだった。

先頭でペースを上げ続けたポッツォヴィーヴォの後ろから、最終コーナーに差し掛かったところでマリアローザがスプリントを開始。ギアをかけて反応するピノを引き離しながら登りを突き進んだイェーツが先着し、フィニッシュライン通過後に雄叫びを上げながらガッツポーズを繰り出した。

先頭グループの選手たちは1級山岳グランサッソ・ディタリア(平均3.9%)を平均スピード29.8km/h、残り3km(平均8%)を平均スピード20.6km/hで駆け上がっている。残り3kmの平均出力はチャベスが350W、ポッツォヴィーヴォが370W、ベネットが360W、デュムランが420Wだった。

フィニッシュに向かってスプリントするサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)フィニッシュに向かってスプリントするサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:LaPresse
後方を振り返るサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)後方を振り返るサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:LaPresse
マリアローザを着てステージ初優勝を飾ったサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)マリアローザを着てステージ初優勝を飾ったサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:CorVos
1分07秒遅れたクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)1分07秒遅れたクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:CorVos
マリアローザを着るイェーツがステージ初優勝。「1日を通してずっと働き続けてくれたチームの勝利だ。マリアローザを着てステージ優勝する意味の大きさを感じている」と、ボーナスタイム10秒を獲得してマリアローザのリードを広げたイェーツは語る。

ステージ3位に入ったチャベスが総合2位に浮上したため、ミッチェルトン・スコットが総合ワンツー体制を築いている。イェーツと総合2位チャベスのタイム差は32秒、総合3位デュムランとは38秒差、そしてピノとは45秒差。「エトナ山で自分の好調ぶりを実感していたので、今日のパフォーマンスには驚いていない。でも正直言うと200kmを超える長くて厳しいステージだったので、100%の自信はなかった。今日はポッツォヴィーヴォが強力で、調子が良さそうなピノもいて、最後までデュムランが離れなかった。タイムトライアルのことを考えると、デュムランとのタイム差38秒は決して十分ではない」。イェーツは今後の山岳ステージでさらにリードを広げる必要があると念を押している。

この日の敗者は1分07秒遅れのステージ23位に沈んだフルームと、1分14秒遅れのステージ24位に沈んだアル。それぞれ総合トップ10圏外の総合11位と総合15位にダウンしている。

翌日は今大会2回目の休息日。第10ステージからジロは後半戦に入る。

ステージ初優勝を飾ったサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)ステージ初優勝を飾ったサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:Kei Tsuji
マリアローザのリードを広げたサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)マリアローザのリードを広げたサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:Kei Tsuji


ジロ・デ・イタリア2018第9ステージ結果
1位 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 5:54:13
2位 ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)
3位 エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット)
4位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ) 0:00:04
5位 リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)
6位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ) 0:00:10
7位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) 0:00:12
8位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)
9位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)
10位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、バルディアーニCSF) 0:00:24
11位 ベン・オコーナー(オーストラリア、ディメンションデータ) 0:00:26
12位 マイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト・ドラパック) 0:00:36
13位 パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) 0:00:38
14位 ペリョ・ビルバオ(スペイン、アスタナ) 0:00:52
15位 カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、モビスター)
16位 ルイス・メインチェス(南アフリカ、ディメンションデータ) 0:01:00
17位 ワウト・プールス(オランダ、チームスカイ) 0:01:02
18位 セバスティアン・ライヒェンバッハ(スイス、グルパマFDJ)
19位 アレクサンドル・ジェニエス(フランス、アージェードゥーゼール)
20位 サム・オーメン(オランダ、サンウェブ)
21位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)
22位 ミケル・ニエベ(スペイン、ミッチェルトン・スコット)
23位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) 0:01:07
24位 ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ) 0:01:14
マリアローザ 個人総合成績
1位 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 37:37:15
2位 エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット) 0:00:32
3位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) 0:00:38
4位 ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) 0:00:45
5位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ) 0:00:57
6位 リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター) 0:01:20
7位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) 0:01:33
8位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) 0:02:05
9位 ペリョ・ビルバオ(スペイン、アスタナ)
10位 マイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト・ドラパック) 0:02:25
11位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) 0:02:27
13位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) 0:02:34
15位 ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ) 0:02:36
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ) 178pts
2位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) 100pts
3位 サーシャ・モードロ(イタリア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) 73pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 55pts
2位 エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット) 47pts
3位 ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) 36pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター) 37:38:35
2位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) 0:01:14
3位 ベン・オコーナー(オーストラリア、ディメンションデータ) 0:01:16
チーム総合成績
1位 ミッチェルトン・スコット 112:55:41
2位 アスタナ 0:03:48
3位 チームスカイ 0:04:30
text:Kei Tsuji in Campo Imperatore, Italy

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